●『赤き拳』天道・烈斗 クレーン車やダンプカーがビルの壁をぶち破るのは現実的だろう。 大砲がぶち破ったとしても、日常的に見るか否かは別として現実味のある光景だとは思う。 しかし人間の拳一つでビルの壁がぶち破られ、砕け散ったとしたらどうだろうか。 そんなものが、現実にいるとは思えるだろうか。 「よし――調整完了っ!」 赤いマフラーを巻いた男、天道烈斗は突き出した拳をゆっくりと顔の前に持ってきた。 「コイツで決める。アイツらとの約束通り、ドカッとバシッっと、決めてやる」 そんな彼の後ろで、一人の女が腕を組んだ。 「はしゃいでるわね、烈斗君。そんなにこの前戦ったリベリスタが気に入ったの?」 「馬鹿、戦ったんじゃない。『負けた』んだよ」 烈斗は振り返り、団子状に結んだ布を投げ寄越す。 薄地のマフラーで、ピンク色の模様が入っていた。女は片手で受け取る。 「俺の率いた五芒星は完膚なきまでに負けた。四人死に、俺は情けで生き残った。この意味、分かるか?」 「……」 女は沈黙していたが、凄惨な笑みを浮かべて顎を上げた。 歩き出す烈斗。 「奴等はこう言った。『ライバルが欲しいならいつでも相手になる』……そして俺は言った。『今度はちゃんとやってやる』。つまり、だ!」 ぶら下がっていたサンドバッグに視線を移す。 彼はゆっくり拳をひくと、目いっぱいのパワーを拳に集めた。 赤く輝く拳。太陽の如く燃える拳で彼は、サンドバッグをぶん殴った。 途端、後ろの壁ごと吹き飛んでいく。 「あーあ、これもうビルごと倒壊するわよ」 「知ったことか」 「ああ、もうトレーニングなんかやってらんねえんだろ?」 そんな声と共に、男女が連れ立って現れる。 烈斗を含め、全八名。 『鉄拳』残存兵力の全てである。 「で? チーム名はどうする」 「お前が戻ってきたからには戦力は万端だ。昔みたいに八卦からとるか?」 「いや、イイのがある」 烈斗は首をこきりと鳴らして、ぶち壊した壁の向こうに広がる空を見た。 「鉄拳――八星将!」 ●鉄拳八星将 「『鉄拳』がチーム潰しを再開する……つもりのようです」 『運命オペレーター』天原和泉(nBNE000024)はバインダーを片手にそう語った。 鉄拳とは、かつてリベリスタ達が戦ったチームの名前であり、主流七派の一つ六道の武闘派チームでもある。 前回は『鉄拳五芒星』と名乗る彼等を完膚なきまでに叩き潰し、四人を死亡、一人を重傷にして終わらせた。 そして今……生き残りであるレッドが残りの七人と共にアークへ再挑戦を仕掛けてきたのだ。 「レッドこと天道・烈斗(てんどう・れっど)。彼は自らを更に研ぎ澄まし、調整を完全に終えた技を引っ提げて来ます。仲間の七人もまた、前回の五芒星をはるかに上回る実力者揃い。今回は拳技に限定せず、多様な格闘技を駆使してくるでしょう」 こちらが感知することを見越して、彼らは既に戦いの舞台を整えている。 以前戦った廃墟ビルだ。 彼等との戦いを拒めば、今までのような小規模チーム潰しを再開することだろう。 「皆さんの手で、決着をつけて下さい」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:八重紅友禅 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年03月09日(金)22:31 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●『リベリスタ八星将:太陽』歪 ぐるぐ(BNE000001) 「ハローハロー、太陽の座ぐるぐさんでっす」 「鉄拳八星将……ピンクスターでいいわ」 肩をゆっくりと回し、ピンクスカーフの女が呟いた。 周囲に彼女達以外は居ない。二人っきりである。 「ピンクさんですか、あの人はもう居ませんけれど……」 「師匠筋だと思って頂戴。彼女の五行想を昇華させたのは私だから」 「わかりました、それじゃあ楽しんでまいりましょう」 瞬間、銃を反転させてピンポイントを打ち込むぐるぐ。 ピンクは身体を回転させ踊るように回避。 ぐるぐは接近を直観的に見越して死角に回り込みつつ、銃身を握ってハンマースイングを仕掛ける。 ピンクは身体をかくんと折ってスイングをかわすと、ぐるぐの腕を絡み取り脇腹に強烈な土砕掌を叩き込んだ。 「あううっ!?」 体力を半分以上持って行かれる。強すぎて意味わからんと思う反面、こうでなくてはとも思う。 思っている内に顔に掌底が添えられた。いきなり上下を激しく回転させられるぐるぐ。三半規管がぐちゃぐちゃになる。やばい死ぬ。 「ぐるぐさんは死なないのよ」 迷わずフェイトを削って持ちこたえる。片足で着地。身体はぐらつくが無理矢理ノックダウンコンボを発動させる。 クロスさせるように業炎撃を叩き込んで来るピンク。 ピンクの方が一瞬だけ早かったが、ぐるぐはもう片方の手に持っていたスパナでガード。相手の胸に銃のグリップハンマーを叩き込む。 軽く数メートルを飛び転がるピンク。 「当てられちゃったか……はぁーあ」 自身あったんだけどなあ。そう言って、ピンクは息を引き取った。 ●『リベリスタ八星将:土星』ミュゼーヌ・三条寺(BNE000589) 回転して弾頭が飛ぶ。 音速を超えた弾はしかし、皮手袋で掴み取られる。 黒手袋にブラックスーツの男である。彼は鋭く回し蹴りし、虚空を切断した。 反射的にのけ反るミュゼーヌ。眼前の空間が引き裂かれ、ウェーブのかかった髪がいくらか切って散らされた。 マスケット銃を抱えて後転。屈んだ姿勢で再び狙いを付けるミュゼーヌ。 対するブラックは前傾姿勢のまま加速。彼のこめかみを弾丸が掠る。 構わずピアッシングシュートを連射。額に迫った弾丸をまたもキャッチするブラック。 ミュゼーヌは思わず口笛を吹いた。 「貴方達、そんなに強い相手と戦いたいの?」 「スポーツマンなんでな。限界は超えるものだと認識している」 思い切り踏み切って水平跳躍。鋭い空中回し蹴りが、今度は直接繰り出される。 マスケット銃でガード。押し込まれて転がるミュゼーヌ。 「だったら私達と来なさい。敵同士最後に手をつなぐのも、ベタでいいじゃない?」 「裏切りは精神をブレさせる。悪いが――」 立ち止まったミュゼーヌの腹に靴底が添えられる。そのまま圧倒的な力で蹴飛ばされた。 空中で体勢を整えようとした所へ虚空斬が追加で打ち込まれた。上下左右関係なく引っ掻き回され、壁に激突するミュゼーヌ。 普通ならとっくに死んでいておかしくないが、彼女はフェイトを削って立ち上がった。 「まだまだ……この程度で膝を折っては無礼というものだわ」 「リベリスタの特権か。いいだろう」 再び距離を詰めてくるブラック。先刻同様の飛び込み回し蹴りが繰り出される。 ミュゼーヌ、今度はハイキックで応戦。右の義足が光を放ち、ブラックの蹴りを相殺させた。 「お生憎様、この距離が一番得意なのよ」 身を一回転させて再びキック。ミュゼーヌの蹴りをブラックは上げた膝でガードした。 身体の軸が大きくぶれる。 「くっ!」 「秘技――!」 片足立ち継続。ミュゼーヌは足を高く高く掲げ、どこか強引な踵落としを繰り出した。 「魔落猛襲脚!」 今度はブラックが壁に叩きつけられる番になった。 ●『リベリスタ八星将:木星』リル・リトル・リトル(BNE001146) グリーンマフラーの男にギャロップレイを放つ。 が、糸を引っ張ってみてそれが残像であったことに気づく。リルは状況確認よりも先んじてまず態勢を低く屈めた。 頭上を通過する拳。 リルは転がるように距離をとって身構えた。 「っと、ラーニング持ってるッスけど……固有技あるなら見せて欲しいっす」 「……え?」 グリーンは拳を突き出したままの姿勢で首を傾げた。 「ええぇ、君もオリジナリティとアイデンティティを一緒くたにする主義かい? レッドみたいに」 「そういうんじゃないッスけど」 「駄目だよぉ、自分の技を大事にしないと。技を盗むのもいいけど、ああいうのは必ず劣化するから。僕ぁ嫌だなあ」 「でもまあ、そういうものッス」 グリーンがゆっくりと構え、リルもまたゆっくりと構える。 「命がけで取りに行くッス」 「まあ、いっか。盗めたら君の勝ちってことでいいよ」 途端、グリーンの姿が映像フィルムのようにコマ送りになった。 否、一瞬前の自分を残像にして分裂したのだ。 同じく複数体に分裂するリル。 両者三体で跳躍。二体でスライディング。一体を正面で突っ込ませ五体で左右に回り込ませる。 十体がそれぞれぶつかり合って相殺。正面に突っ込んでいた一体ずつへと残像が集約し、互いの拳を払い合った。 「今のはっ――!」 「残影剣だけど」 「ちょっと歯がゆいッス!」 高速で拳を繰り出し合い、両者の腕が六本を超えて見えた。 「ええとっ」 「幻影剣ね」 次の瞬間、グリーンがリルの周囲を取り囲んでいた。 「ラ・ミラージュ」 全方位からの集中砲火。 リルは瞬間的にフェイトを払って持ちこたえると自分を中心に八方へ分身。 それぞれを拳で殴り倒す……と。 グリーンはやけにあっけなく倒れた。 「え、えっ!?」 「いやあ、僕のは身削り系のパッシブだから。もう限界だよ」 最後に良い運動したなあ。 グリーンはそう言って、目を閉じた。 ●『食堂の看板娘』衛守 凪沙(BNE001545) 相手はホワイトの鉢巻を巻いた巨漢であった。柔道着の襟を正してどっしりと構えている。 首を傾げる凪沙。 「小娘でちょっとがっかりしちゃった? 大丈夫だよ、きっと満足してもらえるから」 ホワイトは巨体とは思えぬ素早さで拳を打ち込んでくる。凪沙は瞬発力を生かして跳躍。拳の上を足場にして二段跳びすると彼の上をバク転で飛び越えた。 と思いきや、強烈な肘打ちが叩き込まれる。着地寸前だったこともあってモロにくらう、凪沙は派手に転がった。 大きな動きで踵落としを繰り出すホワイト。だが距離がある。と言うことは斬風脚だ、と判断して横っ飛びに転がる。 それを読んでいたかのように凪沙の身体に空気の斬撃が命中した。 弾かれて倒れる凪沙。 が、何事もないかのように立ち上がって見せた。 「身体、やっと暖まったよ」 「フェイトを使ったか」 「うん。先読み……してるんだね」 「特殊なことはしていない。ただの型だ。沢山あるだけのな」 再びどっしりと構えるホワイト。 凪沙はぱちぱちと瞬きしてから突撃した。繰り出される拳を上半身を捻って回避。そのまま相手の腕を転がるように零距離へ詰め寄ると掌底を叩き込む。 「この技知ってるでしょ」 「型の内だ」 膝蹴りが繰り出される。その膝を足場に肩へよじ登り更に土砕掌。背後に回る直前肘の位置へ土砕掌。 丁度背中合わせになるように着地して凪沙は息を吐いた。 重々しい音と共に力尽きるホワイト。 言葉は、交わされなかった。 ●『リベリスタ八星将:地球』石黒 鋼児(BNE002630) 鋼児の拳が相手の頬にめり込むのと、ブルーカラーのグローブが鋼児の頬にめり込むのは同時だった。 両者同時にぶっ倒れる。 すぐに両足を振り上げて立ち上がり、パンチを叩き込む鋼児。 ブルーは大きく仰け反るが踏ん張りきる。踵の位置を直して鋼児の顔面に一撃。 鋼児は血を吹いてその場に殴り倒される。 吐血と共に大きな息を吐いて、ふらつきながらも立ち上がった。 「はあ……はあ……はあっ……!」 「くは……ははは……!」 脳が揺らされ過ぎたのだろう。膝が既にがたがたと震えていて、鋼児は既にちゃんと立てない状態だった。 シャツの胸倉を掴まれる。 腕を引き絞るブルー。殴られる前に、鋼児の拳が炎を纏った。 狙いもつけずにぶち込む。ブルーの鼻っ面を叩き折った。 倒れそうになるブルーだが、鋼児が彼の胸倉をひっつかむ。 お互いを杖のようにして支え合いながら、二人は唾の混じった血を吐き捨てた。 言葉が交わされた様子は無い。 最初に名乗った時を除いて、ろくに喋った気がしない。口の中がぼろぼろに切れていて喋れない。 なので鋼児は拳を叩き込んだ。 同時に拳を突っ込まれる。 クロスした腕が目いっぱいに伸ばされ、二人は仰け反りそうになる。反射的にシャツを引っ張られたせいで、二人して空を見上げたような体勢になった。 「……はは」 「…………ははは」 大きく息を吸う。 そういえばフェイトは使っただろうか。ああ、さっき使ったばかりか。どうでもいいか。 とりあえず、腕は動きそうだ。 脚はガタガタだし立てそうにないが。 後一発くらい殴れそうだ。 鋼児は腕を振り上げる。 ブルーは腕を振り上げる。 二人は笑おうとして、やめた。 ぶん殴った方が、早そうだ。 「「オラァァッッ!!」」 互いの拳が、互いの顔面をぶっ潰した。 ●『リベリスタ八星将・金星』白雪 陽菜(BNE002652) 格闘戦ばかり行っている仲間たちの中で唯一、陽菜は唯一砲戦を繰り広げていた。 「こっちも全力で戦わせてもらうよ~っと」 性格の所為で誤解されがちだが、『鉄拳』は元々『拳でRPGに勝つ』をキャッチフレーズにしているだけあって対砲手戦には長けていた。 が、流石にこれはないだろう。 「8-8、Flugabwehrkanone……アハト・アハトっ!」 ビルの屋上で巨大な砲身を肩に担ぐ陽菜。 独逸人が他国から飛んでくる鉄塊を無理やり叩き落とすためにある大砲であり、間違っても人間が、16歳の少女が担いで良い品物ではない。 イエローマフラーの女へ狙いを定める。 そして超長距離から特殊徹甲弾を叩き込んだ。 地面が派手に抉れて飛び煙なのか誇りなのか、壮絶な塵柱が上がった。 人間が当たったら血煙にされるレベルの弾である。 が、しかし。 煙を突き破ってイエローが飛び出してきた。 通常射程範囲内に到達。 『高射砲で頭を吹っ飛ばす』という荒唐無稽の撃ち方をする陽菜。 「甘い甘ぁい」 対して、イエローは徹甲弾を両手で受け止めていた。 イエローはそのままビルの斜面を駆け上がる。 待ってましたとばかりに闇の世界を展開。 「暗闇と遠距離攻撃、どっちか好きな方を選ばせてあ・げ・るっ♪」 砲身を振り回す陽菜。元々巨大な鈍器である。鈍器としてはこれ以上なかった。 が、イエローはそれを片手で押し止める。そして砲身を引っ張り込むようにして陽菜を掴んだ。 持ち上げて、投げる。 方向はどっちだ? あ、やばいこっちは! 「ビルの外じゃん!」 思い切り落下する陽菜。地面に激突。肺がつぶれて身体がおかしな音を立てる。フェイトを削って持ちこたえる。 「優希が一緒の任務で情けない姿は見せられないもんね!」 彼女を追って飛び降りてくるイエロー。 陽菜は高射砲を、本来の設計目的通り(?)に振り上げた。 「吹っ飛べ!」 発射ボタン・オン。 凄まじい爆発が起こり、イエローは今度こそ吹き飛ばされた。 ●『リベリスタ八星将:水星』ノエル・ファイニング(BNE003301) 大振りなランスを構え、ノエルは真正面から突撃した。 シルバーカラーの派手なジャケットを着こんだ男は身体をズラして回避。ノエルの槍を小脇に抱えるように固定すると、槍ごとノエルを振り上げ、反対側に叩き落とした。 それだけではない、再び高く振り上げ地面へ叩きつけようとしてくる。 ノエルは今度ばかりは両足で着地。槍を手繰ってシルバーの腹を蹴っ飛ばした。 空中を回転してコンクリートの柱に激突するシルバー。 彼は首をぶるぶると振ると、再びノエルへと突撃してくる。 対してノエルは槍の先で足払いを仕掛ける。飛び越えるシルバー。それは予期していた。軽く槍を引いて腹か胸を突き刺しにかかる。シルバーは矛先を握って衝撃を吸収。しかし殺しきれなかった分はある。少々よたつくように後退……と見せかけて矛先を蹴り上げた。 咄嗟に戻そうとするノエルだが、すぐにそれはやめた。 戻している一瞬でシルバーは至近距離まで接近したからだ。 ガード拒否。胸に叩き込まれる拳をそのまま受け、片手で手首を掴み取った。 「肉を斬らせて」 腕に紫電を纏わせる。と同時に、槍をぐるりと反転させた。 石突をシルバーの側頭部に叩き込む。 派手に吹き飛んで壁に激突するシルバー。 ノエルは追撃のためにシルバーへと突撃を仕掛ける……が、低姿勢から斬風脚を繰り出される。膝に食らって転倒。しまったと思った瞬間ハンマーのような拳を叩き込まれた。ノエルの額が地面のコンクリートにめりこむ。 死にそうになって、ギリギリでフェイトを削る。 転がって退避。シルバーの二撃目が地面を派手に破壊した。 台詞は無い。ノエルは全身の力を込めて槍を引き、そしてシルバーへと突き刺した。 脇腹を貫通する槍。 それきり、シルバーは動かなくなった。 ●『リベリスタ八星将:火星』焔 優希(BNE002561) 「天道烈斗か、良い名であるな」 「焔優希、燃える名だぜ」 レッドと優希が両者同時に突撃。レッドの業炎撃が額に炸裂し、優希の業炎撃が腹にめり込んだ。 仰け反る優希、身体を折るレッド。 「相手にとって不足は無い、焔の名をもつ俺の拳、とくと味わえ!」 腹に再び拳を叩き込む優希。そのまま足を払ってレッドを転がした。 うつ伏せ姿勢から素早く足払いをかけてくるレッド。優希は横向きに転倒。 地面に肩がつく直前にギリギリ低空からアッパーを叩き込まれた。 吹き飛ばされる優希。数度回転して地面に倒れる。 「またかっ、前回と併せて30回は転がされたぞ!」 「だったらなんだぁ!?」 「同じだけ転がしてくれる!」 高速で踏み込みレッドの額を掴む優希。足を払って揺すり倒し、地面に頭を叩きつける。反動で再び起こし、思い切り投げ飛ばした。 窓ガラスを割ってビルから飛び出すレッド。 地面を複雑に転がってから、片膝立ちで口を拭った。 「ここだ、確かここだった……俺が負けて、こりゃ死ぬなって思った場所だ」 土に手を触れ、立ち上がる。 窓枠を飛び越えてきた優希が、全身から火を噴きながら身構えた。 「一部の遠慮も容赦もいらん。殺すつもりで来るがいい!」 「おうよ、死ぬつもりで行ってやる!」 一歩目で空気を振り切る。 二歩目で時間の概念を超える。 三歩踏んだ時には、真っ赤に燃えていたレッドの全身が輝き出し、拳に全ての光が集まる。 「一発きりだ、避けるなよ!?」 言われなくても無理だ。 あまりに早すぎて、熱過ぎて、何より魂が眩し過ぎて、優希はその場に硬直した。 インパクト。 優希の身体がビルの外壁、支柱、放置された重機、更に壁三枚と柱二本をぶち破って跳び、ビルの反対側に転がった。 「あ……うあ……」 全身が動かない。五回は死んだかもしれない。 だがフェイトは使えた。 起き上がって、レッドの様子を見る。 彼はパンチを放ったその場で、うつ伏せに倒れたまま動かなくなっていた。 「おいレッド……おい!!」 ●天道烈斗 「お前らってさあ、本当一人だけ生かすの好きだよな」 「いや、殺すつもりはなかったんだけど……」 陽菜とリルが指を絡ませながらもじもじとしていた。 鉄拳八星将の内七名が死亡。今回も、レッドだけが満身創痍で生き残ったのだった。 「でも、これで良かったのでしょう?」 顎でビルの壁を示すノエル。 ミュゼーヌが鋼児に肩を貸しながらこちらへ歩いて来ていた。 頷く凪沙。 「みんな、一回は殺された。八人全員で各個撃破されていたら、きっと何人か……本当に死んでいたよ」 「ばっか、そう言うんじゃねえよ。俺をいい人みたいに言うな。今後接しづらくなるだろうが」 「あ、そうだ言い忘れてた」 ぐるぐがはいはーいと言って手を上げる。 「相手の事を採取元としか思ってないみたいで不服不服ーっ、ラーニングはリスペクトの証なんだからねっ!」 「いや、ラーニングって劣化するだろ。開発者としてはスゲー嫌なんだぜアレ」 「ショボーン」 とりあえず可哀そうな顔をしてみるぐるぐ。 「まあ、今度の機会があったら直接ぶち込んでやんよ。撃つの死ぬほどキツいんだからちゃんと準備して来いよな」 ほほうと呟くぐるぐを押しのけ、優希が前へ出た。 「今度こそアークに来ないか。それと……俺の好敵手になってくれ」 「どっちだよ」 レッドは笑って立ち上がる。 その辺の鉄パイプを杖にしていた。 「でもまあ、俺もプロだからよ、いきなりお仕事やめるワケにいかねーんだわ。分かるだろ、そういう社会人的な話」 「あんま分かりたくないッス」 「そう言うな。引き継ぎ終わったら派手に裏切ってやっから」 「いきなりブッチすればいいんじゃ?」 「そう言うなって」 手を振って、レッドは皆に背を向けた。 「仲間の親族にも、頭下げに行かなきゃならんからよ」 戦いは、終わった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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