●夜が近い 「どうしてですか、ばば様。どうしてうちの子が……」 涙ながらに訴える母親を、しかし老婆は冷たく一瞥する。 「決まっておるだろう。罪を犯した子には罰を与えねば」 「でも、畑から作物を盗っただけなんですよ。それなのに……」 「作物を盗っただけ? 重罪じゃろう。幼子とは言え罪を軽くする訳にはいかん」 村で最も大きな屋敷。 既に闇が差し迫った時刻、村の外れに住む女性は、この村の長に呼ばれ、夕飯の支度を後回しにしてやって来た。 しかし、そこで見たのは痛めつけられ気を失った我が子の姿と、厳しい顔をして屋敷の奥に鎮座する長である老婆。そして、老婆を守るように立つ二人の屈強な村の男。 しばらく前から、長であるこの老婆の様子がおかしくなったと、村中で話題になっていた。ささいな罪――例えば植えられた花を一本手折ってしまっただとか、村に一軒だけある売店で買い物をした際におつりをくすねてしまっただとか――を犯した村人に対し、鞭打ちや身体一つで冬の泉に放り込むといった厳罰を与えているのだ。 村から山のふもとへと伸びる道を行けば、警官のいる駐在所がある。もちろんそこに駆け込んで老婆の横暴さを訴えようという声は上がっていたが、今まで村を献身的に支え、そして守ってきた長である彼女を警察に突き出すのは忍びない、という意見が勝っていた。 しかし、いくらなんでもこれはあんまりだ。女性は涙を零しながら言葉を続ける。 「ですが、あんまりです。畑から作物を盗んだだけで、く、首を切って殺す……なんて……」 まさかこんな事を老婆が言うとは。女性は手を合わせて祈るような心持で老婆を見上げるが、しかし長は頑として聞く様子はない。 「ならぬ。その子供は死刑じゃ。お前たち、斧を持ってまいれ」 ●ふきのとうが気になる 「ふきのとうって今の時期に生えるんだよ。知ってた?」 『リンク・カレイド』真白イヴ(ID:nBNE000001)が集まったリベリスタを前にそんなことを口にした。てっきり仕事の話をされるものだと思っていたリベリスタ達はぽかんと口をあけて固まる。 誰も反応してくれないことに気を悪くしたのか、少しだけ唇を尖らせたイヴは、仕方無さそうに『万華鏡』で見た映像を話し始める。 「行って貰いたいのは、ふきのとうが沢山生えてる山の中だよ。三高平から電車を乗り継いで二時間くらい、そこから徒歩で一時間くらい歩いたところにある、山奥の小さな村」 その村の長である老婆がエリューション化してノーフェイスになってしまったのだと、イヴは言う。 「エリューション化してしばらく経っちゃってたみたいで、悪い事も少なからずしているみたい。まだ死人が出てないのが幸いだけど……。とにかく、そのおばあさんの周囲にいた人たちも二人、影響されてノーフェイスになっちゃってるの」 「つまり、今回相手をするのは三体のエリューションということ?」 「そう」 リベリスタの言葉にイヴは頷く。 「明日の夕方、村の子供が畑の作物を盗んで、それをお婆さん……ううん、エリューションが権限を使って殺害しようとするみたい。それを止めて欲しいの」 お願いします、と頭を下げたイヴは、最後にちらりと視線を上げると言葉を足した。 「あと、ふきのとうも幾つか採って来て。佃煮にするから」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:水境 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 2人 |
■シナリオ終了日時 2011年04月17日(日)02:29 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 2人■ | |||||
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●村 「やー、うさぎ追いしふるさとなのですよー」 『Trompe-l'?il』歪 ぐるぐ(BNE000001)は、辿り着いたその村を見回し、好奇心に目を瞬かせた。 既に日は沈みかけ、その村は田畑も簡素な木作りの家々も、全てが橙色に染まっている。やがて数十分も経てば夜となり、辺りは漆黒に染まるだろう。 その昔ながらの日本家屋および田舎の光景に、ぐるぐの隣にいた『ナーサリィ・テイル』斬風 糾華(BNE000390)も頷いた。 「そうね……どこか懐かしい場所だけど……ここで明日、悲劇が起きるのよね」 ぽつりと呟く糾華。その瞳は悲劇に憂えているのか細められ、彼女は肩を落とす。が、ぐるぐが明るく彼女の肩を叩いた。 「大丈夫ですよ! ぐるぐさん達でしっかり止めればいいのです!」 「……ええ、そうよね。ぐるぐさんもいるし、私、きっと上手くやれる気がするわ」 心の拠り所であるぐるぐに微笑みかけ、ぐるぐも糾華の笑みに応じて闊達に笑ってみせる。が、 「うちも大好きなぐるぐさんと一緒で仕事が楽しみやぁ。がんばろな!」 『イエローシグナル』依代 椿(BNE000728)は、糾華とぐるぐを挟む形でひょいと現れ、にっこりと笑ってみせた。その姿は幼女にしか見えないが、どうやらこれでも二十歳を過ぎているらしい。ぐるぐに笑いかけられ、嬉しそうに彼女が取り出したのは煙草だった。 「お婆さんにはちょっと同情するけどなぁ、まぁ頑張るで!」 「わ、私も頑張るわ。ぐるぐさんと一緒に窃盗班をやるのは貴方だけじゃないんだからね?」 「えへへ、ぐるぐさんも二人と一緒だと心強いのです~」 三人の少女たちのやり取りをよそに、傍らに立つ『影の継承者』斜堂・影継(BNE000955)は事前に調べてきた村の地理をメモした用紙に目を落としながら、肩をすくめた。 「村の中央……ここに老婆って奴の屋敷があるのなら、そこから村奥までの雑木林まで三百メートル程度ってところか。ここで待ち伏せするとして、作戦は――」 「あんさん真面目やねぇ」 影継の言葉に反応したのは『埋ル人』化野・風音(BNE000387)だった。訝しげに視線を自身に移動させてくる影継にのんびりと笑いかけ、煙草を取り出した。 「まァ、まだ夜まで時間があることやし、のんびり下見に行こうやァ」 「暢気だな。……夜まであと少しだぞ。暗くなる前に行動した方が……」 「懐中電灯もあるし、何とかなるやろォ。まァま、同じ待機組同士仲良くしようやァ」 「いえいえ、影継さんの言う通り、少しでも急いだ方がいいですよ」 と、そこで二人の会話に割り込んだのは『夜翔け鳩』犬束・うさぎ(BNE000189)だ。名前に反し、狸のビーストハーフである彼――あるいは彼女――は、狸の尻尾をぴこぴこと動かしつつ、淡々とした口調で言う。 「窃盗班と待機組はともかく、私のような結界班はどこに位置取るかの調整が必要です。もう日も暮れて来ていますし、少し焦ってきました」 「……全く焦っているようには見えないが」 「無表情ですいません。これでも焦っているんです」 影継の言葉にふるふると首を振るうさぎ。うさぎの背後からひょいと顔を出した『鬼出電入の式神』龍泉寺 式鬼(BNE001364)は、 「そうじゃぞ、人を見た目で判断してはいかん」 そう言って、幼い少女リベリスタはくっくと笑った。しかしすぐに真面目な顔になり、 「わらわは子供の悪戯を叱咤しようと思っていたのじゃが、決行は今日にするのじゃろう? ならば、早く移動を開始せんと」 「へぇへぇ、そやな。なら、俺らも早く行かんとなァ」 「それなら、村の人に詳しい道を聞いた方が早いわね……すいませーん!」 四人の会話を聞いていた『刃走り』功刀・六花(BNE001498)は、こくこくと頷き、そして近くの畦道を通りかかった老人に手を振る。声をかけられた老人は驚いたように目を瞬かせ、リベリスタ達を見回した。 「おんやまぁ、団体さんだぁ」 「はい、学校の郷土史研究部なんです。……それで、道をお尋ねしたいのですが」 「……学校の郷土史研究部? それにしては年齢が大分バラけているみたいだけんど……」 「あ、小中高一貫校なんです」 「……六花は社交的じゃな」 老人に愛想良く話しかけ、雑木林や道の構造を聞き出している六花を見、式鬼は感心したように鼻を鳴らした。 「本当ですね。私にも出来るでしょうか……」 「……うさぎは、その無表情を直せば可能かもしれぬのぅ……」 と、そこで六花が老人に手を振りつつ戻ってきた。その表情からして、無事に怪しまれる事無く情報を聞き出せたらしい。 「屋敷と雑木林の具体的な位置と方向が分かりました。移動しましょう」 「六花さん、偉いですー。じゃあ、早速ぐるぐさん達は屋敷に向かいますね?」 六花に応じ、ぐるぐは常の微笑みのまま頷いた。影継も風音と顔を見合わせ、その意思を確認し合う。 「そんじゃ、早速移動開始しようぜ!」 「皆さん、お気をつけて」 八人をサポートするためにやって来た『ヤるなら勝つ!』宮部乃宮 火車(BNE001845)と『図書室戦争』深町・円(BNE000547)が、力強くそんな言葉をかけた。 ●屋敷~雑木林 都会とは異なり、山奥の村では明かりが乏しく、電灯も少ない。 そんな中にあって、椿のESP能力は大きな効果を発揮しているようだった。巨大な日本家屋の中、扉をこじ開けて入ったぐるぐ、糾華、椿の三人は、ESPによって周囲の気配を察知。未だ動きの無い事を感じ取り、行動を開始する。 入り口で待機する椿に合図し、糾華とぐるぐは堂々と玄関に押し入り、そのままずかずか茶の間へと向かう。 「この壺なんて高そうでいいんじゃないかしら?」 「ぐるぐさんはこっちの掛け軸なんか欲しいです~、高そうですよ!」 「それなら両方盗んじゃいましょうよ」 やや大きい声でそんな会話を交わす。時間帯的にはそこまで遅い時刻ではないとは言え、ターゲットがやって来る気配はない。そこで糾華が手にした壷を落とし、騒音とも呼べるような音を立てた。 「あっ、壷を落としちゃったわ……!」 「何をやっているんですか、糾華さ――」 「……何をしているのか聞きたいのはこっちの方じゃ」 不意に、彼女たちの背後に気配が生まれた。二人はぱっと振り返る。 そこには、険しい顔をした八十歳ほどの老婆と、その脇に三十代ほどの体躯の良い男が二人。侵入者であるぐるぐと糾華を睨み付け、苦々しい口調で言った。 「お前達、この村の者ではないな? 一体何をしに来た」 「何しに来たって……決まってるじゃない。ここに金目のものを盗みに来たのよ」 「この鬼婆、目が見えているんですかねー? ぐるぐさん達が何してるかなんて、見れば分かるでしょう」 あっけらかんとした二人の言葉に、老婆のこめかみがぴくりと疼く。次いで二人の男達に視線を走らせる。 「この者達を捕らえよ! 首を切って晒し、盗人がどうなるか村の者に示してやるのじゃ!」 「わー、鬼婆が怒ったー」 「逃げましょ!」 男達が弓を取り出し番える間、二人は軽やかな動きで老婆たちの脇をすり抜け、玄関へと向かう。そこで待っていたのは椿。彼女も慌てふためく演技をしつつ玄関を飛び出した。 「せやからうちは止めとこ言うたんよ!? あんな山姥みたいなんに追われとぉ無かった!」 「文句言ってないで早く逃げて!」 「追え! 追うのじゃ!」 三人と老婆の声が、村に木霊する。 「……来たみたい」 屋敷の方から声がするのを、結界班である六花は静かに見つめていた。彼女たち結界班の結界、あるいは火車の強結界のお陰か、周囲に人影は見当たらない。あとはこのまま彼女たちが指定した雑木林まで老婆達を連れて行ってくれるのを待つだけ、なのだが―― 「まずいですね」 六花から少し離れた場所に立つうさぎは、無表情のまま唇をかみ締めた。式鬼もわずかに眉をしかめる。 「……あのばば様、思ったより足が速いのじゃな……」 そう、彼女たち三人はふざけあいながらも必死に逃げている――が、当初の頃より老婆との距離が狭まっているのだ。 「ですが、あの三人は親しいようです。追いつかれたとしてもチームワークできっと逃げ切って……」 うさぎが苦々しくそう言う間にも、眼前ではみるみるうちに老婆たちと三人の合間は狭まっていく。 そして――ほとんど三人の間近に迫った老婆はナイフを持ち直し、すっと手を挙げた。少し離れた場所にいる男の一人が弓を番えるのが見える。 六花はそれを見て、未だ彼女たちが雑木林にたどり着いていない事を知りつつも飛び出した。 「ああ……もう、見てられないわ!」 ●村の中での戦闘 「……!」 超直観によって、男が弓を番えた事を知ったぐるぐ。しかし、その矛先が椿に向かっている事と、既に男は手を離そうとしている事を見て取ると、注意を促す暇が無い事を悟る。 「危ないです!」 咄嗟に傍らを走っていた椿に覆い被さって庇う。すぐ頭上を矢が通り過ぎ、彼女の髪を数本散らした。 「ぐるぐさん、椿さん!」 「仲間の心配をしている余裕はないぞ?」 息を切らしながら二人を心配し叫ぶ糾華の目の前に、老婆が迫っていた。咄嗟に彼女は反応できず、老婆が振り下ろすナイフを目を見開いて見つめた。 「その首貰った!」 「――させるかよ」 唐突に―― 老婆と糾華の間に割り行った影継が、鉄槌でナイフを受け止めていた。その赤い眼光が闇夜に光、眼前の老婆を怯ませる。 影継の威圧に気圧されたのか、老婆はナイフを振ってバックステップで背後に下がった。影継はその様子を見据えつつ鉄槌を構え直す。 「ほら、大丈夫かァ? お嬢さん達ィ」 こちらはいち早く駆けつけてきた風音だ。倒れたままのぐるぐと椿に手を貸している。彼らは雑木林で待機していたが、円のハイテレパスによって窃盗班に老婆が接近している事を知り、急いでやって来たのだ。 「……仲間がいたのか」 苦々しく呟く老婆を一瞥した風音は、椿達に「疲れたやろ、下がっとき」と優しく声をかけて立ち上がり、影継の隣に並んだ。 「ここまであざとい事をするなんてなァ、落ちたもんですなァ、長はん」 「……何を言っている、よそ者風情が」 「知ってるぜ。あんたらが散々権力を使って悪さしてるって事をな」 影継の言葉に眉根を寄せる老婆。男達に弓を構えるよう合図をするのを見ながら、二人も得物を構える。 「お遊びはここまでやよ。俺らはあんたらを退治しに来たんや」 「さあ、懺悔の時間だぜ――ノーフェイス」 「これまでの悪行、其方の命を対価として支払ってもらおうぞ!」 二人の言葉尻に被さるようにして式鬼が、 「子供を食べる悪い老婆、許せません」 きつく三人を睨み付けながら現れる六花、 「過剰な罰は悪い事ですよ。まあ、貴方達はそれが悪い事だと分からなくなっているのでしょうが……」 茂みからゆっくりと姿を現したうさぎが、老婆たちに語りかける。 多数のリベリスタ達に囲まれた老婆は、けれど鼻をふんと鳴らした。 「……警察の者、という訳では無さそうじゃな。ならばお前たちを殺しても村の者は何も言うまい。見せしめに――」 「その考えが悪だと言うんやよ!」 最初に動いたのは風音だった。老婆にギャロッププレイを放つと、彼の身体から発された無数の糸が老婆に絡みつく。 「むっ、これは……!?」 「私たちは普通の人間では無いんですよ」 懐中電灯を地面に投げ出し、戦闘のフォローを行う六花。彼女はさっと視線を移動させ、今にも矢を放ちそうな男を見つける。 「あの男!」 「任せて下さい」 軽やかなステップで飛び出すうさぎ。男の眼前でカタールを握り直し、ひょいと地面を蹴る。 「どんな理由があっても――結局、悪い事は悪い事なんです」 ちゃき、とうさぎのカタールが男に触れる。と同時に、 「離れてください!」 うさぎの張り詰めた声が上がる。途端、死の爆弾が植えつけられた男は爆発音を出して燃え上がった。 「貴様ら!?」 「おっと、お前の相手は俺だぜ?」 男に気を取られた老婆に向かい、影継はオーラを纏った鉄槌を振り仰いだ。しかし老婆は舌打ちしつつもそれを避け、代わりに無防備な影継の胴を蹴り飛ばした。 「くっ……!?」 彼は一瞬息を詰めるも転がって老婆から間を取り、立ち上がる。 「いい攻撃だ。面白くなってきたぜ」 (……影継はMなんじゃろうか……) ちょっと仲間に訝しげな視線を送りつつ、式鬼は華奢な指を振る。彼女の周囲が一瞬煌いたかと思うと、ふわりと虚空から剣が現れ、式鬼を守るように滞空した。刀儀陣だ。それを満足そうに見上げ、彼女は呟く。 「わらわの式術、見切れるかの?」 「無理でしょうね、この鬼婆達には!」 懐中電灯を投げ出した六花は駆け出し、未だギャロッププレイにて拘束されている老婆を斬り付け―― 「舐めるな、小娘!」 「舐めてるのはそっち。ほら、私はここよ」 老婆が切りつけたのは虚空。六花は残像だけ残して打刀を移動させ、老婆を切りつけたのだ。 「ナイスやねぇ、六花はん。俺も活躍しないとなァ」 「風音さんは充分活躍してるわよ」 鋭く六花と笑い合いつつ風音は音もなく移動し、するりともう一人の男へと接近した。 「終わりやァ」 こちらも、死の爆弾が植えつけられて激しく燃え上がる男。 「お前ら……!」 「余所見してる暇ないやろ? さっきはやってくれたやねぇ。これでも食らいやぁ!」 ようやく息を整えた椿が式神の鴉で老婆を打ち抜いた。ぐるぐはピンポイントで、糾華もハイアンドロウで両脇の男を打ち抜き、燃え上がり息も絶え絶えだった男達を絶命させた。 「これで――止めだ!」 ここに至り、ようやく慌てふためき逃げようとした老婆を、影継のメガクラッシュが打ち砕き―― 悲劇の未来は回避されたのだった。 「大丈夫? ぐるぐさん」 「大丈夫ですよー、平気平気!」 「無理せんとってなぁ」 戦闘が終わり、怪盗三人娘は気遣い合いながら怪我の有無を確認している。どうやら大きな傷は無いらしいが、ぐるぐを心配した糾華が彼女にきゅっと抱きついていた。 傍らでは風音が作った老婆たちの墓に向かい、六花が手を合わせている。 「どうか成仏しはりますよう……」 「冥福を……」 式鬼がそれを見、肩をすくめた。 「次は、ふきのとう採取じゃな……。食欲も失せたが、行くかのう」 「ああ……俺はいい」 式鬼の言葉に影継は首を振る。そして頭上の月を見上げ、 「苦いのは任務だけで充分だ」 そう、ぽつりと呟いたのだった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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