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ヒトゴロシ

●殺されるということ
 弟が殺された。
 違う、世間的には……現実では、自殺したとなっている。
 けど、なら……弟を自殺に追い込んだ人たちは悪くないの?
 もちろん私だって悪い。
 似たようなものかも知れない。
 何か元気がないなって思っても、大丈夫、ちょっと疲れてるだけって言葉を真に受けて。
 そう口にした弟の事を、もうちょっとでも気にしてたら……別の結果が待ってたかもしれないのに……
 どうしたかったか、なんて分からない。
 八つ当たりなのかもしれない。
 ただ、許せなかった。
 何事もなかったかのように生きているあいつらが。
 もしかして、謝らせたかったのかもしれない。
 弟の事で話がある。
 そう言ったら動揺したのを見て、うしろめたくは感じているのだと思えたから。
 人目に付かない所で話したいと言ってきたのは、誰にも知られたくないと思っているから。
 そう、感じたから。

 謝ったから。
 自首したから。
 弟が戻ってくるわけじゃいけど、それでも。
 ただ、弟だけが、弱さが悪いみたいな……そういうのだけは嫌だ。
 そう思ったから。謝らせたかったから。

 もし、くだらない言い訳をされるなら。
 絶対に許さない。
 そう思いながら公園に向かっている途中で……私はその人に会った。
「その子たちは反省なんてしてないよ」
 その人は言った。
「人目に付かない所で口封じしたいだけさ」
「……だったら、やりかえしてやる」
 そう言われて、私はコートの内側の新聞に包んだものをなでた。
「ムリムリ、相手がひとりだと思ってるかい?」
 強制的に私を待たせた彼女は、少しして私の向かおうとしている公園に5人ほど待ち構えているよと口にした。
「第一、口封じが殺すことだけだと思うかい?」
 そういう輩は、女の子の口を封じる方法をいろいろ勘違いしてると思わないかい?
 まあ勘違いでもないのか。実際に言えなくなっちゃう子もいるわけだし。
 そう言われて……私は怒りで弾け裂けそうだった頭が、身体が、一気に冷たくなるような気分を味わった。
 冷水を浴びせられるっていうのは、こういうことをなのかって……実感した。
「諦めた方が良いよ。今よりきっと、もっともっと悲惨で残酷な未来が待ち受けてるよ?」
「…………嫌、だ……」
「冷静になりなよ。世の中、そういうものだよ」
「……それでも、一人ぐらい」
「そんなに殺したいの?」
「許せないじゃない!」
「つまりそれは自己満足だよ。弟くんの為じゃない、自分が許せないから殺すんだよ」
「それでもいい! あいつらが……このまま何事もないように生きてるなんて、許せないよっ!!」
「じゃあ、死んでもいい?」
 そこで一気に温度が変わった。

「君には何もできやしないよ。まあ、不意をうてば一人くらいは怪我させられるかもしれない。運が良ければ、つまりは相手にとって運が悪ければ、怪我じゃなくて殺せるかもしれない」
 けど、そこまでだよ。
 彼女は言った。
「そこから君に待っているのは、これまでの人生なんか比べものにならないような、どん底のどん底さ。徹底的に徹底的に、徹底的に思い知らされるよ」
 まあ、それでも生きていられればマシなのかな?
 勢いでそのまま殺されるかも知れない。最悪の死にかたさと彼女は言った。
「……でも……だけ、ど……」
「わがままだなぁ……」
「じゃあ、そいつらは何なのよ……何でのうのうと生きてるの?」
「上手くやったってことでしょ?」
「弟は、いい子は……食い物にされるしかないの? 努力は報われないの?」
「本当に往生際が悪いな……じゃあ、もう一度聞くよ。キミは死んでもそいつらを殺したい?」
 そこで更に温度が下がったような、彼女の雰囲気が変わったような感覚を私は味わった。
 さっきのとは違う、自分じゃなくて、周りが冷たくなるような……寒さが、染み込んでくるような……
「もしキミが死んでもいいというのなら……」
 ボクがキミの代わりに、その5人を殺してあげよう。
「ああ、もちろんその5人が素直に自白して謝罪するっていうのなら無しでね」
 そう言ってから彼女はさらに温度を下げた。
「復讐を遂げれば、キミは殺される。このボクに、だ。けど、少なくともキレイなままでは死ねるよ?」
 もっとも、苦しむか苦しまないかはその時のボクの気分次第だけど。
「どうする? 我慢するというのも立派な選択肢だとボクは思うよ」
 これらかの人生、そういう我慢を強いられることがあるかも知れない。
 それを思えば、これを糧にするのも悪くないと思うよ?
「少なくともキミは、この国で、その歳で、世の中の残酷さを実感することができたんだし」
 疑う気は、微塵も起こらなかった。
 ああ、この人に頼めば、きっと大丈夫。そう感じた。
 5人を確実に殺してもらえる。そして、私は死ぬのだ。
 なにかもう、頭が働かなくなり始めたようなそんな気もしたけど、けどいいやと私は思い切った。
 だから……うなずいた。
「いちおう確認させてもらうよ?」
 それを確認して、彼女は数本の針を……私に見せた。
「これを、ね? 爪と指の隙間に突き刺すのさ」
 前金みたいなものだよ。そう彼女は笑顔で言った。
「口だけじゃない事を示してもらおうと思って、ね?」
 口で言うほど楽じゃないよ。死ぬっていうのも。
「痛いけどね……けど、死ぬのに比べたら大したことじゃない」
 怖い? やっぱり止める?
 そう問いかける彼女に向かって。
「……絶対に」
 殺してくれるんでしょうと尋ねれば、彼女は約束するよと口にした。
 だから、私は頷いた。
 彼女は応えるように頷いて、手に持った針を流れるような動きで私の指先に当てて……もう片方の手で、私の手首をつかんで……
 次の瞬間、彼女の指が一気に一センチほど前進した。
 こすって火傷したような、熱いような感覚があった次の瞬間、なにかが指の中で爆発したみたいな感じがした。
 痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛いっ!!!!
 指先が痛いと思った次の瞬間、頭に痛みが走った。
 そのまま腕に何かが走るみたいな痛みがあって、身体がこわばる。
 痛いというか熱い、火傷でもしたみたいな痛みが走って、頭がズキズキするみたいになって。
 反射的に動かそうとした手は、なにかに埋め込まれたみたいに全然動かない。
 その状態で、どんどん痛みがひろがっていく。
 指がもう破裂でもしたかみたいに、もうっ!?
 痛いっ! 痛いっ! 痛いっ!! 痛いっ!!!
 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
 !!!!!!!!!!!!!!!っ!? ぅぐぅ!!!
「……分かる? こんなもんじゃないよ? もっと、もっとだよ?」
 涙がこぼれて、鼻水も止まらなくて、むせたみたいになって咳き込んで、それが止まらなくて。
 ……すごく痛くて苦しくて、みっともなくて、ぶざまで。
 そんな私に、その子は静かにたずねた。
「……これでも、殺したい?」
 もっともっと、地獄のような苦しみを感じたとしても?
 それでも、殺したい?
 震えが止まらなくて目の前は滲んで、歯を食いしばらないと耐えられなそうで咳を無理矢理抑え込んで……それでも身体が強張って、うまく喋れなかった。
 痛かった。本当に、どうしよも、本当にどうしよもないくらいに痛くて苦しくて、もう謝って止めてもらいたくて、無しにしたいと口にしそうで……
 でも……
 最後に見た、弟の顔を……思い出して……
 何気なかったあの日は、もう遠くて……
(いやだ、やっぱり嫌だ、絶対に、絶対に嫌だっ!)
 そう、思ったから……だから、私は……ただ、うなずくことで示した。
 私の意志を。
「……そっか、分かったよ」
 それまでとは、違う声で彼女は言った。
「約束するよ。キミが許せない人達をすべて、ボクが殺そう」
 次の瞬間、指の中の違和感は消えた。
 ごめんね、美人が台無しだ。
 そう言って彼女は取り出したハンカチで私の顔を拭いて、手当をしてくれた。
 指は鈍く痛んだけど……さっきまでの痛みと比べたら、話にならない。
 少しして……
 何故か、すごく安心したような、不思議とさめた気持ちで。
 私は彼女と一緒に。
 公園へと、歩き始めた。

●殺すということ
 ああ、すごいな。
 それが僕の感想だった。
 人が人を殺すというのは……こういう風でなければならないのではないだろうか?
 自分は此処まで殺す相手について何らかのものを向けた事があっただろうか?
 無いと断言できる。
 僕はちょっとばかり慣れているだけで、全然分かっていなかったのだ。
 殺すという事について、ぜんぜん、全く、考えたことがなかったのだ。
 むしろ傍らのこの子の方が、知らないけれど分かっている。感じている。
 人を殺すという事を、人が死ぬという事を。

 僕は今まで、ちょっとばかり人を殺してきた。
 もちろん、この子に比べたら沢山だとは思う。
 けど、どれだけ上手に、どれだけ沢山、どれだけ解体したところで……どんな意味があるだろうか?
 牛や豚を殺すのとは違うのだ。
 いや、そう言ってしまうのは失礼か。
 あれは本当にすごいなと感じたことがある。
 純粋に特化させた技術に。
 けれど、あれとは違うのだ。
 人が人を殺すというのは、きっとこうでなければならないのだ。
 こうやって人は人を殺すべきなのだ。
 憎んで、許せなくて、怒って、どうしよもなくなって、こうするしかないのだと思い詰めて。
 勘違い、思い込み、盲目、自己陶酔、色々な意味があるだろう。
 マイナスだけではなくてプラスもあるかも知れない。
 考えてみればボクの相方、痛子はそうだ。
 愛情表現として、殺すがあるのだ。殺されるもあるのだそうだ。
 その辺りを考えると、僕は本当に何も分かっていないの典型か。
 何も考えていないの典型か。
 できたら殺したくないな、この子を。
 そんな想いがふと湧いて、僕は滑稽な笑みを浮かべた。
 そういえばあれから殺してないなぁと、あの日を振りかえる。
 今は亡き陣内さんと一緒にアークのリベリスタたちと戦ったあの日……あれは、よかった。
 だから、なのだ。
 あの日から殺してないのは、人並みの常識や道徳に目覚めたという訳ではない。
 ただ単に数を捌いても不満が溜まっていくだけだと理解しただけだ。

 今回はアークの彼らは彼女らは、来るだろうか?
 来てくれるんじゃないだろうかと思う。
 そして自分の行おうとする事を、阻止しようとするだろう。
 それとも、偶には黙認ぐらいするだろうか?
「いや、ないか」
 ああ、でも元フィクサードとかもいるんだっけ?
 その辺は難しいところだけど……来てくれたら……何故、とは聞いてみたい。
 例えば今回みたいな、そういうゴミのような存在を、血と汗を流して守って……彼らは、彼女らは、虚しいと思わないのだろうか?
 理からははみださず、けれどその中で好き放題しているような連中を守って……悲しくなってしまったりしないのだろうか?
 努力して、苦労して。

 時に知り合いを失って。

 世の中の人たちの多くが、それに気付かない。
 彼らが、彼女らが命懸けで、取り返しのつかない犠牲を払って守っているものを。
 ありきたりの、当然のもののように、甘受している。
 そんな世界を、嫌になってしまったりしないのだろうか?
 彼ら彼女らが守ろうとしている世界よりも、彼ら彼女らの方が……はるかに気高く、美しい。
「……なんて思うのは他人目線だからだろうね」
 自分はそうなろうと思わないから、凄いなと思いつつ真似しようとも思わないから。
 そんな風に思えるのだ。
 それしか道がなかったのだと言う者も、きっと多いのではないだろうか?
「だからこそ、聞いてみたのかな」
 どんな風に死んでも後悔しないように、好きなように生きていこうとする自分等には想像もできない人生だったに違いない。
 見世物じゃないって怒られるかな?
「まあ、ひとまず置いといて」
 公園が近づいてきた。
 自分の調子を確認する。悪くはない。
 だから、5人ばかりの両手足を壊して這い蹲らせるには充分だろう。
 止めを私が刺さなければ約束を果たした事にならないかな?
 そうすればこの子を殺さずに済むのかな?
 ……ああ、我ながら滑稽だ。キモい。けど、不思議と悪くない。
「それじゃ久しぶりに、狂気の夜と洒落込もうか?」
 誰に言うでもなく呟いて、僕は夜空の月を見上げた。

●すべてを賭して、選ぶ道
「フィクサードに一般人が襲われます」
 マルガレーテ・マクスウェル(nBNE000216)はそう言って、公園の地図をディスプレイに表示させた。
「この公園の広場に一般人が6人、そしてフィクサードが1人、もう一人は広場が確認できる位置に隠れてるようなんですが……」
 ちょっとそちらが捉えきれてません、すみませんと少女は謝罪する。
「単純に6人がフィクサードに襲われるんじゃなくて、最初は5人と1人が言い争っていたみたいです」
 5人は少年、1人は少女。
 歳は1,2歳は違うようだがほぼ同じ。全員が高校生のようだ。
「少女の方は弟さんを自殺で失ったらしくて、その原因……いじめを知って、それを行ったらしい少年たちを問い詰めてたみたいです」
 もし本当なら、そしてその事について彼らが何も感じていないなら……殺すくらいのつもりで。
「5人の少年たちは、それを認める発言をしました。もっとも、それらに対して少なくとも表面上は悪いとは思っていないという態度を取りました」
 心情は分からない。ただ、自殺する奴が悪いという発言は行った。
 反撃するでもなく、誰かに言うでもなく、逃げるように自殺するような奴が悪い。
 あんなんで自殺するなら、いずれどこかで別のことで自殺してただろうさ。
 だったらもっと見えるくらいに殴ったり蹴ったりしても平気だったな。
 大体あんただって気付きもしなかったんだろ?
 そんなことを言われて……少女は、切れた。
 まったく悪びれない嘲るような、馬鹿にしたような言い方も大きかっただろう。
 隠し持っていた包丁で切りつけようとして、少年たちは驚いて最初は距離を取ったものの、すぐに感情的になって少女に掴みかかった。
 そこで、最初から広場にいたフィサードの少女が動いた。
「たぶんプロアデプトのスキルだと思います。少年たち全員の手足を、気の糸で狙って壊して……」
 動けなくした状態で語りかけながら暫し痛めつけたあと、フィクサードは少女にどうするかと尋ねる。
「自分が殺してもよいし、キミが殺しても良い、と」
 そして……殺したくないなら、殺さなくても良い、と。
 どれを奨めるでもなく、純粋に、彼女が何と答えるかを伺うように。
「急げば、少年たちが殺される前に公園に到着できると思います」
 もっとも時間に余裕はない。
 少年たちは既に怪我をして動けない状態にはなってしまっているだろう。
「全員を殺されないように保護して下さい」
 ただ、戦いになってしまうと少年たちが死んでしまう可能性は高いとマルガレーテは口にした。
 フィクサードとリベリスタの戦いに巻き込まれれば、動けない一般人が生きているのは不可能に近い。
「フィクサードの方は少女の反応を見ている感じですので、その辺りに突破口があるかもしれません」
 もしかしたら、彼女は皆さんにも問いかけてくるかも知れません。
「フィクサードの方は最初からいる人物と、広場近くに隠れている人物の両方とも分かっています」
 マルガレーテはそう言って、フィクサード2人のデータを表示させた。
 主にナイトクリークとプロアデプト系の能力を使うジーニアス、邪・聖(よこしま・ひじり)
 ソードミラージュとホーリーメイガス系のスキルを使うウサギのビーストハーフ、皆殺・痛子(みなごろされ・いたこ)
 二人とも十代中盤~後半くらいの容貌の少女である。
「最初から姿を現わしているのは、邪氏の方です」
 広場の周りは植え込みや林等があるので、もう一方はその辺りに隠れているのかも知れませんとマルガレーテは口にした。
 リベリスタが来るという可能性を考慮しての事かも知れない。
 けれど、いきなり戦いになるという可能性は低い。

「二人とも充分な実力を持つフィクサードですが、全力で正面からぶつかれば……いえ、多少小細工を弄されたとしても此方の負ける可能性はかなり低いと思われます」
 戦えば相手にもそれが簡単に分かるだろうし、戦う前でも身のこなし等でばれるかも知れない。
「皆さんの中にある程度名の知れ渡っている方とかいれば、特別に隠蔽していたとかでない限り実力等も推測されてしまうかも知れません」
 そうなれば相手の考えることは、如何にして被害を出さずに撤退するかということだけになる。
 簡単に考えるなら、一般人を人質にするのが一番手っ取り早い。
「相手もそう考えて提案してくると思います。自分たちを追撃しなければ人質は殺さない、とか」
 その場で戦いになれば一般人全員を守ることはほぼ不可能といえる。
 守るために人員を割けば、今度はフィクサードたちを倒すことが困難になる。
 とはいえフィクサードの側も戦えば無傷とはいかない。可能なら穏便に済ませたいというところだろう。
「契約、約束等に関してはこの2人、特に邪氏の方は信頼はともかく信用はできる人物のようです」
 交わした契約は相手が破らない限りは絶対に破らないという性質のようだ。
 だからと言って約束事そのものを心の底から信用するという訳でもない。
 自分からは破らない、ただし相手の裏切りには備える。そういうタイプの人物らしい。
「フィクサードも仕事となると信用問題、という事なのかも知れません」
 ですので、約束さえできれば一般人に被害を出さない事はできると思います。
 フォーチュナの少女はそう言ってから、リベリスタたちを見回した。
「いろいろ思う処はあるかもしれません」
 けど、フィクサードが絡んでいる以上、止めなければいけません。
 何とかして一般人を保護して下さい。
 マルガレーテはそう言って、リベリスタたちに頭を下げた。



■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:メロス  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2012年03月08日(木)22:53
長い長いオープニングを読んで下さったお客様方に、先ず感謝を。
ありがとうございます。
メロスと申します。
この依頼はカオスゲージの変動する可能性が高めのシナリオとなっております。
(もちろん全く変化しない可能性もあります)

今回は2人のフィクサードから一般人たちを守るという依頼になります。
交渉的な部分もありますが、心情重視のシナリオとなっております。
リベリスタとしての皆さまの想いを語ったり、或いは内で燃やしたり。
そんなシナリオにできればと考えております。


■公園
時間は夜。
一般人とフィクサードたちは広場にいます。
結界が使用されているらしく、他の一般人等の姿はありません。
広場はある程度の広さがあり、それを囲むように林があります。
広場への道は複数あり、散歩道や他の小さな広場等に繋がっているようです。


■一般人
・少年5名。
両手足が動かせないくらいに傷付けられ全員が倒れています。
負傷と恐怖で正気を失いかけており会話は困難です。

・少女1名。
PCたちの到着時、刃物を持ったまま逡巡している状態です。
話をするならば感情的ではあるもの色々と話してくれるでしょう。
(ですのでOPの心情部分等の情報等もPC的にある程度まで知ることができるものとしてプレイングを考えて下さって構いません)


■フィクサード2名
・邪 聖
十代後半くらいの少女。
ジーニアス。主にナイトクリークとプロアデプトのスキルを使用します。
広場で少女の傍らにいます。
リベリスタたちが出現した場合、可能なら少年たちの事や少女の事を説明し様子を伺おうとします。
PC達が即座に戦闘を行おうとしないなら、これ以上は手を出さないので引かせてくれないかと提案してきます。
(人質として一人くらいは連れて行こうとしますが、安全が確保できた時点で119番通報するなりして病院に送ると約束し、実際に実行します)
また、彼女は名声が100以上のPC達の名前や職業等を知っている可能性があります。
名声が高くなれば高くなるほど本人が隠匿していない様々な情報を知っている可能性があります。
(話題として出すかは別になります。知っていて知らないふりをする可能性もありますし、知らなくてもカマをかけてくる可能性もあります)
PCたちと何らかの約束をするなら、PC側が破らない限りは自分からは破りません。
(無茶だったり一方的に不利な約束はそもそも結ぼうとしません)
特に失礼な言動を行わない限り、言葉遣いはともかく敬意を抱いてリベリスタたちに接します。

・皆殺 痛子
十代後半くらいの少女。
ウサギのビーストハーフ。主にソードミラージュとホーリーメイガスのスキルを使用します。
近くに隠れているらしいのですが姿は見えません。
戦闘が発生した場合他、何か特殊な事態が発生した場合に姿を現すかも知れませんが、基本隠れたままの状態を維持しています。



一般人6人全員が生き残っていれば依頼成功となります。
どれだけ傷ついていても、意識を失っていようとも構いません。
ただし一人でも死んでしまえば依頼は失敗となります。
逆に犠牲を出してでもフィクサードを倒すべきと考える場合、そのような行動も可能です。
(依頼そのものは一般人に死者が出た時点で失敗となります)
どのような結末を目指すかは参加される皆様次第となります。

それでは、興味を持って頂けましたら。
どうぞ宜しくお願いします。

参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
マグメイガス
雪白 音羽(BNE000194)
ホーリーメイガス
アンナ・クロストン(BNE001816)
マグメイガス
百舌鳥 付喪(BNE002443)
スターサジタリー
劉・星龍(BNE002481)
クロスイージス
村上 真琴(BNE002654)
クロスイージス
神谷 要(BNE002861)
デュランダル
館霧 罪姫(BNE003007)
ホーリーメイガス
氷河・凛子(BNE003330)

●過去と未来
(……彼女の気持ちは、本当に良く判ります)
 私も届かなかったから。
 私も掴めなかったから。
(だから、今度こそは救える者全てを護りたいと思いアークに身を寄せました)
 それが自己満足でしかないと今は、判っている。
『不屈』神谷 要(BNE002861)は呟いた。
「判った上で、それでも何かをし続けなければ自分を許せないのです」
 誰かに語るのではない。ただ、想いがふと……唇から零れ落ちでもしたかのように。
「以前お会いしたお二方との意外な再会になりそうですね」
 同じように急ぎながら、『鋼鉄の戦巫女』村上 真琴(BNE002654)は今回の任務の事、かつて相対したフィクサードの事に想いを馳せた。
 胸中には確かに複雑なものがある。
 それでも、彼女とて唯フィクサード憎しの一念のみで生きているわけではない。
 起こりうる被害さえ未然に防げるのなら、別段問題ない。
「少女を外道に誘うような試みは防がさせていただきます」
 彼女はきっぱりと、そう言い切った。
(憎しみに囚われて生きるのはとても辛いことです)
「……憎しみの連鎖を助長するのは見過ごせません」
「全然駄目。全くなってないのよ」
『積木崩し』館霧 罪姫(BNE003007)の想いは、複雑でもあるが単純……純化されてもいる。
「これじゃ殺し合っても面白くないの」
 様々なものを篭めて……彼女は呟く。
 たくさんの拘りがあるのだ。彼女もまた。
「邪聖さんと、皆殺痛子さんですか」
 一方で『デモンスリンガー』劉・星龍(BNE002481)は一行の中で客観的に、達観した見方を自信に課すかのように冷静に状況を確認していた。
(ふむ、以前報告書で見かけた名前ではありますが、単なる快楽殺人者とも趣が違いそうな気がしますね)
 とは言うものの彼女らによって1人の少女が復讐を成し遂げると共に道を踏み外し、5人の一般人の命も失われようとしているのもまた事実である。
「5人の一般人にはまったく罪が無いとは言いませんが、だからと言ってこういう形 での決着をつけるべきではないでしょう」
 その為に、自分自身の為すべき事は?
 彼はそれを考えていく。
 その心の内を見透かす事は出来ない。
 サングラスの内の彼の瞳のように。
(誰が被害者で、誰が加害者なのか)
 被害者が加害者になる時、終らない連鎖になる。
「ならば」
 静かに、短く、息を吐き。
『境界の戦女医』氷河・凛子(BNE003330)は、言葉を紡いだ。

 その傷の切開を、始めましょう。

●再会
「久しぶりね。ちゃんと生きてるみたいで良かった」
「憎まれっ子、世に憚るって言うしね。それにしても、こんなに懐かしい顔ぶれとは思わなかったよ」
「前は忙しかったし、今日はちょっと話に来たわ」
『ソリッドガール』アンナ・クロストン(BNE001816)と邪・聖の挨拶は、どこか不思議な諧謔味を帯びていた。
 突然の来訪者に驚く少女に、フィクサードの少女は簡単に、まあ同業者みたいなものだよと紹介してみせる。
 その辺り、彼女はリベリスタたちが如何するかに強い興味があったのだろう。
 止めに来たとか警察的な存在とか言えば、少女は発作的に行動を起こした可能性もあるのだ。
 もっとも、リベリスタたちの行動指針も大きかったといえる。
 警戒すれども戦闘態勢は取らず、武装もしない。
 ならば……そう思わせるものがあった、という事だろう。
「どうだい、正義の味方をやる気にはなったかい?」
 続く『イエローナイト』百舌鳥 付喪(BNE002443)の言葉に聖は肩をすくめるような仕草をしてから苦笑いを浮かべてみせた。
「アークは何時でも貴女の力を待っていますってね」
「百舌鳥さんはどうも、お久しぶり。そして色々な意味でお変わりなく……分かってて言うからなぁ」
「そうかい? まあ、言う分にはタダだからねぇ」
 そんな会話を繰り広げる聖に、雪白 音羽(BNE000194)も話しかけた。
「久しぶりだな、あれ以来話は聞いてないから大人しくしてたみたいじゃないか」
 そう言ってから彼は、今回の件について感謝すると口にした。
「変かね? この男どもは確かに最低だ、このままだと碌な大人にならなかっただろう。だけどお前が今回あいつらにとっては理不尽すぎる暴力で叩きのめしたから身を持って暴力の酷さを思い知ったわけだ」
 因果応報、それはこれから少年たちが変わるきっかけになるかもしれない。
「まぁ変るとは断言できないがね、お前だってこの間俺達とやり合ってから少し変っただろう?」
「……どうかな? 正直、自覚はないケドね」
 そう言って苦笑した聖に向かって音羽は続けた。
「俺達はこいつらを助けに来た、お前がこれ以上手を出さないなら俺達もお前に今回は手を出さない」
「いけすかない連中だけど。それが仕事だしね」
 音羽に続くようにして付喪も口にする。
 その後、音羽は更につけ加えた。
「ただやりあいたいなら後でなら構わないぜ? 殺し合い有りでも無しでもそっちの希望通りでやりあうがどうかね?」
「……ううむ、何ともこちらの立場や気持ちを考えた提案だね。ギブ・アンド・テイク、まさに交渉というヤツだね」
 魅力的ではあるけど……けど、あちらの進展次第かな?
 フィクサードの少女はそう言って、発端となった少女を指さす。
 そこでは少女と、幾人かのリベリスタたちが……真剣な表情で向かい合っていた。

●オモイとココロ
「貴女が弟の仇としてその少年たちを殺したとしましょう」
 もし、それが正当の権利と申しますなら、きっとその少年たちの家族は貴女や貴女の家族を殺すことも正当な権利として主張することでしょう。
「そして、貴女は自己の復讐で憎しみの連鎖を繋げ続け、無関係な人々も巻き込むことになります」
 貴女はそれが正しいことだと思いますか?
「理屈なら、そうでしょうよっ!!!」
「私も家族を殺されました」
 ぶつけられた激しい感情に、真琴はどこか淡々と、忽然とした態度で口にした。
 少女は驚いたような表情で言葉を詰まらせた。
 口調や態度だけではない。そう口にしながらも、態度を取りながらも、彼女の内からそれだけはない何かが滲みだしているのを感じたのかも知れない。
「それ以来、決して憎しみの念から逃れられない状態です」
 そう続けた彼女の言葉の節々にも……何かが、確かに籠っている。
「ですが、自分の憎悪を正義とか正当とか思ったことは有りません」
 いつか断ち切らねばならにないものですから。
 それでも何かに振り回されずに、押さえこみ、静かに語る真琴とは対象的に。
「貴方も──貴方も自分を許せないのですね……」
 要の言葉は、湿を帯びていた。
「ですが、貴方のその行為はただの自己満足でしかありません」
 なんとしても凶行を止めたい……どこか、何かを重ねてしまった少女への想いが、滲んでしまう。
「ここでその人達を殺めたところで、誰も喜びはしないのですから」
 貴方の弟さんはその様な事を望む方だったのですか?
「その後に消えてしまう道を選ぶ事を喜ぶような方だったのですか……?」
 その言葉に、少女は顔を歪める。
「貴方が弟さんの事を本当に思うのであれば、弟さんの事を一番良く覚えている貴方自身を大切にする道をどうか選んで下さい……」
 少女の顔に……たくさんの何かが、浮かび上がる。
 怒り、憎しみ、悲しみ、寂しさ、不甲斐なさ。
 彼女に対して、自分は何ができるか……分からない、それでも。
 要は懸命に、少女に向かって……想いを紡いだ。

●警戒と、呼び出しと
 感情探査で隠れている痛子の位置を探れないか?
 そう思っていた星龍は、それらしい存在を知覚していた。
 もっとも、不意打ちされないようにするための位置特定のための探査である。
 相手側から攻撃する様子がない限り、こちらから攻撃するつもりは彼にはない。
 完全には位置の特定はできないものの、ある程度の方角等を認識して。
 星龍はそのまま周囲をある程度警戒しつつ、聖や少女の動き等に注意していた。
 交渉中に万が一少年たちに危害を加えようとした場合、狙撃で刃物等を撃ち落とそうという心算である。
 相手が一般人であるならば造作もない事だ。
 それに併せて一般人の少年たちが攻撃を受けない位置への移動も考えている。
 もっとも……今のところは、それらしい雰囲気は全くなかった。
 痛子の方も、何かこう……うずうずしてるような、出てきたそうな感覚が漂ってくるものの、それはあからさまな敵意ではない。
 殺意が籠っているようで、それでいて親しみを感じているような……ある意味、判断し難い感覚。
 念のために警戒は起こらないように。
 星龍が考えていた、そんな時だった。
「邪さん、其処に座りなさい」
 罪姫が言った。
「どうして?」
「もう一度言うのよ、座りなさい」
 あと皆殺さん呼んで。お話があるの。
 彼女は言った。
 また肩をすくめる仕草をしてから、彼女はこの場の面子を見て……ま、いいかとスマホを取り出した。
「あ、もしもし痛子? 罪姫ちゃんが来なさいって。説教タイムみたいだよ」

●ヒトゴロシ
 殺人鬼が人を殺すのは、殺し続けるのは理屈じゃない。
「愛しくて殺す。苦しくて哀しくて寂しくて楽しくて、殺す」
 語っている罪姫を、答える聖を見ながら。
 痛子は首を傾げた。
 考えてみると、それも不思議だった。
 自分たちは、人殺しは……相手の何かに、殺しに、何かを期待する事なんてないはずなのに。
(つまり罪姫ちゃんは殺すという事について、なにかを信じて、望んでいるんでしょうか?)
 聖は自分で病気だと言ってた。
 自分は、生まれた時からこうだった気がする。
 犬や豚と、カラスと、アゲハ蝶と、人間と、おたまじゃくと……それらの命の違いはなんでしょう?
 聖ちゃんはそうではなくて、罪姫ちゃんもそうではない。そう思う。
「それじゃ、駄目よ」
(けど、罪姫ちゃんはそう思わないようです)
 彼女は何かを信じている。彼女は何かを想っている。
 感情と言いながら哲学を語る。
「ヒトゴロシは情動で殺す」
(それはつまり、わざと見抜かれるようにとの事なのでしょうか?)
「私達は最初からそういう物で、最期までそういう物なのよ」
(罪姫ちゃんは敬虔な信徒か何かのようです)
 殺すという事がどうあるべきなのかと、信じている。或いは信じようとしている?
「もう一度自分と向き合って、次はきちんと殺し愛いましょ」

 ああ、そうなのでしょうか?
 痛子は唐突に思い当たった。
 もちろん真実は分からない。けれど……
(罪姫ちゃんは、もしかしたら……)
 つまりは……そういうことなのだ。

●生きていくという事
「空しさを感じたとして……だから、どうしたって言うんだい?」
 私の選んだ道の結果として、それがあるのなら、受け入れて前に進むだけさ。
 当り前のように語る付喪に聖が苦笑いをこぼす。
「むしろ、そういう話はそこの包丁持ってる娘に、もっと言ってやんな」
「だから、そう悟る……っていう云い方も何かな、思うのに人間は人生どれくらい費やさないといけないか? ……って話で」
 年季のこもった言葉、おくってあげて下さいよ。
 そんな言葉を交わして付喪が少女の方に向かう。

 それから……アンナは聖と暫し、言葉を交わした。
「ジャックの放送。あったじゃない。8時の朝のニュースをジャックが襲った、あの事件。あれでね」
 あそこで死んだキャスターの人について考えたんだ。
 朝8時のキャスターとか、物凄い競争率の高い場所じゃない。
 凄い努力した人だと思うのよ。スタジオに居た人達だって、そうよね。
 でも、死んだ。あの場に居たから。
「……腹が立ってね。何様だって」
 あの人達の努力全部を断ち切れる程、神秘っていうのは偉いのかって。
「……皆、頑張ってるのよ」
 何かが……こみあげてきた。
「切った張ったの派手な立ち回りが無くたって。エリューションなんてなくたって」
 みんな必死に生きてるのよ。
 何かが……にじみそうになった。
「それに余計な茶々をいれる存在が許せない。私が戦う理由は、それだけ」
「……そっか……なるほど」
 アンナの言葉にそれだけ言って、頷いて。
 聖は……言葉をのみこんだ。
 それが、自分とは全く異なる生き方を続けようとする少女への、彼女なりの敬意表明だった。
 だけど、とも思う。
 だからこそ、いつかきっと……彼女と、自分は。

●復讐の終わる時
「復讐の終る時をご存じですか?」
 復讐を果たした時?
 復讐相手が死んだ時?
 いいえ。

「貴女が貴女を許せた時です」
 許せる日がこないなら何も終りません。

 凛子の言葉は透徹していた。
 それは彼女のこれまでの人生から紡ぎ出された言葉だった。
 理想ではなく現実から滲み出た言葉だった。
 何も感じなければ反論できただろう。
 少女は……何も言えなかった。
 ただ、彼女を見て、言葉を聞いて……真っ直ぐ過ぎて受け入れたくない言葉が、染み込んでしまう感覚に、ふるえて。
「その人たちを殺したいなら、まずは邪魔する私を殺しなさい」
 流れるような動作で凛子は少女の手を取り、自分の胸にその刃を……そっと、つけた。
 少女の震えを感じて、それでも……だからこそ、問いかける。
「この感触は如何ですか?」
 他人の痛みは解らない。だから、貴女は自分の痛みで想像する。
 爪の痛みより痛い痛みを想像する。その痛みを他者に与える貴女を想像しなさい。
 それを許せますか?
「殺す痛みに永遠に苦しむ覚悟はありますか?」
(勢いで、こんな所にまで来ちまって……)
 進む事も、引く事もできなくなってしまった少女に向かって、付喪が言った。
「あんたの一番悪い所は、自分の復讐に他人を巻き込んだことさ」
 待ち構えられてるって分かったんだから、引き返して別の方法を考えれば良かったんだよ。
「今の様子を見るに、少しは頭に昇ってた血も下がって来たんだろう? もう一度考えてみな、自分のしたいことをね」
「……でも、でもっ!? だけどっ!!」
「一つだけ言っとくけど、どんな答えを出そうと私は殺しをさせる気はないよ」
『自殺した上に、人殺しの姉を持った弟にする訳にもいかないしね』
 その言葉は、決定打だった。
「こいつらは君の弟を追い詰めた、許せない気持ちは判る」
 何かに殴りつけられでもしたかのような表情をした少女に、音羽は……言葉を向けた。
「だけど弟は君の事は怒っていないだろう、巻き込みたくなかった」
(きっと優しさからさ……やるせないがね……)
 そんな人間が割りを食う世の中に、納得できるかといえば……素直には頷けない、けれど。
「君がここで怒りに任せてこいつらを殺したら弟はきっとその事を悲しむんじゃないかね? 君がこれから先、罪を……罪悪感を抱き続ける事の方が、弟はつらいんじゃないかね」
 気付けなかったんじゃなく、弟は気付かせたくなかった。
 巻き込みたくなかったんじゃないかね?
「それはきっと弟の優しさなんじゃないかね」
 返事はなかった。けれど……表情を見た者は、即座に理解できたろう。
 張り詰めていたものが、重く圧し掛かっていたものが……断ち切られたかのように、失われたかのように。
「う……ぇ…………くっ……」
 大粒の涙が浮かび、こみあげてきた何かに耐え切れなくなって。
 刃物は支えを失って地面に落ち、その手で……少女は顔を隠すように覆うと、しぼりだすように声を上げた。
 貴女は優しいから今は泣いても良い。
 その苦しみを終らせる事は、できない。
「それでも、少しずつ幸せを重ねなさい」
 喪失は、取り戻せない。
「それでも、人に良い事をして微笑み合い……」
 最後に微笑む人生を歩みなさい。
 小さくなった、ふるえる肩を……凛子はそっと抱きしめた。

●闇を照らす明かり
「どうして、若いのは生き急ぐのかねえ」
 誰に言うでもなく、付喪が呟く。
 既に痛みで気絶していた5人の治療を、そして一般人達の記憶操作を凛子が行う。
 それでは、すべては終わった。
 あとは、もうひとつ。戦うか如何か、それだけだ。
「貴女たちが戦いを望んでも殺し合いは絶対にしないわよ」
 仲間がその気でも私自身は乗らない、不殺の手段はある。アンナはそう、言い切った。
「……偽善と罵るなら否定させてもらうわ」
 ノーフェイス。エリューション。結局殺さなきゃいけなくなる時はいくらでもある。
「承知でやってるからもっと程度が低い。悪あがきとか、子供の駄々とか、そういう物よ」
 何を言われても、止める気はないけどね。
 そう言い切った彼女に向かって聖は穏やかに、頷いた。
「まあ、今回は引くよ。一応、僕ら戦闘狂って訳じゃないし」
 そうだったら、前のあの時に死ぬまで戦ってたって思うでしょ?
 そんな彼女たちに、罪姫は言う。
「思い出すまでは放っておいてあげる」
 いつかたどり着く結末は、少なくともここではないという事か。
「本当に不思議な縁だったね」
 またあるのか、二度と無いのか。
 殺人鬼として出会い、或いは人間として出会い、再会し……たどり着く先は、何処なのか?
 拍子抜けするくらいに平和に、不気味に、穏やかに、両者は別れて。
 こうして……ひとつの事件が幕を閉じた。
 世界に影響を与えぬようにと、隠蔽されて。

 それでも……命が奪われなかった事が。
 ひとつの心が、傷付きながらも未来を見据えたことが。
 幾人かのリベリスタ達の心に、静かに、確かに……小さな明かりを、燈していた。


■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
お疲れさまでした。
すべての想いは、リプレイの中に全力で籠めさせて頂きました。
御参加、ありがとうございました。

そしてまた、機会がございましたら……どうぞ宜しく御願致します。