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<黄泉ヶ辻>ひどく冷たい籠の中


 空は漆黒に染まり、その日はとても寒い日だった。
 辺りは静まり、聞こえるのは木々の葉が擦れ合う音だけ。
「……ふふ、美しい」
 男が一人、一つの鳥籠の中を覗き込んでいた。
 中には未だ、夜でありながら藻掻くように動き続ける白き鳩の姿。
 それを見て男はうっとり。
 可愛い、愛おしい。そんな事を思う。
「嗚呼、ああぁあ、あああ、良いなあ……素敵だ」
 そのうち、男は鳥籠を開けては腕を入れる。
 鳩は抵抗するが、勝てる訳も無く。その腕に身体を掴まれて外へと出された。
 腕の中で鳩は暴れる。
 だが、男はナイフをゆっくり、ゆっくりとその首へと食い込ませていった。
 鳴くか、叫ぶか?
 赤い血がナイフを流れ、ぼとりと落ちた。
 未だ手の中では頭の無い鳩が動き続ける。その身を自身の血液に染めながら。

 男は更にナイフを動かす。
 今度は胸を切り開き、綺麗に解体していく。
 バラバラに。バラバラに。バラバラに。
 もはや残骸と呼ぶべき肉片達を、そのまま地面に並べていく。
 頭を頂上に、バラバラの肉片を、本来あったであろう位置に並べていく。
 ほら、出来た。二次元的な鳩の姿。
 取り出された肉塊達は、血の海の中で動かなくなる。
 男は満足したのか、ナイフで一つの肉塊を突き刺し、口へと運んだ。
 生々しい音をたてながら、全てを口の中へ。
 嗚呼嗚呼、まだ、食べ足りない。
 嗚呼嗚呼嗚呼、もっと食べたい。
 場所は静かな屋上。落下防止の柵等は見当たらない。
 ふと下を見れば、フライエンジェの少年が通りかかっていた。
 男は立ち上がる。
 大量の鳥籠に囲まれながら、立ち上がる。
 そして、全ての籠を開いた。
 籠の中に、生きる命はひとつとして無い。
 

「皆さんこんにちは。今回はフィクサードがお相手です」
 『未来日記』牧野 杏里(nBNE000211)は、いつも通りにブリーフィングルームに立っていた。
 配られた資料には黄泉ヶ辻という文字が目立つ。
 閉鎖的で、何を考えているのか、形が掴めない黄泉ヶ辻。
 それに関連するフィクサードを一人、万華鏡が捕えたのだった。
「フィクサードは『鳥喰い』と呼ばれる青年です。
 リベリスタであろうと、フィクサードであろうと、エリューションだろうと、無差別に殺して食べるのが趣味です」
 その行動になんの意味があるのは、正直不明だ。
 しかし、彼なりの意図はあるのだろう。
 それを暴けとは言わない。ただ、凶悪なフィクサードを討伐しろ。
 それが今回の依頼の内容だ。

「彼はヴァンパイアのインヤンマスター。ただし、大量の鳥籠に囲まれています。
 鳥籠の中にはEフォース赤い鳥が住んでいます。それも敵になるのでお気をつけください」
 赤い鳥は鳥喰いに忠実だ。だが、ただのフィクサードがエリューションを操る事は不可能だ。
 なんらかのアーティファクトで、赤い鳥を動かしているに違い無い。
「鳥喰い自身がそのアーティファクトを身につけている、もしくは鳥籠自体がアーティファクト。
 この二択だと思われます。赤い鳥は数居ますので、お気をつけください。
 鳥喰いからの支配から放たれても、どう行動するかは予想できません。
 厄介な依頼ですが、宜しくお願いします」
 杏里は深々と頭を下げた。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:夕影  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 2人 ■シナリオ終了日時
 2012年03月25日(日)00:38
 夕影です
 以下詳細

●成功条件:フィクサードの討伐、アーティファクトの破壊

●フィクサード:鳥喰い
・黄泉ヶ辻派フィクサード
 白い髪に、青い目をした青年
 異常なまでに鳥が好きな様です
 ヴァンパイア×インヤンマスター
 ランク2までのスキルを使用します
 Rストマック/落下制御

●アーティファクト:誘惑の鳥籠
・鳥籠型アーティファクトらしい
 鳥喰いが持ち、エリューションを操っている

●Eフォース:赤い鳥
・鳥喰いに殺された数々の鳥
 常時飛行し、回避高め
 ざっと数は10
 式符・鴉の様な攻撃のみ
 HPが0になった瞬間、無条件で弾けてノックB効果が起こる
 
●場所:屋上
・出入口は1つです
 広さは問題ありませんが、落ちます
 落下したら無条件で重症となり、戦闘復帰はできません
 落下制御があれば重症になりませんが、戦闘復帰まで時間がかかります
 下は人通りはありません

●時間帯は夜中です
・リベリスタが到着した時点で戦闘開始です
 事前に自付はできますが、持続ターンを5ターンマイナスします
 OPでの少年は、リベリスタが失敗した後の犠牲者なので気にしなくて大丈夫です

それではご参加、お待ちしております!
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
スターサジタリー
不動峰 杏樹(BNE000062)
ソードミラージュ
天風・亘(BNE001105)
プロアデプト
讀鳴・凛麗(BNE002155)
ソードミラージュ
エレオノーラ・カムィシンスキー(BNE002203)
ナイトクリーク
フィネ・ファインベル(BNE003302)
インヤンマスター
風宮 紫月(BNE003411)
ダークナイト
ユーキ・R・ブランド(BNE003416)
ソードミラージュ
百目鬼 クロ(BNE003624)
■サポート参加者 2人■
インヤンマスター
高木・京一(BNE003179)
ホーリーメイガス
護堂 陽斗(BNE003398)


 リベリスタ達は、屋上へと続く階段を上っていた。
「鳥好きなのか、飛べることへの憧れか。どっちだろうな」
「それには自分も、興味があります」
 『アリアドネの銀弾』不動峰 杏樹(BNE000062)がアストライアを手に。
 そして『幸せの青い鳥』天風・亘(BNE001105)が己のスピードを最大限に高めつつ、目指すは上だ。
「食べてしまいたいほど、好きってやつかしら」
 二人の後ろに続くのは『蒙昧主義のケファ』エレオノーラ・カムィシンスキー(BNE002203)だ。彼は小さく笑いながら、思う。
(……黄泉ヶ辻って、まとまりの無い集団なのね)
 主流七派の内でも気持ちの悪い集団だ。
 というのも、彼らについては分からないことだらけの、おかしなことだらけ。今回はその一人が相手だ。
「鳥食いは、一体何が目的なのでしょうか……」
「さあ。今夜の夕食は、鳥でも使いましょうかね」
 更に続いて歩く『朔ノ月』風宮 紫月(BNE003411)と、ユーキ・R・ブランド(BNE003416)。
 狂気的な行動に理由が無ければ、それこそおぞましい。鳥食いにも、行動をする理由があるのかは知れないが。
「私達は、私達のやるべきことをするまでです」
 紫月は淡々とそう口にした。それは揺るがない、リベリスタの精神。
「でも……どうして食べてしまうのでしょうか」
 『A-coupler』讀鳴・凛麗(BNE002155)は疑問を吐いた。
(食べる対象へ憧れていたり――何か憎しみを抱いていたりするのでしょうか)
 きっと食べる行動にも意味はあるはず。そう凛麗は思う。
「食べちゃったら、もう会えないのに」
 そんな凛麗の言葉に続いて、『何者でもない』フィネ・ファインベル(BNE003302)も似た様なことを思った。
 食べるとは、どういうことか。
 食べれば、何が起きるということか。
 食べるの根本的な理由とは、なんだっただろうか。
 生きるため?
 いやいや、それもあるけれど、黄泉ヶ辻に限ってそんな当たり前過ぎることでは無い。
 そうしている間に、屋上への出入り口前にやってきた。
 開ければ戦闘は開始される。
「それでは、平和のために」
 『百目』百目鬼 クロ(BNE003624)が、扉のノブを回した。


 飛ぶ鳥はとても美しい。
 ボクもそんな風になりたかった。
 柔らかな羽を背中に携え、大空を舞う。近づく太陽。見下ろす地面。
 だが、私はどうだ。
 血を啜る牙を持ったヴァンパイア。嗚呼、なんて無情、憎しみ、怒り。
 世の中は思い通りにいかないものだが、強い憧れは世を憎んだ。

 まあ、そんなのどうでも良くなってしまってね。

 愛憎の中で、男は生きよう。
 空への自由さえ奪う、籠の中。籠は必ず、地面と共存する。

 空? 馬鹿馬鹿しい。その羽、全て手折ってみようか。

●見えない鎖で囚われて
 建物の屋上は、血臭と一緒に冷たい風だけが通り過ぎていく。
 一つしか無い扉が勢いよく開き、亘がいち早く姿を現した。
 敷き詰められた、鳥籠の群れ。その形は一つ一つ違い、シンプルなものから精密に装飾が着いたものなど、バラバラ。
 その中心に、鳥食いは立っていた。
「あぁぁあぁ、これはこれは……」
 亘の眼の先に見えるその表情は、何か良い玩具でも見つけた子供の表情をしていた。
 亘は一瞬、その身体をびくりと震わせた。だが、怯む訳では無い。
 目の前のそれよりも、恐れるべきものは今までに沢山眼にしてきたはずだ、今更何が来ようと。
 そして、走り出す。先手は亘だ。
 アークの中でも高いレベルの速度を持った亘はBad Eaterを手に、前へ。
「貴方はなぜ鳥達が愛しいですか?」
 その疑問を、フィクサードにぶつけた。

 ――その瞬間だった。

 鳥喰いが手を触れずとも、全ての籠の扉が開いた。
 まるで、中に何かがいるような。鳥喰いの想いに応えた様な。
 しかし開く音は、どことなく悲しく聞こえるのは何故だろうか。
「さあ、我が僕達。新しい仲間でも出迎えようか」
 鳥喰いの頭上に、赤く光り輝く鳥達が出現する。
 鳥喰いの速度は、亘に勝てるはずは無い。
 亘の速度から繰り出される攻撃は、鳥喰いへ向かったが、赤い鳥によって阻まれる。
「鳥……ふふ、好きさ。君もなかなかだ、解体したら楽しそうだ」
 遅れた鳥喰いからの返事。それに亘は確かに耳にした。
「ちょっと。早いわね……もう」
 亘とは、エレオノーラが一緒に行動する。すっ飛んでいった亘に追いつくように、エレオノーラは走りながら自身を強化する。
 それとほぼ同時にフィネが翼を広げる。
「嗚呼、アレもなかなか」
 そのフィネの翼を鳥喰いは見逃さない。
「ひえ!?」
 鳥喰いはフィネの翼を舐めるように見た。思わずフィネは身体を揺らす。
 どうやら、良物件は多いようだ。
「ああぁぁはあああ、いいねえ、羽は良い。とても好いよ。身体に纏いたいほどだ」
 鳥喰いは口の端から唾液を垂らす。それが地面に着いた瞬間だった。
 呪いだ。行動を封じる呪いが、目の前の亘に放たれた。
「青い鳥はいい。幸福を運んでくれる」
「なにするんですか!?」
 呪印で縛った亘の背中に、鳥喰いは手を伸ばす。
 触れる、青い翼。それは赤い鳥たちの光とは対照的で、よく栄える。
「嗚呼、欲しいな……」
 見つめられる亘。第六感が何かを叫んでいる。
 というか鳥喰いの目がイッてるし、元々オカシイ。
 手当たりしだいに掴まれ、抜かれた青い羽たち。それを鳥喰いは口へと運んでいった。
 そう、亘は餌だ。
 その瞬間に、五体赤い鳥達が亘の身体を突き抜けていった。

 『剣を捨てし者』護堂 陽斗(BNE003398)は『子煩悩パパ』高木・京一(BNE003179)よりも先に行動した。
 犠牲は出させない。これはその手伝い。陽斗の神秘的力が、仲間の背へと翼を送った。
「ちょっと、鳥が邪魔ね!!」
 その間にクロが赤い鳥へと攻撃を仕掛けるものの、それも同じく攻撃態勢だ。
 凛麗への攻撃を止めるためにクロはブロックをするが、一体通り抜けていった。
 ブロック役であるクロが、他の赤い鳥にブロックされたのだ。
「年寄りは、労って欲しいわ!」
 元々、リベリスタの数よりも赤い鳥の方が多い。
 その中でのブロックは、敵の数を減らさない限りは効果が利きにくかった。
 凛麗はランタンは忘れてきてしまったが、かろうじて赤い鳥の光が屋上を照らしている。
「ごめんなさい、そっちいったわ!!」
 前方のクロが叫んでいるのを聞いた。
「は、はい!」
 向かってくる赤い鳥に凛麗は息を飲んで、身を強張らせた。だが、目だけは赤い鳥を見て探る。
 まだ戦闘は始まったばかり。赤い鳥の体力は減ってはいない。
 しかし、大体の体力と力を凛麗は読み取った。
「攻撃力はあまりありませんが、回避力が高いです! ノックバックは近距離で単体です、お気をつけて」
 そう言い、凛麗は赤い鳥に射抜かれていく。
 そこに京一の放った神々しい光が、タイミングよく彼女を守った。
 その光の余韻が残る中。後方で杏樹は小さく笑っていた。
「少々厄介なフィクサードとアーティファクトだ」
 光輝く鳥籠たちを足元に、杏樹はアストライアの糸を引いた。
 凛麗の結果を聞いたものの、彼女には赤い鳥を打ち落とす自信がある。

 ――好き勝手はさせない。私は自由に空を飛ぶ鳥が好きなんだ。

 当て勘は鋭く冴える。放たれた魔弾は、赤い鳥たちの身体を捕らえて射抜いていった。確かな手ごたえが、感じとれる。

「念の為に聞きますが、今からでも凶行を反省して投降する気はありませんか?」
 ユーキは鳥喰いの方を見た。だが、返事は返ってこない。
 興味ないものはとことん興味無いか。それとも目の前の良物件たちに、気がいっているか。
 どちらにしろ、狂気的なフィクサードに投降という概念は無いだろう。
 それをユーキは分かっていた。だが、可能性はあったかもしれない。
 結果は不明。ならば、もう容赦はしない。
「……今夜の夕食の鳥料理は撤回しましょう。此処は羽が散っていけませんね」
「ふふ、心中お察ししますよ」
 背中合わせでユーキと紫月は笑う。
 紫月は杏樹の打ち抜いた赤い鳥に目をやり、それを解析する。
「まだ、ノックバックは起こりそうはありませんね。大丈夫ですよ」
「そうか、わかった」
 AFから聞こえた紫月の声に、杏樹は首を縦に振った。
 その間に放たれるユーキの瘴気。その漆黒が赤を飲み込んでいく。

●趣味が問題
 クロは透視を試みる。
 集中し、屋上に敷き詰められた鳥籠を一つ一つ見ていく。
 すると、最奥の飾り気無い一つの鳥籠だけは透かすことができなかった。
「あれです、あれがアーティファクトです」
 見つけたそれを、仲間達に告げる。
 だがそれは敵の撃破後に破壊してもいいだろう。今はまだ、そのときではない。

 京一のブレイクフィアーが亘の呪いを解けば、再び亘が鳥喰いへと向かう。
 鳥喰いの行動から、亘への鳥喰いの感情はおおよそ想像できた。だから、これだけ言いたい。
「鳥への変わらぬ愛を自分にぶつけてくれるなら、その全てを受け更なる愛で答えましょう」
「あぁあ、いいね……すごくいいよ」
 うっとりとした鳥喰いの目の前、亘は翼を風に揺らしながら麻痺が炸裂する。
 だが、またしても赤い鳥に阻まれた。
「ごきげんよう、初めまして? ずいぶんと鳥がお好きなのね」
 その後、すぐにエレオノーラが武器を構えた。
(異常なほどに鳥が好きというよりかは……。
 飛べるもの全てにって感じかしらね。というより、気持ち悪い人ね、まったく)
 長年生きてきたけれど、こんなのは初めてのケースかもしれない。
 やれやれと考えながらも、動けぬ鳥喰いへと気糸を放ち、それを代わりに赤い鳥が受ける。
「ほら、捕まえてごらんなさいな。貴方は籠の鳥しか愛せない子?」
「ぁぁぁああ、すぐにでも抱きしめて噛み千切りたいとこさ」
 鳥喰いはその意思に応える。
 召喚されたのは、もう一人の鳥喰い。影人だ。

 集中攻撃を受けたエレオノーラ。
 しかし、不運にも支援たる京一は怒りに侵されてしまっている。
 陽斗が選択したのは、エレオノーラへの回復。しかしそれをしてしまうと京一へブレイクフィアーが放てない。
 すかさずフィネがブレイクフィアーを放った。
 しかし支援をカバーし合う分、攻撃の手が疎かになってしまう。
 傷つきながらも、杏樹は攻撃の手を休めない。彼女こそ、大多数の鳥を打ち落とせる要だ。
(にしても……鳥籠が邪魔だ)
 杏樹を含め、全てのリベリスタの足元には鳥籠が淡く光ながら、所狭しと存在していた。
 その鳥籠には千切れた羽の残骸や、血液がこびりついている。
「どれだけの翼を、殺したのだろうか」
「考えたくもないな……」
 思わず京一は苦笑いをした。

 フィクサードにあたっている二人の後ろでは、赤い鳥を排除しようと仲間達が動いていた。
「フィネさん、大丈夫ですか?」
「問題ありませんよ、そちらこそ」
 フィネが背の陽斗へ、にっこりと笑う。だがすぐにその表情を厳しいものへと変え、前を見た。
「そろそろ、弾けそうですね」
 放つ、不吉たるジョーカーのカードが鳥へと貫通する。
 赤い鳥はフォース。思念体だ。傷つき、その思念体は身体の形を保つのが危うそうにぶれていた。
 それはきっと、体力が底をつくことが近い証拠でもあり。
「そう易々と、やられる訳には……!」
 紫月がすかさず動く。放つ札は頭上へと舞っていった。
 しばらくも無い間に、暗雲が形成され、氷の雨が超局地的に降り注ぐ。
 それは鳥たちを掠っていった。赤い鳥たちに、青く光る氷柱は綺麗に光ってみえる。
 そこへ凛麗によるエネミースキャンが発動された。手番を消費してしまうそれは、毎ターン使用するには効率が悪い。
 更に、赤い鳥達は常時空中を漂う。すべて同じ姿をしているため、見分けることは厳しかった。
「どれが今一番体力減っていましたっけ!」
「……わかりませんね」
 凛麗が慌ててクロに尋ねたが、クロもそれは把握できない。
 複数を一度に攻撃していくが、攻撃線上に居ないので攻撃は当たっていない鳥も空中で混ざる。
 凛麗による、エネミースキャンを行わない体力計算を一度に十体も管理する事は難しかった。
 仕方なく凛麗は一体の赤い鳥を解析する。
「好き勝手にはさせない!」
 今しがた、杏樹の魔弾の群れが赤い鳥たちを貫通させた。
 凛麗の上空にて、見るからに体力が擦り減っている元気の無い一体が円を書きながら飛んでいる。
「その一体、もう危ないです!」
 凛麗はAFへと声を出すと、リベリスタたちは顔を見合わせて屋上の中心へと集まろうとした。
 だが――。
「待て、ユーキさん!」
 ブレイクフィアーを放とうとした京一の目の前で、怒りが止まらないユーキが攻撃を続ける。
 ノックバックが近距離単体であることは既に明白。そこからユーキは暗黒を放つ。
 しかし、それは複数攻撃だ。
 漆黒の瘴気が鳥を飲み込んでいく。たしかにそれは精密に鳥たちを射抜いてしまった。
 同時に起こる、複数の弾けるという名の死に際の攻撃。その総数は五だ。
「うわっ!?」
「きゃっ!?」
 それには亘とエレオノーラが巻き込まれていく。
 一瞬にして五つの攻撃を思わぬ所から受けた二人。
 フェイトの恩恵が彼らを守ったが、その身体を軽々と外へと追いやった。
 こんな所で倒れる訳にはいかない。
 同種であるフライエンジェがこの男の手によってこれからも殺されると思ったら、意識を飛ばすことなんてできない!
 咄嗟に二人は翼を広げ、宙を舞ったことで落下は防げる。だが――
「ぁあぁあぁああ」
 庇われ続ける鳥喰いは、未だ無傷。札が一枚、空へと消えた。
 紫月と同じ、氷柱の雨がリベリスタを襲い、更にエレオノーラと亘へ、鳥が集っていった。
 歯を噛み締めて亘は意識を保とうとする。
 
 倒れたら、
 倒れたら、
 彼に教えてあげることができ――

 そこで亘の意識が、完全に途切れた。


「そんなにこれがいいの? あたしはあたしの翼(これ)が好きではないわ」
 エレオノーラが一人で鳥喰いを相手にするのは厳しい。
 かつ、影人により二人の鳥喰いを相手にする形になってしまった。
 呪縛がエレオノーラに当たらない事は今までの戦闘で鳥喰いも認識する。
 ならば、攻撃あるのみだ。
 一つの神秘攻撃と、氷柱の雨が襲えば、その意識はブラックアウトする。
 近寄られ、その白き翼を弄られた。地面の鳥籠へと、羽が血混じりに散っていく。

 その間、リベリスタたちは残りの鳥の対応をしていた。
「これで、最後!!」
「もう、もう誰も倒れさせない!!」
 ユーキが暗黒を、そして杏樹が放った魔弾が最後の一体の鳥へと当たり、消えていく。これで赤い鳥の妨害は無い。
 だからこそ、全ての攻撃は鳥喰いへと向けられる。
「鳥喰い、あなたの目的は一体なんです。昨今、何かの結果を得る様に戦場には参加せず、見守るフィクサードが多い。
 かと思えば、あなたの様な者も居る……答えなさい!」
 紫月はリーディングを聞かせる。それは相手に読まれることを気づかれてしまう。
「「あぁぁあボクの目的? 全て食らうのさ、ボクとひとつになるのさ、そうすれば飛べない。
 あぁああああ、派閥に迷惑はかけまいよ。他のフィクサードの事は知らないさ。それは黄泉ヶ辻なのかい?」」
 だからこそ、鳥喰いは包み隠さなかった。それが有益なものであるかは別として。
 本体と影人が、同じ顔で笑い、同じ声が響く。

「「ぁぁあ、残念だ。非常に残念だが、ボクも命は惜しくてね」」
 鳥が消えたのを見た鳥喰いは、ひどく落ち込んだ表情をしていた。
 あれらがいなければ、リベリスタをいっきに八人相手にするのはとても厳しいのだろう。
 未だに無傷な鳥喰いだが、これ以上の戦闘はしない。
「何をする気ですか!?」
「「ぁぁああぁぁ、いいんだ。ボクはこれが好きでね」」
 鳥喰いは足を動かす。咄嗟にフィネが後ろの出入り口を守った。
 だがフィネは勘違いをしていたかもしれない。
 確かに出入り口は一つであり、本来逃走するならば、そこを背に守るだろう。
 しかし場所は屋上。落ちるという選択をするのならば、四方八方に出口は存在する。
「落ちるつもりですか!? そんなことさせませんよ!」
 フィネが前へと出て、鳥喰いの退路を塞ごうとするが、何処を塞げばいいのか混乱した。
 瞬時に掴みかかって逃走を阻止せんと走る――が、もう一人の鳥喰い。影人に阻まれてしまい、フィネ一人では手が足りない。
「待って! 逃がさない、逃がさないんだから!」
「ああぁぁあ、本当に短い間だが、これが好きだよ」
 屋上は、柵の無い長方形。その一番角に鳥喰いは足を置いた。
「あああ、また会おう。次はこの胃の中に収まって欲しいものだよ、ははは」
 そのまま、鳥喰いは重力が引くままに落ちていく。
「ぁあぁあ、いいね、風が冷たい」

 ――深夜の、暗い夜道へと吸い込まれたが、骨がアスファルトにより砕ける音は聞こえなかった。

■シナリオ結果■
失敗
■あとがき■
依頼お疲れ様でした。
結果は上記の通りになりましたが、如何でしたでしょうか?

アイテムについてですが、
装備していないものは使用はできません。ご了承くださいませ。

失敗についてはリプレイ内にあります。
重症の方はお大事になさって下さい。
それではまた違う依頼でお会いしましょう。