●ケータイの電話帳にまだ残っていたから 彼へ電話してみたのは、本当に気紛れだった。 「――あ、もしもし? ウチなのダワー。元気してた?」 『何だァ、てめぇか? ……久し振りだな』 なんて、他愛もなく、取り留めもなく、和気藹々。 だったのに、 どうしてこうなった? 「んだとテメェコラァ!! ナメとったらワレ口ン中に手ぇ突っ込んで奥歯ガタガタいわしたろかなのダワー!」 『やかましーわクソ電球が!! 割れろボケ! 粉々になれクソが!!』 「テメェちょっと面貸せダワー!! しばく! ボコる! 掘る!」 『上等だクソがァ、偉そうな口は俺様のジェネラルちゃんに勝ってから叩くんだなゲロッカスが!』 「釈迦でも閻魔でもかかって来いやダワァア!! こちとらダテに三尋木でヤーさんやってんじゃねぇぞダワー!」 『言ったな? 覚悟してやがれぇ!』 「買ってやるのダワー、__!」 『――その名を呼ぶ権利は、もうテメェにゃねぇよ! 死にやがれ!』 電話は、荒々しく切れる。 ●不倶戴天のアレ?――包帯男と機械男 「――っていうのをさっき視たんですが私」 「あー。」 「『あー。』じゃないですぞ夜倉様。何なんですか、何でテラーナイト様はノーパンだったり性別不明の電球頭さんが元カノ……カレ? だったりするんですか!?」 「あぁ、まあ、名古屋君にはもう関連資料を全てお渡ししましたし、全権委譲しましたし」 「え」 「そう言う訳で、僕ちょっと見たいドラマがあるんで失礼しますね」 「えっ あっ ちょっ 待っ 待ってぇーーーッ!」 ●チジョウのモツレ() 「端的に言うとですね」 事務椅子をくるんと回し振り返った『歪曲芸師』名古屋・T・メルクリィ(nBNE000209)が浅く息を吐く。同情めいた視線。あきらめの表情。 「フィクサードが放った二足歩行ののすんごいゴキブリE・ビーストと、三尋木のフィクサードがドンパチしてるんでちょっと鎮圧してきて下さい」 ……。 「アッ……もう、またそんな顔する……。えーっとですね、ほっといたらそりゃーもー滅茶苦茶派手にやって神秘秘匿問題につながりますんで。内容としてはE・ビーストの討伐だけで結構ですぞ」 一つずつ説明してきますんで、耳かっぽじってお聴き下さいね。 「えぇと。夜倉様より頂いたこの資料によると――フィクサード『テラーナイト・コックローチ』。元薬品会社の研究員で、ゴキb――あ、言わない方が良いですよね。ハイ、じゃあ『アレ』の生態にも、その愛着にも一日の長がある人物だそうで。 その他不快害虫を神秘現実織りまぜて扱うことから、界隈では最底辺同然の評価をされているのですが……そんじょそこいらのフィクサードとは、まぁ、色んな意味で凄い感じですな。詳しくはそこにある過去任務報告書にもありますので、宜しければお眼通しを」 視線の先にはキチンと纏められた資料、後で読んでおくのも良いかもしれない――っていうかまたテラーナイトか――と、リベリスタ達がそちらへ気を取られている間。 モニターに映し出された。二足歩行人型サイズのムッキムキG。黒光り装甲。無駄に凛々しい。いや、KIMOI。 うわぁ……。 「E・ビーストフェーズ2『ザ・ジェネラル改』。テラーナイト様が研究に研究を重ねて作り出したアレの改良版だとか……その辺はどうでもいいですが。皆々様にはこのザ・ジェネラル改を討伐して頂きますぞ。 このザ・ジェネラル改。見た目こそアレですがかなりの強敵ですぞ。具体的に言えば堅くて速くて賢い。飛べる。驚異の生命力。ボトムチャンネルのゴk――『同種』を従える事も出来ますぞ」 そう言えば前回もなんかこんな奴いたような……頭を抱えて項垂れる。なんでこんなんばっかなんだ。 「で、このザ・ジェネラル改と喧嘩してる三尋木フィクサードなんですが」 次いでモニターに映されたのは(ザ・ジェネラル改の画像に被って本当に良かった)ヘンテコな電球頭。この妙チクリンな怪人物の所属は『三尋木』――かつて千堂によってアークとは上辺だけの協定を結んでいた一大フィクサード組織だ。その中でも穏健派、と称されている部類らしいが。 「『発光脳髄』阮高同、三尋木一派のフィクサードで去年の賢者の石騒動やら他にも色々とアークのリベリスタと接触を持った人物で御座います。ボスである三尋木にゾッコンなんだとか。 この人はフィクサードですが、アークのリベリスタには比較的友好な人物でして。皆々様が接触した時の対応によって態度が変わるでしょうな――具体的に言えば、『好意には好意』で返しますし、『敵意には敵意』で返します。皆々様が到着した頃には戦闘中だと思いますぞ、詳細な対応はお任せ致します」 そこで一旦息を吐く。 「この人……、どうやらテラーナイト様の元カレカノ(?)でして。なんか、喧嘩が発展してこんな事になったとか。うーん、何とも言えない気持ちになりますな」 ほんとだよ。ほんとにほんとだよ。 苦笑のフォーチュナと、心の底から息を吐くリベリスタ。 「まぁ、そんなこんなで――頑張って下さいね、私はリベリスタの皆々様をいつも応援しとりますぞマジで!」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:ガンマ | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年02月29日(水)23:21 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●ぴかぴか 遠くからの街明かり。聞こえてくる戦闘音楽、罵声、発光している電球頭の眩い輝き、映し出されたアレ。 「この大御堂彩花の人生で再びアレを目にする時が来ようとは……相変わらずムカつくほどに理想的ですわね」 『ライトニング・フェミニーヌ』大御堂 彩花(BNE000609)は柳眉の間に深い皺を作って嘆息、「外見以外が」と強調の一言を付け加えた。二度目の邂逅、黒くて艶やかで素早くってタフな互い。もう一度鬱気な溜息。 「テラーナイト・コックローチ。ある意味、アークにとって、最凶最悪の敵ですよね……」 真正面からぶつかってくるフィクサードの方が全う至極に見えてきますから。『鋼鉄の戦巫女』村上 真琴(BNE002654)も彩花と共に溜息を重ねた。フィクサードと言えば、あの遠くで輝く光はフィクサード――それらに強い憎悪を抱いている真琴であるが、あの電球頭と敵対する心算はない。色々と思う所はあるけども一概に杓子定規で対応するのはナンセンスだろう。敵の敵は味方、こちらから態々戦いを挑む必要も無い。尤も、同が敵対的な行動に出たら話は別だが。 「まぁ何より、まずアレの方を何とかしませんと」 個体名すら口に出したくない。出来れば視界にも収めたくない。憂鬱な、溜息。 「ラーニングさせてもらったお礼も言いたかったッスけど、取り込み中……?」 踊り子の衣装から覗く鼠尻尾をくねらせて『小さな侵食者』リル・リトル・リトル(BNE001146)は首を傾げる。「死に曝せダワー!」と罵声がハッキリと聞こえた。三尋木一派フィクサード、『発光脳髄』阮高同。彼にとっては何とも奇妙な縁の相手。確かあれは去年が終わろうとしていた日の出来事。 「意地は大事だよね。極道だもの。逝く道引いちゃったら極道じゃなくなっちゃうものね」 僕も族やってたからさ、と『大風呂敷』阿久津 甚内(BNE003567)は苦笑と共に肩を竦めてみせる。任侠っての、ちょっと位は理解してる積り。 けれども。 「E・ビーストを相手するのはちょっと素直すぎだよ。好きだけどね僕! そういう素直な極道ってさ!」 人の気持ちとは無限模様。脳内の電気信号を駆け廻らせて臨戦態勢。 「付き合いが深けりゃそれだけ色々あるんだろうよ。それが過去形でも。つーわけでだ、喧嘩すんのは勝手だが」 怒りの儘に握り締めた『ラースフルライト』梅本 瑠璃丸(BNE003233)の機械の拳にカッと燐光が灯った。 「他人様に迷惑掛けンなっつってんだろがコラァ! いやまだ未遂だけどコルァ!!」 フーッと自らを落ち着かせるべく噛み合わせた歯列から息を漏らす。まぁ、一先ず、だ。 「ゴk「ゲフンゲフン」「ん゛っんー」 真琴と彩花のナイスコンビネーション。 「……、アレはまずいだろ。放っといたらどうなるか分かったもんじゃねェ」 そんな仲間達の様子にくつくつと咽の奥を鳴らしたのは『蓮姫』阮 武 淑(BNE003427)。相手は道化役だけれど手強いテラーナイトの最新作、本当は自分の様な半端な戦力じゃ厳しいかもしれないのだが――どうしてもあの電球頭と話がしてみたくて。 「同郷の剛の者、興味あるだろ? やれることを全力でやるさ。蓮姫の名に賭けてねぇ」 薄く浮かべるは妖艶な笑み。 接近につれて喧騒はより大きく明朗に。 さてと歴戦の着流しを夜風に靡かせ一歩出たのは『我道邁進』古賀・源一郎(BNE002735)、細めた視線の先に戦いを見澄まして。 「痴話喧嘩と言えどもエリューション絡みは放置できぬ。願わくば成したい事を止めずに叶えてやりたくも思うが……」 あ奴らがフィクサードで在る様に我もリベリスタ。 「凡てを見守るだけとは行かん」 いざ往かん。 ●フィラメントと黒いアレ 「テラーナイトの下っ端がァァァウチに盾突いてんじゃねーのダワァァアア!!」 怒りの儘にフィラメントを輝かせ、怒涛の金属バット乱舞。荒っぽく振るっている様で状況最善手。圧倒されるザ・ジェネラル改。どう見てもゴキb――G。どうあがいてもG。改良版。黙ってやられるジェネラルじゃない、振るわれた重撃に耐え切り反撃せんと拳を振り上げるが。 堅い物同士がぶつかり合う音。 電球のつるりとした生体硝子に映り込むのは、ジェネラルの一撃を防御杖で受け止めた蓮姫の婀娜な流し目だった。 「Xin chao co――会えて嬉しいわ。阮武淑。同じ阮家の仲間として、助太刀を」 それは故郷の言葉、一番の挨拶、久々に効く発音にヘェと同が興味深げな息を吐いた。指先をジェネラルへ、放った気糸で縛り上げて。 「Xin chao、でいいのダワー」 あくまでも自分は男で女と主張、飛び退き見渡せばリベリスタの姿。目が合ったのは蜘蛛の少女。 「こんばんわ、蜘蛛混じりのまおです。そちらのジェネラル改様達を倒しに来たのですが、ぺちぺちしてもよろしいですか」 『もそもそ』荒苦那・まお(BNE003202)の大きな瞳が真っ直ぐに同を見詰める。フィクサードがくつりと笑んだのは――その心を読んで、彼女の余りもの純粋さに触れたから。しかしまおに同の心を知る術は無く、一先ずと言葉を続ける。 「あ、ジェネラル改様は魅了攻撃するそうなので」 「おけ、気を付けるのダワー。まおちゃんも気を付けるのダワー」 「あ、はい、まおも気をつけます。それと餌を撒きますので、」 「汚れたら洗濯すれば良いのダワー。まおちゃんは良い子ね」 ぽんと彼女の頭に手を置き、次に見遣ったのはリルだった。表情は無いけれど、多分ニヤッと笑ったのだろう。 「同さんは久しぶりッスね。会えて嬉しいッス。あの時はハイ・バー・チュンを見せてくれてありがとうッス」 「うふふふふ。何よりダワー。ウチも会えて嬉しいのダワー。……で、アンタ達アークはカレイドでアレを捉えた訳ダワー?」 「話が早くって助かるッス」 心を読まれる心地はどうも慣れない。と、リル同様に同との邂逅は二度目である源一郎が声をかけた。 「久しいな」 「アラ源ちゃんお久なのダワー」 「経緯は知っている、必要ならば手を貸すが」 縁在る相手との戦いと言える故、己を貫く為に協力を拒む事も在りうる――そうしたら見守るつもり。それは瑠璃丸も同じだった。だって、俺ならアタマに血ィ上ってるときに余計な首突っ込まれたらムカつくしよ。 「そりゃあ、喧嘩にGなんか持ち出されたら誰だって怒ります。聞いた話だとかなりの練達者であるとのお話、ここは是非お力をお借りしたく思いますわ」 切り出したのは彩花。事件の解決と同の事情の双方に理解を示しどちらも解決に導く為、リベリスタとフィクサードの偏見を乗り越えて協力関係を真摯に求める。痴話喧嘩の件は同の肩を持つ――と振舞うペルソナ。本音?それは心の中だけの秘密という事で。 「合縁奇縁。また会えたのも何かの縁スし。リルもジェネラルに用があるッスから、加勢するッス。Gは殲滅撃滅絶滅させるッス」 「あの害虫はアタシ達にとっても敵なの。休戦協定は終わったけれど……xin nhờ anh――お願い、貴方の力が必要」 視線、声、読んだ心。 フィクサードはふぅんと首を傾げて。 「それじゃ。――一緒にこのクソゴキブリャァアをブッチ殺すのダワーーー!!」 そう言ってジェネラルに向き直ったのと、ジェネラルが気糸を振り解いたのは同時。 戦闘開始。或いは、戦闘再開。 「『夫婦喧嘩は犬も食わぬ』と申しますが、ある意味これもそういう類のものですよね……」 これでもう何度目になるか分からない嘆息。とは言え、リベリスタは世界に害なすエリューションを討伐する者――真琴の祈りは勇ましき鼓舞となり、仲間と同に十字の加護を与える。よもやフィクサードに攻撃以外の術を施す日が来ようとは。凛乎と顔を上げれば、黒金の髪を靡かせた鋼の令嬢が放たれた矢の如くジェネラルへと吶喊している勇姿が映った。 「今回は速攻で倒します!」 参考にするのは前回で嫌というほどさせてもらいまいたので、と。同の頭が明るく照らす領域内、間合いを詰めた彩花がWhite Fangの拳に纏うのは絶対零度の氷雪、迎え撃つジェネラルが拳に纏うのは灼熱獄温の業炎。ぶつかり合った。温度差。凄まじい蒸気。拮抗、しかしそれは彩花が流水の如く身を捻った事で終わりを告げる。 飛び退いた。広がった間合い。 うぞぞ、とジェネラルの足元より大量のゴキb 又の名をGが現れる。が―― 「てい」 まおが自分の周囲にぶわっと撒き散らしたのはそれらを誘き寄せる為の餌。ハンバーガー、パン、おにぎりetc。前回の戦いを活かした技。 「!?」 驚きを見せたのはジェネラル、無理も無いだろう。支配下にある同種がぞるぞるぞるぞるっと一直線にまおの周囲の餌に群がっているのだから。 まおの両指から蜘蛛の糸の如く鋼の糸が垂れる。回って、躍る。踊る。本人曰くぺちぺち――周囲のGを次々と切り裂いて。 源一郎も同じく餌を撒き、吊られて屯するGへ荒れ狂う大蛇が如く容赦なき拳を叩き込み踏み潰し粉砕し。まおのダンシングリッパーと共にGの体液がちょっとアレでアレだがまぁアレなのでアレだ。ウワァあの辺にいなくって良かった、とパーフェクトガードに身を包む真琴は背筋の悪寒を覚えつつ心の底からそう思ったのであった。 「援護する故、存分に殴り合え」 そんな源一郎が目線を向ける先には電球頭。 「そんな事よりアンタGのアレまみれっていうか大丈夫なのダワー?」 「む。案ずるな。兎角、此度は討ち取るべきは阮にあり。汝は我にとっては敵とは言い難い存在、露払い位任せて貰おう」 「それじゃお任せしちゃうのダワー。ま、後で銭湯代位は奢ってやるのダワー。……リルちゃん! 弱点分かったのダワー?」 集中しつつ同がリルへと見遣る。 「ジェネラルってことは、倒せばこの辺一帯のGもおとなしくなるんスかねぇ」 ジェネラル退治の序に殲滅できるといいのだが……直ぐ増えそうだ。具にジェネラルを見澄まして――エネミースキャン。解析。理解した。応える。同だけでなくテレパシーで仲間達に。 『装甲の合間ッス!』 成程――と瑠璃丸は集中を重ねジェネラルを狙った。真正面の彩花を相手に激しい攻防を繰り広げている。G。どう足掻いてもG。全く、誰だよ。誰がこんなモン作った。おのれテラーナイト。おのれ。怒りの儘に灯る蒼白い燐光。振るう蹴撃は真空刃。しかしそれを氷の拳で打ち消したのは他ならない彩花だった。 魅了の技か。彼女が稲妻を纏い追撃しようとしたその寸前に間一髪で真琴が放つ破魔の光が彩花の正気を呼び戻す。 「一応僕らもリベリスタだからさ? 邪魔はしないから怒んないでね?」 一方でそんな事を同に言いつつ集中を重ねた矛をジェネラルへ突き立てたのは甚内、突き刺した切っ先から生命力を啜る。僕ら元々こういうの専門なんだし。振るわれる鮮やかな連続攻撃を矛に取り付けた盾で防いで辛うじて直撃は免れる。全身から滴る赤。全く回復が居ないと言うのは寂しいものだ、跳び下がって再び集中を始める。 チラと見遣った同は淑が庇い護り、接触した時以上の傷は負っていない。飛んで来た貫通弾を振るった杖で弾き飛ばして、その隙に同が攻撃しやすいよう立ち回る。視界にて迸る稲妻。彩花の壱式迅雷。蹌踉めくジェネラルを縛り上げたのは同の気糸だった。 「再びその姿を見る事に成ろうとは、之も又奇異な縁よな」 源一郎の低い声。ジェネラルの背後。二度目の戦いであるザ・ジェネラル、二度目の邂逅であるフィクサード。炎とは世にも奇ッ怪なもので。等、思いつつ。 「古来より曰く、再生怪人は負ける物と相場が決まっている」 神速の一撃、武装した指先でジェネラルを掻っ切った。迸るジェネラルの体液、気糸を振り解き振り向き様に振るわれた焔の拳を逞しい腕で受け止めて。その影から飛び出したまおの研ぎ澄まされた気糸が再度ジェネラルを縛り上げる。きつく、きつく。Gの殲滅がほぼ終了したのだ。再度召喚される前に決めてしまいたい。 その為に――まおは同へと。 「できれば、まお、リル様とお揃いのEx技を見てみたいです」 そうそうと甚内も頷いた。 「行っちゃいなよ、相手すべき所に。通す筋通して無い人にはちゃんと言わんと、ヤり合わないと納得できないでしょ? ケジメはそっちからちゃんと取らないと、ね?」 てな訳で、ていうかこっちが本題。 「でさ、提案。僕ちゃん火力とか無いからさ。同大先輩の技、一回見せて貰えると大助かりなのよ。敵もダメージ受けるしさ? 出来れば御教授願いたい位なんだけど、ね? どう? だめ? 先輩方も皆がんばってるしさ、僕情け無いじゃんね? 頼むよ、大・師・父」 「……。欲しがりません勝つまでは。先ずは物欲に勝つ事ダワー」 リルちゃんが居なかったら使わなかったと息を吐く。多分ジト目。 それから視線を合わせた。踊り子へ。 「御一緒にダンスは如何ダワー?」 「いいッスね、是非」 言葉と同時には既に飛び出して。 ――いつか必ず、本物を越えれるくらいになってやるッス。 強さを求めるからこそ、リルは決意する。 詰まる間合い、息を合わせて。 ぶれる二人の姿。質量を持つ分身。 「さぁ! 覚悟するッスよ!」 「喰らうのダワー!」 四つの金属バットが、四つのタンバリンが。光る。ミラージュ。死角零。 「「必殺革命――Hai Bà Trưng!!」」 不可逆の死へ誘う舞踏。完全にして逃れ得ぬ猛攻。一発逆転の革命拳。 切り刻み打ち据えて穿って潰して。刹那で居て無限の如く。終わらせる。終わらせた。 「ははっ、Anh đẹp trai lắm! 貴方ってほんと素敵!」 淑は終焉を齎した舞踏へ喝采を、鮮やかな武舞にゾクゾクした心地を覚えて。 ●フィラメントオフ 「中々美味いじゃないのダワー」 「どうもッス」 戦いが終わって。リルに喧嘩の内容(愚痴)を吐き終わって。同の気も晴れた様で。 「阮様はやもりさんと仲良しでしょうか。やもりさんはよく明るい場所にご飯を探しに居ますので」 まおは目をキラキラ、輝く電球をじっと見つめる。 「やもりは可愛いから好きなのダワー。でも蛾だけはノーセンキューなのダワー」 和気藹々。思えば不思議、リベリスタとフィクサード。 そんな同に源一郎が訊ねる。 「時に阮よ、テラーナイトとはどの様な付き合いを。人の縁の形の一つとして、興味はある」 フィクサードとて人なれば、繋がりもまた人のそれであると信じて。そうねぇと同は僅かな思案……それから、キャッと頬(?)を両掌で包んで。 「そりゃ~も~ラッブラブのイッチャイチャのスーパーリア充なのダワー! おっきいパフェ一緒に食べたり~星が奇麗な夜にドライブしたり~夕焼けの砂浜で……」 スーパー惚気タイムにつき割愛。 「……うむ。然様か」 深く頷く源一郎、リルは終始興味深げに鼠耳を揺らして。訊ねる。首を傾げて。 「恋って、楽しい物ッスか?」 「うふふふふ。当たり前じゃないダワー。恋は人生のスパイスなのダワー」 「へぇ……リルはまだそういうの分からないッスけど、楽しかったなら、尚更仲直りしてほしいッス」 「……そうねぇ、……。そうね。ウチ、ちゃんともう一回テラーナイトに会って話してみるのダワー! 思い立ったら吉日善は急げッ」 言葉通りらしい、すっかりいつもの調子(よりややハイテンション)に走り出す。 最中――擦れ違い様、目配せした淑が己が頭を指し示す。『読め』と。 『鬼の事件に裏野部、黄泉ヶ辻も蠢いてる。正義の味方とフィクサードじゃ、根本の共感は難しいかもしれないわ。 でも、表面の協力なら如何様にも。貴方なら三尋木の名代としては十分。バランス男にばかり良い顔されるのも癪だろ? 待ってる――hen gap lai……次は、貴方のための歌を携えておくわ』 「……フフ。hen gap lai、同朋」 協定が切れたにも関わらず自分の味方をしたリベリスタへ。また会いましょう。 「さほど場数を踏んできたわけじゃねェが、こりゃ今までで一番疲れた依頼になったな。色々と」 訪れた静寂の中、瑠璃丸は深く息を吐いた。真琴が同意の頷きをする。 「元の鞘に戻るかどうかは本人たち次第ですが、せめてアークが関与しない程度に収めて欲しいものですね……」 兎にも角にも任務終了、帰ろう――先ずは銭湯だ。特に念入りに入ろうと彩花は密かに息を吐く。 蓮姫も歩き出す仲間達に続いた。 「さ。次の舞台が楽しみだな。フフッ」 『了』 |
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