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<鬼道驀進>大戦艦、轟々出撃!!

●海を往く
 島。小さな島。岩でできた島。ゴツゴツとした表面。
 しかしそれは脈を打ち、表面にて蠢く巨大な藤壺めいたそれもまた脈を打ち、波を掻き分け海を往く。
 それは間違いなく動いていた。
 それは間違いなく生物であった。
 水面から首を擡げた鬼が見遣る先には小さな岩島、憎き封印――怨、と吼えた。

●切り開け
「岡山県内で頻発する『鬼』による事件、先日報告された『禍鬼』『温羅』『吉備津彦』――等々についてはもうご存知かと」
 そう言って事務椅子をくるんと回し『歪曲芸師』名古屋・T・メルクリィ(nBNE000209)がリベリスタへと向き直った。
 その眼差しの真剣な色合いに促され、思い返すのは先日の報告。鬼達は『禍鬼』を筆頭に彼らの王たる『温羅』の復活を謀っている――詳細は未だ不明なれど、『王』ともなればその脅威など火を見るよりも明らかであった。
「この鬼達は件の『ジャック事件』によって崩壊度が進んだ事によって『封印』が緩み、復活したものだそうで。皆々様の中にもこれらと交戦した方々はいらっしゃるかと思います。
 ですが、未だ『温羅』を含む鬼の大部分は封印状態にあり活動出来ない状態ですぞ! これは岡山県内に数多く存在する霊場、祭具、神器等が封印のバックアップとして機能している為でございます。凄いですな。
 とは言え……今この瞬間も鬼は復活を果たしております。更にその鬼達が同胞――ひいては『王』――の封印を解こうと目論んどりましてな。今回、皆々様にはこの封印のバックアップたるものを守って頂きますぞ!」
 その為に皆々様に集まって頂いたのですと言う。その背後モニターには海に浮かぶ小さな岩の島であった。古びた注連縄で囲まれたその中央には小さな祠があり――アレが例の『封印のバックアップ』なのだろう。島自体はゴツゴツと足場が悪そうで全員が上陸すると些か狭苦しそうだ。
「現場はこの岡山県海域の小島。御覧の通りこの祠が件の『封印』ですぞ! そしてこれを狙うのが――」
 斯くして映し出される。
 それは余りにも巨大な異形であった。
 先の小島よりは遥かに大きい。まるで島、戦艦、化物。鬼と水竜を混ぜた様な。岩の如き体皮には不気味に大きな藤壺の様な生命体が蠢いていた。
 それはゆっくりと海を往く――しかし巨体であるが故に、ゆっくりでもその移動速度は決して遅いものでは無かった。
「アザーバイド『島鬼』。なんとまぁ……これ程までに巨大なモノが居るとは。
 これは海を渡って真っ直ぐこの『封印』に向かっております。こんなデカイのに攻撃されたら……、封印なんて一溜まりもないでしょうな。なので皆々様には! この海を往く島鬼を船から攻撃して目一杯嫌がらせしまくって目一杯足止めして気を逸らて撃退、あわよくば討伐して頂きますぞ! 島鬼が封印に辿り着くか否かは皆々様の作戦に掛かっております。頼みますぞ!
 船や運転手についてはこちらで手配致します、何か船の移動についての指示があれば運転手さんにどうぞ。 それから船もそれなりに装甲強化をしておりますが……、何度も島鬼の攻撃を喰らったら壊れるでしょうな。船が壊れた時点で撤退して頂きますのでご注意を!
 それから戦闘不能になって海に落っこちた人のフォローもちゃんとしたげて下さいね。そのまま沈んで行方不明になってしまったら……分かりますよね?」
 メルクリィの言葉にしっかりと頷いた。あまりない戦況故に、気を抜かぬが吉だろう。
「島鬼に関しましては、何もせずほっといたらどんどんガンガン泳いで泳いで封印に接近します。如何にこの足止めをするか……がミソですな。それからこの表皮の藤壺っぽいの、これもイヤラシク攻撃してきますので油断なく! 数も多いですしね。
 島鬼は見た目のでっかさの通り、物凄ーくタフですぞ。ちょっとべしってやられただけでかなり痛いですし。詳しいデータは纏めてありますが……そうですね、飲み込まれちゃったらフェイトを使ってでも脱出して下さいね。さもないと、そのまま溶かされてしまうので」
 アザーバイドの養分になるなんて御免でしょう、と言う。当たり前だと頷き返せば機械男はニッコリと――しかし心配げに、それでも信頼した眼差しでリベリスタを見澄ました。
「サテ、以上で説明はお終いです。危険な任務ですが、皆々様ならきっと大丈夫! 私はいつもリベリスタの皆々様を応援しとりますぞ。
 御武運を――そして、必ずやご生還を!」


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:ガンマ  
■難易度:HARD ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2012年03月03日(土)00:44
!DANGER!
 このシナリオにはフェイト残量によらない死亡判定の可能性がございます。

●目標
『吉備津彦』の封印を破壊させない

●登場
アザーバイド『島鬼』(とうき)
 水竜と鬼を混ぜた様な超大型の鬼。岩の様な表皮には藤壺の様なモノが生えている。
 WP値、防御値高め。
>主な戦法
 噛み付く:必殺、失血
 轟咆:遠2、貫、雷陣、ブレイク
 突進:遠域。ノックB、ショック、弱点
 のたうつ:近域。ノックB、ショック、物防無
 Ex吸い込み捕食:胃袋の中に閉じ込める。フェイト消耗で脱出可能 
 など。攻撃にノックB、ショックを伴う場合あり

藤壺
 島鬼の体中に無数にある巨大な藤壺。
 ノックB無効
主な戦法>
 魔弾:遠2、ノックB
 噛む:流血
 など。

●場所
 時間帯は昼。

>岡山県の小さな岩島
 岩はゴツゴツと凹凸が大きく、足場は悪い。真ん中に小さな祠。
 全員上陸は一応出来るが、広くない。

>海
 岡山県の海域。波は穏やか

>船
 中型ボート。それなりに装甲強化はなされているが、島鬼の攻撃が何度も直撃したら壊れるだろう。
 基本的に島鬼から距離を取って並走。運転手はアークが手配、接近や距離を取るなど指示があれば運転手にどうぞ
 (※運転手も一応革醒者ですが非戦闘員です)

●その他
 半数が戦闘不能or船が破壊された時点で撤退です。

●STより
 こんにちはガンマです。
 巨大鬼の侵攻。皆様の本気と覚悟をお待ちしております。
 宜しくお願い致します。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
ナイトクリーク
星川・天乃(BNE000016)
デュランダル
結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)
デュランダル
小崎・岬(BNE002119)
ソードミラージュ
レイライン・エレアニック(BNE002137)
ホーリーメイガス
翡翠 あひる(BNE002166)
プロアデプト
酒呑 ”L” 雷慈慟(BNE002371)
★MVP
クリミナルスタア
坂本 瀬恋(BNE002749)
ナイトクリーク
ジル・サニースカイ(BNE002960)

●大海原を往く
 圧倒的な存在を目の当たりにした時、人は如何に己が小さな存在であるかを知る。

「これほど、大きな相手……は初めて、かな」
 蒼。波を掻き分け往く音が聞こえる。潮風が『ゼログラヴィティ』星川・天乃(BNE000016)の長い黒髪を揺らした。揺らぐ波の上に立ち、その瞳で見澄ますのは彼方に見える島――ではない、戦艦、鬼。敵。状況も合わせて遣り甲斐のある相手。今回は本気、その短いスカートの下には百%の動きを以って死線の上を踊る時のみに装着する勝
負下着が。
 そんな天乃の背後、小さな岩島――『吉備津彦の封印』を擁した祠に手を合わせたのは『合縁奇縁』結城 竜一(BNE000210)。黙し護国を願ってから、一際高い位置に仁王立ち日本刀を解き放った。
「大艦巨砲主義だと! なんとロマン溢れる存在か! その心意気や、よし!」
 彼方の水平線からこっちへ真っ直ぐやって来る戦艦に不敵な笑みを浮かべる。
「だが、悲しいかな……歴史が示すとおり、戦艦が花形であった時代は終わりを告げている。時代の花形は機動性。
 行け、我がシモベたち! 翼の加護で大空を舞い、やつを落とすのだー!」
 バッと手を掲げる先にはもう一つの船。仲間達が待機している小さな白い船。俺?俺は、ほら、指揮官やん?サボってるわけじゃないよ。ちょっと離れた岩島に座して戦況を見守るのが役目やん?

 ま、万が一の時には、死して護国の鬼とならん。

「島が丸々鬼とはのぅ……途方も無さ過ぎて、むしろ笑えてくるわい」
 笑い話なら良かったのだが。『エア肉食系』レイライン・エレアニック(BNE002137)の口元は自嘲じみた笑みで強張っていた。しかし自分達に退路は無い、ここで止めねば更に強力な鬼が出て来てしまう。
「それだけは――何としても阻止してみせるぞよ!」
 握り締める大ぶりの刃に映すのは凛然たる決意に満ちた横顔。身体のギアを高め覚悟完了。
「鬼ってのはこんなのもいるのかい。厄介なもんだねぇ」
 吐き捨てる様な物言いで『ザミエルの弾丸』坂本 瀬恋(BNE002749)は真っ黒い銃指Terrible Disasterを構えた。徐々に近付いて行く島鬼。つーか、あの藤壺は何?あれも鬼なのか?まぁ、なんでもいいや。
「いっちょ鬼退治と行きましょうや」
 手甲の砲身を展開する。その傍ら、『紅瞳の小夜啼鳥』ジル・サニースカイ(BNE002960)が氷の刀身を持つフローズンダガーを手遊びに手の中でポンと放った。
「おーおー、デカいデカい。やっぱ質量は戦力よねー」
 でもま諦めてあげる訳には行かない。泳ぎ易い服で準備OK、影の従者を足元より呼び出した。
「……昔話が今更この世界に何の用があるというのだ」
 燦然と輝く太陽に橙の髪を輝かせ、『生還者』酒呑 雷慈慟(BNE002371)は見遣る彼方の戦艦に目を細める。
「先達が守りしこの世界、今を生きる我々が守りきらねば申し開きも出来ん。
 そうでなくても崩界は、我々の不手際によって進んでしまったのだ……これ以上の退歩こそあれ、進展は無い」
 専守防衛では無く、行うのは戦略攻勢。
「偉大な先輩が残した結界を、ここで無くすわけにはいけない……温羅の復活なんて、絶対にさせないわ」
 翼を広げて船の上、天狗扇をギュッと握り締め『みにくいあひるのこ』翡翠 あひる(BNE002166)は深呼吸を一つ。
「鬼は退治されるのが、物語のお約束。アークの桃太郎達に、倒されてもらいましょう……!
 仏のあひるも、心を鬼にして……あれ、あひる鬼になっちゃった……」
 そうじゃなくって、と首を振り。表情を凛と研ぎ澄ませる。島鬼との距離はどんどん近くなる――頃合いか。あひるの翼が目一杯広げられれば、それは加護となって仲間達の背中に翼を生み出す。

 それは、紛れもない戦闘開始の合図。

「おっきー。こんな大っきいの一撃で割ったら拍手喝采だよねー」
 与えられた翼を広げ、『吶喊ハルバーダー』小崎・岬(BNE002119)はいの一番の一直線に突撃を開始した。島鬼。どのへんが鬼なのか――それはさておき。漲らせる戦気、詰まる距離、振り上げるのは大火の邪斧アンタレス。

「アンタレスのーちょっといいとこ見てみたいー初撃で歪曲全身全霊一刀両断フェイトは投げ捨てるものヒャッハー」

 という話だったのさ。最初から世紀末、二の太刀など知らぬ。思い切り叩きつける暗黒の一閃。押し遣る。硬く重い手応え。
 刹那だった。蒼海から島鬼が顔を出し、怨と鼓膜が割れんばかりに吼えたのは。
「ぐッ……なんて馬鹿デカい声じゃ……!」
 ビリビリと全てを揺るがす音の暴力にレイラインは顔を顰め岬に続いて突撃する。迎え撃つのは島鬼の身体に張り付いた幾つもの藤壺から放たれる魔弾、展開される激しい弾幕を残像を残して鋭く躱し。
 そんなレイラインを援護せんと、戦場に飛ぶジルの赤い瞳が島鬼を狙った。
「さーて、装甲を抜けるかどうかが問題ね……!」
 振り被り、投げ放ったフローズンダガーは宛ら荒れ狂うブリザード。幾つもの氷の刃となって弾幕を破壊し、藤壺やその合間の島鬼の装甲に突き刺さる!
「今だ、そのまま真っ直ぐ往け!」
 超集中によって視野角を拡張した雷慈慟の声。その声に従い、信じ、一瞬の弾幕の切れ目を突っ切ったレイラインが島鬼の真正面へ躍り出る!

「さあ、鬼退治と行こうかのぅ!!」

 まずはその巨体を止めてやろう。大きく開き食い千切らんと襲い掛かって来た凶暴な口を一閃に飛び越える、その時には既に彼女の攻撃は――何撃もの澱み無き連続斬撃は島鬼を切り裂き、悲鳴と共にその場に圧し留めていた。
 麻痺、だがその効果もすぐ切れてしまうだろう。ならばその間に、一発でも多くブチ込んでやるのみ。
「鬼ヶ島が自分から近づいてくるなんて冗談キツイぜ」
 瀬恋が船上から撃ち放つのは殺意でできた不可視の弾丸。猛攻。叩き込む。その間にも容赦なく戦艦の魔弾が襲い掛かって来るが気にしている暇は無い。頬に掠った。赤が伝う、それを上等だと笑みつつ舐め上げて。
「こんなおっきな鬼もいるのね……。岩島よりおっきくて、尻込みしちゃうけど……ま、負けないもん……!」
 雷慈慟のリアクティブシールドARM-バインダーに弾幕から護られつつあひるは祝詞を唱え始める。顕現するは天上より鳴り響く奇跡の福音、仲間の傷を立ち所に癒していく。
 消える痛みに雷慈慟は浅く息を吐いた。脳内は止め処無い思考、視線は目標、運転手へ声をかける。
「味方を範囲内に収める限度内であり、目標に近すぎない距離内。目標の背後を取る形で船の運用を頼む」
「イエッサー!」
 迅速に動き出す船。幾つもの藤壺の攻撃を受けているが、これぐらいではビクともしない様だ。だが塵も積もれば、という言葉もある――何にしても短期決戦に越した事は無い。指先を戦艦に向け、放つのは一点攻撃の鋭い気糸。それと交差する様に放たれた戦艦の砲が空を裂いた。それはジルの胴体へ立て続けに直撃し、勢いの儘に海へと投げ飛ばす!
「ッぐ――!」
 ぐらつく視界、一気に遠のく船、仲間達――衝撃、青、水の中、泡の向こうの太陽。先を削って手を伸ばした。施された翼を広げて海から抜け出し飛び上がる。大丈夫、自力で戻れると皆に伝え水の滴る指先で放つのは氷刃の猛投擲、鬱陶しい藤壺を宿主ごと攻め立てて往く。

 弾丸。射撃。船上の猛射撃。その合間に吹き抜ける清らかな寵愛の風が傷を癒し、重ねられる心が精神力を供給する。最大火力。最高火力。
 幾つもの砲撃に傷付こうとも、叩き付けられた超重量の体躯に撥ね飛ばされても、鋭い牙に裂かれようとも。

「蹴散らしてくれる!」
 潮風を切ったのは血に濡れたゴシックドレス。何度目かの乱瞬撃によって再度拘束に成功したレイラインの残像が藤壺ごと島鬼の鋼の様な皮膚を切り裂いていく。身を翻してもう一度、何度でも。
「往っくよー!」
 岬もアンタレスを轟と振るって島鬼の進路を少しでもずらす様に試みる。貪欲な大火を叩き付けてブッ飛ばす。ジルの全体攻撃やレイラインの残影剣によって藤壺の数がグッと減って弾幕が薄くなってきている事、雷慈慟とあひるの強力な支援によって常時全力で戦線に留まり続けられている事が幸いか。
 薄くは無い疲弊の色。咽が痛いほど息が上がっていた。全力の証。持久戦。そのお陰か島鬼は未だ祠には辿り付いていないが――確実に接近している事は確か。

 誰もの心に、少しずつ焦りが首を擡げてきた。

 その時、島鬼が巨大な咆哮を上げて身を震わせた――単純な、単純な暴力。力任せ。目的地への進路を阻む小さな生物を追い払うただ簡単な動作。されどその途方も無い巨体と重量はそれだけで圧倒的な兵器、防御や装甲すら意味を持たぬ暴力に岬とレイラインの身体が宙へ投げ出された。
「が、ッっ!?」
 身体が面白い程に拉げている。骨が粉々に砕けている。内蔵が捻子くれて破けている。圧倒的な衝撃に血の弧を描きながら水面に一度跳ねて落ちた。海面に広がる赤。
「土左衛門になんぞなってたまるかえ!!」
 それでも運命を燃やして身体を治して水面から顔を出す。岬もプハァと顔を出した。アンタレスが沈まなくって良かったなんて呟いて、授けられた翼で飛び上がりつつその赤い瞳と共に鬼を見遣る。目が合う。島鬼。今まで岩島の方ばかりを見ていた鬼が『こちら』を。

 『邪魔をする者』から、遂に『排除すべき敵』と見做された。

 そう直感する。
 絶望とはこんな気持ちなのかもしれないと思う。
 けれども。

「万策尽きたって……アタシは続けるわよ。撤退なんか無い」

 ジルが刃の吹雪と共に言い放つ言葉は誰もの気持ち。
 戦える。ならば戦おう。
 聖神の寵愛に包まれながら岬は船へ、レイラインは再度島鬼へと吶喊する。薄くなった弾幕を掻い潜り、放たれた凄まじい轟咆を辛うじて躱し、その上空へ。

「よくもやってくれたのぅ! ここならば手出しできまい――貴様はここで沈んで行くがよい!」

 刃の空中演武。同時に瀬恋の弾丸が大きく鬼の頭を仰け反らせ、岬の真空刃が鬼を怯ませた。砕けた装甲の合間から鬼の血。咆哮。島鬼が進路を変えた。撤退か――いや、違う、その巨体はリベリスタを乗せた船を狙っていた!
 戦艦の速度がグンと上がる。そのほぼ同時に雷慈慟は翼を広げて声を張り上げていた。
「船は自分から真逆へ行ってくれ! ……頼む!」
 全速で回避行動に出た船を残し、雷慈慟は真っ正面から島鬼へ立ち向かう。距離はみるみる詰まって行く、凶悪な角が彼に迫る。それでも臆さず、躊躇せず、雷慈慟は冷静に片手を翳し思考を巡らせた。ARM-バインダーの9枚盾は一塊の堅固な砦となり――巨大な戦艦と激突する!
「――ッ……!」
 凄まじい衝撃が雪崩れ込んで来た、脳。何秒保つか、否、何秒留める事が出来ただろうか――突進を防いだ代価。目の前で盾を砕いた角に胴を貫かれて。
「ぐふッ……!」
 未だだ。まだ諦めて堪るか。咆哮。こんな所で悠長に眠っている訳にはいかないのだ。自分は、未だ。鮮血を迸らせ身体から無理に鬼の角を引き抜いて。

「貴様を打倒し、次の戦場へ……往く!」

 運命を燃やし、放つ気糸が鬼の片目を穿ち抜いた。海に落ちる――そんな雷慈慟を受け止めたのは、海を走り駆け付けた天乃。彼を負ぶって岩島へと走り出す。最中に思った。
 そろそろ、自分達の出番か。
 横目に見遣った鬼は既にかなり岩島へと接近していた。かなりの時間、仲間達が粘ってくれたお陰か藤壺はほぼ全滅し鬼の分厚い装甲にも幾つもの浅くない傷が出来ている。

「でけえ敵だな……ソレに対し俺が、最終防衛ライン。実に燃えるシチュエーションじゃないか」
 背に護るは祠。竜一が見遣る先では口に稲妻を纏った島鬼――刹那に放たれた轟砲。雷。面白い、この手に持つのは『雷切』、かつて雷雲の異形を切り裂いた刀。本当は購買の一品なのだけれど。

「守るのが、俺の役目だ……! 耐え切って見せるさ!」

 構えた刃で砲を受け止めて耐え凌ぐ。四散する雷撃に肌が焼かれようとも一歩も引かず。
「命がけなんて台詞は吐かないが……やる事やってみせなきゃ、かっこわるくてハニーに合わせる顔がねえ!」
 振るった切っ先を突き付けて。その視線の先では島に雷慈慟を下ろした天乃が波を駆けて島鬼へと向かっていた。
「こんなに、大きいの縛れる……かな」
 言葉と共に指先から紡ぐ糸。縛り上げる。その間に一時避難していた船も戻り、それに乗ったリベリスタが猛攻撃を始める。
 ここが正念場。
「喰らいなさい。二度と動けないようにしてあげる!」
 高密度の魔力で造られたあひるの矢が、ジルのフローズンダガーが、雷慈慟の気糸が。糸の束縛を振り解いたそこへレイラインがソニックエッジを放ち鬼を留まらせる。
「往かせるかよぉお!」
「沈めー!」
 残り僅かとなった距離だけはこれ以上。瀬恋の射撃と岬の真空刃が怯ませる。

「蟻の一穴、が石垣を壊す、みたいに……壊して、あげる」

 襲い来る巨大な牙を躱し、天乃が鬼の頬を一撫でした。それは死の爆弾、凄まじい爆発と共に悲鳴が海を揺るがした。
滅茶苦茶に暴れ狂う鬼。されど吹き飛ばされた天乃は海面で受け身を取りゆらりと立ち上がった。足りない。まだ足りない。もっと、やろう?再度拘束の糸を紡いで。
 誰も死なせない。傷つけさせない。船上のあひるは祈る。奇跡を願う。決死の覚悟で戦いを繰り広げる大切な仲間達の為に。

「全員揃って、生きて帰るの――我が名の下に、汝の慈愛を!」

 顕現するは慈悲なる者の優しき息吹。吹き抜ける奇跡が仲間を苛む何もかもを癒し去る。立ち上がれ。戦おう。立ち向かおう。共に勝利を。
 後少し。
 我武者羅に攻撃してくる鬼はそれだけ余裕が無いのだろう。祠の一点狙いでは無くリベリスタ狙いになった事が僥倖か。
 祠には傷一つない。運命を燃やしてでも竜一は立つ。額の血を拭う。視線の先。天乃の爆弾が激しい暴力を撒き散らした音。それと、大きく開かれた島鬼の口。
 轟砲か。
 否。
「うわ、ッ!?」
 まるで地面がひっくり返ったかの様な。重力?違う。吸い込まれる、天乃と共に鬼の胃袋へ。
 光が閉ざされ閉じ込められた。噎せ返る様な悪臭と身体を溶かす強酸の中。

 二人を待ち受けるのは『死』――尤も、そんなのお断りだが。

「食あたり……注意」
「ちょっと図体がでかいからって、人間を、侮るんじゃねええええええ!」

 燃える運命と共に放たれた死の爆弾が、破滅の一撃が。
 島鬼の腹を突き破る!
「―― !」
 鬼の血反吐交じりの悲鳴。必殺の致命傷。噴き出す血が海を赤く染めた。
 それでも戦艦は進行を止めず。死なば諸共とでも言うべきか、最後の特攻に出た。
 形振り構わず祠へと猛突進を始めたのである。

「くそったれがぁ。まだ終わりじゃないよ」

 しかし、祠の前。竜一の代わりに島へ立った瀬恋が居た。
 鬼神の如く。形相。放つオーラ。ガンを飛ばして。拳を鳴らして。
「こんな場所よりさぁ、あの男はずっと危険な場所で戦ってんだよ。あの男は絶対に事を為して帰ってくる。
 その時によぉ、失敗してシケたツラァ見せたくねぇんだよ……」
 Terrible Disasterをゆらりと向けた。せり出した砲身は何度も弾丸を吐き、凄まじい熱が籠っている。ああピッタリだ、今のこの沸き上がる気持ちにピッタリだ。まるで銃身の熱が全身にまで感染したかの様な心地。

「この場所でたった一人だけ、信用してもいいと思えるアイツによぉ、慰められるなんてゴメンなんだよぉ!」

 咆哮。瀬恋が叫んだ刹那。
 全てが、回り出した。
 全てが、燃え上がった。
 黒く黒く黒く黒く。
 奇跡か、破滅か。
 生か、死か。
 それは少女の勝利への執念が生んだ結果。

 止まる事を知らぬ歯車が紡ぎ出す――破滅と奇跡の黙示録。

「絶対に勝ってやる! アタシは――対等でいるために、絶対に勝たなくちゃならねぇんだ!!」

 燃えろ。
 黒く。
 燃えろ。
 塗り潰してやる。
 燃えろ。
 アタシの全て。


「死ねぇぇぇぇぇぇえええええええええええッ!!!」


 最悪な災厄。
 そう名付けられた銃砲が吐き出したのは、瀬恋から溢れる荒れ狂う運命。奈落よりも黒く淵い弾丸。
 それは島鬼よりも巨大に膨れ上がり、唸りを上げて――消し飛ばした。塵も残さず、海を裂き、水平線の彼方まで真っ黒に。

 何もかもを塗り潰す、恐るべき『絶対必殺』の奇跡。

 後に残ったのは、凄まじい衝撃に巻き起こった荒波、暴風。
 それらに瀬恋は雄然と黒い髪を靡かせて。

「因果応報、三世因果。――報いを受けな」

 掴んだのは、紛れもない勝利。

●青
 そして、祠が遠ざかって行く。船の中。
 あひるはじっとそれを見詰めていた。風に羽を揺らし、手を合わせて目を閉じる。

(あひるたち、しっかり守れたよ)

 その祈りは、見守ってくれていた吉備津彦に。



『了』

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
メルクリィ:
「お疲れ様です皆々様、ご無事で本当に何よりですぞ……! ゆっくり休んで体の疲れを取って下さいね」

 だそうです。お疲れ様でした。
 如何だったでしょうか。

 見事封印は護られ、島鬼は倒されました。素晴らしい。
 MVPは瀬恋さんへ。理由は最早言わずともがな、でしょう。こちらまでとても熱くなりました!

 これからの依頼も頑張って下さいね。
 お疲れ様でした、ご参加ありがとうございました!