● 岡山県、血洗の瀧神社。 太陽の神、月の神の弟とされ、海を統べるモノとして生まれた神は、神話の中ヤマタノオロチという化け物を倒し、英雄となった。 その際、血で穢れた剣を洗ったのが、この神社の神体とされる10メートルもの落差のある血洗の瀧である。と、伝えられている。 そこに、不穏な声が響く。 「体が疼くぜぇ……。どんだけ長ぇ時間、縛られてたんだろーなぁ……」 ごきごき、と、体の関節を鳴らし、ソレは辺りを見回した。 此処らも、昔とは風景が随分違う。だが、この場所が目障りなモノなのは、昔と変わりない。 「あのお方は、まだ目覚められてねぇ。だったら、俺がその道標にならねぇとなぁ」 ジャリ、と、神社の砂利を踏みしだく。 「さぁて、まずはこっからか」 一本角の鬼は、拝殿奥、御神体と言われる『血洗の瀧』を探す。 その耳に、どうどうと水の落ちる音が聴こえた。 ● 「鬼に関わる事件が岡山で多発しているのは、既に皆さんもご存知だと思います。その岡山にて先日、アークのリベリスタが『禍鬼』と接触した際に、情報を入手しました。『禍鬼』の狙い。それは彼等の王、つまり鬼の王『温羅』の復活です。鬼自体は強敵ではありますが、対処出来ない相手では無いでしょう。ですが、王ともなれば唯のアザーバイドのレベルを超える大変な脅威である可能性が高いと思われます」 リベリスタ達は、『運命オペレーター』天原和泉(nBNE000024)の説明に聞き入っていた。 「その『禍鬼』が動き出す姿を、万華鏡が感知しました。『禍鬼』は、蘇った鬼達を自らに従い動く戦力として県内の各霊場で封印を破壊させようとしています」 リベリスタたちの前、スクリーンに画像が映し出される。 「この神社は、血洗の瀧神社といいます。ここに、『禍鬼』に封印の破壊を命じられた『鬼』がいます」 名称を教えられた神社の画像と並んで、一見、若い男のように見える着流しに和服を纏った、額に一本角のある『鬼』の姿が映し出される。 「皆さんに退治して頂きたいのは、この鬼他、2体の鬼です。人間のように見えますが、その力は人のそれとは比べ物になりません。ちなみに、画像のこの鬼は、この集団の纏め役をしている鬼で『一本角』と言います。他の鬼は、『二本角』『三本角』と言います。さて、彼ら鬼の和服の中には多数の武器が隠されています。全て、相見えた者から奪ったものです。彼は手に入れた全ての武器を我が武器として戦いに使います。ですが、それだけが強さではありません」 和泉は資料を見つめていた視線を、リベリスタたちに移す。 「この鬼達には、瞬間再生とも言える程の回復力が備わっています。受けた傷もすぐ癒え、それは、バッドステータスでさえも10秒後には回復してしまう程です。更に、かなりの知性を持っており、簡単な罠や潜伏しての奇襲などは見破ってしまう可能性もあります。」 リベリスタ達は、互いの顔を見合わせた。和泉は一際大きく声を発する。 「『温羅』を含む鬼の大部分は未だ封印状態にあります。これは、岡山県に多数ある霊場、祭具、神器等が彼等鬼を封印の中に閉じ込めるバックアップとして機能しているからこそです。現状も鬼は次々復活していますが、このままならば『大物』が出現する事はないでしょう。だからこそ、『禍鬼』は封印を維持する役目である血洗の瀧神社の御神体を破壊するべく、鬼を差し向かわせたのです。他の霊場などにもすでに鬼は放たれています。また、街中に鬼を放ち大惨事を引き起こそうともしています」 スクリーンの画像を消し、資料を閉じると和泉はリベリスタ達へ向き直る。 「アークは、人間に害意を持つ危険で強力なアザーバイド達がこれ以上勢力を増す事を看過は出来ません。また、陽動と分かっていても街中の鬼を捨て置く訳にもいきません。『禍鬼』の企みを阻止すると共に一般人の命を守らなければなりません。他のリベリスタの皆さんも、同様に作戦に関わることになります。皆さんは、『血洗の瀧神社の封印を破壊しようとする鬼を退治する事』に、全力を注いでください」 非常に強い敵です。油断せずに、よろしくお願いします。と、和泉は頭を下げ、ブリーフィングルームを後にした。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:叢雲 秀人 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年03月03日(土)00:09 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●両者相見える刻 血洗の瀧神社。古き神話の神に由来するその地で、その名の如き血で血を洗う戦いが起きようとしていた。 「なぁんだぁ? てめぇらは」 三体の鬼は、リベリスタ達を見遣り、面倒そうな声を上げた。 「どうやら、目障りなチカラを持ってるみてぇだなぁ」 遠き過去の記憶。けれど、封じられていた彼らには、まるで昨日のことのように思い出される。 己等を、封じた。あのチカラ。――にっくき、あの。 「てめぇらが居ると、あの瀧へ行けねぇんだよ!!」 目指すは血洗の瀧の封印のみと、一本角の鬼が叫ぶ。羽織っていた着物が肌蹴、無数の刃が、リベリスタ達を襲った。 「くっ」 「あぁっ!!」 警戒しなければいけないことは、わかっていた。 けれど、鬼の技はその注意を凌駕する速さを以って、木の陰に逃げようとしたリベリスタ達をも貫く。 回避できたのは、予め木の陰に陣取っていた『アルブ・フロアレ』草臥 木蓮(BNE002229)と、恋人の『八咫烏』雑賀 龍治(BNE002797)の、二人のみ。 「はっ、はぁ!! よえぇなぁ!」 残る二本角と三本角の鬼は、凄まじい火柱と巨大な氷柱を地より呼び出した。 しかし、リベリスタとて敵の速さを知らなかったわけではない。 「長い間、不自由だったのは辛かったでしょう、けど。もう、不自由になんてしないわ」 ひらりとスカートが風に舞う。白い脚に受けた傷は赤い線を引いているが、それを気にも留めずに自らを強化する。 鬼の速度に、勝るために。 「ほんとうに、これで終わりにしましょう。さあさ、鬼退治を、はじめましょう」 『作曲者ヴィルの寵愛』ポルカ・ポレチュカ(BNE003296)が、三本角の鬼へと向かう。 それにあわせ、浅倉 貴志(BNE002656)は、長い手足を水が流れる如く、閃かせた。 その構えは、攻防共に長けしもの。自らが抑え役を担った相手、一本角と対峙する。 先ほど獄炎に巻かれ、身体から煙を上げながらも、次手に賭けるは『影の継承者』斜堂・影継(BNE000955)。 彼の心は静かな怒りに満ちていた。 「アンタら、そうやって投げ散らかしてる武器の事、どう思うよ?」 今まさに、仲間達を、そして己をも傷つけた無数の刃。刀、槍、苦無、小刀、円月刀など、様々な物。 それは、鬼たちが今まで殺めてきた者達から奪い取ったものだ。 (武器は戦う者達の魂を映すもの。奪った武器を軽んじるのは、自分が戦った者達を軽んじるのと同じ事だ) そう思う影継の静かな怒りは、一本角の下卑た笑いで一気に爆発した。 「どうもねぇなぁ。よえぇ奴が使ってた物なんざぁ、どうなったって構いやしねぇ」 影継は、武器を握る両手に力を込め、呟く。 「我が両手の無銘の武器達よ。俺の怒りを奴らに伝えるぞ!」 その気持ちと同じく、声を上げる者が居た。 「そーゆーの、あんま好きじゃあないなー。命を預ける相方は一本で十分、いや持て余すぐらいなのに―」 見た目の邪悪なハルバードを持ち上げたのは、『吶喊ハルバーダー』小崎・岬(BNE002119)。氷柱に貫かれた身体は、同時に受けた刃傷と相まって血塗れだが、それを物ともせずハルバードを振り上げる。 「じゃあ、行こっかアンタレス。奪ってみろよ―、振ることだって出来ないだろうけどねー」 一気に二本角へ迫り、顔面にハルバードを叩きつける。その勢いで、二本角は後方へ吹っ飛ばされた。 「あ」 三本角から間の抜けた声があがる。二本角が吹っ飛んだことで、今まで保っていた挟撃の陣形が崩れたのだ。 まさに今、二本角を吹っ飛ばした娘へと、二人で集中攻撃を行う予定は見事に崩れ去った。 「やれやれ、鬼なんてもんとやりあう事になるとはな」 逞しい肉体に光り輝くオーラを纏い、『気焔万丈』ソウル・ゴッド・ローゼス(BNE000220)は薄く笑みを浮かべた。 先手を取られ、状況は芳しいとは言えない。けれど、ピンチの時でも笑みは忘れない。 そして、仲間達を支える鍵は自らであると理解する彼は、まずは自らの強化を図ったのである。 「しっかり働いてこいよ小僧ども、後ろにゃ俺がいてやるからよ」 「みなさん……ワタシはワタシの役割を精一杯果たせるよう頑張ります……みなさんもご武運を……」 同じく、この戦いの鍵である癒し手を担う、『青い目のヤマトナデシコ』リサリサ・J・マルター(BNE002558)は、両手を前に組み祈りを捧げる。 「大地の聖霊よ……みなさんに力を……!」 その祈りは、ポルカに浄化の鎧を纏わせた。 ●鬼の脅威 一本角が振り下ろした巨大な刀は、凄まじい風圧と共に貴志を両断しようとする。それを両手を組んで受け止めると、貴志の腕に赤い筋が入った。だがそれでも、一歩も退かない。 「ほーぉ。少しはやる気あんのかぁ?」 ニタァ、と、鬼が嗤う。 その腕を掴んだまま身体を反転させると、貴志はぶんと足を振った。その風圧から巻き起こした風の刃は三本角へと向かう。 事前の説明で聞いた鬼の回復力は凄まじく、一人ひとりがバラバラに攻撃していたのでは倒すことは出来ないだろう。 (でも、集中して攻撃するのなら確実に倒せるでしょう。まずは、三本角を倒さなければ) 自らを一本角の鬼の壁として、敢えて仲間達が戦う鬼を攻撃する。その思いは三本角へのダメージとなって仲間達へ届く。 同じ思いを持つものは、此処にも。 「軽ー! 持ってるだけでまるで使えてないんだねー。どうせ次は武器なんか戯れで使ってるだけとか言って神秘に逃げるんだ、カッコ悪ー」 挑発し、二本角の注意を自分へと向け。岬は重そうなハルバードを高々と振り上げ、目にも留まらぬ速さで振りぬいた。 真空の刃が貴志が狙ったのと同じく、三本角の鬼へと向かい、右腕を切り裂いた。 「グァァッ!」 裂けた傷口を押さえる三本角。 「クソガキがぁ!」 二本角の鬼が、岬とその向こうに居るリベリスタ達を睨み付ける。 「昇り竜が来るぞ! 気をつけろ!」 その声に、リベリスタ達は立ち位置を変更しようと動く、が、捕まったのは――岬。 「ああぁぁぁっ!!」 足元から登る炎の龍に体中を舐め取られる。 「すぐに回復しますっ……癒しの力よ……この方に加護を……」 リサリサの祈りは、浄化の鎧を岬に纏わる。しかし、獄炎を回復するまでには至らない。すかさず畳み掛けられるソウルのブレイクフィアー。それは、巻きつく炎を消し去った。 「はっ! 気合がたりねえぞ、若造ども! お前らの力はそんなもんじゃねえだろうが!」 お前らが居るから、俺はこの仕事が全う出来るんだとばかりに、ソウルは笑った。 「最後には自分だけは助けてくれって言うようになんのによぉ」 嘲る様に、三本角が嗤う。そして、開かれた羽織から無数の武器が放たれ、ポルカ、影継、岬、そして癒し手二人にも刃が突き刺さる。 同時に複数が傷つくのは、初手も含めて既に2回。未だダメージを回復出来てない仲間が殆どである。 木の陰から状況を見ていた木蓮と龍治は、こらちも複数を狙わんとスターライトシュートを放った。 狙撃担当の2人の光弾は、三本角と二本角へとヒットする。 更に三本角へ、影継のデッドオアアライブ、ポルカの残像剣が襲い掛かった。 けれど、三本角は倒れない。 そして次の瞬間、切り裂かれた腕も見る間に繋がって行き、満身創痍であった鬼の肉体から傷が全て消えた。 敵は傷を完全に回復し、リベリスタ達は続けざまに受けた乱舞によるダメージを蓄積したまま。 回復の技を仲間一人のみに費やした代償は、まず、岬が受けることとなる。 「ガキは、そろそろねんねの時間だぜぇ」 岬の体を再度炎の柱が蹂躙し、三本角が放った刃の群れの幾本かが突き刺さる。 「かは……っ」 火柱に持ち上げられた身体が、炎の鎮火と共に地に落ちる。 「……く、……くそー……」 それ程のダメージを受けても。薄れ行く意識が暗闇に落ちる寸前、一筋の光に手を伸ばす岬。まだ、立ち上がれる。 一本角は一刀を貴志へと打ちつけた。 先の攻撃は腕を傷つけ、今度狙われたのは、脳天。 額を血が伝い、彼は自らが受けたダメージを鑑みる。 唇が捲れ、剥き出した牙は、鬼の其れとは違うが、これもまた『鬼』の名を持つ者の力。 「なにしやが……っ」 一本角の首に喰らいつき、その生命力を吸い、奪いとる。 「幾ら回復しようとも、そのおかげで僕も回復できるのです」 とはいえ、鬼と違って完全に回復できるわけではないが。けれど、倒れることはない。 貴志は再び、一本角の前に立った。 牙剥く者はこちらにも。 三本角の腕に喰らいつくと、血を吸い、ごくりと喉を鳴らす。 受けた刃で裂かれたワンピースはそのままでも、身体には力が満ちる。けれど――娘は憂いた声を漏らす。 「ああ、もう。だから吸血ってきらいよ。汚れるんだもの」 形の良い顎を伝って服へぽたりと落ちた赤い雫を指で掬い、舐めとる。 「……それに、美味しくないわ」 次いで後方から飛来した、二本角の放った刃の乱舞を高速で回避すると、ポルカは問う。 「それにしても。奪った武器をアレもコレもソレもって、品がないわね。でもぼくも、日本の武器って、とってもとっても興味があるわ。どんな威力なの? 使い勝手はどう? ねえ、おしえて」 「あぁ? 怖くて頭がイカレちまったのかぁ? お望みならやってやるぜっ」 轟と音を立てて、刃が振り下ろされる。 赤い鮮血が彼女の身から噴出す――かと思われたが、彼女の身は残像を描き複数の刃が幾重にもなって襲い掛かる。 「ぼくの武器のことも知って頂ければ、うれしいわ。その身でとくと、あじわって?」 ドスっと、三本角の胸に突き刺さる刃。ごぼりと、口から血が吐き出される。 「……ね?」 ポルカの視線は仲間たちへと向く。三本角に与えたダメージは先ほどより大きい。畳み掛けるなら今、と、リベリスタ達は理解した。 「さあ、アンタ達の生き死には……俺が決めるぜ!」 誓いを込めた両手に握る相棒を、三本角へ向ける影継。ポルカが与えた傷に上乗せするように、胸へチェーンソーが突き刺さる。 「ぐあぁっ」 リベリスタ達の攻撃は止まらない。 死の淵から戻った岬の疾風が、鬼の背中から腹を突き抜ける。 「とどめだ、いくぜ龍治!」 木蓮の声が響く。あわせ放たれた弾丸は三本角のこめかみを撃ち抜き――。だが、それでも鬼は倒れない。 一手足りない事に、貴志は気づいた。 「どうやら、6人がかりの攻撃でないと倒れないようですね」 一本角と対峙する身を反転させると蹴撃からカマイタチを放つ。 カマイタチが鬼の首を跳ね飛ばし、三本角が倒れた。 「やった――!」 リベリスタの声が上がる。しかし、歓声を上回る鬼の声。 「背中が隙だらけだぜぇ!」 一刀両断。三本角に止めを刺すために反転させたままの貴志の身体が、一本角に両断される。 「―――!!」 崩れ落ちる貴志の身体。しかし、ここで倒れるわけには行かない。 闇に落ちる意識を、貴志は自らの手で引きずり上げる。誰一人欠けても、この戦いは勝てないのだから。 ●生命を燃やし尽くして 三本角を倒した後、生命を燃やし復帰した貴志に一本角の抑えを任せながら、リベリスタ達は二本角へ集中攻撃を行っていた。 けれど、二本角は三本角の体力を上回るのか、それとも致命的なダメージを与える攻撃が出来ていないのか、未だ健在であった。 「くそっ、後2体だってのに……。皆、大丈夫か!? 余力がまずいヤツは、集中してから攻撃するようにしてくれ!」 影継は口惜しげに呟くと、仲間達に問うと同時に自らも気を集め減少した力を回復した。 「おもしれぇなぁ。まだ俺らに勝つ気でいんのか。本当に……人間ってぇのは、愚かだぜ」 眼前の貴志も、自らの命を燃やす如く再び立ち上がってきた。何故だ。 「二本! ひと思いにやっちまえぇ!!」 その叫びに、二本角の筋肉が爆発したように盛り上がる。一本角の鼓舞により、攻撃力が跳ね上がったの事を理解する。 「く……っ」 「あぁ……」 同時に、ポルカ、影継、木蓮が地に膝を着く。 鬼の叫びにより脳に影響を受けた三人に気づき、ソウルはいち早く行動を取った。 「俺の出番だな! 倒れるのはまだ早いぜ!」 ブレイクフィアーで三人のステータスを浄化しようと試みる。 しかし、全てを解除することは叶わず。 「回復が、効きません……っ」 歌を奏でても回復できぬ仲間がいることに気づき、リサリサが小さく叫ぶ。 致命の影響が残るまま、一本角と二本角から無数の刃が放たれた。 それは、全てのリベリスタの命を絶やそうとする。 「あ――っ」 「くぁっ」 刃が身を切り裂き、貫く中、攻撃の手を休めるなとばかりに銃を構える姿があった。 「負けるか!」 木蓮――。無数の刃に身を貫かれながらも、引鉄を引く。 刃をかいくぐり、その弾丸は二本角の眉間を貫く。 「木蓮!!」 体中から血を流しながらも恋人が報いた一撃。無駄にするまいと火縄銃を構え、龍治は引鉄を引いた。 「ぐはぁっ」 二本角の眉間。木蓮があけた穴をさらに広げるかの如く、弾丸が傷口を抉り貫く。 けれど、ここで攻撃が途切れては傷は消えてしまう。 「無駄にはしない、わ」 残り僅かな力を振り絞ると、ポルカは舞う。 「もう一度、味わってちょうだい?」 傷口に剣を突き立て、横へと振りぬいた。 夥しい血しぶき。もう少し、もう少しで倒せる。 胸に刺さった苦無を引き抜くと、彼女はハルバードを振り上げる。 「効かないなー。握り方から分かってないんだろー」 岬のメガクラッシュが、頭の裂けた二本角を吹っ飛ばす。 吹き飛んだ先に居たのは、影継。 「言ったろ。生き死には俺が決めるって」 渾身の一撃を、叩き付け。二本角は頭部を粉砕されて息絶えた。 ●血祭りの終焉 残るは、一本角のみ。しかし、ポルカは回復の技が効かぬ身となり、他の仲間も、傷の無い者などいない。 (恐らく、一本角は他の鬼よりも更に高い体力を持つでしょう。今まででもギリギリだったというのに……) 下手に先手を取られば、倒せる確率は一気に下がる。貴志は、自らと対峙する一本角を睨み付けた。 既に一度倒れた我が身は、次に倒れればただでは済まぬかも知れない。けれど、この鬼を倒すためには。 貴志は渾身の力を込め、鋭い蹴りを放った。 ごきり。鬼の胴が軋んだ事を感じる。 「結構いてぇじゃねぇか。お前、やればできんだなぁ?」 貴志の攻撃を初めて受けた一本角は嗤う。そして攻撃によって隙が出来た貴志目掛け、一刀を打ち込み。貴志は倒れ――今度は、起き上がれなかった。 これが最後の攻撃だ。誰もがそう思う中、ポルカと岬が一本角へと襲い掛かる。 よろめく一本角。再び胴に受けた傷は重い。 「己の得物に託す必勝の意志にかけて、負けるわけにゃぁいかないんだよ!」 影継の想いを込めたデッドオアアライブが、一本角の懐で炸裂する。 「大丈夫だ。落ち着け。何時も通りやれば良い」 「うん……足だけは引っ張りたくないな、気合入れないと……!」 傷だらけの木蓮の身を支え起こした龍治は、愛用の小銃を握らせる。 自分が支えているから、撃て。そして、自らも片手で火縄銃を構える。 「げふっ」 2人の弾丸は狙いを外す事はなく。一本角は、身体を九の字に曲げ、膝を着く。 しかし、攻撃手はこれで尽きる。 「まずい……」 既に回復手のソウルとリサリサは動いた後。残る手はもうない。 また、回復してしまうのか――。 しかし。 「あ?」 回復するに違いないと思っていた一本角が、素っ頓狂な声を上げた。胴の痛みも、弾丸を受けた傷口から溢れる血も止まらない。 「効いた!」 致命――。一瞬だけでも回復をとめられればと願い、放った影継の一撃が一本角の回復を妨げた。 「いける!」 「いくぞ!」 「うおおおおおお!! 禍鬼様をお呼びするまで、俺は倒れねぇ!!」 一本角は向かってくるリベリスタへ、無数の武器を放つ。けれど、傷つき、刃に打たれながらも、彼らはその動きを止めることは無く。 「禍鬼……か。あの時取り逃がしてしまったからな。せめて、これ以上の企みは防がねばならん」 龍治の弾丸が、鬼の角をへし折る。 ふらつきながらも、奥に待つ『血洗の瀧』を見据える一本角。あれさえ破壊すれば。 「おおっと、此処から先の通行は有料だ。払ってもらうぜ、テメェの命でな」 ソウルの全体重をかけたスマッシュが一本角を打ち砕き、鬼は再び膝を地へ落とす。 仲間達の受けた傷を癒すため、リサリサは祈りを捧げる。 「今回の闘いは純粋な力と力の勝負……最後に勝つのは精神力の……より気持ちの強いものが勝利するでしょう……であればワタシ達に負ける道理はありません……。ワタシ達の守ろうという気持ちに敵うものなどあるはずはないのですからっ」 「これが最後よ。ぼくはもう、動きたくないわ」 満身創痍のポルカは、受けた傷によろめきながらもソニックエッジを繰り出した。 凄まじき連続攻撃により追い詰められ、樹木に背後を取られた鬼は、その身を幹に縫い付けられ――息絶えた。 まさに、一手の勝負。満身創痍のリベリスタ達は、見事勝利したのだった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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