●その力は何処へ向く 「……お、おおおおおお!? 何だッ、コレ……動かせるぞ、俺の思い通りに!!」 真夜中、人の居なくなったとある剣道場。其処で、腰を抜かした小柄な少年は、眼前の光景に思わず声を上げた。彼の手には、一本の真剣が携えられている。そして、そんな彼の周囲を取り巻くのは――九本の、これまた真剣。彼を護るようにして、取り囲み、九本の真剣は宙を舞っているのだ。 その一本を、少年は手も触れずに、床に突刺した。すると、刃は見事に板を貫通し、真っ直ぐに刺さったまま、動かなくなった。 それを認めて、今度は少年は、矢張り一切の接触無く、剣を引き抜いた。いとも容易く刃はするりと抜け、再び宙を舞う。 「やっぱり……」 一連の現象が、自分の念によって為されたものだと少年が理解するのに、時間はかからなかった。そして少年はそれを悟ると、嬉々としてほくそ笑む。 「これがあれば……俺だって、出来る!」 ――俺を差別しやがった奴等に仕返しが出来る! ●その音色の名前 「……刃鳴り……ブレイド・サウンドか、悪くない」 開口一番、そんな事をのたまった『駆ける黒猫』将門伸暁(nBNE000006)に、リベリスタ達は何事かと、怪訝そうな視線を向ける。 が、伸暁本人は何処吹く風で、続く言葉を紡いだ。 「じゃ、今回の任務について話すとしようか。今回のメインはアーティファクトの回収。ついでに、傷心でヒネちまったフィクサード一歩手前な少年の相手もして貰いたい」 言うと、伸暁はリベリスタ達が手にした資料に目を落とすよう促す。 「戦場になるのは、何処にでもありがちな剣術道場。アーティファクトは、其処に飾られてた真剣が、覚醒しちまったモンらしい」 伸暁の言葉と同時にモニターに映し出されたのは、美しい直刃を有した一振りの日本刀であった。時代がかってはいるものの手入れは行き届いているらしく、かなり良い状態で保管されていたようだ。 それが、覚醒し、アーティファクトとなったという。また、現在の所有者はそのアーティファクトに触れて覚醒したのだと、伸暁は告げた。 「傷心の彼、名前は鶏内理生。取り立てて目立ったところも無い高校生で、内向的な性格が災いして、同期のメンバーにパシられたり、ストレスの捌け口にされたり、まぁ色々ヘイトな目に遭ってたってワケさ」 ヘイトな目=嫌な目、とリベリスタ達が理解するのを待たずに、伸暁はさっさと話を進めてしまう。 「そんな理生少年がある日、問題のアーティファクト“十束剣”をゲットした。このアーティファクトは神秘の力で九本の剣真剣を作り出し、所有者の敵をエクスクルージョン、つまり、排除する。アーティファクト本体と合わせると、十本の真剣にガードされるってコトだな」 一見するとインヤンマスターのスキルである“陰陽・刀儀”にも見えるだろう。 「で、だ。理生少年はこのアーティファクトを盗み出し、同期への復讐を企んでる。だから、アークとしてはそれは絶対に見過ごせない」 不意に、伸暁がニヒルに笑う。 「憎しみの輪廻って奴をさ……続かせるワケにはいかないだろう? 狂っちまったブレイド・サウンド、止めてきな。期待してるぜ?」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:西条智沙 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年02月19日(日)23:54 |
||
|
||||
|
■メイン参加者 8人■ | |||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
●関守が如く とある日の早朝。 リベリスタ達は、剣道場を訪れていた。 パッと見は古き良き剣道場を、外観だけ小綺麗に改装したといった様子である。規模はそれなりに大きそうだ。アーティファクトを手にしたという少年――鶏内理生も此処で剣道を習っていたのだろう。 だが、周囲の人間が彼を変えてしまったか。今、彼は剣の道は愚か人としての道をも踏み外そうとしている。 「復讐と呼ぶにも足らないような稚拙な仕返しにわざわざ付き合わされる刀も不憫なものよのう」 「剣の方もどれだけ捻くれてんだっての、悪に染まって能力を振るうなんてよ」 ぽつりと呟く『煉獄夜叉』神狩・陣兵衛(BNE002153)に、吐き捨てるように言い放つ緋塚・陽子(BNE003359)。彼女達の言う事、双方共に尤もだ。しかし皮肉な事に、どんな刀であっても得てして主を選べないものである。 「まァ、パシリとかストレスの捌け口にされるのはイラつくだろうけどもな」 『冥滅騎』神城・涼(BNE001343)は苦笑する。それでも、アーティファクトで一般人を傷付けようというのは頂けない。戦う事になろうとも、止めなければならない。その決意が彼にはある。 そう。今回の件、下手をすれば理生自身も、彼を苦しめた人物達と同じになってしまうのだ。 「だからァ!! 手前の力だけで勝てっつーんだよコラァ!!」 思わず道場に向かって怒鳴りつけた『ラースフルライト』梅本 瑠璃丸(BNE003233)。こういった場合に道具に頼る事は大抵褒められる事ではない。覚悟無く他者を傷付ける道具であれば、尚の事。 その時、依子・アルジフ・ルッチェラント(BNE000816)はその淡い薔薇色の双眸に、幾つかの人影を映す。彼等は皆、一様に青年へと生っていく段階、その真っ最中といった風情の少年達だ。竹刀、防具共に袋に詰め携えている所を見ると、成程彼等が理生の同期であるのだろう。 「おいガキども」 彼等は背後から声を掛けられ振り返り――戦慄した。 其処にいたのはやたら強面でガタイが良く、派手な風体の、所謂ヤ○ザさんと思しき背格好の男であったのだ。 「何かこの道場に用でもあるんかい?」 「ええええっとは、はい、俺達、仲間に呼び出されて」 「済まないが、鶏内理生……彼には俺達が一足先に用がある。彼の用事は、後日対応させよう」 『誰が為の力』新城・拓真(BNE000644)も少年達の下へ赴き、引き返して欲しい旨を伝える。真実を言う訳にもいかないが、犠牲者を生む訳にもいかない。 「そういうこった……ガキは帰って寝ろ!」 「すみましぇん!!」 ヤ○ザさん――『星守』神音・武雷(BNE002221)が幻視によって自身をそう見せかけているのであるが――が一喝すると、少年達は一目散に逃げ出してゆく。陣兵衛や瑠璃丸も睨みを利かせている為、余計にヤバいと感じたようである。腰を抜かして逃げ遅れた少年もいたが、髪を無造作に垂らし、ゆっくりと近付いてくる『底無し沼』マク・アヌ(BNE003173)の姿を見て這う這うの体でその場を離れていった。 「人払いは何とかなったなぁ」 幻視を解き、今度は豪快に笑う武雷。拓真も軽く頷いた。 「では行こうか。彼はまだ、引き返す事の出来る人間だ」 ――ならば、俺達の手で連れ戻す。 ●理生少年 広い剣道場の中には、一人の少年がいた。 黒髪のショートヘアー、三白眼、そばかすに鼻には絆創膏、中肉中背――と、言ってしまっては悪いがぱっとしない風体の少年である。恐らくは、彼が今回の騒動を起こすであろう犯人、理生だ。 彼はリベリスタ達を振り返り、一瞬、きょとんとした表情を見せた。だが、次の瞬間には何処か粘着質な目つきで、警戒するように睨み付けてくる。 「……誰だよ、お前等」 その問いには、拓真が一歩進み出て、答える。礼を失せず靴は脱ぎ、武装もしていない。 「俺の名は新城拓真。解り易く言うなら……君が見つけた刀を回収しに来た者だ」 理生の身が竦む。見れば彼は、一本の真剣を抱えていた。あれが“十束剣”であろう。 (おれが持ってる剣も一応、布津之御霊なんで縁を感じるなぁ) 武雷の有する火雷伝佐士布都神――布津之御霊も、十束剣に分類される神剣である。だから武雷は興味を持った。故に、理生の持つ剣を良く観察する。 長さは見た所武雷の一振りと大差は無さそうだ。今はその刀身は漆黒の鞘に納まっており見えないが、恐らくはモニターで見た直刃が其処に隠されているのだろう。 理生は、拓真の言葉を受けて、また武雷の視線に気付いたらしく、十束剣を握り締める力を強めたようであった。矢張りと言うべきか、少なくとも今の所、すんなり渡すつもりは無いらしい。 (いじめは嫌い、心も体もイタイから) 依子は思う。イタイのは嫌な事。その点だけで言えば、理生の気持ちも判らなくはないのだが。 (でも、革醒して、アーティファクトでやり返すのは、駄目) それでは過去の自分と同じではないか。何も知らずに得た力で、何も知らぬままに悪の道へと歩を進める。過去の依子はそうだった。そして、追われる身となったのだ。 辛かった。苦しかった。自分を支えてくれた存在がいなければどうなっていた事か。 そう、思うから。 「人殺しは、駄目です」 おうよ、と武雷も依子の言葉に頷いて。 「十束剣ってのは、神様から貰うモンなんだぜ? 世界を守る為だったり、世の中を平和にするためにな。その使い道がいじめっこへの仕返しってのは恥ずかしくねぇのかよ」 神に仕える身であるから尚更。武雷は言わずにはいられなかった。十束剣の本来あるべき形は、理生の望むものではない。理生が十束剣のいわれを知っているかは定かではないが、どの道、理生が神剣を、否、剣を扱う者として恥ずべき行為をしようとしている事に変わりは無いのだから。 多少は自覚があるのか、たじろぐ理生に、拓真は更に言葉を掛けた。 「力が欲しいのであれば、道具に頼るべきではない。剣の道を志す、君なら解る筈だ」 「道具使わなくても、革醒した今の鶏内さんなら正攻法でがんばればきっと、皆に見なおしてもらえる、よ?」 依子も、正直に思う事を伝えて。そうしなければいけないのだと、心の何処かで確信していたから。理生に罪を犯させる訳にはいかないから。 「……刀を、渡してくれないか」 問う。答えを待つ。 理生は暫く過呼吸にでも陥りそうな勢いで、息を荒げていたが、ややあって、ぽつりと、口を開く。 「……俺は」 俯き、震える。 「俺は……何もしてないのに……アイツ等は……俺をゴミでも見るかのように見下して、馬鹿にして……!」 彼の表情は窺い知れない。ただ、思いの丈を絞り出すようにして、掠れた声で口にする。 「だから、俺を差別した奴をぶっ潰してやろうって……そう思っただけで……俺は、俺は悪くねぇ……!」 理生の手が動く――剣の柄へ。 「拙い!」 涼が声を上げるも。 「だから! 今だって! 俺を邪魔する! お前等が! 悪いんだああああああ!!」 理生の咆哮が道場に木霊する――と同時に、理生が刀を抜き放つ。 理生を護るように、九本の刀が円陣を展開し、一斉に動き出す! ●鶏を割くに その動きは風か、或いは水か。ともあれ、リベリスタ達の想像を上回る程の、流れるが如き速さであった事は確かだ。それ故に、咄嗟の判断力が鈍り、遅れる。 拓真、涼、マクは辛くもその気魄を纏った連撃を、寸での所で躱す。が、対応し切れなかった瑠璃丸が、陽子が、その身を斬り刻まれる。 「っ!」 どうにか二人共直撃は避けられたようで、傷口を押さえながらも後退する。依子は内心で安堵の溜息を吐いた。 理生の下へと戻っていく刀達を見て、拓真は瞬時に追撃を試みた。 ガキン、と鈍い金属音が、聞く者の鼓膜を揺るがす。 その裂帛の気合が籠められた重い一撃を受けて、刀の一本が刃こぼれを起こす。その様子に焦りを覚えたのか、理生は慄いた。刀の動きも鈍る。 とは言え、想定外の理生――と言うよりは十束剣の能力による猛攻に、依子は回復を優先せざるを得なくなる。 反撃の間にも傷を負った陣兵衛とマク、初手で攻撃を躱し切れなかった瑠璃丸と陽子。特に陽子はその後も追撃を受けた為に、今回復しなければ後どの位立っていられるか判らない状況まで追い込まれていた。 依子は不安に涙を浮かべながらも、ぎゅっと魔導書『ナナシ』を抱き締め、柔らかく清らかな歌声を響かせた。音色は優しく負った傷を包み込み、癒す。 「かたいれす」 唐突に、マクは、拓真が一撃を加えた刀に噛み付いてみた。流石に刀だけあって堅い。加えて強化もされているのだろう、ヴァンパイアの牙を以てしても、まだ折れそうにない。 でも、だからこそ食べられたら美味しいだろうなぁ、なんて事を考えてみたりして。 その間にも刀はマクから離れる。しかし其処に瑠璃丸が肉薄し、彼の激情をそのまま表したかのような炎を纏った拳で、一息に殴りつける! 「燃え尽きなァ!!」 燃える。火炎に呑まれてゆく。それでも折れない。こんな状況下にあっても、その刀は神剣と呼ぶに相応しい程の矜持を失わない。 「しぶてぇなぁ」 忌々しげに呟く陽子。 ――その一瞬。 彼女の懐へと、刀の一本が、目にも留らぬ速さで飛来する。陽子も瞬時に反応し防御体勢を取ろうとするが、間に合わない! 「っ?」 だが、刀身を受けて身体から鮮血を噴出させたのは、陽子ではなく武雷だった。今の一撃を喰らっては陽子の身が保たない。ならばと、身を挺して彼女の前へと飛び出したのだ。刀が彼女に向かうのが見えた時、武雷は既に動いていた。 「済まねぇな」 「なに、この程度はどうって事無ぇさ」 更に奔る紅も気にせずに、武雷は自らの身を貫く刀を引き抜いた。其処へ、拓真が翔ける! 「……折る!」 拓真の、爆発的に立ち上る闘気を纏った渾身の一撃が、武雷に掴まれ理生の下へと戻れぬままの刀へと向けられ、目測を誤る事無く、刀身の真ん中から、叩き割った! 「うぐああああああっ!?」 理生が、悲鳴を上げる。苦痛と戸惑いに表情を歪める。何が起こったのか理解出来ていない様子で、ただ、叫ばずにはいられない。 折られた刀はと言うと、そのまま虚しく地に堕ちる。けれどもすぐに断面は光を放ち、飛散した欠片も巻き込んで、数秒と掛からず元の姿を取り戻した。そして理生の下へと戻るが、理生は激痛に涙を堪え、蹲っていた。 だが、次の瞬間理生が再び悲鳴を上げる。 涼が真紅の刀身を有する斬魔刀・紅魔による澱みの無い連撃により、ダメージの最も蓄積していた刀を、その最後の一撃で以て割るが如く、断ち切っていた。 「折っても元に戻っちまうのが厄介だよな。けどまぁ、全部叩き落としてやるぜ……!」 刀に護られながらものた打ち回る理生に、陣兵衛が投げ掛ける。 「刀の扱い方も知らず、人を殺めた事すら無い刃で儂を斬ろうとは笑止千万じゃ」 「……っど、ゆ……事だよ……っ!?」 「覚醒ばっかり、痛い知らない? それ痛いが力ある代償」 たどたどしいマクの言葉でも、理生が真実を悟るには十分過ぎた。この剣は、覚悟無き者が振るって良い剣ではない。その真実を。 それでも、最早理性を失った理生に退くという選択肢は残されていないようで。 「ああああああ!」 半狂乱になりながらも、虚勢から雄叫びを上げ、闇雲に剣の嵐を巻き起こす。 けれども拓真が、涼が、陣兵衛が、瑠璃丸が、陽子が、同時に飛来する刀に些か翻弄されながらも、着実に攻撃を繰り返し、重ね、積み重ねてゆく。 しかし刀達の反撃も侮れないものがあった。 依子が癒しの歌を届ける事に勤しみ、武雷と瑠璃丸が傷ついた仲間達を幾度も庇うも、既にマクと陽子は一度倒れている。今、彼女達が立っていられるのは、その身に宿る運命を、魂を熱く焦がすが如く燃やしたからだ。 (覚醒したばっかりなら、体力的にそう長くは保たない筈だけどな……) 涼が見た理生の疲弊の様子からも、後多くても三本。刀を折れば良いだけだ。だが、此方の消耗も軽いとは言えない。それでも、折れるのは、リベリスタ達であってはならない! 震えながらも歌い続ける依子の援護を受けて、リベリスタ達は一気呵成に攻め立てる。七人の猛攻の前に、数で勝る九本の刀も劣勢となり。その事実は理生に更なる動揺を齎す。 だが、だからこそ。 「しつこいんだよぉぉぉぉぉぉ!!」 絶叫。同時に、滅多矢鱈に、理生は刀の陣を乱舞させ。拓真を、武雷を、瑠璃丸を、陽子の身を、穿った。鋭く身を貫く一撃に、瑠璃丸は喰いしばり、運命を燃やし踏み止まるも、今度こそ陽子の身体から、力が抜けていき――為す術も無く、倒れ伏した。 「は、はは、ど、どうだよ、俺だって!」 理生の言葉は誇らしげ。だが、その顔に浮かべる笑みは痛々しささえ覚える程に引き攣っていて。 そして次の瞬間、笑みはすっと消えてゆく。代わりにその表情には、恐怖が刻まれていた。 陣兵衛が、全身全霊の一撃で、理生を護る刀を、いとも容易く弾き飛ばす。彼女の浮かべる笑みに、理生は底知れぬ恐怖を覚えていたのだ。 知ってか知らずか、彼女はがら空きになった理生への道を、一直線に突き進む! 「剣を持つ事は、即ち斬られても構わないという事じゃ。そうした覚悟も無い奴に、刃を振るう資格なぞ無い!」 狙うは十束剣、その本体。叩き壊さんまでの勢いで、向かう! 「ひいっ!?」 慌てて、残りの刀を自身の防御に充てんと試みるも、涼と瑠璃丸が割り込む。 「此処から先は、通行止めだ!」 「自分で撒いた種だろうが! ビビッてねぇで受け止めやがれ!!」 二人に阻まれ、更に陣兵衛を援護する形で拓真も刀を叩き落とす。マクも幾度目か刀に齧り付き、血の代わりに神秘を啜り――その声音を変える。 「力を持つのは良い事ばかりではないです。偶然手に入れた力、そっちさんは如何扱うのですか?」 「し、知らねぇよ、知るかよ! どうしろって言うんだよおおおおおお!!」 「っ!」 自棄になる事に大抵良い事は無い。しかし時にそれは、予想以上の底力を呼び覚ますものである。 残った刀を自身の護りに充て、それを阻止されぬ為に、足止めを喰らった刀は暴風雨が如く荒れ狂い、無暗矢鱈にがむしゃらに、目の前の相手に剣戟を繰り広げる。それは――この上無く明確な拒絶であった。 結果それは、マクと瑠璃丸の身を再び斬り伏せる。圧倒的なスピードで翻弄していた涼も、遂にその切っ先に捉えられた。 「くっ……!」 最早理生に言葉は届くまい。ならばせめて、罪を犯させる事だけは阻止しなければ! ●勧善懲悪 ――結果。 刀は二本、折られた。その段階で、理生は力尽き、冷たい床に身体を横たえていた。 「……うう……」 理生の苦しげな呻き声だけが、やけに煩い。 リベリスタ側は、拓真、依子、陣兵衛、武雷、マク、瑠璃丸が健在であった。しかしマクと瑠璃丸は、既に一度運命を燃やした上で、続けざまに激戦を繰り広げた事もあって、満身創痍だ。依子のサポートが無ければ、今や力無くその場に伏し、ぐったりと動かない涼と陽子に並んでいたかも知れなかった。 持久戦での勝利であった。理生が覚醒したてでなかったら結果は違ったかも知れない。 リベリスタ達は、理生に近付けなかったのだ。力で護られた、理生に。理生に言葉を、気概を、その行動で以て届けようとして、けれどその都度、刀に邪魔された。叩き落としてもへし折っても再生し、喰らいついてくる刀に。 其処までして理生に尽くす程、刀が彼を認めていたかは疑問だが――皮肉な事に、どんな刀であっても得てして主を選べない。 「……せめて二度と、この刀の力が目覚める事がないようにしねぇとな……」 今は分身を生み出さない十束剣を手に、呟く武雷。その言葉に、皆、頷くしかなかった。 依子の呼んだ救急車は、程無くしてこの場に到着するだろう。今は理生と、傷付いた仲間達を休ませねば……。 |
■シナリオ結果■ | |||
|
|||
■あとがき■ | |||
|