●貴方の残り香 「んんっ……くぅ……ぁあっ……!!」 薄暗い建築現場に響く甘露な声。 資材が転がった一角には奇妙な光景が広がっていた。 グズグズに解けた肉片が絡み合ったような生物、生き物として例えるならばイソギンチャク辺りが類似するだろうか? 2体の丸っこい本体から伸びた赤黒い触手が、一人の少女を絡め取っ手いる。 「止めてください……っ! 貴方達なんでしょ!カイン、ジェイド!」 名を呼ばれた2体の化け物達だが、動きは止まらない。 メカニカルなパーツがついた体に粘液を絡める様に触手が這いずり、僅かな隙間に先端を押し付けてこじ開けようとしていく。 体に吸着する様な形でくっ付いていたのか? ベリベリッ!と音を響かせ、パーツが引き剥がされてしまう。 「っつぅ!?」 顔を顰める辺り、音の具合に劣らぬ痛みが走った様だ。 だが、それも直ぐにかき消されてしまう。 滑り込んだ触手達が未発達の胸元を弄り始め、そばゆい刺激にビクリと体が跳ね上がる。 「やっ……駄目ぇっ!!」 すぐさま頬が上気し、絡め取られた四肢を暴れさせるが無駄な事。 ギシギシと軋む音だけが空しく響き、されるがままだ。 「何で……っ……どうして……っ」 この2人は彼女の部下だったモノ。 とある事故に巻き込まれ、この世界に飛ばされた被害者だ。 直ぐに助けに行きたかった。大切な部下であり、友達で幼馴染だから。 けれど、上は直ぐに許しを出さず、時間ばかりが過ぎる。 そしてやっと……1人でたどり着いたと思いきや、2人は見るも無残な姿だった。 「帰ろうよ……? まだ、ちゃんと直せるかも……しれないから……」 自分達は生身と機械が共存する体。 生身が朽ち果てても、機械の部分から再生できるかもしれない。 語りかける言葉は届かず、彼女の体は弄ばれ、可愛らしいデザインの戦闘服はボロ切れ同然だ。 「かはっ……!?」 甘い刺激の最中、急に息が詰まる。 双丘を撫で回し、臍の上を滑り、股座をすり抜ける触手達は未だに彼女を玩具にしているが、別の触手が彼女の首に絡みついたのだ。 体が何度も跳ね上がり、抵抗力を削ぎ落とされた少女にもう力は残っていない。 「……ごめんね。 私が……直ぐに来れば、良かったんだよね」 ギリギリと首を圧迫する力が強くなり、肺に空気を送り込めなくなっていく。 「……いいよ。 それで2人の気が済むなら」 抗う事を完全にあきらめた少女は、涙に滲んだ景色が白く消えていくのを受け入れるだけであった。 ●天使の動向 「……という事で、このままだとあのアザーバイドが死んでしまうわ。 そうならない様に事を終息させるのが今回の作戦目標よ」 スクリーンに映ったが映像が消えると共に『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)がリベリスタ達に説明を始めた。 「以前、こちらの世界に迷い込んでセクハラを働いていたアザーバイドがいたんだけど……彼等を探しに来て、入れ違ったみたいね」 コンソールを小さな指が叩き、スクリーンに投射されるのは以前の作戦に関する報告データ。 先ほどの映像に出ていた少女とは違う機械のパーツが体から生えていた。 しかし、居合わせた面々には腑に落ちない点がある。何故彼女が、あの化け物を仲間と勘違いしたのかだ。 問う言葉にイヴは小さく頷く。 「どうやらあのアザーバイド達は各々だけが出せる信号があるみたい。 それを探して彼女は動いていたみたいだけど……あの化け物、いえ、エリューションからそれを感知して、勘違いしたようね」 異世界に飛ばされた仲間が原因不明の変化を遂げていた、だが、仲間の信号がある。 判断材料がそれしかなければ、勘違いする可能性は十分だろう。 「彼女を助ける為にも、あのエリューションを倒して頂戴。 2体ともエリューションフォース、強さはフェーズ2、戦士級ね。 元々は色んなところにある思念が集まって移動していたエリューションのようだけど、送り返したアザーバイドが長く居た場所にも移動した所為で、彼等の信号を出せる様になったみたい」 だからといって、行動まで吸収しなくて良かった気もするが仕方ない。 自棄になった人の思考は恐ろしいばかりだ。 「彼女を死なせてしまうと、彼女の世界と戦う火種になりかねないわ。 大変だと思うけど、頼むわね?」 戦いの芽を摘む為にも、彼女の思いを酌む為にも、リベリスタ達の戦いが始まる。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:常陸岐路 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年02月25日(土)22:43 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●すれ違い 寂れた工事現場では、正に悲劇の引き金が引かれようとしている。 「……カインとジェイドな……っ!?」 少女の問いかける言葉に、攻撃という返事が返った。 細い腕に絡みつく触手は容赦なく引き寄せようと力を込め、ギリギリと食い込む音とじわじわと解ける裾に表情が青ざめる。 天使とあだ名をつけられた少女と、ターゲットであるエリューションは既に接触済みの様だ。 「動くなよ!」 風切る音と共にアルジェント・スパーダ(BNE003142)のクナイが触手を断ち切る。 あっけに取られた少女と、エリューションの間に割り居る様に壁を一気に上り越えた『白虎ガール』片倉 彩(BNE001528)が滑り込み、両者の距離を離した。 他のメンバーも壁超え扉潜りと、一斉に雪崩れ込む。 「あ、貴方達は……? きゃっ!?」 触手を弾きながら、『騎士の末裔』ユーディス・エーレンフェルト(BNE003247)が前衛という盾を果たす。 「ごめんなさい。 ちょっと、お話の間だけでも足止めさせてもらいま……って、力はかなりありそうね?」 『月光花』イルゼ・ユングフラウ(BNE002261)の声だ。 光となって飛び出した呪いの印が、エリューションの動きを封じ込めようとするが力で破られてしまう。 「キミみたいな男の人を探してるんだよね? 一人が真面目そうな狙撃手の人、もう一人はお調子者で……バリバリの前衛っぽい人。 翼の形は違うけど、同じ機械のパーツが沢山ついてたよ」 『ものまね大好きっ娘』ティオ・ココナ(BNE002829)は、以前ここに来た二人と戦った事もあり、特徴をよく覚えていた。 何故? と問いかけようとした瞬間、再び彼女へと触手が迫る。 「危ないっ!」 すぐ傍まで駆け寄った『エーデルワイス』エルフリーデ・ヴォルフ(BNE002334)は、触手を素手で掴んでブロック。 同じくして接近した『リトルダストエンジェル』織村・絢音(BNE003377)が、触手をライフルストックで叩き払い、引っ込ませて追撃を許さない。 「あなたとカイン、ジェイドが同じ仲間で同じ世界から来たのは知ってるわ。 でも、ここに2人は居ない。 君と入れ違いに元の世界に帰っていて、その化け物から出ている信号は複製したモノよ」 万華鏡を通して知りえた情報は、更に彼女を驚かせる結果となった。 説得が進むのを来栖 奏音(BNE002598)は様子を見守りつつ、攻撃と援護の準備に入っていく。 しかし、やはり信号という天使にとって確かな証拠に言葉を鵜呑みに出来ず、表情は曇る。 「あの2人を殺さないように倒して、送り返すミッションを担当したわ。 自棄になったのか分からないけど、刃物や爆発物で人の服は溶かすしセクハラは働くし、大変な目にあったのよ?」 「あ、あの御馬鹿達は……っ! 軍の至急品で悪戯しちゃダメってアレだけ言ってるのにぃぃっ!!」 同じく苦労させられた被害者の様だ。 ハッとした様子でエルフリーデを見るエンジェルは苦笑いを浮かべ、小さく頷く。 これで心置きなく戦えると、リベリスタ達に掛かっていたセイフティは解除された。 ●甘い地獄絵図 エリューション達の一斉攻撃が始まり、腐肉の様な色合いをした触手が一斉に迫る。 前衛に居たアルジェントの傍を神業のレベルですり抜け、背後の女性陣を狙う動きは本能の猛りか。 「このっ!」 ユーディスへと絡みついた触手は四肢を伝う様に這い上がり、彼女の体へと迫る。 振り払おうともがけど、ヌルヌルと肌を滑りながら落下する気配は無い。 それどころか張り付かれた所からドレスを解かされ、服の下へと滑り込もうとするのだ。 「やめな、んんっ!?」 脇腹をなぞり上げ、絡みつく生暖かな感触にビクリと体が跳ね上がり、膝の力が抜ける。 じわじわと虫食いの穴は広がり、範囲は拡大するばかりだ。 同じく触手に囚われたエルフリーデも頬を紅潮させつつも、体を撫で回す感触に耐える。 「んぁっ……」 体を縮め、侵入を阻止しようとしたが、抉じ開ける様に滑る触手の刺激が余計に強く伝わってしまう。 (「いいわ、好きに触ってなさい。 捕まってる分逃げられないのは、そっちも同じでしょう!」) じわりじわりと胸元へと迫るのが肌伝いに分かる、羞恥に耐えながらもスコープを覗きトリガーを絞る、が。 「くぁっ……!?」 脇の下より強引に抉じ開け、触手がとうとう胸元に到達したのだ。 「ちょっ、ふぁっ!?」 そして明後日の方向を向いた銃口から放たれた弾丸はその彼方へ消えた。 「くらえーっ!」 エリューションが多く纏まっているところを狙い、ティオの魔曲・四重奏が炸裂する。 単体にしか効果を及ばさないが、分身体にしっかりとヒット。 「凍りなさいっ!」 「えっちっちなのは消毒なのです~!」 イルゼの凍てつかせる呪われた雨と、神秘的な閃光が同時に放たれる。 対照的な二つの攻撃は有無を言わさずエリューション達を捉え、氷結させ、浄化させ、多大なダメージを与えるも中々しぶとい。 それに続き他の面々も一斉に攻撃するが、二人に絡みついた触手は剥がれない。 「くぅ……っ!」 「な、何っ!?」 ぎゅるぎゅると2人に絡みついた触手が全身を包むように一気に這いずり、2人の格好は大変なことになっていた。 武器防具は無事だが、服は最早機能を果たしていない。グズグズに解けたソレは今にも零れ落ち、白い肌の見える面積が殆どといったところだ。 本体となるエリューションに絡まれたユーディスへ、更に別の触手が突きつけられると、体中の至るところへと先端が吸着。 「これはマズ……ぅあっ!?」 触手の脈動は彼女の生命力が移動する証拠。 体に走る倦怠感と弱まる体、体熱管理が狂いじわじわと体が火照り、吐き出す息が浅く白く濁る。 「ひゃんっ!? や、やめ……っはぁ!?」 エルフリーデの体に絡む触手は、分身体らしくドレインを行わないが粘液を塗りこみ、体をギチギチと締め上げ体力を奪う。 耐えられないダメージではないものの、粘液に何かあるらしく体の奥底から熱くなり、ぼぅっと意識が揺らぐ。 まるで獣が肉を粗食する様な柔らかく、生々しい響き。 「は、離して~っ!」 先程の反撃と、今度はティオが触手に捕まっていた。 触手という海へ取り込もうとジワジワと絡みつく触手は増えていき、分身体の触手を束ねる口がグチャリと開く。 弄ぶというより食らう様な素振りを見せる敵に小さく身震いをしつつも、必死に体を暴れさせるが余計に服が粘液に汚染され、際どく布地が零れる。 「んん……っ」 内股を擦る様に登りつめる触手は、更に服を溶かしながら敏感なラインをなぞり、こそばゆい刺激に甘声を誘う。 (「にしてもスタイルのいいメンバーが多い、眼福だね」) この甘い甘い惨劇を眺めつつ、絢音は丁度いいポジションに移動していく。 どちらでも好みな彼女からすれば、清廉としたユーティスや、気高そうなエルフリーデに、幼さ残るティオの3人が可愛がられる様は情欲をそそらされるのだろう。 ●宴は終わらない 「離せっ!!」 アルジェントの狙い済ました投擲が触手を一気に断ち切り、囚われていたユーティスがドシャと地面へ崩れる。 前衛にいれば彼女達の方を見なくて済むと、紳士らしい考えで立ち回っているも、こうも絡まれてはそれどころではない。 「この……っ、お返しです!」 反撃に出るユーティスが聖なる刃をエリューションへ一刀両断振り下ろす。 どどめ色の体液が飛び散り、被らない様にすばやく後退した。 「ついでにくらいなっ!」 絢音の狙撃が続き、弾丸は裂傷の隙間を狙う。 破裂する様に黒ずんだ飛沫が広がれば、エリューションの体は大きくぐらつく。 しかし、まだ2人も触手に囚われている。 ティオも必死に魔法で反撃を試みるも、後一歩ダメージが届かない。 「癖になってるんでしょうけど……やられるわけには、いかないのよっ」 体を締め付けられつつ、エルフリーデはコッキングレバーを引き、装弾すると最早経験則で撃つしかなかった。 日頃の鍛錬は結果として浮かび、放たれた弾丸が流星の如く拡散すれば、一瞬にして全てのエリューションへと吸い込まれていく。 完全な直撃で、囚われていた彼女とティオが解放された。 「変態は燃えてしまえー!!」 炎を纏う綾の拳が続き、本体のエリューションを捉える。 型どおりの美しいストレートパンチが直撃し、表皮を焦がしながら炎が引火。 更に攻撃は降り注ぐが、残った本体達も危機に防御を固め、ダメージが通らない。 本体達の一斉反撃に選ばれたのは綾と絢音の2人。 綾は拳で触手を叩き落し、身を守るも、絢音の方は迎撃が追いつかないようだ。 「んんっ……」 (「くすぐったい……のか?何とも変な感覚だな」) 初めて感じる感触に何処か冷静に処理しつつも、先程まで見えていた光景が自分に降り注いだ事実を認識すると、心音が高鳴る。 ぐちゅっ、ぐちゅっ、と、響きと共に体中を這いずり回るそれを引き剥がそうと試みるも食らいついて離れず、滑る掌で易々解けない。 その間に分身体が2体生まれるも、今がチャンスでもある。 「俺の方はいいっ、もう1体の本体を叩いてくれっ!」 自分にだけ狙いが行く今のうちにもう片方を沈めてしまえば一気に有利になる筈。 絢音の言葉にアルジェントも頷けば、願いどおりもう片方の本体へ攻撃を集中させる。 「さっさと倒すぜっ!」 「えぇ!」 破裂音と共に放たれるアルジェントの神速の刃と、ユーティスの神々しい光を点した刃が交差し、袈裟切りとなってエリューションを切り刻む。 気色悪い悲鳴が上がり、びちびちと触手達も痛みに暴れていた。 「もう一つ!」 綾の業炎拳が直撃するも、暴れていた触手を集めて生まれた盾が包み込むようにして威力を殺す。 炎も消し止められ、絡み疲れる前に後退する綾だが、その隙をティオが狙う。 「こっちだよ~!」 無数の属性が螺旋を描き、弾丸の如く光が突き進む。 防御に手一杯だったエリューションの胴体を貫き、大きな弾痕の様に傷を刻んでいた。 更にエルゼとエルフリーデの広範囲攻撃が分身体諸共叩き潰そうとぶちまけられ、リベリスタ達の勢いは止まらない。 「これでどうでしょう~?」 逃さんと放たれる光の雨が追撃となり、復活したての分身体が早速1体沈み。 「逃さないぜ」 動きを阻害されながらも、虫の息だった残りの分身体に絢音がトドメを刺し、攻勢を繋いだ。 ●窮魂美女を噛む 攻撃の途切れ目を狙い、エリューションも反撃に移る。 「……んっ、この触手。 幾らなんでも動きがいやらしいっ」 次の狙いはイルゼらしい。 正面からばかり繰ると思いきや、意外と知恵を絞り足元から触手が湧き出したのだ。 恐らく、地中を潜らせたのだろう。生え出した触手は彼女の巫女装束の隙間へ突入し、豊満な体に貪りつく。 内側からじわりじわりと邪魔物を溶かしつつ、服と体の隙間を無くすほどに触手が殺到していた。 「ぅあっ、はぁっ……んっ!?」 (「仲間だと思ってたにしても、これを耐えてたのはすごいわね……っ」) 熱く焼け付くような感触が思考力を奪い、抵抗する事を許さない。 もがけばもがくほど体力を奪われ、肌は露出し、熟した胸がくっきりとその丸みを主張する。 更には交差した襟が今にも開いてしまいそうだ。 絡まれたままだった絢音も姿は凄い事になっていた。 ゴスロリ服は既に崩れ落ち、布切れ同然でこびりついている様なもの。 黒のブラとショーツが枯葉の様に崩れ掛かり、それでも体を嬲り続けている。 「あっ、そこは駄目だっ……て!」 そこへ生命力を食らう触手が突き刺さり、意識が沈みそうになる。 ワームの集合体といわんばかりに殺到した触手の隙間から、緩やかな曲線が辛うじて確認できる程度。 これが解かれたら大変なことになりそうだ。 (「流石にマズいな」) 絢音の反応に頭の中を落ち着かせつつ、触手へと手早くスローイング攻撃を仕掛け、触手を解く。 解かれた絢音の姿は、ご想像にお任せするとしかいえない。 「このド変態!」 綾の拳が。 「いい加減にしてもらおうかっ!」 エルフリーデの拡散弾が。 「ウネウネさんはお仕置きだよっ!」 ティオの虹色に輝く魔法が。 「これで終わらせますっ!」 ユーディスの煌く刃が。 「オイタが過ぎるんじゃないかしら?」 エルゼの凍える雨が。 同時に直撃する。勿論そんなことが起きればエリューションとてひとたまりも無い。 戦いの先鋒は、負ける事にも意味があるという。 それは味方の負け戦に、控える面々の闘志を燃やすということらしい。 この場合、怒りと羞恥という多大な原動力を生み出させたのだろう。 敵も死を認識できぬ一瞬で消滅し、エルゼを開放していた。 「皆さん大丈夫ですか~?」 今のところ、無被害の奏音は相変わらずのおっとりとした口調で呼びかける。 ほぼ同時にして奏でる福音が体に残ったダメージを優しく癒していく。 傷より服を直してほしいのは言わずもがな。 煩悩炸裂している変態エリューションが、ここで無被害者を出すと思ったら大きな間違いである。 分身体が一斉に粘液を噴出させると雨霰と後衛の女性陣へ一斉に降りかかったのだ。 散々酷い目にあった分、回避行動は早い。……奏音を覗いては。 「きゃぁぁっ!?」 一人直撃した奏音の体は一気にずぶ濡れ。 更に口にまで入ってしまったのが、掌で口元を押さえ、表情が歪む。 (「生臭い……ですよ、それに何か酸っぱい様な」) はしたなくならない様に隠したまま吐き出すも、喉に残った粘液が違和感となっていた。 エリューションの粘液ということは、効果は知れた事。 「って、お洋服が~っ」 粘液が一気に布地を破壊し、消えてしまいそうだ。 掌で払うと、繊維が崩れかかっているらしく裾ごと粘液が地面に零れてしまう。 払いたいけど払えない、けれど払わなければ酷いことになる。 ジレンマと羞恥に頬を赤らめ、混乱したままオロオロと立ち尽くすばかり。 「キャー、変なとこ触らないでください!」 その間も本体のエリューションが綾に反撃を開始。 「んぅっ、だから、そんなところ触らな……っ」 遠慮なしに暴れまわる触手達は、今までの比ではない。 肩や腰に首と、がむしゃらに絡みついた触手達は逃さんといわんばかりに力を込めていく。 「ひゃんっ!?」 無論、服も崩れ落ち、その下に隠された下着も顔を覗かせ、未発達の胸元で肉色の蛇が暴れていた。 失われた体力を彼女から吸い出そうと触手の先端が開き、濁った体液が垂涎の様に見えよう。 「やだっ、離して……!」 吸われると言うよりは食い殺されるというイメージが浮かぶのか、上気した頬が一気に青ざめ、涙目になって真空波を生む鋭い蹴りを触手に叩きつけるもビクともしない。 「くそっ、この野郎っ!」 アルジェントの刃も弾き返し、死に物狂いの気迫が凌駕していた。 「離しなさいっ!」 「離せ~!!」 エルフリーデとティオが魔法と弾丸の一斉発射を浴びせても倒れる様子が無い。 それどころか触手は徐々に綾へと迫っていく。 「今度こそっ!」 白く輝く刃を振りぬき、ユーティスが触手を断ち切るも数が多い。 綾も逃げようと暴れすぎた結果、華奢なラインの大半が見えてしまっている。 獲物には変わりないと、不気味なほどゆっくり迫る触手達に頭を振るのが精一杯だ。 「まだ倒れないの……!?」 エルゼの放つ雨がエリューションを濡らし、湿ったところから氷が体を侵食する。 それでも氷に皹を入れながら進む姿に、気味の悪さ感じただろう。 だが、限界はある。あと一歩と迫り、氷の侵食が一気に広がると、エリューションは動かなくなっていた。 ●迎え 残った分身体の処理も終わり、アークへとエンジェルを送るリベリスタ達。 ふと、ユーティスが隣に居るエンジェルへと問う。 「どうして一人でここに?」 無謀も過ぎる。猪突猛進にも見えぬエンジェルへ確かめると、彼女は苦笑いを零した。 「上は2人を死亡扱いにしようとしていたので……そうなったら、もうここに来ることすら出来ません。 せめて、いるんだって事だけでも分かれば、変わるかと思いまして」 それが酷い目にあったようだ。 そんな事を語り、進む面々の前に不意に空間のゆがみと切れ目が生まれる。 「お迎え、みたいですね。 皆さん、助けて頂きありがとう御座いました」 リベリスタ達へ向き直ると深々と頭を下げる。 「向こうの世界でまた3人仲良く過ごしてくださいね?」 綾の言葉に、微笑を浮かべ頷いたエンジェルは切れ目の向こうへと消えていくのであった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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