●くぅーん! 「動くなぁ! このチワワがどうなってもいいのかぁ!」 「ヒィィィそれだけはぁぁぁぁ!」 というやり取りがコンビニで行われていた。 男はブロードソードの先端にチワワがくっついたようなアイテムを振りかざし、コンビニ店員は完全にブルッた様子で相手の言うがままにしていた。 「さあ、このバッグに現金を詰めてもらおうか? クーポン券はいらないからなァ!」 「かしこまりましたぁぁぁ!」 震える手でバッグに金を詰めていく店員。 緊急通報用のボタンぽいものがレジの下についていて、それにそっと手を伸ばす……が。 『クゥ~ン!』 剣の先端にくっついたチワワがプルプルしながら彼を見つめていた。 「駄目だっ、俺はこいつを通報できない……! 何故だか、攻撃的な気持ちになれない……!」 『クゥ~ン!』 「そ、そうだね。現金早くつめようね!」 店員はほんわかした顔でバッグに現金をつめていく。ついでにオニギリ半額クーポンも詰め込んだ。 「おいクーポン入れんなつっただろ!」 「ヒィィィスイマセェェェン!」 その様子を、白服の男が双眼鏡で観察していた。 「おー、やってるやってる。最初聞いた時は絶対使えないと思ったけどなあ……意外と使えるなあ、あのアーティファクト」 ミントのガムをバラバラと頬張って強引に噛む。 「しっかし見れば見る程間抜けなフォル……ム……」 双眼鏡越しにチワワ部分を見る。 『クゥ~ン!』 「邪魔が入ったら全力で助けてあげようね!」 ●クゥゥゥン! 「………………」 イヴがチワワを抱えていた。 ワンちゃん抱っこではない。 頭部鷲掴みである。 そうして、顔の前に持ち上げてぶらぶらとさせていた。 「あ、これ、ぬいぐるみだから」 「よかったあああああ!」 イヴ嬢が邪悪ロリに目覚めたのかと思ったあああああ! やみさん大喜びの巻かと思ったあああああ! 「どうやらね、アーティファクト『魔剣チワワ』を悪用している人がいるみたいなの。その背景には主流七派がひとつ『六道』も絡んでいて、確保の際にはきっと邪魔しに割り込んでくるわ」 「ちょっと待って下さい」 凄い簡潔にまとめてくれた所悪いんですけどちょっと待って下さい。 「あの、魔剣?」 「魔剣チワワ」 「魔犬じゃなくて?」 「魔剣ね」 丁度こんな感じよ、と言ってイヴはチワワの尻に剣をぶっ刺した。 悲鳴を上げる一部リベリスタ。 歓声を上げる一部リベリスタ。 「このチワワは相手を誘惑して一時的に味方につけてしまう能力があるから、気を付けて」 一般人に使ったらそりゃもうメロメロで、この分だと銀行強盗し放題かもしれなくて危ないんだよって話らしい。そういう説明をされなきゃ無害かとすら思う。 しかしこちとらリベリスタ。 ちょっと解けづらい『魅了』状態で済むらしい。 でも魅了されてる間はメロンメロンなので、プライド高いひとはご注意願いたい。 「そういうわけだから、よろしくね」 チワワから思いっきり剣を引き抜いて、イヴは言った。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:八重紅友禅 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年02月16日(木)23:01 |
||
|
||||
|
■メイン参加者 8人■ | |||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
●この中に一人、チワワがいる! 「魔剣……って言うから、どんなのかと思ったんだけど」 『紅翼の自由騎士』ウィンヘヴン・ビューハート(BNE003432) は車窓の外をぼんやり眺めて呟いた。 「『魔剣チワワ』だなんてね。緊張感が崩れ去ったよ」 「いや、油断はできんぞ」 車窓に映る『ナイトオブファンタズマ』蓬莱 惟(BNE003468) の横顔。 「動物ブームの流行り廃りに関わらず一定の忍獣気身法を勝ち得てきたチワワ。そんなチワワを用いて強盗を行うのだ。チワワの世間体悪化は免れまい。六道目、今度はイメージ戦略だな……」 この外道め、と舌打ちする惟。 ウィンヘヴンはその意見を軽やかにスルー。 「魔剣チワワねえ。まあ犯罪に使われるのは阻止しなきゃ――」 「チワワっていうにゃあぁ!」 途端、『駆け出し冒険者』桜小路・静(BNE000915) が勢いよく立ち上がった。その辺に頭をぶつけて蹲る。 「……ええと」 「ちがう、オレはチワワじゃない。耳も尻尾もない、アイアムアジーニアス!」 「え、でも顔合わせの時ビスハって」 「チワワチガウ!」 頭を覆って丸くなる。完全な自閉モードだった。 こりゃだめだと肩をすくめるウィンヘヴン。 「ところでさ、誰がどうやって作ったんだろうね」 『おこたから出ると死んじゃう』ティセ・パルミエ(BNE000151) が車窓の外に脳内忍者を走らせながら呟いた。 曇ったガラスにチワワを書いてみる。 「こう、チワワのお尻にぶすって剣を刺すのかな!?」 「ひぃ!?」 お尻を抑えて青ざめる静。 ティセは小首を傾げて彼の顔を見たのだった。 分からない人のために。そして今後のために説明しておくが、静は現在『どこに出しても恥ずかしい』チワワハーフである。 『T-34』ウラジミール・ヴォロシロフ(BNE000680)は見た目に分かり易いロシア軍人である。齢45。白いひげに少佐階級章のついた襟。更に軍帽を被って見せれば完璧だ。 そんな彼が、静かに語り始める。 「チワワか……」 「チワワかわいいですチワワ!」 ひゃっほーうと言って飛び回る『ジェットガール』鎹・枢(BNE003508) 。 「丸く小さい愛玩犬だな。保護欲を誘う」 「チワワー、チワワワー!」 どっしりと構えたウラジミールの前を枢が高速で横切って行く。 「そうかチワワか……ちわわ……」 『祈りに応じるもの』アラストール・ロード・ナイトオブライエン(BNE000024) は真顔でエアチワワを手元でさわさわし始めた。 「今回の企みも……上手くいかないものと……思え……」 「チワワかわいー!」 アラストールと枢に挟まれて、ウラジミールはそっと目を閉じる。 そして。 「自分は、シベリアンハスキー派だ」 見た目に分かり易いことを言った。 車が止まる。 ドアを開いて出てきたリベリスタ達の先頭で、『第15話:突撃…隣のバンババン』宮部・香夏子(BNE003035) が顔を上げる。 「狼たる香夏子は、チワワに負けるわけにいきません」 コンビニの裏手に回ってくる白服フィクサード達を視界に捉え、エブリデイの無表情。 「久しぶりに、野生の香夏子が目覚めそうですね」 キラーン。 と、香夏子の目が怪しく光ったのだった。 ●魔剣チワワと10人の白服 誰だお前たちは! 噂に聞くアークのリベリスタか! 野郎共、やっちまえ! ……みたいなセリフがここで出るべきなんだろうが。 悲しいかな、事実を描写せざるを得ない。 「キミたちだれでちゅかー?」 「アークだねー、そうだねー、大丈夫だよチワワちゃんはちゃんと守ってあげようね!」 「そうだね、守ってあげようね!」 と言って白服達が襲い掛かってきた。 「がるるるるーるるるー」 エブリデイの無表情で何かを棒読みする香夏子。 ほんと、ここに至っては事実だけを描写するわけにはいかない。 どう見てもサボってるようにしか見えないからだ。 でも大丈夫、香夏子働いてる。香夏子超頑張ってる。 さっきからバッドムーンフォークロアの赤い月を頭上に浮かべて白服もろとも痛めつけているからだ。狼のモノマネしてサボってるわけじゃ決してない。 「赤い月キツねー」 「でもチワワちゃんのために頑張ろうねー!」 「そうしようねー!」 キャイーンと言って飛び掛ってくる白服軍団。 「白服さんどいて、わんこ倒せない!」 ティセ必殺猫パンチ炸裂。 じゃなかった業炎撃炸裂! 「チワワの前に貴様達をきっちり倒しておかねばならぬ」 同時にウラジミールの年季が入ったパンチが繰り出される。 キャイーンと言って次々に倒れる白服達。 「仲間がやられてもめげないよね!」 「そうだね、めげないね!」 両腕を広げ高速の反復横跳びをしてチワワを庇おうとする。 そんな白服達に再び殴りかかろうとするウラジミールとティセ……だったが。 「ちわわわー!」 嵐が起こった。そう言ってよいだろう。 剣を豪快に振り回し、襲い来る敵をものともせずに突き進む紫髪の嵐。 名をアラストールと言う。 敵を討ち、進み、踏み越え、嵐は今――。 「チワワは私が保護する。貴様等には任せておけーん!」 ただのチワワマニアになっていた! 「アラストールさん落ち着いて!」 「任務を復唱しろアラストール!」 「ええい離せ、私はチワワを愛でに行く!」 「アラストォォォォォォル!!」 うおーと言って突撃していくアラストール。 香夏子はそれを。 「がーるるるー、がーるるー」 エブリデイの真顔でじーっと見つめていたのだった。 で、その一方。 「うおー、ぺちゃんこにしてやる!」 鈍器を振り上げて襲い掛かる静。 対して白服は。 「チワワちゃん可愛いね!」 「チワワちゃんは僕が守るからね!」 とメロンメロン。 今なら攻撃し放題の筈だった、が。 「うわああああああああ!! やめろー、チワワってゆーな、ぷるぷるなんてしない、目なんて取れない、その単語は聞きたくねー、聞きたくねーよぉー!」 ものっそ戦力にならなかった。 「こいつ弱いね!」 「ボコボコにしようね! ね!」 蹲って丸くなり、囲んでげしげし蹴られる静。 そこへ乱入するジェットガールこと枢。 「お兄さん達、悪いことはいけませんよ!」 高速低空飛行で突っ込むと、白服の顔面にミサイルパンチ(この場合ミサイルは枢本体である)をぶち込んで行く。 「そんなにチワワ好きなんですかっ?」 「もうメロンメロンだよー!」 凄く緊張感が無いのでピンと来ないかもしれないが、今枢は複数のフィクサード相手に仲間を守りながら戦うと言う、ちょっとアメコミヒーローっぽいことをしているのだ。飛んでるし。 「これも加勢しよう」 剣を手に立ちふさがる惟。 惟はキリリと表情を引き締めると、白服の背後で震える魔剣チワワを見つめた。 『クゥ~ン!』 「ぐっ……!」 胸を抑える惟。 ウィンヘヴンが慌てて駆け寄る。 「ど、どうしたの!?」 「これは……これは……もう……」 震える手を懐に入れると、熊のぬいぐるみ(どうやって入ってたんだろう)を取り出した。 そして、剣の先にぶすりと刺す。 「後は頼む……『そんなエサにこれがクマ』」 「え?」 『正当な理由さえあれば主君を代えてもいい。それが騎士と言うものだ!』 惟は無表情で踵を返すと、剣の先端についてる熊で腹話術を始めた。 「え……っと、惟君、魅了されたの?」 『弱者を守ること、それこそが騎士の本懐なれば!』 ダブルキャストとブレイン・インラヴァーを併せ持つ惟に死角はない。 目に一点の曇りもなかった。 というか別の次元を見ていた。 クマーと言って斬りかかる惟。 ウィンヘヴンはランスを斜めに突き出して剣を弾く。 「こ、こうなったら……」 数歩後退。 びしりと指を突きつけ、ウィンヘヴンは全力で女子中学生らしい声を出した。 「アッハ、大体こんな魔剣(笑)に心奪われるなんて、きっと恋人もいないんだよねー」 『そんなエサにこれがクマー!』 「はうっ!」 惟、今日一番の全力呪刻剣が発動した。 技が冴えに冴えまくっていた。 軽く跳ね飛ばされ、緊急ホバーで着地するウィンヘヴン。 「ウィン先輩!」 「だ、大丈夫……何今の。ボク、何か触れちゃいけないラインに触れた気がする!」 『クマァ……思えば犬とは騎士のメタファ……』 ゆらゆらとしながら襲い掛かってくる惟。 枢とウィンヘヴンは、何か本来とは違う種類の汗を浮かべて武器を構えなおすのだった。 ●獣を越え、人を越え、そしてチワワをも超えた剣士。 どさり、と白服達が倒れ伏した。 拳を突出した姿勢から、ゆっくりと『休め』の姿勢に戻るウラジミール。こんな依頼でなければ彼の洗練されたバトルシーンを盛り沢山でお贈りできたものを。 せめて少佐のいぶし銀な男っぷりを堪能して頂きたい。 ……と言っておきながら。 「ネコも、いぢめないで……(うるうる)」 いや、ウラジ少佐がやったわけじゃなくてですね。 「イヌなんかに魅了されるなんてネコとして耐えられない。ここはネコの魅力で……で……で……デカルチャー!」 ティセはキャイーンと言って身を翻す。 「しっかりして下さいティセさん!」 暴れ出そうとするティセをがしっと捕まえる香夏子。 肩を前後に揺すりながら呼びかける。 「狼の方が強いしカッコイイしカレー食べれてお得ですよ!」 「そんな説得が効くわけ……」 額に手を当てるウィンヘヴン。 「う、うう……カレー……」 「効いてる!?」 「ティセさんの気は私が香夏子が引いておきます。だから今の内に、魔剣を!」 「承知した、私に任せろ!」 チワワーと言って飛び掛るアラストール。 男は怯えてチワワ剣を突き出した。 可哀そうに、盾にされたチワワはプルップル震えて泣きだした。 『キャイーン!』 『チワワはやらせん!』 惟の全力防御。 流石は魔剣チワワの特殊能力。ただの魅了とは違うようだ。 目を細めるウラジミール。 「所有者はチワワを道具として扱っている。だからこそ魔剣チワワ自体も他人を利用し、食い物とし、そして盾にしようとしているのだろう……益々放っておはおけん」 「その通りだよ。まずは無理矢理奪っちゃおう!」 それーと言ってミサイル突撃する枢。 彼女にかかればチワワの一匹や二匹余裕で……。 『クゥ~ン!』 「はうわっ!」 枢は胸を押さえて空中急ブレーキ。 目をハート型にして振り返った。 「守ってあげようねチワチワ! 散歩連れて行こうね、シャンプーもしようね! 今日から君の名前はチワ太君だー!」 枢のミサイル式幻影剣がウラジミールへと襲い掛かる。 咄嗟に腕をクロスさせて防御。ブーツの踵が土を大きく抉った。 「くっ……三人にまで増えたか」 「なら、こうだ!」 ウィンヘヴンはランスの先端を魔剣チワワへと向け、惟達に呼びかけた。 「このチワワがどうなってもいいのかぁー! さっさと降伏しろぉー!」 『なっ、なんだと!?』 「チワワが犬質に!」 「柔らかい毛皮、取れそうな目、弱弱しい足腰、そんな弱さがたくさん詰まった犬がチワワなんだ。それを犬質にするなんて、お前ら人間じゃねー!」 ……と、言いながらも惟達はがっくりと膝をついた。 「はっ、これは一体」 「僅差で、先輩の勝ち……コリーだったら危なかった」 「魅了が解けたみたいだね」 改めてランスを構えるウィンヘヴン。 「本当なら奪って脅すつもりだったけど、もう後は力ずくで取り上げるだけ!」 両手を広げてじりじりと距離を詰めていくアラストール。 「ちわわ……ちわわ……そのチワワを離せ、私が……」 ドッグハウス片手にビーフジャーキーを近づけるウラジミール。 少佐何やってんですか少佐! 「エサだぞ、これはいいものだ。ほねっこもあるぞ?」 目をうるうるさせるチワワ。 彼はこうしてアークのリベリスタ達に回収され。どことも知れぬ倉庫に永久封印されるのだった。 ……そう、誰もが思った。 人の世は神秘につけ現実につけ無情なものである。 叶わぬ願いも多かろう。助からぬ悲劇も多かろう。 しかしこの世に希望がある限り、必ず現れる光がある。 それは今、チワワハーフの形をとっていた。 「ちょっと待ったあぁ!」 魔剣チワワと皆の間に割り込む静。魅了されたのか? いや、違う。 彼の眼にはしっかりとした希望の光が宿っていた。 かぶっていた帽子はいつしか外れ、きつく締めたベルトもゆるみ、チワワの耳と尻尾が顔を出していた。 「ここはオレに任せろ!」 ガチリと歯を鳴らすと、静は魔剣チワワに向き直る。 「な、何だ!? 私に暴力をふるうならこのチワワを――」 「わうわうっ!」 「わう!?」 「わう! うーっ、ぐるぐる、がうっ!」 静はチワワ語で……否、犬語で語り始めた。ぶっちゃけ誰にも(多分チワワにも)分かんない言語だったが……しかし。 『お前も犬の端くれなら、簡単にプルプルすんなよ。やーいチワワって苛められるぞ……俺みたいに』 彼の過去を少しだけ語らねばなるまい。 桜小路静。裕福な家に生まれ不自由なく育った彼は、ある日チワワのビーストハーフに覚醒した。その日から彼はチワワであるが故の子供らしいイジメに合い、苦労を負ったのだ。 耳と尻尾を恥じ、チワワを恥じた。どこに出しても恥ずかしいチワワハーフの出来上がりである。 『優しさに頼って生きていられるのは人間世界だけだ。そりゃチワワは愛玩動物として生まれて、ふさふさ毛皮も折れそうな脚もうるんだ眼も好かれるだろう。抱っこされ、散歩に連れて行ってもらい、シャンプーもしてもらえる。お腹がすいてワンって鳴けば可愛いねと言ってご飯がもらえる。寒い夜には一緒に寝てもらえるだろう。でも、そうじゃねーんだよ!』 震える手を隠すことなく、震える膝を止ますことなく、チワワの少年は吼えた。 『野性に目覚めろ! お前は犬なんだ、戦う力を――身に着けるんだ!』 『キャイーン!』 魔剣チワワが吼えた。 そして、男の手から跳ねて飛ぶ。 「ああっ、魔剣が!」 そして剣は反転し、静の手元へと降り立った。 「チワワ……」 魔剣チワワはぷるぷるしていた。 今の静には分かる。 弱さ故ではない。守ってもらうが故ではない。 蛮勇にて、震えていたのだ! 柄を強く握りしめる。 「オレ、コイツを連れて帰るよ。鍛えてやらなきゃいけねーんだ。そうだよな、チワワァー!」 『キャイーン!』 デッドオアアライブ炸裂。 恐らく初めて剣として奮われたチワワの力は明らかに弱かった。 しかし、弱かったからこそ、男の心を強く打ったのだった。 「ぐはっ……魔剣が……俺を裏切るなんて」 うつ伏せに倒れる男。 「俺の元にいれば温かいご飯を毎日あげるぞ。高級なシャンプーだって使える。皆が優しくしてくれる、ぬくぬくした生活が送れるんだぞ?」 「分かってねえな、オッサン」 静は男にトドメを刺すと、剣を抱いて踵を返した。 「静さん……」 やっぱりチワワだったんですね、と呟く枢。 アラストールはそれを指をくわえて見つめている。 ドッグハウスをしまうウラジミール。 「どうやら籠は必要ないらしい」 「あれがあればカレーのふきょうが……」 「何か?」 「なんでも」 両手で自分の口を塞ぐ香夏子。 「えっと、これで任務完了ってことでいいの?」 「……た、ぶん?」 首を傾げあうティセとウィンヘヴン。 「…………」 惟はそっとクマのぬいぐるみを剣から取り外し、静を見た。 「これからどうする」 「アークへ預けるよ。きっと、こいつも野生に帰れる筈だ」 帽子をかぶり直し。ベルトを締め直し、静は言った。 ウィンヘヴンはどこか遠くを眺めながら、『なんでこんな話になったんだろう』と思ったのだった。 |
■シナリオ結果■ | |||
|
|||
■あとがき■ | |||
|