●皆さんは大丈夫ですか? リベリスタ達がブリーフィングルームに集まると、出迎えたのはマスク姿の『運命オペレーター』天原和泉(nBNE000024)。心なしかいつもより目つきが悪い。 「……風邪か?」 リベリスタの言葉に、しかし和泉は首を横に振る。 「じゃあ、花粉症?」 その言葉にうなづきつつ、正確には――と続ける。 「――花粉です」 ●こちら杉花粉の現場です。 大通りから少し入った住宅街。会社や学校に向かう人々が、家を出てバス停や駅に向かう。 その際に多くの人が通る道がある。人々はすれ違い、横に並び、道を歩く、走る、通り抜ける。 その道に面した公園。立派な杉の木が立ち並び、人々を見送るように枝を振る。 ……いや、見送っているのではない。何かを飛ばすように枝を振っていた。 公園の横を抜ける人々。その肩に何かが乗った。サッカーボールくらいの大きさに、子供が書いたような単純な丸や三角の顔パーツ。くすくす笑って楽しげに。そのたびにそれに乗られた人は苦しげに咳き込む。 くすくすくすくす――公園に笑い声が充満する。人々は気づかない。ただただ苦しげな咳だけが溢れている。 公園の中。立派な杉の木の中に、特別大きな杉の木が一本。ざわざわざわざわ音を立て、今日も花粉を生み出した。 ――嗚呼お化け杉の木。 ●今日が花粉の最終日です。 「お分かりになりましたか?」 和泉はリベリスタを見わたし、咳一つ。 「このお化け杉の木――見た目は極端に大きいだけのただの杉の木ですが――これがエリューション化しました」 同様にエリューションである花粉を撒き散らし、道行く人を汚染する。花粉症の人もそうでない人も関係なく苦しめるのだ。 「現状この花粉で人々がエリューション化した例はありませんが時間の問題かもしれません。至急対応が必要になります」 杉の木はフェイズ2。といっても全ての能力が耐久力に特化しているらしくそれ自体に攻撃手段はないものの、公園内には汚染された空気が充満している。お化け杉の木の20メートル以内に入ったあたりでは、その毒素で身体が蝕まれるほどだ。 「さらにこの杉の木、外敵が近づくと容赦なく花粉を降らしてきますよ」 毎回数匹ずつ降ってくるという杉花粉のエリューションはフェイズ1。こちらは打たれ弱く殴ればすぐに倒せるが、素早く高い命中で身体を蝕んでくる。 さらに面倒なことに、風に乗ってばらばらに落下してくる。まとまっているわけではないので範囲攻撃で一掃とはいきづらいらしい。 それでは急いで――と言いかけて、和泉はあっと声を上げた。 「言い忘れてましたが――皆さんの中に杉の花粉症の方はいらっしゃいますか?」 花粉症の有無に関わらず汚染されるんじゃなかったのかというリベリスタの問いに、和泉の眼鏡がきらりと光る。 「杉の花粉症持ちの方は、花粉による汚染がさらに強まってしまいます。かなり苦しい思いをするでしょう」 ですが――和泉は続ける。 「花粉症の方を狙って杉花粉は降りてきます。もしいらっしゃったなら、敵の攻撃が集中するため敵をまとめることができますよ」 人身御供かよ……リベリスタの苦言に、和泉はにっこり笑っただけ。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:BRN-D | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年02月18日(土)22:07 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●現場のリベリスタさん、花粉状況をお知らせ下さい。 街中いたるところでくしゃみの音。目を潤ませ鼻を真っ赤にして人々は歩く。 皆いらだたしげに空を見上げる。そこにあるだろう花粉をひと睨み。 ――もし花粉が目に見えたなら、空の色が違って見えるだろう。 空を覆いつくして丸や三角が笑ってる。くすくすくすくす笑ってる。 地上のくしゃみと二重奏。楽しいね。愉快だね。 エリューションと化した花粉が我が物顔で町を練り歩く。通りかかる者に飛び乗り苦しむ様を見ては笑ってる。 それらを見下ろし、お化け杉の木は悠然とそこにあるだけ。 「――えくちっ!」 可愛らしいくしゃみをとばして、『敬虔なる学徒』イーゼリット・イシュター(BNE001996)は恨みのこもった紫の瞳を空に向ける。 もっとも今はその瞳の色も表情も確認しづらい。マスクとゴーグルをつけたその姿、犯罪者……ではなく花粉症である。 「物心ついた時からの付き合いね……腐れ縁って言うのかしら」 この時期はいつも最低な気分。辛くて苦しくて泣けてくる――でも、ね。 イーゼリットは笑い出す。力強く高らかに。泣き笑いという言葉はあるが、怒り笑いという言葉はあっただろうか。でもそんな感じ。 これまではどんなに苦しめられても花粉に実体は無く、長い長い花粉の時期を耐えていくしかなかった――けれど今日は違う! エリューションと化し実体を得た花粉……散々苦しめられた敵を、あの憎たらしい落書きみたいな顔を、倒すことが出来る日が来た! 「ついにこの時が来たのね! 絶対倒すから、覚悟しなさ――えくしっ!」 マスクの上からでも鼻が真っ赤なのがよくわかりました。 鼻を真っ赤にしたイーゼリットを見やり、うふふと笑みを漏らすのは那由他・エカテリーナこと、『残念な』山田・珍粘(BNE002078)。なぜだかとっても嬉しそう。 (咳き込んだり目が真っ赤になったり、花粉症の方って大変なんですねぇ) 今回私もそんな目に合ってしまうんでしょうか――そこまで考え、だけどと口の中で言葉を含ませる。 顔を真っ赤に染めて涙目のイーゼリット。カシャッと脳内シャッター音をたて、心のメモリーに保存完了。この愛らしい姿が見れるなら、苦しさくらい耐えて見せます。 「――うふふ、可愛らしいですねぇ」 あ、口外に出ちゃってる。 花粉症なぁ――くしゃみが止まらない花粉症組を見やり、『冥滅騎』神城・涼(BNE001343)は肩を竦めた。 自分には無縁なことだけれども、キツそうな人はとことんキツそうだ。 (ん? むしろ此処でカッコいいところを見せれば……) ここから涼君の脳内ターン。 ――辛くて涙目のおにゃのこ、当然上目遣い、これ重要。かっこよく解決する俺。おにゃのこ、感動して抱きついてくる。楽園。 「おっしゃやる気出てきたぜ! やったるで!」 公園には人が近づけないようにしているので誰もいないですけどね。 (ぅぅ、マリィはなりたくないなぁ……花粉症) 街中に氾濫する苦しげなくしゃみの音に、『深青』マルグリット・コルベール(BNE001151) は不安げな表情。 (マリィのお母さんも花粉症だったから大変なのはわかるんだよー) だからこそ。苦しげな姿を知っている彼女だからこそ、自分の為に頑張れる。 「発症する前に、全力で切り倒すんだよー!」 打倒花粉症患者の敵。絶殺なんだよー、おー! 公園に近づくにつれ、花粉の濃度が増し息苦しさを感じ始めてきた。 「日本は杉が多くて本当に大変ですねぇ」 ユーキ・R・ブランド(BNE003416)は花粉症ではない。けれど予防対策に眼鏡とマスクを装着してきた。冷静な判断を行い慎重に対策を練れる――彼女の強みである。 花粉症は蓄積から急に発症するもの、明日は我が身かもわからない。 今の内にやれる事はやっておきませんとね――つぶやき、ユーキは未だ振り切れない不安を振り払うように歩を早めた。 ――誰が悪いという訳では無い―― 人、花粉、そして杉の木。身体の反応を止められる訳では無く、花粉を出す物を根絶する訳にも行かない。 ただ重なってしまったのが不運、とバゼット・モーズ(BNE003431)は語る。 気持ちは理解できる。そして相手はエリューション、行き場の無い思いをぶつけるのもよいだろう。 「――ならば私はその背中を応援しよう」 決意は剣に。笑う事などしはしない。救いの手は、自身のこの手なのだから―― 「さて、そろそろ向こうに気付かれる頃合いかと思います」 那由他の言葉。言葉どおり、特別大きなそれは遠くからでもよく見えた。 悠然と――ただ悠然と。 そびえたつ巨大なお化け杉の木。 近づくリベリスタを見てもその態度は変わらない。 代わりにくすくすと笑いを強め、新たな獲物の存在に沸き立つ花粉のエリューション達。 高らかに響く笑い声が戦いのベル。 ●花粉除去作業が始まりました、ご期待下さい。 別に花粉症じゃ無い奴が憎い訳でもねぇが。 偉いヤツは全員花粉症になってさぁ。真面目に、国を挙げて花粉症に取り組めば良いんだよ! こっちにゃ打つ手ねーんだよ! 肉親よりも長い付き合いとか何なんだよ! 義務教育より長続きしてるモンなんざぁ人生と花粉症だけだっつーの! 何が言いてぇかって? ンなもん簡単だ。 「二度と花粉撒き散らせねぇように! 全部…っ! 燃やぁぁああすっ!」 仲間達が自己を高め強化する間に、真っ向から飛び出し挑んだのは『三高平の狂拳』宮部乃宮 火車(BNE001845)。 囮として花粉を固めることも兼ねて先陣を切った彼の手は、炎まとわる猛き剛拳。 力強く大地を駆け抜け、拳に込めた怒りがお化け杉を打ちのめす! 「ぐはははぁあーはは……ィくショーッ!」 笑いと呼吸とくしゃみでわけわからない状態だけど、長年の恨みつらみは拳に力を与えたらしい。拳を叩き込んだ幹から炎が上がり、震える大気はまるでお化け杉の悲鳴。 念のため結界を施し、すぐにバゼットは火車の後を追った。 大剣に自身の全力を込める。自らの体力を消耗する大技も、早期決戦こそが勝利の前提と思えばこそ。精神を同時に叩き切る必殺の剣は幹を強く斬りつけた! 「……む」 全力の一撃。けれどその手ごたえから、バゼットは力で木を倒すのが困難であると知る。ものが木だけに、やはり燃やすのが一番効率が良いのだろう。 彼だけではない。マルグリットもまた、幹に叩き付けたデスサイズを通してくる衝撃に悲鳴をあげた。 「か、硬いんだよー!」 硬くて丈夫って聞いてたけど、こんなに硬いんだ……痺れる両手にくじけそうになるも顔を振る。 だからって方策を選べるほどまだ自分は器用じゃない。だから。 「マリィは全力でお化け杉を斬る! 力の限り休まず頑張るんだよー」 気合一発マルグリットが声をあげると、ならばとバゼットは杉の枝から降ってくる花粉を見やり剣を向ける。 「では、露払いは引き受けた」 杉に近づいた三人は急に気分の悪さに襲われる。熱っぽくだるいこの症状はまさに―― 「――くしゅんっ! 苦しいんだよーこれが花粉症?」 マルグリットの言うように、汚染された空間が簡易的に花粉症を引き起こしている。 身体は鈍り体力を削られ……この症状では長期戦は不可能だろう。 くすくすくす、あいつの身体引っ付きやすい―― 舞い降りる花粉は全て火車のいる前衛へと集まり毒素を撒き散らす。 身体のギアを引き上げ備えていた涼と那由他は、同じタイミングで走り出す。構えられた三本の剣。 汚染された空気の中に入った途端迫る息苦しさも、二人の動きを止めるには至らない。 「俺の刀のサビになりな!」 「排除させて頂きますね」 無数の斬撃が空を舞う花粉を切り裂いていく。まともに当てれば簡単に裂かれるそれも、ふわふわと風に舞って致命傷を避けていた。 それでも。確実に傷つけているなら後は斬るのみだ。 「上等、此処でおしまいにさせてやるぜ」 クスクス……花粉の笑い、ではない。イーゼリットのものである。 まとめられた花粉が一気に殲滅される様子は、散々苦しめられてきた彼女の心を晴れやかにした。 このまま焼き尽くしてあげたいけれど――思案を振り払う。自分の炎では仲間を巻き込んでしまうから。 代わりに彼女は前衛に立ち、次々と異なる魔力を紡ぎ一つの力へと編みこんでいく。 (今回ばかりはノーガードよ。何処にいたって花粉が有る限り最悪には変わらないんですもの) 高められた魔力は糸。紡ぎ編み出し生み出された四色の魔光はお化け杉を染め上げ弱体化させた。 「クスクス――最大火力で滅ぼしてあげる!」 後に続いたのはユーキ。漆黒の闇を全身にまとわらせ走る彼女へのお膳立ては十分整っている。 仲間達が与えた弱体化は刻印。ユーキにはそれが確かに見えた。禍々しい黒光を帯びさせ、気合の声と共に大剣をお化け杉に突き刺す! 解き放たれた刻印の呪いに、お化け杉は全身を震えさせた。 バゼットが前衛に向かって降る花粉を暗黒の瘴気で叩き落とすと、すぐに次の花粉が降り注いでくる。 繰り返し押し寄せる花粉の波に、前衛は苦しげに咳き込むが…… 「はいダメー! ダメダメダメダメ花粉さようならー!」 元気いっぱいの叫びと共に、降り注いだ業火の弾丸が花粉を焼き尽くしお化け杉を激しく燃え上がらせる。業火によって焼け落ちる無数の花粉はまるで炎の花吹雪。 まずは自己の力を高め、ついで集中。『さくらふぶき』桜田 京子(BNE003066)は花粉が溜まってきたこのタイミングを見計らい自身の最高の一撃を繰り出したのだ。 花粉の全滅を確認するとすぐに汚染された空気の外へ出、次の一手の為に集中を繰り返す。 京子の動きはまるで熟練の仕事人のように―― 「かふんしょう? なにそれ? ってくらい花粉症になった経験がありません」 憎い? 憎らしい? 花粉症の苦しみを味わせたい? でも無理、無理無理無理無理、花粉は私に到達する前に焼き尽くす! 「みんな掛かってこい! あいむじゃすてぃす!」 ――怖いものねぇなこの子。 ●花粉対策は焼き払いがトレンドです。 「ぶっ! 思い切り吸っちまった、ヤバい……!」 げほげほと苦しげに咳き込む涼。その横で思い切り花粉を斬り飛ばしたマルグリットだったが、二人の背中に次々に花粉が圧し掛かる! 「わ、わ、あうーごめんなんだよー」 花粉の数が多く、空気の汚染が著しい。徐々に追い詰められ弱っていく身体に、ついに抵抗の手が止まってしまう。 くすくすくす――笑い声の輪唱の中で、涼とマルグリットはぐったり倒れこんだ。 花粉の神秘の力に耐えられなかった涼と、そもそも体力に優れないマルグリット。花粉症患者二名様追加。 イーゼリットと火車。元々発症している二人は周りに比べより狙われていたが、片や高い神秘の耐性で、片や無尽蔵な体力でなんとか耐え切っていた。 そのイーゼリットに花粉が集団で迫っていく。しかし花粉は身体に届く前に一気になぎ払われた。 「駄目ですよ花粉さん。女の子にそんなに気軽に触っては」 二刀流で切り伏せた那由他は続ける。もっと優しく丁寧に、壊れ物なんですから……イーゼリットさんは特に。 「出来ないなら、バラッバラになって下さいね」 うふふと笑み、那由他は的確に弱点を突きお化け杉を、花粉を切り刻んでいった。 ――人生の、いいえ人類の最大の敵でしょう! 大げさ? いいえ、花粉症患者の共通の意見です。 イーゼリットは幾度目とも知れぬ全力を叩き込み続ける。ものが木だけにどれくらい効いてるかはわからない、けれどそんなこともはや関係ない。 溜まりに溜まったストレスを……全部発散させるのだ! 絶対許さないから……私がいままで感じてきた辛さ、悲しみ、憤り…… 「全部あわせてお返ししてあげる!」 「最後は根性! ファイト、オー!」 回復役がいない今回、気合で負けるなとばかりに京子が根性論を叫ぶ。 燃え盛るお化け杉。京子の放つ業火の弾丸は確実にお化け杉に甚大な被害を与えていた。 「……一人でもバックアップが居ればこんな神風みたいな事はせずに済むのですが」 ユーキは苦笑しつつ再び呪いを刻む。細かい事はいい。持久戦ができないなら最速で切り倒すだけ。 倒れる前に倒しきれるか……勝負の時だ。 「良いぜぇ……こっからだっクしょぉ!」 止まらぬくしゃみもなんのその、火車は拳に炎と意思と全力を込める。そうだ燃やせ燃やせ燃やし尽くせ! 悠然とそびえ立っていたはずのお化け杉。しかし幹は貫き剥がれ、枝は刻まれ断たれ、葉は焼け落ちている。間断なく降り注ぐ花粉の数は、もしかしたら焦りによるものか。 「やらせんよ。引き受けると言ったろう」 その花粉もバゼットの放つ暗黒の瘴気に包まれ落ちると、次の花粉を飛ばさんと振られた枝――が大きな音を立てて地面に落下した。 「私は、あなたが花粉を出すのを止めるまで、斬るのをやめません」 面接着で幹を駆け登り、枝を切断した那由他。もはやお化け杉を守る手は無い。 「コイツだけは……コイツだけはなぁぁっ!」 毒のせいか、はたまた花粉のせいか。血涙を溢れさせ叫ぶ火車はその恨みもつらみも全部込め上げて、全身全霊全力全壊を込めた魂の拳はお化け杉の幹を貫く勢いで叩き込まれた。 一際大きな耳をつんざく激しい音を響かせて――途端静寂が辺りを包んだ。 くすくすく……うるさくこだましていた笑い声は突如絶える。空を埋め尽くしていた花粉の姿ももうない。 場に残るはパチパチと枝を焼く炎の音と、荒いリベリスタ達の呼吸の音。 くしゃみはいつしか止まっていた。 ●今年の花粉被害は緩やかになるでしょう。 「お、終わったー」 撃っては離れ、近づいては撃ち……公園を駆け回っていた京子は戦いの終わりの合図と共にへたり込んだ。 「一度くらい花粉症の苦しみってやつを味わってみても良かったかなー? なーんて無理無理! 花粉なんて私には追いつきませんからね!」 ホント怖いもんねぇな。 「全く人騒がせなエリューションだ」 苦笑を漏らすのはバゼット。花粉も自然現象であろうが、この手の事象を神の悪戯と捉えるには余りのものだろう。 (そういえば花粉対策くらいアシュレイ君なら出来そうだと思うが) 聞いてみてはどうだと花粉症組に目を向けるが……精魂尽き果て、火車は地面に突っ伏していた。 「……ぅー。マリィまで花粉症が発症しそうだったんだよー」 「あーまじ花粉症ヤッバイわ……」 倒れたマルグリットと涼を抱き起こしながら、ユーキは体中の埃に渋い顔。 「皆で銭湯でもいきましょうかねぇ。花粉症とか抜きでがっさがさです」 全身の汚れと埃を落としたい――彼女の心からの言葉であった。 ――花粉症って、大規模な杉の植林が原因と言われているの。つまり人間の、私達のせいなのかもしれない……そう考えると、スギ花粉さんも―― 「許せるわけないでしょう! ――へくちっ!」 「うふふ、大変ですねぇ」 お化け杉は倒した。だからといって世の中から花粉症が無くなるわけでもなかった。やけに嬉しそうに鼻にティッシュを押し当てる那由他はともかく。 「――っ、花粉のばかぁ!」 憤るイーゼリットの叫びは空に吸い込まれた―― 今日もどこかで花粉が舞っている。 それでも空は晴れやかに。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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