●ウラガワ ヒヨコは雄として生まれてくると、将来卵を産む事も出来ない為、殺処分にされるという。 大抵はひとつのバケツにヒヨコ達を投げ入れ圧死か窒息死させるらしいが、ある工場ではアメリカに倣いミンチ機によって処分していた。 ミンチとなったヒヨコは毛皮を剥ぐべく育成されているミンクの餌になるそうだが、そんな事は男にとってはどうでもよかった。 男は最近この工場で働く事になったばかりの新人だった。仕事内容は聞いていたが、ゲーム等では人や動物はあっさり死んだりするので、最初は何とも思っていなかった。気楽に考え過ぎていたのだ。 が、実際にヒヨコと、そしてヒヨコの死と向き合うと、気が重くなるのである。しかもその処分方法がミンチと来た。生半可な覚悟でこの仕事に臨んだ男は最早ベジタリアンになる程のストレスを抱えていた。 しかし今更職を辞してもすぐに新たな職に就けるわけでもない。辞めるに辞められない生殺し状態である。男は己の迂闊さを少し、いやかなり恨んだ。 そんなある日の事だった。 「……ああ、またミンチかぁ……ミンチ、ミンチ……うう、もうハンバーグ食えねぇよ、昔はあんなに大好きだったのによーっ」 ぶつぶつとぼやきながら、大きめのケージに目を遣る。其処には何も知らない純粋なヒヨコ達が囚われていて、此方につぶらな瞳を向けてくる――筈だった。 だが、この日は違っていた。 「……あれ?」 男は思わず自分の目を疑った。まず頬を全力で抓った。鈍い痛みを覚えるだけの結果に終わったので、今度は目を全力で擦った。けれど目が痛くなっただけだった。 そして、遂に男は現実を認めた。 「……いないー!?」 ●ユキサキ 「……と、そのヒヨコ達は今、フェーズ1のE・ビーストとなって、工場近くの人気のない原っぱで遊び回ってる」 何処か遠い目で、『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は告げた。 「幸か不幸か、ヒヨコは五十羽毎に別のケージに入れるようにしてたらしいから、全部逃げたってわけじゃなかったみたいだけど」 それでもちまいのが五十羽。逃げたのだ。 「エリューション化した事で、ちょっと嘴や爪が鋭くなってたりする。それに警戒心が強くなってるから、人が来たら最初は草叢に隠れて姿を見せない。でも、こっちがのんびりまったりしてたりで、敵意がない事を示せば、遊んでくれるかも、なんて期待してきたりして、すぐに出てくると思う。いじめたりしなければ、攻撃もしてこないみたいだし」 もう既にただの人懐こいヒヨコだ、それ。 「うん、言いたい事は判る。倒すのちょっと勿体無い気も、判らなくもないけどね。でも、フェーズ1とは言え、エリューションだから。可哀想かも知れないけど、割り切って。倒してきて」 ああでも、とイヴは付け加えた。 「最終的に倒してくれれば、その前に一緒に遊んできても構わないから」 寧ろそっちがメインではなかろうか――そんな言葉をリベリスタ達は呑み込んだ。 うん、もう何も言うまい。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:西条智沙 | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年02月17日(金)23:03 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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