● 「なんで来たのよ……」 女の声が震える。振り返ることもなく言の葉が吐き捨てられる。 「どうして」 細い肩が震えている。 女の背が、うっすらと煙っているのは、なぜだろう。 頑なな態度に、男がため息をついた。 彼女の突然の心変わりが胸に突き刺さる。 男はようやく彼女の居場所を見つけることが出来たというのに。 それにどうして。 こんなに寒い夜に、こんなに薄着で。こんなに人気の無い場所に。 「なあホント、どうしたん――」 男が女の背に触れる。突如走る激痛に男は呻き、女が男を突き飛ばす。 背から離れた桃色の手の平から、赤い血液が滲み出した。 女の背にはべっとりと掌の跡が残っている。皮膚が凍りついたのだ。 「お、おま……」 男の背筋が凍る。痛みが無い。指が動かない。 「こんなに、なっちゃったの……もう、やだよ」 女がその場に泣き崩れる。 「助けて……」 大きな瞳からぽろぽろと零れ落ちるのは、硝子のような氷粒だった。 ほどなく女が振り返る。 透き通るような肌を流れる髪は、蒼白く輝き始めていた。 その背に張り付いた男の皮膚が粉々に砕け散り、きらきらと夜風に舞う。 男には眼前の光景が理解出来ない。 目の前の現象がエリューションとしてのフェーズ進行であることなど、分かるはずもない。 女の唇が震える。 触れてはならないのに、手が伸びる。彼をこのまま力強く抱きしめたい。 だめなのに。どうしても。どうしても。 湧き上がる狂おしい感情が殺意であることを、女は自覚していない。 男は、ただ立ち尽くした。目の前の彼女の変化を、綺麗だとすら思った。 あまりに幻想的だから。全く現実感がないから。 「ねえ」 フェーズの進行が、女を狂わせている。 ゆっくりと女が歩み寄り、ゆっくりと手を回す。抱きしめる。 男をたちまち凍てつき、砕け、光の粒子となって消えてしまった。 女の周囲を彩る靄が、徐々に人の形を形成してゆく。 一人残された女は往く宛もなく、凍れる従者を従えて歩き出した。 ● 映像が途切れ、桃色の髪が揺れる。 静謐を湛えるエメラルドの瞳が、リベリスタを見据えていた。 「雪女。です」 「そうみたいだな」 中々古典的だ。 桃色の髪の少女――『翠玉公主』エスターテ・ダ・レオンフォルテ(nBNE000218)は表情を変えることもなく、ブリーフィングルームのモニタを指し示す。 「これを見てください」 モニタには詳細なデータが映し出されている。 指先がかすかに震えているのは、初仕事に対する緊張からだろうか。 「皆さんが到着する頃には、既に犠牲者が多数出ています」 もしかして。 「このノーフェイスの女性は、殺害した人や動物を従えているようです」 なるほど。 「既に彼女は、本能的な殺戮衝動に身をゆだね始めています」 もう、怪物になってしまったってことか。 「一般の方と遭遇しない交戦ポイントを、万華鏡が観測することが出来ました」 それは助かる話だ。 「どうか、止めてあげてください……」 よろしくお願いしますと、少女はぺこりと頭を下げた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:pipi | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年02月12日(日)23:34 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● 『雪女に魅入られた男が今年も凍死すってかぁ。 雪女が人間になれるのは想い人に溶かされた時だけやが。 雪女のちべたい心にそんな心はありはせんってな』 冷めた月の光が青白い女を浮かび上がらせている。 「ほなぁー狩るかねぇ」 男が口から煙草を放す。その息が白く長いのは紫煙のためだけではない。そんな凍える夜。 『√3』一条・玄弥(BNE003422)を初めとして、リベリスタ達は防寒具を着込んでいる。現場は風邪でもひいてしまいそうな寒さだった。 現場に到着してから僅かな時間に彼等は己が力を高める術を素早く纏う。ターゲットはあの青い女と、連れ立つ従者達だ。 空気中の僅かな水分を曇らせながら宙を滑る女は、最早一見して人ではないことが判る。 「この寒さも、もう彼女には感じることはできなくなってしまったのか」 複数の加護を展開しながら『剣を捨てし者』護堂 陽斗(BNE003398)が呟く。 人の身を強制的に終らせられる悲劇のことを。リベリスタ達がこれまで何度も相対してきた手合いだ。 「貴方を止めることが力でしか叶わないのならば、持ちうる全てを振り絞って、貴方に挑みます」 そんな悲しさで凍てつくような運命は、ここで終らせる。 先ほどから宙を滑る女の視線は、リベリスタ達に注がれている。距離はどんどん縮まる。速い。 そこに漲るのは、最早本能に過ぎない明確な殺意だ。 「今です」 防寒具をもこもこと着込んだ雪待 辜月(BNE003382)の柔和な声が絶妙なタイミングを告げる。 少女と見まごうほどの美貌の唇が震えた。 「こんな事になる前に止められなかったのが残念です」 エリューションとなってしまった以上、最早救う最善の手立てはないのだから。 白い翼が広がりポニーテイルが翻った。『のんびりや』イスタルテ・セイジ(BNE002937)は女の元へと一気に詰め寄る。 眼鏡が煌き、直後に膨大な閃光が放たれる。 でもメガネビームじゃないらしい。そうなのだ。そういう構えなのだから、仕方がないだけなのだ。 メガネビームとか言わないでやってほしい。メガネビームとか絶対だめ。 兎も角。 閃光は敵の全てを巻き込み、『カレ』を含む従者四体の視覚を焼いた。 ほんの少し足りなかったろうか。全員に満足な打撃を与えることは出来ていないが、この段階では致し方ないことでもある。 闇を纏う玄弥が口の端をゆがめる。放たれた暗黒の瘴気が敵陣を覆い尽くした。次々に不吉の力が蝕んで行く。 今度は全員。イスタルテの一撃で仮初の網膜を焼かれた事が功を奏している。 だが、一瞬後に闇を切り裂いて現れるエリューションに、リベリスタ達は僅かに戦慄する。 「くけけ。こりゃ中々」 強力な一撃であったが、大きな被害を与えるには至っていない。やはり情報通り雪女以外は物理的な打撃が通用しづらいようだ。 とはいえ戦闘は順調な滑り出しである。 だが、早くも敵の反撃が始まる。悲鳴のような声を上げる雪女の顔がイスタルテの眼前に迫る。 彼女は身を捻るが、雪女の指が胸先に僅かに触れる。短い呻き。左肩が動かない。姿勢を変えることが出来ない。 身のこなしはこの場の誰よりも優れているはずだが、直撃だ。 それ以上の追撃前に、『LawfulChaticAge』黒乃・エンルーレ・紗理(BNE003329)が、すぐさまカレの元に立ちはだかる。 攻めの混沌、守りの秩序を手に、己の素早さを限界まで高めた。 だが直後に吹き付けられる冷気の嵐に、足は地を滑り大きく後退させられてしまった。 焦り過ぎたかと、僅かな自嘲が胸を刺す。状況は違っているが、前の戦いの気持ちがどこか頭を離れてくれない。 他の従者達が一気にイスタルテ、紗理、辜月、『黄金の血族』災原・有須(BNE003457)。そして『百の獣』朱鷺島・雷音(BNE000003)に迫る。 次々に吹き付けられる暴力的な冷気は、まるで出鱈目で全く秩序を伴っていない。 ある者はかわし、ある者には直撃した。総じてまだ倒れるような打撃を受けたとは言えないが、いきなりこのままではまずい。 敵の侵略はどこまでも無軌道で、だがそれゆえに風向きのコントロールが難しかった。 対するリベリスタ達は散開する事と、敵のコントロールをどうにか行うことで対処を開始していた。 産み落とされた状況は、乱戦に近い。 そこが吉と転ぶか凶と転ぶかは、まだ誰にもわからない。 陽斗が術書を握る手に力を込める。 しかしどうしても守りたい布陣、即ち雪女と彼氏の足止めという状況は勝ち得ているのだ。崩すわけにはいかない。 泣き叫ぶような殺意に身を貫かれ、なおも動じぬ『人生博徒』坂東・仁太(BNE002354)が、巨大な禍々しい銃を構える。 彼の得手は物理だ。今度の敵との相性が良いとは言い切れない。乱射で急所を狙うことも出来るが、一種の賭けではある。 当たりますように、と願わざるを得ない。 (……なぁんて運任せだけじゃあかんけんな) 細められた狐目が戦場をあまねく見通す。かつての持ち主なら、どう撃つだろうか。当然全て当てきるのだろう。 賭けは―― 引き金を引く。 凍える戦場に銃弾が煌く。凶悪な火線が踊る。 戦場に舞う銃弾の嵐は的確な弾道を描き、劣勢を塗りつぶすように次々とチャンスが生み出される。 成功だ。 結果として僅かな時間の内に実現した三度の掃射は、絶大な威力を伴って敵の身をずたずたに引き裂いた。 完璧だ。彼等には最早、相手を殺して楽にすることぐらいしか出来ないのだから。 ● 「これ以上の罪は重ねさせません」 断じて。 「これ以上の悲劇は起こさないために」 二人の声が重なる。 「止めて見せます」 陽斗と辜月が次々に放つ癒しの魔術と、災厄を打ち払う力によって、未だ大事に至る要素はない。 叩き付けられる冷気に身を晒されながらも、雷音は反撃の機会を伺う。 助けを求める雪女。大切なカレまで巻き込んで。運命は残酷だ。 だから―― ボクは彼女たちを終わりにしよう。 少女が広げる分厚い魔導書のページが次々に捲れ上がり飛び立つ。 天を舞うその一枚一枚が煌く氷の刃となり、エリューション達に降り注いだ。 彼女が対する相手は氷の塊のようなものだ。どれほどの効果をあげてくれるかは判らない。 そも。万華鏡は事後を捉えた。それは最善ではない。 事態に対応出来たメンバーは、必ずしも今回の敵を打ち倒す能力に向いているとは言えない。それも矢張り最善ではないのかもしれない。 だが、彼女の怜悧な頭脳が導き出した次善の手段は、限りない最善の正解だ。 彼女の高い魔力は、その鋭さと衝撃だけで、敵にかなりの打撃を与えている。 ままならぬ事態でも覆せばいい。彼女等にはそれが出来る。 「すれ違う思いと悲劇……」 有須が巨大な銃を構える。 取り回しが難しいためか、僅かな一撃でかなりのダメージを負ってしまった。 「ふふふ……愛ですね……」 厳しい状況ではあるが、意に介すこともなく彼女は呟き、引き金に力を込める。 「愛の……」 生命力を引き抜かれるようなおぞましい痛みと共に、アームキャノンが呪いの火を噴いた。 その一撃は従者の胸を貫き、遥か空へと突き抜ける。かくんと力を失う従者は、直後に粉々に砕け散った。 「……お返しです」 まずは一体。このまま押し切りたい所である。 紗理が素早くカレの元に回り込む。 「もう彼女はあなたを見ていません!」 どうしても止めなければならない。それゆえの挑発の言葉だった。 さまようカレの視線が紗理注がれる。凍れる瞳の奥に揺らめくのは、悲しみか、それとも怒りか。 カレと彼女。どちらが悪いわけでもないが、運命のほつれは修正しなければならない。 紗理が跳ぶ。二振りの刃から音速の刃が放たれた。目にも留まらぬ幾重もの剣閃が、氷零の男を切り刻む。 身じろぐカレは即座に反撃を試みようともがくが、激しい衝撃に望みは叶わない。チャンスだ。 辜月の術で氷像を抜け出したイスタルテは雪女の前を動かない。 ヒステリックなわめき声と共に放たれる氷の刃が、彼女の身を切り裂いてゆくが、今度は浅い。 そこから次々と襲い来る冷気の嵐に、有須は危険な状態に陥っていが、陽斗が書を掲げ、暖かな光が満ち溢れる。 陽斗は倒れさせるわけにはいかない。有須は、リベリスタ達は倒れるわけにはいかない。 「さむぃさむぃ」 影のように玄弥が戦場を駆ける。目指すは雪女の元だ。 強烈な打撃に二度も晒されたイスタルテだけに最前線を任せるのは危険過ぎる。 それにあえて肩を並べるタイミングを一歩だけ遅らせたことで、より敵からのダメージを分散出来るかもしれない。 「心が寒いし醜い女と相対なんぞしとぉないぞなぁ、もしぃ~?」 イスタルテと入れ替わり、抉り込む放たれた玄弥の言葉が雪女の中に、僅かに残された心を蝕む。 非道ともとれる物言いかもしれないが、玄弥が哂う。雪女の怒りの視線が、男の視線と交差する。 それでいいと。狙ってくるがいいと彼は思う。 出来ることをきっちりと行い、報酬たんまりと頂く。 ただそれだけの話なのだから、悪だ非道だと、そんな大層なものじゃない。 それにおしゃべりは銀だ。口にすることでもない。 仁太が再び銃を構える。先の攻撃程、なかなか上手くはいかない。 それでも高い命中に裏付けられた掃射は、霊体を引き裂いてゆく。 仕返しとばかりに、従者の白い暴風が甘い毛並みに浴びせかけられる。 「と、とっ」 寒さで足がかじかんだか。防寒具の下から覗くドレスに足が縺れた。 生じた僅か一瞬の隙に、冷気が全身を覆いつくす。神は、なぜ彼にそれを着せたし。 ――それから。 ● 僅か五十余秒の時が過ぎた。時間は短くも、体感はそうではない。 白い女が哂う。髪を振り乱す。 氷の刃を撒き散らせるだけ撒き散らす。恋人の名を呼ぶこともなく、ただ哭く。喚く。 「すごく愛です……」 哂う女に有須が言の葉を紡ぐ。 「でも……もう、その想いも……愛も……」 かすかな笑みさえ浮かべて、顔色ひとつ変えぬまま、有須が再び砲撃を放つ。 痛い。苦しい。苦い。でもこれは哀れな従者に届ける愛。 「氷の礫に消えてしまったのでしょうかね……?」 礫と消えた命。想い。それは愛。 「大丈夫ですよ……」 凍てつく楔となって、それでも二人を結び続ける忌々しい神秘の呪い。ちりばめられた金剛石のようにきらきらと輝く大気。 それも愛。全て愛。 これまでの戦いで二度は攻撃を外してしまっていたが、今度は極めて重い一撃が最後の従者を捉え、終の知らせを送り届ける。 凍てつく寒空の下、リベリスタ達はカレを除く全ての従者を、ようやく葬り去ることが出来た。 残った女とカレとて、既に浅くはない傷負っている。 「ふふふ……」 後は二人の化け物を遠い彼岸に送り届けるだけだ。 女が叫ぶ。宙をさまよう視線は、後衛の癒し手を捉えた。 「そんな冷血女に媚びてしんじまうたぁ、馬鹿な男やなぁ」 男が嘯く。哂う。 「そこの醜女もそう思わんけぇ~?」 歯をむき出しにし、すぐに玄弥に腕を振るう。 その言葉は通じているのか、通じていないのか。だが女は確かに玄弥を狙った。 後ろへ、と辜月。 「くけけっ」 嘲笑と共に、その身に纏う闇が玄弥を夜の影に引き込む。 閃光に眩んだ雪女の眼では、その影を追うことが出来ない。 従者の掃討で今後の戦局自体は楽になったのだろうが、万華鏡の観測では、まだ敵には大技が残っているという状況だ。 それに代償も大きい。未だ倒れる者は居なかったものの、激しい攻撃に、リベリスタ達はかなりの体力を削られている。 最前線に立つイスタルテも一度は癒しの術を放っていた。 全域を巻き込む閃光を放つか、冷気に対抗する術を放つか。それとも癒すか。 出来ることが多いだけに難しい選択を迫られ続けるイスタルテは、しかしその力を十分に生かして戦っている。 裏を返せば際どい場面があったということでもある。 癒しをかけながらも絶妙なアシストを飛ばし続ける辜月と、全域を癒すことが出来る陽斗がいなければ、既に何人かは倒れていたことだろう。 そうなればこの時点での従者達の全滅も難しい。リベリスタ達を支えきる二人の力は非常に大きい。 「死んでも尽くしてくれるような彼がおるなんて幸せもんやな」 仁太が銃を構える。もしも『運命に愛されていたら』の仮定ではある。 力は残り少ないが、辜月が分け与えている余裕はない。 カレが叫び、女が呻く。冷気が弾ける。 二人の間には言葉もない、視線を合わせることもない。向き合うこともない。 横たわる深い絶望―― その時だった。 女の姿が微かに揺らぐ。雷音の直感が事態の急変を告げている。 雷音が叫ぶ。駆ける。 リベリスタ達が身構える。 天から舞い降りた風が地をうねり、リベリスタ達の視界を純白に染め上げる。 突如。世界から音という音が消えた。 『エスターテ、任せておけ。 ボクも最初は怖かった。ないしょだけど、今でも。 怖い、のだぞ。 必ず倒して帰ってくるのだ。良い返事をまってほしい』 唐突に、雷音の脳裏に蘇るのは、依頼を告げるフォーチュナに言い残した言葉だ。 彼女の知名度はアーク主力リベリスタの中でも、五本の指に入る。 寝耳に水の事実を告げられた新米の頼りないフォーチュナは、そのときどんな気分だったろう。 彼女達は命を賭けてきた。何度も、何度も。 怪我をすれば痛い。怖くないわけじゃない。それでも勝利を勝ち取ってきた。だから今回だって勝ってかえるのだ。 敵は確実に追い詰められているはずである。 極寒の冷気に紗理が倒れる。有須が運命をねじ伏せる。 リベリスタ達の肌が凍りつき、走る亀裂から流れる赤い血すらも瞬く間に凍りついてゆく。 そんな雷音の小さな背の後ろには仁太が居る。 たとえ倒れても、次の一打につなげることが出来れば、彼女達は勝つ。 「ボクはそんなに」 その身に吹き付けられた冷気に、眼を開けることも出来ない。 「脆くはないのだぞ――!」 小さな少女は倒れない。世界の寵愛ではなく、己の足で立つ。 「奈落にはおちとぉないんでなぁ」 玄弥が哂う。狙い済ました仁太の一撃に、鴉の突撃に優しいカレが砕かれる。 「かかっ」 深い皺が刻まれた頬を歪め、爪が女の頬を抉る。 「戦闘じゃ、弱いところを突くもんやって!」 ほろほろと崩れ落ちる氷は、涙のつもりだろうか。 『姿だけの鏡像と心の無い雪の精…… もう愛は無いのでしょうかね……?』 有須は名も知らない彼女へ別れの言葉を送る。 続くリベリスタ達の猛攻に成すすべもなく、崩れ行く女を辜月が抱きしめる。 彼女にほんの小さな救いがあればいい。 腕の感覚が消えた。彼女がほんの少しでも安らげるなら、凍り付いてもかまわない。 こんなことは、ただの自己満足に過ぎないのだろうとは思う。 女の虚ろな瞳が辜月を静かに覗き込み、やがて粉々に消えうせた。 「どうか彼女に安らかな眠りが訪れますように」 青年が呟き、少女は次の愛を求めて彷徨う。 たゆとう光は儚く、どこか暖かな気配を湛えて―― |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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