●会いたかった 「会いたかったよ」 目の前の男は私に向かってそう囁いた。まるで遥か遠くから会いに来た恋人のように。まるで数年来合っていない親友のように。 言葉を反芻する。何度も、何度も。 それは多分愛の言葉だから。 彼にとって大事な言葉だろうから。 だけども、私にとってはそれほどでもない言葉だから、ふとした瞬間に意識から離れていく。 逃さぬように気をつけて、離さぬように握りしめて。 そしてゆっくりと、はっきりと、言葉を紡ぐ。 「あなた、誰?」 知らなかった。私は、愛の言葉を私に寄越した彼を、これっぽっちも知らなかった。 「僕が誰かなんて、どうでもいいじゃないか」 「……私の事、どこで知ったの?」 いつ、どこで、見たのか、会ったのか、それとも知ったのか、わからない。 彼はそれを聞き、さも当然のように頷く。 「うん、僕も知らない」 わけがわからない。知らない人間に愛を告げたというのか。馬鹿馬鹿しい。 彼は一歩前に出る。私は恐ろしくて、思わず一歩後退する。 「待ってくれ」 彼が懇願するように言う。震える声は請うように、祈るように。 「僕は君に合うために生まれたんだ」 何を言っているの? 頭がオカシイんだろう。これ以上、付き合ってられない。 私は逃げるように、走りだす。 怖かった。 ナンパだとしても、キャッチセールスだとしても、その体にまとう雰囲気が、言葉に混じった違和感が、胸をざわつかせる。足をすくませる。 とにかく、この男の前にいたくないと、そう思った。 「待ってよ」 先ほどの声と異なり、男の声に焦りはない。その声の孕んだ不気味さは、私を振り返らせる。 男の顔が見えた。目と鼻の先、眼前、舌を出せば届く気がした。彼の顔が、私を見ていた。 体が見えなかった。 世界が暗転する。何も見えず、しかし暖かい風が吹き、時折生温かい液体が私の頬にへばり付く。 私の体に硬質の物体が触れる。後頭部と、脛の辺り。 理解した瞬間、私の体は千切れた。 ●帰って 「『運命』に導かれたとしても、こうはあって欲しくないものね」 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)が憂鬱そうに言う。対象を『食べる』ために生まれたと自称するそのエリューションは、目の前の食べ残しを見て、恍惚として微笑んでいた。 「生まれたその瞬間に自分の食べるべき対象とその位置を理解し、すぐそこに行って食べる。食べると次の対象とその位置が浮かんできて……っていうのを繰り返しているらしい。対象は人のみに限られない。動物、植物、色んなもの。昆虫とか食べる姿は結構目に毒。流石に無生物は対象にならないみたい」 彼の声には相手の足を止める効果があり、相手の動きを止めて食べる。食べた時、相手が死ななければ胃袋という名の亜空間で徐々に体力を奪われていくのだとか。気をつけてね、とイヴは注意した。 「次に食べる対象はすでに決定してて……っていうかさっき見えた女の子なんだけど、まだ結構遠くにいるみたいだから影響はないと思う。頑張って倒してね」 ちなみに男も女も食えるらしいよ。イヴは最後によくわからない一言を付け加えた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:天夜 薄 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年02月10日(金)23:00 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●運命に導かれる者 彼が運命に導かれているとして、そうして出会った二人は、本当に運命の恋人なのであろうか。『運命食』。そのエリューションに与えられた名前に、『宵闇に紛れる狩人』仁科 孝平(BNE000933)は形容しがたい何かを覚える。あまりにも、その男は一方的であった。彼の運命は、その相手に取って一方的な押しつけでしかない。彼が運命に沿って生きるのであれば、運命に沿って死ぬのだって当然のことだろう。自分たちが一方的に彼を倒すのもまた、『運命』に違いない。 愛にはいろいろな形があっていいと思う。けれども。と雪待 辜月(BNE003382)は肯定を躊躇う。相手を食べてしまうのは、ちょっと自分には受け入れられそうにもない。相手がそれを了承しているならまだしも、『運命』を理由に一方的にそれをしてしまうのだから。 何にしても、最悪の愛の告げ方であると『ディフェンシブハーフ』エルヴィン・ガーネット(BNE002792)は思う。たとえ運命の相手だからってやり方ってものがある。ナンパするならスマートに、思いやりをもって。軽さにも切実さが必要だ。 まして一度限りで相手を変えていくなんて。日無瀬 刻(BNE003435)はその不届きな愛情に反吐が出るような思いだった。浮気者にはお仕置きを。彼の運命は今日ここで途切れさせよう。 『殺人鬼』熾喜多 葬識(BNE003492)は逆に、その口上に好感を覚えていた。君を喰らうために生まれてきた、だなんて。まさに愛の『殺し』文句だ。それが理由で殺すのは、殺人鬼としては美しいとさえ感じる。だが運命とやらも今日はご機嫌斜めのようだ。自分たちを呼んで、彼を本気で殺しにかかっているのだから。 「件の少女はまだ遠くなのが幸いか。『運命食』は何処だ?」 『正義の味方を目指す者』祭雅・疾風(BNE001656)は千里眼を駆使してエリューションを探す。幸いにして、彼の次なる『運命』の相手は、被害に合うような場所にいない。早くそれを倒さなければ。見過ごせば彼の運命が人を食殺してしまう。悲劇はここで断たねばならないだろう。それがヒーローのお仕事だ。 壁になる障害をいくらかまで見通せる千里眼が、エリューションの姿を捉える。ごく普通に、平然と歩く姿は、どこにでもいるような一人の男にしか見えない。人を食殺す化け物とは、彼とすれ違っても決して思えないだろう。 「あれが『運命食』か?」 そう疑問を唱えたくなるほど、異常は見受けられない。 彼の動きはゆっくりだ。運命を全速力で追っていくような気配はない。リベリスタは万全の準備を整えて、彼の運命を断ちにかかる。 葬識が射程ギリギリから漆黒の閃光を放つ。それは周囲の空気を振るわせながらエリューションに向けて直進し、命中する。運命食は当たった部位を抑えながら、振り向く。そして自分の方へ駆けてくる、世界に『運命』を与えられた者たちの姿を見た。 「ちょりーっす!運命には導かれてないけど、お食事邪魔しにきたよ」 ●運命を語る者 「犠牲者が生まれるのを防ぐ為ここで食い止める! 変身!」 説明しよう! サイガーマンは正義の味方である! 以上! 一瞬の早着替えという名の変身を終えた疾風は、流水のごとく構えて敵の動きをうかがう。しかし運命食はこちらに一切の殺意を向けず、パチパチと疾風を拍手で称えた。 「格好いい。いいですね、正義のヒーロー。僕も昔は憧れたものです。変身シーンを何度もやってみた記憶があります。おもちゃの変身ベルトとかも買ってもらったりしてね。結局一度も正義のヒーローに変身できなかったわけですがね」 「そいつは、どうも」 疾風は短めに言葉を返す。舌がヒリヒリと痛かった。耳から伝わる声の震えが、体全てを震わせる。脳が指令する行動を妨げるほどに。 「何とも厄介な敵ですね」 『デモンスリンガー』劉・星龍(BNE002481)は軽く舌打ちをする。言葉の一文字一文字が体に痺れをもたらしていく。その状況が何とも歯がゆい。まだ体が動かない程ではないが、これが蓄積したらどうなるか。 「早く倒すのにこしたことはないですね、このような手合いは」 「……あぁ、僕が人を喰うから、倒しに来たわけですね」 運命食は納得して言う。疑問や不快というものを、この期に及んで彼は自覚していなかった。 「なるほど、確かに人を喰う、言い換えれば殺すというのは化け物の所行でしょう。でも考えてもみてください。僕が殺すのは人ばかりでなく、動植物も含まれる。そして人間は彼らを躊躇もなく食べる。殺す。それを悪とは呼ばないでしょう? そこに人間が含まれたからといって悪だとは言い切れ――」 「おうおう、煩いねぇ」 痺れを切らした『√3』一条・玄弥(BNE003422)が魔閃光を放つ。黒いオーラが戦場を駆け抜けて男を威嚇する。運命食はそれを已の所で、避けた。 「この口だけの癖にしゃべんな。口臭いから黙れ、縫い合わすぞ、おぃ」 「……攻撃的な方ですね。戦場では、剣の方が雄弁ということでしょうか」 運命食は不敵な笑みを零す。余裕。楽観。ただ状況を愉しむように粘るような目つきで。 「仕方がない。運命の相手とは明日会うことにしましょう……今晩のディナーは皆さんです」 ●運命を食べる者 『運命』を食べるのは欲なのだろうかという疑問が湧く。例えばそれが恋愛感情ならば。愛するという行為は相手を自分に吸収することで果たされる。例えばそれが食欲ならば。愛などというものはどこにもなく、彼が食べたいものを食べているだけに過ぎない。 それが彼の本能であれば。食欲とはまた異なる、精神に刻み込まれた行動指針。怪物を怪物足らしめる慣行。ならばこの怪物は、『運命』にとっての敵に違いない。疾風は豪炎の拳を敵に叩き込む。怪物は平然とそこに佇んだ。 運命食は運命食たる食事行動を始める。刻に近付き、顔を瞬時に膨らませる。そして口を大きく開けると、覆い被さって彼女をほおばろうとする。刻はその動きをよく見ながら、食べられてしまわないように身を避ける。攻撃には幾らかのステップを踏んでいるものの、動きはあまりに俊敏で、またその威力は決して低いものではない。知らない内に近付かれ、食べられたとしたら。ふとした瞬間に気を緩めてしまったら。何もわからず胃袋に放り込まれているかもしれない。もしかしたら、あるいは。刻は噛み付かれないように位置取り、彼の隙を待った。 「……食べられないというのはつまらない。僕はおしゃべりが好きなのと同等に食事が好きだ。とにかく食べたい。しかし何もかも食べるのはつまらない。おしゃべりを聞いてくれる相手が消えてしまうから。けれども運命には決して逆らえない。僕がその相手を食べることは運命付けられたこと。それに従わなければ調和は乱されてしまうのだから」 空気を伝う振動がそのままリベリスタの体に痺れとして伝わっていく。呪うように縛るように、その動きを止めてしまう。辜月は神々しい光を放って彼らの体の呪縛を解いた。動きを止められた挙げ句、おいそれと食べられてしまうのはいけない。 有効かどうかはわからない。でも試さないわけにはいかないだろうと、星龍はまず運命食の眼を狙う。彼が獲物を狙うとき、当然五感を使うはず。視覚、聴覚、嗅覚。ならばそれを潰せば、認識は疎かになるだろう。戦いは有利に進むのが望ましい。 痺れる体にむち打って、星龍は引き金を引く。銃弾は直線を描いて飛ぶ。それは惜しくも、眼球を捉えることはなく、こめかみを掠めた。できた傷跡に血が滲む。だがそれは運命食の微笑みによってか、一切の痛みを感じさせない。 「痛い、痛いね、でもこの痛みが愛おしい。これは殺し、食べるまでに感じるべき痛みだ。殺すことを自動化してしまった君らが感じるはずもあるまい。この本来感じるはずの、痛みを。食べるということは、そういうことだと思うんだよ」 「戯れ言ですね」 星龍は反論する。額から汗が零れる。声が、体が、世界が、僅かに震える。運命食は彼を見て、ニヤリと笑った。 「あぁ価値観は自由だ。感じること、考えることを否定するのは間違いだ。だからこそ、自分の考えを押し通すこともまた、間違いじゃない」 僕はただ、食べるだけだ。 運命食の顔が膨らむ。開いた大きな口の中は暗く、どこに繋がっているのかも定かではない。彼の食事の矛先は、疾風に向く。深淵へと繋がる口内が、彼の心を揺さぶった。右へ、左へ、どこかへ、逃げたい。しかし、どうして、動かない。ただちょっと動くだけで逃れることは容易いのに。神経が働いていないように鈍重だ。思考が乱れ、運命食を見る視界さえ覚束ない。食べられるのは嫌だ。食べられるのは。 運命食は彼を口で覆うと一口に飲み込んだ。彼の影が消える。運命食は自身の体に疾風の形など一切残さず、元の体型のままだった。満足そうに笑む顔に、誰もが身震いする。 「ごちそうさまは、まだ早い」 ●運命に従う者 「仕方がないですね」 飲み込まれた疾風に代わり、孝平が前に出る。早く倒すのも重要だが、まずは疾風の救出が肝要。戦力は多いにこしたことはない。孝平は連撃を繰り出して運命食に詰め寄った。しかしそれが運命食の動きを止めるには至らない。逆に接近したことで、孝平は運命食の射程範囲内に入ってしまう。 「食べられに来て頂けるなんて、結構なことで」 運命食は再び口を大きく開ける。孝平は攻撃の反動から、それを避ける動きもままならない。刻が彼を突き飛ばして、庇いに入る。いざという時、運命食をどうにかできるのは、この場に彼と玄弥しかいない。彼らが食べられるのは、避けなければならない。 「孝平が食べられちゃ、しょうがないでしょ?」 刻の姿が消える。後には何も残らない。残した言葉が反芻される。何度も、何度も。刻や疾風を助けるには。 「無限の胃袋をこじ開ける……ですか」 それをできるのは、外にいる自分たちだけだと、わかっている。 「食べるというのは、やはりいい」運命食は恍惚として言う。「味や触感は付加要素でしかない。食べるという行為それ自体が快楽だ。相手を挫き、飲み込み、吸収する。それこそが食べることの全て、そして、」 「うるせぇな!」 エルヴィンが叫ぶ。戯れた口をきくな。自分が世界の心理だと思うな。世界の中心が自分だということを世界に、他人に、押し付けるな。 「お前とお喋りする気はねぇ、ぺらぺらと喧しいんだよ!!」 運命食の言葉はここにいる誰にとっても意味を持つ言葉ではあり得ない。それは彼自身の全てであり、彼だけの器に収まるものだ。怪物の器にのみ収まるものだ。リベリスタは人を喰う怪物ではない。リベリスタと運命食の運命が合致することは、ない。 「饒舌になるくらい、構わないじゃないか」 運命食は恨めしそうに言う。言葉を断つこと。調子のよい口を塞がれること。自分勝手な彼にとって、それは不快感に満ちている。 「君の美学はわかった。今度は俺様の美学に付き合ってもらう番だ」 葬識の声が運命食を挑発する。ムカついた顔をした運命食が闇雲に噛み付こうとする。しかし対象のはっきりしないそれが、誰かを喰らうことはない。 「まるごと食べるなんてダイナミック!」 葬識は上機嫌に声を弾ませながら、魔閃光を放つ。暗黒のオーラが運命食に突き刺さると、彼は苦い顔をして後ずさる。 「面白い話なら、大歓迎ですが、あなたの話はつまらない」 星龍のワン・オブ・サウザンドが火を噴いた。閃光のような弾丸は空気を裂いて飛び、運命食へと迫る。顔面、視覚の要、眼を突き破り、後頭部を貫通する。破裂した眼球から血が飛び出して、ボタボタと垂れた。運命食は無くなった右目を抑えて、悶える。 「があああぁぁぁあ! 貴様ら……!」 苦悶。痛みに動きは鈍くなり、声は震えた。しかしそれでも、彼は喋り、食べたがる。エリューションであるように彼に与えられた本能が、望む望まぬに関わらず彼を動かした。永遠に与えられた運命に従うために。それが果たして世界の運命による導きだったのか、本能による運命の錯覚であったのか、それが彼の運命を決するわけでは、ない。 ただこの戦場にいた誰もが、運命に従っただけのこと。 「おら、さっさと吐き出さんかい」 玄弥は手に持った鞭を絡み付かせる。ギリギリと縛る苦痛が、運命食の行動を妨げる。叫び声と共に顔が大きくなり、口が大きく開かれた。 ●運命を繋ぐ者 「本当に、変な場所ね」 刻は真下に魔閃光を撃ってみる。地表は物理的に確かにあって、ちゃんと攻撃も当たるのだが、拡散して何も起こる気配がない。足下に広がってくる胃液は、べた付くというより、自分が溶かされているように感じる。 「……あんまり、長くいたい場所じゃないわね」 「そうだな。皆が頑張ってくれたらいいが」 疾風は何もない上空を見上げる。空間は極彩色に染まって、流動的に色が変わっていた。ふとした瞬間に自分が向いている方向がわからなくなり、気を緩めると吐き出しそうになる気持ちの悪さだった。けれども、いつどんなタイミングで脱出口が開くのかは定かではない。目を離すわけには、いかなかった。 「ちくしょう、なんか反応があればいいのにな!」 何もない空間を切るように、空中に拳を振るう。その手が何かに当たった。疾風はゆっくりとその場所を掻くようになぞる。違和感のようなものがあった。しかし、掴むことはできない。瞬時にそれは消えてしまった。 どうしたらいいだろう。思考を始めたその瞬間に、その場所が大きく開いた。外の景色が見える。仲間の姿が見える。疾風は心が躍った。 「刻さん、開いたよ! 早くこっから出よう!」 彼は振り返る。刻の返事は、憂鬱な声と共に返って来た。疾風は彼女の姿を見て思わずポカンとする。 「えぇ、もうでましょう。もうこんなの、嫌よ」 服が所々解けていた。もう少しで色々見えそうなくらいに際どかった。胃液の浸食はもう、こんな所まで来ていたのかと彼は驚いた。彼の服も、かなりの部分が溶解していた。疾風は刻の手を掴んで、急いで胃袋を飛び出した。 再び戦列に戻った疾風と刻を前線に加えつつ、未だ動けない運命食に畳み掛けるように攻撃を加えた。 「もう誰も、襲わないようにして差し上げましょう」 星龍の放つ弾丸が、残っていた左目を貫いた。彼の視覚はもう無い。エリューションであるがゆえにいずれ再生する可能性がないわけではないが、今ここで倒してしまえば、関係ない。 「これもまた、『運命』ということで良いでしょう?」 孝平は俊敏に動いて撹乱しつつ攻撃する。もう既に、彼が攻撃を避ける術は、ない。 「嫌だ……嫌だ……!」 彼は逃走を試み、足を持ち上げる。覚束ない足取りで彼は走る。音だけを頼りに、進み、進み、突き当たる。壁となった、エルヴィンに。 「絶対にここから先は遠さねぇ、お前はここで必ず倒す!」 絶望、その言葉が似合う状況に、運命食は笑うように顔を歪める。涙のように目から零れる血液にさえ驚喜が見えた。 「僕の運命を、ここで終わらせるものか!」 「単純で結構結構こけこっこ~ってな、けけっ」 黒いオーラが運命食を包む。放たれた閃光が運命食を貫いた。最後に振り向いて、弾源を見る。玄弥が不敵に笑っていた。 「そんなに運命がお好きなら、一緒に逝きな」 崩れ落ちる。その運命が導かれることは、もう無い。 辜月が刻の体を拭く。胃液で濡れた体のまま帰るわけにもいかなかった。自分も見ている方も気持ちのいいものではなかったから。 「ったく、気持ち悪い相手だったぜ」 エルヴィンが嘆く。その言葉に表れる意味、価値観。それはリベリスタとして受け入れられるものではない。それがどんな愛の形だからといって、怪物と相容れることなどできないのだから。 帰る最中、一人の女の子とすれ違う。学校の、部活の帰りだろうか。こんな時間になっても頑張っているんだろうか、関心だ。けれども。この夜には怪物がいた。 葬識は彼女にこう告げる。 「殺人鬼がそのあたりを歩きまわってるかもしれない。知らない人には答えちゃだめだよ」 女の子は立ち止まる。葬識はそれ以降何も言わず、ただ仲間と共に去っていった。彼女が何を考えているのか、何を思ったのか。殺人鬼の小粋な言葉に、首を傾げるだけだった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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