● ――私は再び、此処へ戻ってきた。 紅い月の下で、フィクサードとして私は此処でリベリスタと戦った。 あの激戦と混乱の中で、貴方は私に生きろと逃がしてくれた。 ……約束の場所で再び会おうって。 でも、何時まで経っても、何時まで待っても、貴方は来てくれない。 知ってる。貴方が最後のフェイトを使って私を逃がしてくれた事を!! でもね…… 貴方のいない世界なんて、なんの価値があるっていうの? 貴方のいない世界でどう生きていけばいいの? 貴方のいない世界は私の世界じゃないの!! ねえ、此処にいるんでしょう? そうだよね?―― 「……え?」 絶望の底で、彼女は一体のアザーバイドと出会う。 コキリコキリと動く、自動人形(オートマタ)の様なアザーバイド。 そのアザーバイドは巨体で、腹部にぽっかりと穴が空いている。 人形の、感情の無い眼が彼女を見た。 「や、やだ……離してぇえ!!?」 その瞬間、穴からいくつもの鎖が彼女の身体に巻きついて引き寄せ、腹部の穴へと誘う。 その穴に入った瞬間、いくつもの管が彼女の肌を貫通し、体内へと浸入していく。 彼女は突然の激痛に叫んだ。 愛しい人の名を呼んだ。 逃れようと、必死にもがいた。 けれど此処は今、アークによって隔離された空間。助けなんて都合良く来るはずが無い。 彼女はアザーバイドの一部となった。 巨体のアザーバイドは鈍い動きで前へと進む。 「誰か……誰か……」 激痛の中で、彼女は虚空に願った。 「誰か……誰でもいいの……お願い、私の声を聞いて」 愛しい彼に会いたかった。ただそれだけだった。 なのに、こんなものに捕まってしまった。もう、逃げられない。 「誰か……」 ――私を、殺して。そして、彼のもとへ ● 「皆さん、すぐに向かって欲しいのです。三ッ池公園へ!」 『未来日記』牧野 杏里(nBNE000211)は突然、三ッ池公園の地図を広げて、赤いペンで丸を描く。その場所は野球場。 アザーバイドがこの野球場で出現。そのまま恋人を探しに戻ってきた不運なフィクサードが一人、このアザーバイドに取り込まれてしまったという話だ。 アザーバイドの名は『自動人形(オートマタ)』。といってもこの世界の自動人形と一緒にしてはいけない。中身は神秘で紡がれた鎖が詰め込まれた人形(アザーバイド)だ。 「女性型の人形です。身体は大きく、ブロックは数人で行わないとブロックしきれません。 特徴で腹部に大きな穴が露出しています、此処に……」 そこで杏里は言葉が詰まった。 どう言えば良いのか迷ったが、やはり真実をそのまま伝える事が杏里の役目。 一度だけ息を吐き、大きく息を吸う。そして 「此処に、キリコというフィクサードが捕らわれています。 救出は不可能です。既に鎖が絡みついて、管が彼女の身体に溶け込み、文字通り一体化しています。 彼女の役目は『核』。 例えば人形が一定の傷を負ったとします。すると、キリコのフェイトを吸い込んで傷を治します」 キリコのフェイトはそう多い訳では無い。キリコを殺せば、自動人形は回復しなくなるという事だ。 「自動人形は動きは鈍いですが、BSを一切通しません。攻撃方法は全て神秘的なものによる攻撃で、貫通するビームのようなもの。電撃のようなもの。重力のようなもの。以上の三点のみです。ただ……」 杏里が今一度息を飲む。 「キリコの心情で能力値が変化します。 彼女が死にたいと思えば強くなり、生きたいと思えば弱くなります。 万華鏡で見たものだと、今は死んで恋人の元へ行きたいと切望しております。これでは自動人形の力は強まるばかりです。 少々、厄介な任務になりますが、宜しくお願いします。 でも、もし……もし、リベリスタさん達が半分以上戦闘不能になった場合は逃げてください。 いいですね? これは……絶対の命令です」 杏里は深々と頭を下げた。 ● 自動人形の中。 キリコの目はハイライトが無く、一点を見つめて動かない。 涙を流し続け、絶望色の世界に希望を無くす。 キリコは痛みしか感じないこの檻の中で願う。 ――最後に一度だけで良い 優しい夢を、見せて |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:夕影 | ||||
■難易度:HARD | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 2人 |
■シナリオ終了日時 2012年02月19日(日)23:56 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 2人■ | |||||
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●人形に遊ばれて 三ッ池公園、野球場。 今は照らす光りさえ無いそこは、月明かりでなんとか視界を保っていた。 そこへ巨体なオートマタが機械的な音をさせて、前へと、前へと。 世の中理不尽と言うけれど。 理不尽が当たり前だと気づくまで、あと何年必要か。 本当は分かっているはず。だからこそ、分からない振りをしている。 ほら、今だって。ただただ、死に向かっている。おしまいの始まり。 それをオートマタがあざ笑いながら、我が子の様に大事に絶望を育てる。 殺せ……殺して……早く、痛い。イタイ……。 そう思った瞬間に、オートマタの力はまた一つ強化されていく。 「――まだ死ぬには早いですわよ!」 『ライトニング・フェミニーヌ』大御堂 彩花(BNE000609)がWhite Fangを両手に携え、オートマタの前に立つ。 まだ死んでもらっては困るのだ。 利用されるために、生きろ。そんなことは口が裂けても言えないけれど……。 彩花はオートマタの行く手を阻む。ギロリと向けられたオートマタの目が不気味に光っていた。 忌々しい。すぐにでも壊したいくらいだ。 「まだ……彼女の心は死にゆく色のはず」 エリス・トワイニング(BNE002382)が超直感で何かを受信。 彼女の心は冷えきり、凍り、閉鎖しているようだ。 できるなら救ってあげたい。けれど、最後の選択は彼女に任せよう。 エリスはオートマタの中の彼女を見つめて神秘を纏った。 『背任者』駒井・淳(BNE002912)は式符を投げ、小鬼を召喚する。事前に作っておきたかったものの、即戦闘のためにそれは不可能だった。 そして見上げる。やはり目につくのはオートマタの中のキリコと呼ばれたフィクサード。 彼女に送る上手い言葉は思いつかなかったものの、淳は全力で『敵』を倒すだけ。 『初代大雪崩落』鈴宮・慧架(BNE000666)は流水の構えを取る。 「私は誰も殺したくないし殺されたくもありません。 でもこの状態を解決したいから貴女をそこから出してみせます」 絶対に助け出す。その心も、身体も。 慧架はそう心に誓い、走り出す。どうか、私達の言葉に耳をかたむけて欲しいと。 ……言葉にするならば、自業自得か因果応報が似合うだろうか。『燻る灰』御津代 鉅(BNE001657)が大きく息を吐いた。 折角拾った命なのに、惜しいことを。 大人しく振り切ればこんなことにはならなっただろうし、自分達も此処にまた帰って来なかっただろう。 だが、なってしまったものは仕方が無い。 「死にたいなら、お望み通りにってな」 それは小さな声で呟く。そして鉅はダガーと携え……その時だった。静止していたオートマタがガタガタと震えて動き出す。 「ちっ、来るか!」 早々にオートマタを撃破しに行きたいものの、オートマタは戦闘態勢。 女性型だが綺麗も可愛さもカケラも無い彼女が、目を赤く光らせながら機械の様にぎこちなく動く。 パカリと開いた口から吐き出すような、目に焼き付く蛍光色のビーム。 彩花と鉅を貫通し、同時に後ろへと吹っ飛ばされる。絶望混じりのそのビームは重かった。 そしてそれは『大人な子供』リィン・インベルグ(BNE003115)の手前で力無く消えていく。 遠距離の当たらない場所にいたリィンが、すかさずシューティングスターを発動させる。 そしてヘビーボウを構え。 (的にしては、でかい相手だね) どんなに小さいものでも当てる自信がある。だからこそ目の前のそれを外すなど有り得ない。 リィンは弓を引きながら、機会を両の目で探していく。 「こんなところで、死んでいいんですか?」 心が痛んだ。自ら率先して嘘をつけだなんて。『鉄壁の艶乙女』大石・きなこ(BNE001812)が鉅へ天使の息を放ちつつ、声を大に叫ぶ。 「あなたの恋人は命を懸けてあなたを逃がしたのに……っ」 ――こんなところで、死んでいいんですか!!!? かちゃりと音が響くオートマタの中で声が聞こえた。力強く、そして、希望に溢れた……そんな声が。 でも、キリコにはその声が聞こえる度に心が傷むのだ。 捨てた現実。望んだ幻想。 死ねば、そう。死ねばきっと救われる。 そう思うことがどれだけ罪深い事か彼女は知らない。現実ってそんな甘くないもんでさ。事実―― 「きゃぁああああああ!!!」 突然の痛みにキリコは現実に引き戻され、叫んだ。オートマタとリンクしたその身体は、痛覚を共用する。 『戦闘狂』宵咲 美散(BNE002324)の赤きランスがオートマタの顔面へと突き刺さっていた。 回避は低い。だが、防御は厚い。そんな確かな手応えを感じた。 彼にとって敵は強いほうが、なお良い。これは遣り甲斐というものがありそうだ。 彼の目標はフィクサードのお守りよりも、強敵の破壊。 見上げたキリコが目にしたのは、戦闘狂。 月明かりに逆光して素顔が見えないが、赤い目は煌びやかに光っていた。 ●希望は儚く 嗚呼、来たよ。 忌々しいリベリスタ共だ。いつも以上に早いご到着のようで。 知ってるさ。お前等は……お前等は……!! 手が動くのであれば、足が動くのであれば、剣を持って突き刺してやりたい。 だが、この滑稽な姿を見られて何ができるというのだ。 そうだ、殺せ。殺しなさい、私を。 あの時、我らが同胞を殺していった時のように!! 「リベリスタぁああああ!!」 キリコは叫ぶ。納得のいかない世界と、今の状況全てに怒りを込めて。 「ぁあああはははは! そう、そうだよ!! 殺せ、殺してえええ!」 それでほら、またオートマタが楽しそうに揺れた。 「それが、貴女の選択なの……?」 エリスは小さな声で彼女に問う。答えは分かりきっているけれども。 直感さえいらずとも、彼女の表情と声色でだいたい想像はできた。 そしてまた、オートマタが強くなったのを感じた。 あくまで彼女の意思を尊重するが、これでは非常にまずい。 エリスは祈り手を捧げて、天使の歌を発動させる。響く歌は、彩花と鉅の傷を完全に癒していった。 此方の世界に意識が帰ってきたキリコへリベリスタ達は言葉を送る。だが、同時に痛みも彼女へと……。 キリコの痛みに呼応するように、オートマタはガタガタと音をたてて動く。 そして放たれた魔法陣から電撃が飛んだ。 それはチェインライトニングの様なものだったが、あれとはやはり何か違う。 咄嗟にアルトリア・ロード・バルトロメイ(BNE003425)がエリスを庇い、麻痺と圧倒をその身で受けた。 エリスは目線でアルトリアにありがとうと伝える。そしてすぐに回復の準備へと。 飛び交う電撃をギリギリで回避した鉅。 次にオートマタはビームを彼に向けたが、それも頬に掠った程度でやってのけた。 そして、やり返しと言わんばかりに牙を剥いて走り出す。未だ、キリコは殺せと叫ぶが、ならばそれでも良い。 「大人しくしていろ。この木偶人形を潰す邪魔だけはするなよ」 それだけキリコに聞こえるように言うと、オートマタの右腕へと噛み付き、そして引きちぎっていった。 バリバリと音をたて、露出した鎖はまるで血の様に崩れる。 ――私を助ける? そんな馬鹿な。痛い、痛い!! リベリスタ共が!! 実際に彼女の腕が引きちぎれた訳では無いが、それ相応に右腕が痛む。 「信じられない?」 リィンがヘビーボウからアーリースナイプを放ちながらキリコへと伝える。 「ふふ、『アーク』とはそういうところなのさ。甘いと思うだろう、僕もそう思うよ」 正義の味方は、時折、敵であれ救うらしい。それはけして嘘では無い。 それを聞いたキリコが顔を上げた。 「……助ける?! そんなのいらない!! ましてやリベリスタなんかに!」 続く痛みは精神を時に蝕む。彼女は目的は彼の所へ行く事。 リベリスタの勝手で救われすのは、フィクサードとして殺される事とイコールでもあるだろう。 「貴女は、恋人の死を目の前で見た訳では無いのでしょう? なら、死んで会おうなんて都合が良すぎます!」 きなこは麻痺が響く身体で叫んだ。 すぐにエリスのブレイクフィアーは飛んでくるものの、一瞬でも早く彼女に生きたいと思わせるために。 嫌いなリベリスタの言葉なんて誰が信じるか。それに、理由だってある。 「なら、何故私の下へ帰ってこない! なんで、なんで!!」 「答える義理は無い。自分で探して、自分で確かめろ」 キリコは反論する。それはごもっともな返事。だがすぐに美散が言い返した。 その言葉にキリコは詰まった。これ以上何も言わず、ただ痛みに支配されながらも考える。 恋人はまだ生きている。生きて探せ。そのために、今助ける。 それは全て偽りだったが、キリコにとっては真実となりかけていく――。 この手が動いて、痛い所を摩ることができるのなら、まだ良い。 痛いと蹲ることができるのならまだ良い。それさえできない無力な彼女は、全てを託そうとする。 「必ず助けます……少しだけ痛みに、耐えてください!」 『戦姫』戦場ヶ原・ブリュンヒルデ・舞姫(BNE000932)がソニックエッジを放つ。 一瞬だがキリコと目が合った瞬間を見逃さず伝えるが。 腹立たしい。攻撃を終え、地面に足が着いた瞬間に舞姫は苦い顔をする。 ――最低な嘘。 それとは裏腹に、キリコの顔は段々と明るくなる。 ――そう……彼は生きている、の? 彼は彼女にとって絶対。 彼の本当の結末は彼女は知らない。 彼女は偽りを受け入れる。 初めてその時、生きたいと思った。この檻から出て、生きて彼を探す。 彼ともし、再会できたなら……。 オートマタにとって、それは面白くない。 装甲が一つ、軽くなった。 不規則に身体を揺らし、人の耳には聞き取れない詠唱が流れると即座に彩花の身体が地面に叩きつけられた。 「カッ……はっ!?」 重い。兎に角、重い一撃。 今までキリコが死へと願った分も加算され、それが重みとなって彩花を襲った。 きなこが天使の息を奏でようとしたが、オートマタの電撃がきなこを貫いていく。 「っく、こんなとこで負けてたまりますか!」 フェイトの恩恵を受けながら、彩花は立ち上がり、電撃を身に纏いながら走る。 彼女は生きたいと願った。それでもう用済み。 攻撃は――キリコへ。 「なっ!? ……え!?」 驚愕するキリコ。助けると言われながら、まさか私にまで攻撃が来るだなんて。 「ふ、ふは……そう、そういうこと……」 電撃に顔を歪ませつつ、キリコは高らかに笑う。 「そう!! この機械と一緒に私も殺すってことなのね!! 良いわよ、信じた私が馬鹿だった!!」 キリコはもう、リベリスタの言葉は信じない。 ● 殺せと叫ぶ彼女の心に導かれ、オートマタの力は増していった。 放たれたビームが、鉅ときなこを貫いていく。そして、重力がアルトリアの動きを完全に止めた。 「っく、一気に畳み掛けるぞ!!」 それでもなお、走り出す鉅が牙をむいてオートマタへと噛み付いた。 「あははは! そうだよ!! そのちょおおしィイイィイイイイ!!」 フェイトが一つ、キリコから切り離された。そしてオートマタはケタケタと笑う。 残りはあと五つだ。そしてこちらの残りはあと九人。 早く、早く……! リィンがヘビーボウに力を込めた。遠距離から魔弾を放ち、キリコの肩口を射貫く。 目の前で仲間が倒れているのを見ている彼女は、口の中で奥歯が擦れた。 説得は失敗だ。ならもうキリコには用は無い。リィンは素早く、もう一度だけ弓を引く。 「彼女だ、キリコを狙え!!」 二回目のアーリースナイプはキリコへと直撃。 「俺が新たに得た力だ。その身を以て篤と味わえ――!!」 続く美散のデッドオアアライブ。 ランスを己の手足の様に器用に使い、巨体の頭へとそれを振り落とす。 最大限に引き出されたその攻撃の威力は恐ろしいほどにオートマタとキリコへと響いた。 「ひぎぃいあああッ!!?」 つい、オートマタがギリギリと音をさせ悶え、キリコが絶叫として叫んだ。 殺せ、殺せ、殺せ、殺せ!! ケタケタケタケタ…… リベリスタの攻撃は続くが、その前にエリスが聖神の息吹を発動させた。 「貴女の答え受け取った……助けてあげられなくて、ごめんなさい……」 息吹はリベリスタ全員へ行き渡る。 傷を完全に塞ぐことは彼女をもってしてもできなかったが、それでもまだ立ち上がる勇気を分ける。 「おい!トモヤとやらが此方へ向かっている! 急げ! もし合流されでもしたら……終わりだ!」 淳がキリコに聞こえる様にして叫ぶ。だが 「はっ! リベリスタの言葉はもう信じない!」 その返答に舌打ちをした淳が式符で構成した鴉を放ちながら、前衛へと向かう。 そこで鉅と入れ替わり、自らがオートマタの前へと。 「早く、お逝きなさいな!」 彩花がキリコの下へ飛び、再び電撃を纏って攻撃をする。 それはキリコの胴を確実に捕らえ、彼女の身体を感電させていく。 「……貴女を、解き放ちます!」 それに続き、慧架が渾身の力を込めて脚を一閃する。 吹き飛んだ真空がオートマタへと当たり、その片腹を切り裂いていった。 「ふ、ぁああははは殺せええええはやくうううううう」 キリコは絶叫する。それに慧架は目を背けた、その瞬間にオートマタの重力波が飛ぶ。 いとも簡単に突き倒され、地面へと身体がぶつかった。 こみ上げる嘔吐感。それでも、キリコ……貴女を助けてみせるから。その思いで、フェイトが慧架を助けた。 全体攻撃をさせまいと、鉅が美散の後ろへと位置を取るため走る。 それを好機と見たか、釣られたオートマタが口を大きく開けつつ何度目かのビームを放った。 だが、鉅の体力は限界に近い。 ビームが貫通した瞬間、鉅の意識はぷつんと途切れる。 美散の後ろで、鉅の身体が吹き飛んでいくと共に、そのまま動かなくなった。 それを見たきなこぎゅっと目を瞑った。やるせない、だがやることはやらなくてはいけない。 慧架へ天使の息を送った。 「皆さんっ、どうか……頑張ってください!!」 背後でエリスを庇いながら、彼女は息を送り続ける。 オートマタの一撃は更に重くなる。 こうなったら一番に危険なのはきっと全体攻撃だろうか。 殺せ、どうした、早く殺せと叫ぶキリコの心に比例し、オートマタの身体は輝きを増していく。 放たれた雷撃がリベリスタ達を襲った。 彩花が走り出し、キリコへと壱式迅雷を送ろうとしたが、その前にその雷撃に射抜かれて地面へと落ちていく。 同時に淳の体力も底を尽き、力無く倒れていく。 「あと一人ですか……っ」 フォーチュナは言っていた。 半分のリベリスタが戦闘不能になったら逃げろと。 それでもリィンは手を休めずに射ってはキリコへと魔弾を射る。 だが……。 誰かが倒れた音がした。 「助け……るか、ら」 慧架だ。オートマタは電撃だけではなく、グラビティも飛ばしていた。 エリスは咄嗟に聖神を発動するも、届かない。 「……撤退です」 きなこが小さな声で呟く。 だが美散は強敵を目の前にして走り出した。 「美散さん! これ以上は!!」 きなこが叫んだが、彼は止まらない。 撤退。ならせめて最後にこの一撃を。 「痛みと一緒に覚えておけ!!!」 集中から放たれる最大威力のデッドオアアライブ。 大きな音をたて、鎖をこすらせ、キリコのフェイトを一つ削り取っていった。 倒れている者を担いで、早く――外へ。 迫る雷撃がエリスの目にはやけに恐ろしく見えた。 オートマタの胴の中で笑う彼女が涙を流しながら、彼等の背中を見ている。 まだこの中での苦痛が続くのか。いつになったら解放されるのか。 限りない絶望に彼女の心は崩壊するのだろう。 リベリスタの消えた公園内で、オートマタが進む。 「ふ……ふ、は、あは、あははハハハハハハ!!!!」 女の笑い声も、同時に響かせながら――闇の中へと。 「……殺してよぉ」 この感情に、機械人形は高らか踊るだろう。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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