●罪無き罰 視界ははっきり映し出す。 僕の眼球の取り込む景色を。無意識に捉える現実を。 触覚は鮮明に伝達する。 望み望まぬ感覚を。肌に触れるその痛みを。 だからこそ今戦慄する。きかぬ自由を。触れられぬ虚構を。 僕の脳は、僕に思考を与えながら、その思考の発する命令の一切を無視した。五感の感じる全てを受け入れつつも、悉く反応する事なく、別の意思に流されるように、自分の体は動いていく。 恐怖で仕方がない。僕の体はどこへ行く? 行き先がわからない。 君は一体、どこに向かっているの? ●『君』たち 「く……来るなぁ!」 叫び声が部屋中に響く。腰が抜けて座り込みながらも、警備員は手に持ったライトを対象に向けて、彼らから遠ざかるように後ずさる。しかし彼らは欠片の迷いもなく警備員の方へと歩み寄る。 明らかな狂気を、その手に掴んだ凶器で表して。 距離の近さに比例して、警備員の怯えは高まっていく。ぬるり、ぬるりと距離を詰め、そしてついに凶器の届く射程まで寄る。彼らは一斉にそれを振り上げる。 顔から生気は消えたけれども、しかし命を失くすには至らない。気の絶えた体が地に倒れ込む。 生気を失ったその顔を、もとから生気のない目が見つめる。その顔に感情はない。ただただ見つめ続けるのみ。 「おぅ、終わったな」 彼らの後ろから男が声をかける。白衣をまとった白髪の男。風貌の割に快活な表情が、彼の年齢を若く見せる。 男の声に導かれるように、彼らは男の方に歩を進める。彼らの中の一人が警備員の体を持ち上げ、運ぶ。 「丁重に扱えよ、お前らの仲間なんだからな」 男は得意げに言う。彼らから返答はないが、全く意には介さない。なぜなら男が、彼らをそうできないようにしたのだから。 「さぁ、もう少し」 男は静かに笑う。誰にも気付かれぬよう、細やかに。 ●罪には罰を 「誰かの自由を奪い、自らの目的のために操り、必要なくなったら、使い物にならなくなったら、殺す。これが罪じゃなくて何だと言うのでしょう。彼に罰が必要なのは、決定的です」 『運命オペレーター』天原 和泉(nBNE000024)は語気を強くする。 「アーティファクト『操身香水』。名前の通り香水の瓶みたいな形をしています。効果の表れる使用法は、『つける』ではなく『嗅ぐ』こと」 「それで、嗅ぐとどんな効果が?」 「嗅がされた人間は、嗅がせた人間の支配下に置かれる事になります」 リベリスタたちは顔をしかめる。正確に言うなら、身体を操っている、という事だそうだ。脳を操って身体を制御している、とも言い換えられるだろう。 「この時支配された方々は、本来かけられるはずのリミッターを超えて身体能力を発揮することができます。……当然、それを続ければ身体は使い物にならなくなる。そうして死んだ人も、すでに数人いるらしいことがわかっています」 さて、と和泉は仕切り直す。嘆くばかりでは仕方がない。悲劇を立つのが先だ。 「アーティファクトを破壊すれば、被害者の支配が解けます。ですから、アーティファクトの破壊は絶対条件です。 アーティファクトの所持者は栗橋奏太。メタルフレームの、ジョブはマグメイガスのようですね。現在はめぼしい人間を漁って、自身の配下にして回っているようです。恐らく何かの目的を達成するための人員を集めているのでしょう。何をしでかすかわかりません。早急な捕縛、或いは殺害をお願いします」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:天夜 薄 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年02月06日(月)23:46 |
||
|
||||
|
■メイン参加者 8人■ | |||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
●心 絶対に許してはおけぬとアルトリア・ロード・バルトロメイ(BNE003425)が言う。人を操り、自分の目的のための人形のように扱うなど。まして彼らにはその現状を認識するだけの思考があるのだ。 「趣味が悪い」とアルトリアは嫌悪感を隠せない。 「人を操るのは良い趣味とは言えませんし、あまり賢そうには見えませんね?」 雪待 辜月(BNE003382)が同調するように言う。何の目的があって、このような愚行を犯すのかは定かではないが、いずれにせよ良い目的であるはずはない。だからこそ、それに巻き込まれたもの全てを、救いたいと願った。 「度し難い。許せぬ輩よ」 天仙院・樟葉(BNE003340)は不愉快に口調が尖る。自ら道を逸れたこの外道を、地獄に叩き落としてくれよう。樟葉はビルを登りながら、上にいるだろう殺意の対象を想う。彼女は栗原奏太に殺意を向けながら、しかし被害者に対しては慈悲の心を持っていた。 その廃ビルの八階にはパーティ会場に使うに足りるほどのホールがあった。奏太とその配下に置かれている被害者十二名が、そこにいるという。奏太は一体何の目的を持って、ここに配下を集めたのか。答えを持つものはリベリスタにいない。ただそれはリベリスタが彼らを襲撃するにも好都合であった。それが重要で、目的を知ることは二の次だ。良からぬ何かを企むフィクサードは、危険因子であるのに違いはない。 ただ、運がなかったなぁと『√3』一条・玄弥(BNE003422)は心の中で笑う。裏でこそこそ何かやっているのも、カレイドにかかってしまえば全て表に出る。いやはや、全く以て運がない。 八階に至る。廃ビルであるのにも関わらず、その階はほんのりと明るかった。何か企むにしても、自分が何も見えないとあれば何もできない。奏太が灯りを設置しているのだろう。対策をしなくていいだけ、手間が省けた。 「この部屋のようでさぁ」 直感を頼りに、彷徨って行った先に、その部屋はあった。八階は全体的に小さな灯りに彩られていたのだが、その部屋だけ極端に明るく、扉の隙間から光の漏れるほどだった。 「準備はいいですか?」 突入を前に、事前準備を行う仲間に『LawfulChaticAge』黒乃・エンルーレ・紗理(BNE003329)は確認をとる。すでに準備を終えた彼らは頷いて合図を送る。彼らの意識は、部屋の中にいるだろう敵に向いた。 両開きのドアを開けて、突入する。一番奥にいた奏太が、自分に向かってくるリベリスタに気付き、口角を上げて笑んだ。 「変な感情が入ると思ったら、やっぱり鼠か」 ●操り人形 その男は愉快なものを見つけたような目でほくそ笑んだ。自身の前で目を虚ろにして俯く十二の肉体は、まるで人形のように微動だにしない。動く意志がない。意志を持てない。恐らく見えない糸が伸びている。それを繰れば動かすことができる。それを繰らなば瞬きもできない。誰が自分に何をするのかも、確かな理解を得られない。 彼らはわからない。後ろにいる誰かが、自分を救出しようとしていることも。繰り手を打倒す目的があることも。わからない。わかられない。わかったとてどうすることもできない。彼らはただ思うことしかできない。 逃げてくれ。誰かを傷つけるなんてごめんだから。 想いは届かない。届くはずもない。繰り手に意志がなければ、言葉を紡ぐことすらできないのだから。繰り手の意志は、彼らを倒すことにあるのだから。 「ほらお前ら、仕事だ」 楽しむような声で、彼らを送り出す。否、実際彼らの意志は奏太にあるのだから、それは自己暗示のようなものだ。自分が楽しむために、彼らを送り出すのだという意思の表明。思考だけが存在する彼らへの皮肉。感情の増幅のための言語生成。狂った感情の生む凶器に、彼は酔いしれる。 十二の内八が客人の対応に向かう。丁重かつ手厚く。それが使命であった。もちろん、奏太が自らに課した。 『星守』神音・武雷(BNE002221)は先陣を切って前に出る。しかし、奏太に操られている一般人がこちらに向かい、或いは彼を守っている現状を見、迂闊な攻撃をすることができない。躊躇が身に傷を付けた。しかし彼らを傷をつける意志はない。奏太のことが許せなかった。ならば自分がそれと同じことをするなどどうしてできようか。 「お前みたいな卑怯なやつ、今まで見たことなか!」 武雷は怒りに声を震わせる。絶対に許さないという意志の表れ。自らの意志もなく傷つくことを強制された被害者への哀れみ。全く逆の感情で奏太は声を弾ませる。 「卑怯か、悪くねえ響きだ」 声調に沿うように男が跳ねる。高々と振り上げた拳は、その体のもつ有り丈の力を持って振り下ろされる。『超守る守護者』姫宮・心(BNE002595)はガチガチに固めた重装備を駆使して受け止める。運命の加護を受けていない身体が発する力としては、あまりに大きい。大きすぎる。異端の怪物であるエリューション。下級程度ではあれど、常人がそれに匹敵するには、人体の限界の力を発揮するくらいでなければならないだろう。つまりは今、彼らは限界を超えて、戦わされている。意志もなく、静止も叶わず。 「許せませんね、これは、絶対に」 自身が今、ここにいる理由にかけて、彼を、愚かな繰り手を、止めなければならない。心は確かな想いを胸に、彼らを守るために、前に出る。 「ほな、さいならぁ~」 最後に部屋の入った玄弥が、気の抜けたような口調と共に暗黒の瘴気を放ち、向かってくる敵に浴びせる。自身に刻んだ傷が、そのまま彼らを暗黒に堕する闇となる。自分が立てなくなるのが先か、彼らが壊れるのが先か。少なくとも彼は、そこにいる一般人など欠片も興味がない。仕事を完結させること。今彼の心血は、そこに注がれる。 「人を道具としか見ていないのですか、それとも、それほどまでに成し遂げたい何かがあるのですか」 『シャドーストライカー』レイチェル・ガーネット(BNE002439)は尋ねるように言うが、その声はまるで答えを欲してはいなかった。答えなど必要なかった。どのような言葉を吐こうが、彼の起こした行動は既に、人として許される領域になかった。答えによって嫌悪が深くなることはあれど、印象が良くなることなどありえない。 彼が上機嫌に口にした言葉は、あまりに不快であったけれど。 「さぁな、ただこいつらの心の声は、嘆きは、心地いい、胸が空く。支配しているんだって感じるんだ」 悦楽に笑みが歪む。かの愚者が活性せし技は自らの危機を悟るためにあらず。ただその耳で、肌で、心で。声を聞くことにあった。慟哭を聞くことにあった。自身の操る人形を、弄って、甚振って、嬲って、壊して、殺して。支配者の悦楽は、かようにして求められ、与えられ、彼を満たしてきたのだから。 そこに人の心はあっただろうか。見合うだけの感情は残っていただろうか。壊れているのは、壊されているのは、誰だ。 ●怒り 恐らく奏太に余裕はないのだろう。十二の体を操り、八の敵を相手取り、自身を守り、敵を退かせようとする。かつその中で苦痛を与え、快楽を愉しむ。ゆとりなどあるはずもない。だから畳み掛け、悦びすら払ってしまえたなら。操る手にも狂いが生じ、常に優勢をもって対処ができただろう。しかし、それをするだけの無慈悲を持ち合わせたものは、少なかった。不殺、手心。殺さぬように、死なせぬように。この不幸にあわなければどこかの街で平穏無事にすれ違ったかもしれない彼らを、不幸のまま終わらせぬように。 レイチェルは聖なる光を放ち続ける。それによって怯みを見せることのない、死んだ目をした体に浴びせ続ける。仲間に声をかけ、大きく展開して意地悪に奏太の脳を攻める。処理しなければならない情報を増やす。処理すべき情報と錯覚させる。そうしてできるだろう一時の空白を的確に攻められるように、時折その場に留まって、壊すべき対象を探す。その時が来るまで、地道に。 だが心は、すでに奏太の脳の処理能力は追いついておらず、戦いに必要な最低限のみの行動しか取る気がないのではないかと感じていた。自分が何度、操られている彼らを引きつけようとしても、手応えがない。こちらに気を向ける気配もない。同じことは、殺意を向けて相手を誘こうとするアルトリアも感じていた。打撃で敵にダメージを与え、攻撃が着たら避ける体勢を取り、奏太自身の方に向かおうとする影があれば即座にガードする。個々が同じ意思で動くということは、その個を引きつけなければ意味がない。だが逆に、それさえできれば彼らを安全な場所に連れて行くことは簡単だろう。怒りをこちらに向ければそれも可能。武雷はそう信じて、奏太に攻撃が通るその時を待った。 一方で。玄弥は危機感を感じている。自身の放った暗黒で、一般人を一掃することはできなかった。運命の加護を得ていない彼らと言えど、アーティファクトの能力で己の持つ力の全てを発揮することで、それなりの力を得ているということか。常人と見て見くびっていただろうか、いやそんなことはない。自が身を削って何度でもそれは放つことができる。向かってくるならば何度でも蹴散らせばいいこと。 「邪魔はいかんなぁ、おぃ」 何度でも、何度でも。彼らが倒れるまで瘴気を纏った攻撃を放つ。その身に刻んだ傷は、部屋の奥で嫌みに笑うあの男を倒したとき初めて報われるのだから。 もう何度、詠唱を繰り返したろう。辜月の呼吸は整っていなかった。引きつけるという行動が功を奏していない。引きつけるに有意な行動が、とれていない。どれだけ試したって、まず操られた彼らをどうにかしないことには有効になり得なかった。わかっているのに、彼らを救う術、道、それを欲せずにはいられない。 目の前で一般人が一人倒れる。繰り手によって無理矢理立たされようとしているその姿から、死んではいないことがわかる。惨たらしい光景に樟葉は叫びそうになる。止めろ、止めてくれ。倒れても支配からは脱させず、体が壊れるまで戦わせる。そんな人形のように扱うのを止めてくれ。世界には悪魔しかいないのか。救いがないというのなら、自分が天使となって救いを施さねばならぬ。だが自分は援護役。彼らを解放してくれと仲間を信じるしかないのだ。支配から解放されなければ、回復は仇となってしまうのだから。 紗理は大きく迂回して、一般人の切れ目に移動する。こちらに彼らは向かってくるが、その攻撃をかわし、防ぎ、隙を待つ。頭に被ったキャップについたライトが、奏太の顔を照らす。今だ。そう思って、紗理は駆ける。すでに玄弥によってアーティファクトの場所は皆に伝わっていた。後は壊せばいいだけだ。一直線に、彼女は走り、奏太に近接し、何度も攻撃を加える。 その全てが、彼を守っていた一般人を傷つけた。 肉が切れる感覚がする。血の臭いが鼻を突く。しまったと思ったらもう遅い。目の前にいる彼の腕は落ちていた。時よ戻れ。願っても、見えるのは現実。 「そんなんで、放心するほどショックかい?」 ハッとして落ちた腕から目線を戻す。一人の一般人が、自分に向けて拳を振り下ろす、その瞬間に気付く。渾身の一撃が頭蓋に当たる。弾けるような音と共に目がくらみ、後退する。視点が揺れる。体が重く、傾く。 自分が自分を操るための糸が、切れたような気がした。 ●糸 倒れ、動かなくなるのは敵のみではない。味方が倒れればそれはそのままリベリスタの劣勢となる。敵である一般人を救いたいと思うならなおさら、苦戦の二文字が過る。殺してはならない。殺さずに、その体力の全てを奪い取らなければならない。動きを止めなければならない。そうしなければ。奏太を狙った鋭い攻撃が、彼らを殺してしまうかもしれないから。 ただ、一人。 「邪魔しなさんな」 玄弥だけは躊躇がない。殺すことに、斬り捨てることに。仕事を完遂する。目的はそれ以上も以下もない。 「くだらないことに執心してないのは、てめえだけか」 奏太の口調は皮肉めいている。元フィクサードの意地の悪い男は、にっと笑って、言葉を返す。 「感傷の感情たぁ若くて青臭いでさなぁ」 ある意味の悟り。人はナイフを突き立てれば、死ぬ。そんなものに、覚悟など要らぬ。感傷を受けるような心など、どこかに置いてきてしまった。 だが一人がそう思っていても、状況がそれほど変わるわけではない。周りの動きに外れた行う行動は、周りの流れに多少なり妨げられる。一般人が一人、また一人と倒れて行く中で、味方のダメージも着実に溜まっていく。運命の加護を受けた者もいる。だが同時に、奏太の壁となる彼らの数も減り、攻撃が通りやすくなっているのも事実。 今なら射線が通っている。武雷は確信し、十字の光で狙う。しかし、放った瞬間一般人は操られて奏太を庇う。庇った彼は事切れたように、前のめりに倒れる。通らない攻撃と、感じた罪悪にいらだちを隠せない。 崩れる彼の姿を見ながら、辜月は狙いをつける。彼の護衛の全てが、その時他の攻撃を庇いに向かっていた。 目の前に影が現れる。現れた影が、自分を殴りつける。体から力が抜けるのがわかる。まだ、倒れちゃいけない。彼女は自分を焚き付ける。彼らのようにリミッターを外して戦い続けるには。運命を変えてでも、壊さなきゃいけないものが、守らなきゃいけないものが、あるんだから。目の前に。 体が崩れる中、視点はずれない。狙いは外れない。澄ました魔力の矢が、彼の懐、右のポケットを撃抜いた。破れる布と共に、香水が飛ぶ。それは空中に少しの間漂った後、ひび割れて、弾けた。つんとした臭いが辺りに離散したが、もう香水によって操られることを強制されるものは、存在しなかった。 操り人形は糸を切られた。残ったのは幾らかの犠牲と多くの無事、そしてリベリスタの劣勢。 ●フェードアウト アーティファクトの破壊。それの末路を苦々しげに奏太は見つめていた。繰りた人形を限界まで動かすために、彼の思考もまた、常に活動していた。それに絶えられたのは与えられた快楽故であった。だが、思考の必要と、快楽の供給は、同時に無くなった。精神は正常へと戻って行く。 「……玩具が、無くなったか」 それは一つの玩具だった。もちろん、ある目的があってこそのものではあるけれども、それを使うことによって得ていた悦楽は、玩具の与えるそれに似ていた。その快楽は依存症すら引き起こした。一つの愉しみの終わり。散る香水の欠片がそれを示していた。 だがそれは、彼の愉しみの一つが消えたに過ぎない。他を愉しむために、彼はこの場から去らねばならない。彼らは、自分がそれを愉しむのを、許さないだろうから。 「余所見をしている暇があるのか?」 アルトリアが奏太に魔閃光を放つ。彼は体を傾けてそれの直撃を許さない。顔は邪悪に満ちていた。 「あぁそうだな。すたこらさっさがいいな」 駆け出す。逃走の道を閉ざそうと、玄弥が立ち塞がる。 「逃がしぁしませんぜ」 「じゃあ押し通るだけだ」 奏太の体に光が満ちる。放たれた一条の光がリベリスタと、正気に戻った一般人を襲う。心や、一般人の無事を願う者が、それを庇う。戦いによる疲労と傷に加えて、体に流れる電流が、リベリスタを蝕んだ。 「……逃しませんよ」 「うるせえな、お前らに興味はねえんだよ」 展開された罠をかいくぐって一目散に出口へと駆けていく。飛び交う攻撃、彼の足を止めようとする動き。足が時折ぐらつくが、逃走に支障はなかった。 追いつく者は、ない。 「じゃあなリベリスタ諸君。もう二度と会わないことを祈るぜ」 どこへ行くというのだろうか。わからないまま、彼は闇に紛れて、消えた。耳に響く足音は微か。僅か十秒に満たず消えた。彼の走った道が一直線に開け、それを挟むように人が倒れていた。まずは彼らを癒すのが、先決であった。 香水の破壊によって、一つの悪夢は終わりを告げた。しかし繰り手は消えてしまった。彼の望む愉しみは、別の方向へと向いて行くのだろう。誰とも知らぬ僕に、快楽の矛先は向くのだろう。 支配者の悦楽は、未だ終わらない。 |
■シナリオ結果■ | |||
|
|||
■あとがき■ | |||
|