その牝鹿は女王だった。 四季の色豊かな裾広い野山は彼女のもので、そこに生る早なりの姫林檎も、まあるい栗も、太ったあけびも、全部ぜんぶ女王のものだった。 春に咲く花も夏に繁る若葉も秋に実る全ても、冬に枯れる枝ですらも。そう、その古い山ひとつ女王鹿のものであり、彼女の慈しみ愛するものだった。 ──もの、だった。 いつか花咲く春である。知能ある人がそうするように、花を踏んでしまわぬようにと気を付けながら闊歩する栗色の牝鹿はもういない。 異形と化した彼女の爪先が、何の躊躇いもなく花をなじる。『公主さん』と山に親しむ狩人達から親しまれた彼女には、今やその母性に満ちた面影はない。 牝鹿にはない筈の、牡鹿のような太い角が捻くれながら生えていて、哀愁に濡れていた双眸はぎらぎらと禍々しい。その体毛からはかつての暖かな栗色は失われ、金色に光り輝いている。自らを主張するかのように、山の公主は此処に在り、と。 公主は化物に成り果てたに相違無い。 泥濘む泥に沈む花の色彩を憂う存在は何もない。 だから誰かが、その山と彼女を憂いてやらねばならないのだ。 ●牝鹿のはなし 「鹿のエリューション・ビーストが居るの」 『リンク・カレイド』真白イヴ(ID:nBNE000001)は、集まった面々を見回してからそう言った。 「居る、とは言うけれど、勿論貴方達にそう言ったのは倒さなければいけないからよ」 言わなくてもわかる事だったかしら、と淡くイヴが視線を伏せる。室内に届く春の陽気は、燦々煌き暖かいのに、その言葉尻に忍ぶ色はただ寂寂と物悲しい。 「場所は、とある山。小さな山なのだけれど山菜や茸が豊富で、時期が良ければよく人が出入りしているの。……だから、」 「もたもたしていると、そういうものを採りに山へ入った人が襲われる?」 誰かがその先を呟く。イヴは浅く頷いて、ん、と声を零した。 「エリューション・ビーストは、元はその山の女王様だった牝鹿よ。温厚な性格だったのだけれど、今はもうその面影はないわ。……彼女のテリトリーである山に人間が入れば、彼女は必ず侵入者を排除しに来る。自分の領域を乱す者として、ね」 イヴの幼い指先が、慣れたようにコンソールを弄ってディスプレイにデータを投影する。 画面上をひらひらと指さして示しながら、イヴは訥々とその先を継いだ。 「金色の体毛で、立派な角を持っているわ。元は普通の牝鹿だったけれど、変質したみたいね。攻撃方法は角を前に突き出して突進してくる事と、後ろ足で蹴り付けて来る事。特に衒いのある攻撃はしないけれど、攻撃力が高いの。牝鹿だからと甘く見ては駄目」 一体だけだけれど、その分とても手強いわ、と繰り返してイヴは言った。その顔が少しだけ青ざめている。彼女の予知の中には、角で一撃に刺し貫かれる狩人の姿でも在ったのかもしれない。 大丈夫だと笑うリベリスタに、イヴは少しだけ安堵したような形で唇の端を持ち上げた。 「……今はまだ、山へ入る人も居ないの。けれどもう少し暖かくなれば、春の味覚を求めて山へ入る人達がきっと出てくる。……酷い事が起こる前に、いいえ起こす前に、どうか彼女を救ってあげて」 イヴの囁きに、リベリスタの一人が片眉を持ち上げる。 「──『彼女を救ってあげて』? 随分入れ込んだ言い方だな」 「……エリューション化する前は、牝鹿は公主と呼ばれていたわ。山を愛する温厚な鹿だった、らしいの。……愛する山を滅茶苦茶にしているのが自分自身だなんて、救われないと思わない?」 眉尻を下げて、大人びた顔でイヴは淋しげに微笑んだ。 「もう元には戻れないわ。だから金色公主を、『彼女を救ってあげて』。……貴方達にしか出来ない事よ」 ──花踏む蹄の金色公主に、醒めぬ永遠の春を、貴方達の手で。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:硝子屋 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年04月17日(日)02:27 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●彩の山 綻び始めた春の初め、空気はけれど未だ冷たい。冬の犀利ささえ無いものの、その足元には確かに名残りが残っている。 雪解けの影響で少し緩んでいる地面へ、数人分の足跡がまばらな轍を刻む。不揃いな若芽の隙間から煌めく春の陽射しを受けながら、『Digital Lion』英 正宗(BNE000423)は事前に下調べしておいたルートを先導して歩いていた。 「山の女王様……か」 良い山だったのだろう、ここは。それだけに残念でならないが、だからこそ、俺たちがちゃんとやらなければならない。呟きの後にそう心に決めて、正宗は息を吐く。 「ふむ、春の紅葉狩り、といったところですか」 独りごちたのは『静かなる鉄腕』鬼ヶ島 正道(BNE000681)だった。そう表現すれば化け物退治も中々に風流ですな、と訥々染むように継がれた言葉は、何かしらの緊張の糸に絡め取られたような山の空気を打つ。 化物、かつての山の女王鹿。公主と呼ばれた栗色の牝鹿。 豊かな山中には、いずれ実りを結ぶであろう樹々が立ち並んでいた。丁度この時期に花を咲かせる姫林檎の甘い馨に、『鋼脚のマスケティア』ミュゼーヌ・三条寺(BNE000589)の鮮やかな水色の双眸が、気を抜かずとも眩しげに瞬きながら光の中の花影を探し追う。 ただ、何故かこういった豊かな山には付き物であろう小動物の姿が見えない。光射す風景は春間近に彩られているのに、在るべき生命が見当たらない。女王の異変に姿を隠しているのか、それとも既に餌食になったか──さて、山は沈黙するばかりで明確な答えは得られない。 だが、リベリスタ達には成すべき事だけはしっかりとわかる。 『あんたの愛した山を汚さないため、その魂を解放させてもらうぜ』 結ぶ誓いは解けない。心を失った女王陛下の住まう山──是非心優しい頃に会ってみたかった、と『おばけだめ』久保川 つばめ(BNE001767)は涼やかな切れ長の双眸を伏せる。 山の中とは言え、伐採や何かしらの理由により、樹々の間隔が巧く空間を作り出している箇所は幾つかある。事前に地図を入手し、若しくはインターネットなどの手段により、一行はそういった戦い易い場所の存在するポイントを予め頭に入れていた。狭い山の中、そういった事前の準備はリベリスタ達にとって、きっと有利に働くだろう。 ──金色公主の禍々しい蹄が土を踏み荒らし、静寂ばかりに満たされた山に、或いは弔いの鐘のように音が響く。齎す死は『彼女』自身へ、力持つリベリスタ達が刻むものだ。 一行が足を止める開けた場所に、陽射しの中から公主は悠々とその身体を現した。 金の体毛、牡鹿の角、ぎらぎらと光る瞳、侵入者を排除しようと地を削る蹄。 「さて、被害が出る前に速やかに片を付けにいこう」 殺しに救いだなんだのと正当化する理由付けをするのは趣味じゃない──死んでしまえば、それまでだから。『スレッシャー・ガール』東雲・まこと(BNE001895)は胸中に想いを紡ぎながら、凛と言う。俺のような者に出来ることといったらそれだけだ、と彼女は尚、囁く。 リベリスタ達が幻想纏いを構える。 かつてこの山を愛した女王だからこそ、金色公主は殺されなければならない。 ●金色公主 ミュゼーヌが曰く。 「金色の毛並みも、雄々しい双角も、ちっとも似合っていないわね」 異形のそれ。母性の欠片もない姿かたち。一瞬にして張り詰める空気は、穏やかだった筈の山を戦場へと様変わりさせる。 「変! 身!!」 勢い良く特撮ヒーロー番組でよく聞くような声が響き、『正義の味方を目指す者』祭雅・疾風(BNE001656)の幻想纏いが起動すると同時、彼の姿が瞬時に装備を終えてそこに立つ。 それを合図のようにして、八人は事前に決めていた通りに陣取った。泥濘む足元は少々覚束無かったが、これもリベリスタ達の機転により各々にて対策が取られていた為、公主との戦闘の妨げになる事はないだろう。 「くすくす……愛するモノを踏みにじるその姿、無残なものね」 醜悪な鹿を紫色の視線に捉えてに、『敬虔なる学徒』イーゼリット・イシュター(BNE001996)は笑い囁く。けれどその想いの内側に湧く羨望の感情に、彼女は自ら『まさか』、とそれを絶った。 「いい鹿さんが悪い鹿さんになっちゃったよ……」 結界を巡らせながらそう言ったのは『兎闊者』天月・光(BNE000490)だ。時期からして楽観視しても良かった人間の出入りについては、これで心配はなくなった。後衛に位置し、影に身を潜めるようにしていたまことが続けて守護結界を張る。 テリトリーを荒らしに来た『侵入者』達から明らかな敵意を感じ取った公主が、頭を振るって嘶くような仕草で前足を持ち上げ、助走を付けて地を蹴り跳ねた。前衛に位置する正宗の眼前に迫り、着地様に身体を捻って後ろ足を強烈に蹴り上げる。 後衛に被害が出ないようにと身構えていた正宗と正道が、各々に強化した身体でそれを食い止めるが、身体を抉る衝撃は生易しいものではない。走る衝撃に、正道はその眉間に色濃い皺を刻んだ。 「……ッ、受けるとキツい、気をつけろ!」 噛み締めてそれを堪えながらも、ダメージの重さを仲間達へと正宗が声を張り上げて警告する。その横で、疾風は番えるメイスに力を篭めた。 「元に戻らないなら、せめて永遠に──!」 安寧の眠りへと、凶気に陥った公主へそれを与えるべく振り下ろされたメイスは狙い通り、片側の角へと撃ち込まれる。禍々しいものの象徴のようにして大きく広がっている角の一部が、めきめきと嫌な音を立てて軋んだ。 イーゼリットがマナブーストを発動させ、仲間たちの動向を見守る。その傍らで、攻撃のタイミングを合わせるべく測っていたつばめがリボルバーを構えた。目配せを受けて、後ろ足の部位を的確に攻撃するべく息を合わせるよう打ち合わせていたミュゼーヌもまた、自らの得物の銃口を迷いなく公主へ定める。 機動力と蹴りの威力を削ぐ作戦──銘打つそれに隠すようにした自らの本音に、ミュゼーヌは眼差しも鋭利に引き金をひいた。その足が、もう愛した山を踏み荒らす事がないように。 「リベリスタとしての初戦闘のお相手が、女王様とは光栄だね」 気迫を得たミュゼーヌの1$シュートは、けれど公主の後ろ足を掠めて後ろの樹にめり込んだ。狭い範囲を狙っての攻撃が万全でない事は予想済みだとばかりに、追い掛けて放つつばめの1$シュートが今度こそ公主の後ろ足を真芯に捉えて貫く。 弾けるように飛ぶ赤い飛沫が光源を反射する様と、公主が攻撃を嫌がるようにして後方へ逃げ退るのはほぼ同時だった。 けれど公主が次の行動へ移る前に、光が持ち前のスピードを生かしてひらりとその眼前を遮るように立ち塞がる。公主は空けた距離を詰めるように、牝鹿には到底似合わぬ逞しい角を前面に突き出し地面を蹴って突進を仕掛けた──が、その凶悪なフォルムの角が獲物を捕らえる事はない。 「ほらほら、こっちうさ!」 明るく笑って、華麗な身のこなしで突進を避けた光がぴょんぴょんと跳ねる。挑発するような身のこなしに、公主の視線が怒りを孕んで彼女の方へと逸れた。 公主は再び突進の体勢を取ろうとするが、飛んで来た鴉に出鼻を挫かれて巧く行かない。陣の後衛、安全圏でまことが唇の端を持ち上げる──連携の機会を見逃さず、突進のタイミングを窺っていたまことの式符だった。 「公主様にキスでもしてさしあげようか」 調子良く紡ぐ科白を理解などする筈もないが、公主は怒りに首を震わせた。鴉によって齎された怒りに、公主の瞳から敵を区別するほどの理性さえも拭い去られる。残るのは唯、この怒りを与えたまことへの憎悪だけだ。 少しずつ削られ始めた公主に向けて、つばめの銃口から放たれた弾丸が喰らい付く。後ろ足を狙ってのそれは少し逸れて胴体を撃ち抜いたが、肉を裂く感覚が公主を蝕む事は違いない。 「痛いよな……ごめんな」 けれどつばめが攻撃の手を緩めないのは、肉体よりも心の方がきっと痛いと思うから。山や森や、そこに住まう生き物たちを傷つける方が、きっと公主の心は痛むから。 怒りに突き動かされるまま、後衛の方へ向かって突っ込もうとする公主に向けて、疾風がメイスに力を篭める。 「させません!」 声高に疾風が叫んで、炎を纏ったメイスが再び角を焦点にして叩き込まれる。周りに燃してしまうものがないから、攻撃の手に躊躇いはない。 ──公主が悲鳴のような鳴き声をあげる。金の体毛に炎が乗り移り、その肉を傲慢に焦がす。重ねられる攻撃によって脆くなっていた片角が折れて、無様にぶらりと皮だけ繋がり垂れ下がる。苛む怒りに、火炎に、公主の理性は既に無い。女王の風格は最早塵に化したに等しかった。 「盤を降りなさい、あなたの愛する王国のために」 凛と、イーゼリットの唇が言葉を編む。綺麗だと、片隅でそう思った公主の角は既に折れて痛々しい。有り得る筈もない歪んだ神秘──リベリスタとしての仕事。 「我紡ぐは四条の魔奏――」 イーゼリットが両手に持つグリモアールが、ばらりと開いて神智の力を描き出す。結晶する魔力は四色の光となって、苦しみもがく公主を目掛けて晴れ上がった中空を駆けた。 獣の苦鳴は物悲しく山中に響く。肉の焼ける匂いが鼻を突く。それでも尚身体を奮い立て、怒りの根源であるまことを狙い残った片角を揺すり上げる公主の姿に、正道は読み間違う事なくその隙を弾き出す。ヘビーアームズに覆われた拳へと、躊躇いなく技を乗せた。 「力比べをする気はないのです、」 拳と同じく重い言葉が、その唇から呟かれる。イーゼリットやまことがターゲットになれば、万が一という事も考えられる。彼女らが倒れれば純然たる力比べ、天秤が悪い方向へ傾くような錘は取り除いておくに越したことはない。 公主が我武者羅になって後ろ足を乱雑に蹴り上げた。その蹄の先には光が居たが、彼女は先程と同じく身軽に避けようと身構える。だが少しだけ間に合わず、掲げたバックラーで攻撃を受け流そうとしたものの、急な体勢変更では満足に受身が取れない。ぐらりと傾ぐ身体が誰かに受け止められる。 「……っと、危ない!」 「にゃっははっ、ありがと♪」 吹っ飛ばされるような形になった光を正宗が支え、笑って礼を告げた光は危なげ無く立ち上がった。改めてレイピアを構えて、公主の攻撃へと注視する。 「俺に出来る事はそう多く無い」 多くはないが、出来る事は確かに在るのだ。正宗が眼差しに百獣の王めいた鋭さを満たして、ブロードソードを握り直す。全身を巡る力を切っ先にぶつけて、正宗は公主の後ろ足を狙ってそれを解き放った。 が、満身創痍でも尚、公主は強靭な身のこなしでそれを回避する。けれどもう、後ろ足を狙う必要もなさそうだと正宗は察した。後ろ足を潰して攻撃手段を削ぐ懸念も、回避力を殺す必要も、きっともう要らない。公主はもう、持たない。 ──後衛で銃を構えていたミュゼーヌの、鋼鉄のヒールが土を跳ねる。 肉薄する彼女は、至近距離で迷いなく銃を構えて言う。追い掛けるようにして、銃声が一つ、すべてを括るように清々しく反響した。放たれた銃弾は、致命傷だ。 「深く、深く眠りなさい」 炎の中で焦がされる公主に、かつての女王に、──醒めない眠りを。 無残な襤褸切れめいた姿の金色公主は、音なくぐらりと倒れ伏した。 ●苗床の女王 誰かが埋葬しよう、と言った。全員が積極的に動いた訳ではない。仕事のうちではないと、様子を見守るだけに留める者もいた。けれど、そんな必要はない、と明確に言う者は居なかった。 元より、小さな山である。山へ入る前に、下準備として地図を用意していた事も手伝って、見晴らしの良い場所を見つけるのにそう時間は掛からなかった。 「美しい山を、見守っていて貰いたいから」 ここにしましょう、と言った疾風は、どうしてだと仲間から問われてそう笑った。 頂上近い開けた場所だった。樹の根元には名も知らぬ小さな花が群れ咲いていて、姫林檎の花の馨が瑞々しく空気を抱いている。春爛漫、摺り抜けていく風は、先程までの激しい闘いも知らぬ素振りで白々しい。 「化物に成り果てても、山を愛する気持ちは残っていたということなのだろうかな……」 少し離れた木陰に背を預けて、埋葬するのを眺めていたまことが零す。視線は僅かな間だけ墓の方を見つめて、けれどすぐにふいと外された。どうでもいい話か、と、答えを得る気のない自問を春風に流す。 数人で掘れば、すぐに鹿一頭を埋めるのに十分な墓穴が出来上がった。ぼろぼろになった公主の身体を埋めて、墓を作った。 光が持参していたかまぼこ板が、ちょこんと目印のように出来たばかりの墓に添えられている。 「さよならうさ」 ぱちんと手を合わせて、光は眼を閉じた。その傍らで、墓を作る間に摘んできた花をミュゼーヌが供える。 「貴方にお似合いよ、公主様」 一輪、けれど陽光の中に燦めくようにそれは鮮やかだった。山吹、異形の獣の色にも負けぬ金色の花──花言葉は、『気品』である。 土が盛られ、かまぼこ板のオブジェが掲げられる慰霊碑の様相に、正宗は少しだけ口許を緩めて合掌した。 「山の事は俺たちで出来る限り守ろう。どうか安らかに」 弔う言葉が、土の下まで届いていると良い。そうしたらきっと、公主も愛しい山の行方を嘆く事なく自然の流れの中へ滅していけるだろうから。 ──花が、群れ咲いている。いずれ花咲く春、冬を耐えて辿りつく季節は衒いなく美しい。 「これがあんたが愛した風景なんだな。その気持ちもわかるよ、」 穏やかな山の姿を眺めて、つばめは言葉を優しい色合いの空へ融かした。 この山ひとつ、公主のもの。美しい山ひとつ、公主のもの。牝鹿の愛した風景は、愛されるだけの理由があった。 なすべき事を終えて、それぞれがゆっくりと歩き出す。 いつか女王鹿の身体は土に還り、それを糧として大地が潤い、鳥や獣が運ぶ花の種が根付くだろう。 リベリスタ達が憂い、守った山は公主の身体を包み込んで、これからも四季折々を豊かに微睡み過ごすのだ。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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