●バロック強襲の後 2011年末に三ッ池公園で行われた日本リベリスタ勢力アークとフィクサード組織バロックナイツの戦いは、使徒ジャックの撃破を以てアークの勝利に終わった。 だが、ジャックの撃破に成功はしたもののバロックナイツが行っていた儀式そのものは成功し、公園には『閉じない穴』が作りだされたのである。 アークは三ツ池公園を封鎖することで自らの管理下に置いた。 そして、閉じない穴と周辺地域の観察と警戒、危険排除を組織として行う事を決定したのである。 ●三ッ池公園哨戒 ディスプレイに表示された地図は、幾人かにとって見覚えのあるものだった。 三ッ池公園。 アークの幾人ものリベリスタたちにとって、その名は……様々な意味を持つ、忘れ難い存在である。 かつてアークとバロックナイツが戦い、今も閉じない穴の存在によってエリューションやアザーバイドたちが出現する、日常から掛け離れ始めた場所。 「今回の任務は三ッ池公園内の警戒になります」 マルガレーテ・マクスウェル(nBNE000216)はそう言ってから、公園の管理体制について説明した。 フォーチュナの能力で捉えきれない存在に備える為に公園付近ではアークの人員によって警戒が行われている。 穴周辺はもちろん公園全域に置いてリベリスタたちが哨戒を行っているし、公園外でも組織の者が異変等がないかの調査を行っている。 もちろん、人数は多くはない。 というか監視する地域の広さを考えると完全に不足しているといっていい状態である。 効率の方も徹底しているとはいえない。 閉じないディメンジョンホールの監視などアークにとっては初めての事だ。 現在も監視や哨戒を行いながら、方針や管理体制を思考錯誤している最中なのである。 アークは創設以来多くの初めてを体験してきたが、今回のは特別格別だ。 「それで、可能な方がいたら哨戒任務の支援をして頂きたいんです」 こういうスケジュールになりますとマルガレーテが用意してきたプリントを差し出した。 ローテーションは、哨戒、休息、待機を4時間ずつで計12時間。2セットで24時間、つまりは1日。 「皆さんには5日間を担当して頂きたいんです」 そう言ってマルガレーテはプリントの説明に入った。 『哨戒』は文字通り公園内の警戒である。 定期的に待機所と連絡を取りながら公園内を見回り、エリューションやアザーバイドを発見したら直ちにアクセスファンタズムを使用して待機所に連絡する。 その後、交戦を避けての調査や観察が可能なら出来得る限りの情報を集め、追加の連絡を行うか到着した迎撃班に報告。 情報伝達後は更なる敵出現が予想されるなら戦いに巻き込まれない箇所から周囲を警戒。 そういった問題がなさそうなら戦場から離脱し哨戒を再開する、という流れ。 もちろん発見し連絡した時点で危険があるなら直ちに離脱。 「とにかく戦いを避ける事、戦闘は迎撃班に完全に任せて、皆さんは巻き込まれない事を優先して下さい」 戦いになれば消耗は大きい。負傷する可能性も出てくる。 1人が哨戒に就けなくなれば、他の者に掛かる負担が大きくなる。 『休息』も文字通り。 「アークの方で付近のビジネスホテルを幾つか確保しているとの事です」 次の哨戒に備えて疲れを取るのも任務。 休息、仮眠、シャワー。浴場も最上階にあり、食事の方も1階のレストランで取れるそうだ。 外出だけが申請して許可を取る必要があるらしい。 「何か特別な理由でない限り勤務が終わるまで我慢するようにとは言われるみたいですけど」 『待機』は基本、休憩に近い。 やはり公園近くにアークが臨時的に施設を用意してある。 待機所には休憩所や仮眠室も用意されているが、主な役割は公園で任務に当たる者たちや他の待機所、本部との連絡だ。 もっとも、それらは専門の職員が行うのでリベリスタたちの任務はあくまで待機。 緊急事態等の発生時には、哨戒班の救援や援護等のために公園に向かうという事になる。 「すぐに動けるのなら、ホテルの方で待機してても良いそうですよ」 時間経過後、任務継続なら公園に向かい哨戒班と交代。 哨戒任務に就く。 「以上が一連の流れになります」 普段とはちょっと違って緊張が持続する任務になってしまいますけど……でも、と少女は口にした。 「戦闘等とは違う意味で、とても大事な任務だと思いますので」 急な話ですみませんが、宜しければ協力お願いします。 その言葉に幾人かのリベリスタたちが快く、或いは興味深げに頷いた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:メロス | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年02月04日(土)23:28 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●任務開始~1日目8:00 朝の公園は何事もないかのように静まり返っている。 季節がら身を切るような寒さはあるものの、あの夜に比べれば……今のこの場所は、風景だけ見れば平和そのものだ。 けれど、実際はそうではない。 『閉じない穴』がいつか閉じられるまで……この公園は憩いの場として使われること 無く……ただ、時だけが過ぎていくのだ。 「その時が来るまでは僕たちがしっかりと管理していくのですね」 その光景を眺めながら、浅倉 貴志(BNE002656)は呟いた。 その時が早く来ることを、公園が元通りになることを、祈らずにはいられない。 「これだけ色々と出てきてる場所ですから何と遭遇するかわかりませんね」 雪白 万葉(BNE000195)は公園の風景を眺めてから、気を引き締めてまいりましょうかと皆に声をかける。 源 カイ(BNE000446)は頷いた。 閉じない穴の影響による強力な敵の来訪、その早期発見はとても大事なことだ。 (決しておざなりにはしません) 「僕に出来る事なら快く承りますよ」 皆に、誰かに語りかけるように、いつも通りの落ち着いた様子で口にする。 「哨戒任務か……」 苦手ではないが、得意でもない。 「が、任務なら遂行するまで」 アルトリア・ロード・バルトロメイ(BNE003425)は忽然と、宣言するように、誓うように言葉を紡ぐ。 「哨戒任務は初めてですけど、重要ですし頑張ります」 (……出来ればフェーズ3とかの強力なエリューションに遭遇したくはないですけど) 言葉の後にそんな事をふと思えば、雪待 辜月(BNE003382)は自身の内にうっすらと冷たい何かが流れたような感覚を味わった。 と、次の瞬間、目の前で青年が突然変な顔をして見せる。 「ピンピンに張り詰めてたら途中で参っちまうぞ」 ふっと表情が変わったのを見ると『さすらいの遊び人』ブレス・ダブルクロス(BNE003169)は冗談のような、おどける様な仕草をした後、そのまま続けた。 「アークに来てまで哨戒任務たーねー」 まっ、お仕事だし、真面目にやりますか。 其々8人8様の言葉を紡ぎ、想いを抱いて。 リベリスタたちは、任務を開始した。 ●1日目8:35 これまで公園で起こった諸事の纏めを参考にしつつ、カイと貴志は用意した地図を確認し、新たにチェックなどを行っていく。 「……何も起こらないほうがいいのだけれど」 『敬虔なる学徒』イーゼリット・イシュター(BNE001996)は静かに精神を広げ、自身の超直感を研ぎ澄ませつつ周囲へと視線をむけた。 「立ち入るのは初だからな、念入りに確認しよう」 アルトリアは今まで戦闘が起こった箇所を確認し、巡回のコースなどをブレスと話し合う。 万葉は警戒を行いつつ、分かれた際の位置確認に役立つようにと目標物となりそうなものを選別していた。 警戒は仲間たちと手分けをして常に周囲を全体的に警戒できるように。 最初は全員で公園内を巡回するという事で皆の意見は一致した。 公園を訪れるのは初めてという者がいるのもあるが、以前に来た者も公園内を見て回った訳ではない。 貴志はかつての戦において公園を訪れた身ではあるが、慣れ親しんだ場所ではない以上、知らないことが多いという自覚もある。 「知るべきとこを知らずに哨戒なんてやってらんねーよ」 ブレスのその一言には皆の幾つもの意見が集約されているといえるだろう。 「へー、ここがジャック・ザ・リッパーが倒された場所なんだね」 おとと、観光気分じゃダメだね。 『紅翼の自由騎士』ウィンヘヴン・ビューハート(BNE003432)はそう言ってから、気を引き締めて行こー! と気合を入れた。 カイは千里眼を活用して遠距離や物陰等を透かして警戒し、貴志は何かが隠れやすそうな場所、気づき難そうな要注意箇所を地図に書き込んでいく。 ブレスはそれらと共に地図と実際に見た公園内地形を照らし合わせ、ウィンヘヴンも皆と歩きながら地理を確認していく。 万葉とアルトリアは目印となる存在について話し合う。 辜月はそれら、これまでの発見報告や戦闘発生場所を確認し、それらを基にいざという時の逃走経路なども考える。 いざという時に冷静な判断が出来るとは限らない。 ならば考えられる時にプランを作成しておくべきだろう。 2月の寒気の中、幸いというべきか。 一行は特に異変とは遭遇することなく、交代時間の正午を迎える事となった。 ●1日目17:10 「緊張し過ぎだと直ぐ疲れてしまいますからね、ちょっとゆとりを持ちましょうか」 食事をサンドイッチ等で済ませた後、カイは珈琲をメンバーや職員たちに振舞いながら口にした。 職員たちは礼を言って薫りを楽しみ、一息入れる。 一行は次の哨戒前にと最初の哨戒で得た情報を確認し合っていた。 簡単なミーティングでブレスは地形や注意点を皆で確認し合い認識を共通化させ、貴志は自分の気づいた点や皆の意見、提案等を取りまとめた。 その後はそれぞれ哨戒の開始まで、待機という名の自由時間になる。 「休めるときには出来る限り休まないと」 (身体が持ちそうにないから……) 軽食をとったイーゼリットは静かに目を閉じたりして休みはしたものの、時折り地図を見ては復習に時間を割く。 何度も目にいれて、自然に覚えるように。 ウィンヘヴンは自分の扱うランスを、力を込めてゴシゴシと磨いていく。 貴志は自分たちの最初の哨戒時の情報と、公園でこれまで起こった事象や報告等の把握に努める。 辜月は他のリベリスタたちと情報交換ができればと思い、待機しているリベリスタたちに話しかけた。 自分は日が浅いので知恵を借りられればと言えば、自分たちもそれほど哨戒に慣れている訳ではないけれどと前置きしつつも数人のリベリスタたちが自分たちの経験した事象等を話してくれる。 辜月は礼を言いながら気付いた点などを、メモしていった。 後でレポートに纏める予定である。 (他の方の参考になれば嬉しいですしね) さっきの資料を基に逃走路の確認もしなければ……時間が足りなくなってしまうかもしれない。 「も~ダメですってば。危険なこともあるんですから!」 ちゃんと休んでて下さい~ そんな言葉を背に受けつつ姿を現わしたブレスが、仕入れてきた情報をふたりに話す。 女性事務員の反応は決して悪くはないが…… (目指せ、デートの約束) 今度は待機していたリベリスタの女性に声を掛ける青年を見送って…… 辜月と貴志は何も言わず、自然と顔を見合わせた。 ●1日目21:20 「ちょっと待機所の方に緊張を強いてしまうかも知れませんけど……」 懐中電灯と暗視スコープを装備した辜月は、周囲を警戒しつつ不審なものがあれば直ぐに待機所へと連絡を入れていた。 申し訳ないなとは思いつつ……最悪の事態、連絡する間もなく……等というのは、避けたい。 かなり緊張した様子ではあるが、これでも少しは落ち着けている方なのだ。 ブレスが色々と緊張をほぐそうとした結果である。 本人の方はというとイーグルアイと暗視の能力を発動させながら、ある程度緩めた緊張具合で周りを警戒しつつ歩いていた。 適度に力は抜けているものの、必要ならすぐに武器を振るえるという態勢である。 一方、出来る限り前衛で行動しやすいようにと考え先頭に立っていた貴志も、熱感知と感情探査を使用して周囲を警戒しながら定期的にAFで他の哨戒活動している班と情報交換を行っていた。 ウィンヘヴンは懐中電灯で周囲を見回しつつ、特に音に気をつけて進んでいく。 他の班や待機所からも特に異変を告げるような連絡は入らない。 そのままB班の4人は警戒しつつ哨戒を続け……時間の半ばが過ぎかけた頃だった。 暗闇を意に介さぬブレスの鋭い視線が、動く物体を発見する。 ほぼ同時に貴志が行っていた感情探査にも、強い空腹感のような何かが感知された。 確認したブレスが合図をし、ウィンヘヴンは懐中電灯の灯かりを消す。 冷たかった空気に別の何かが混じり合った。 ●1日目21:50 貴志は熱感知も使用し対象を探る。 微妙な違いなどは分からないが、通常の生物に近い体温を持っているように見える。 少なくともアンデッドの類ではなさそうか。もちろん常に例外は存在する以上、断言するのは危険ではあるが。 辜月はアクセスファンタズムを使用して急いで待機所に連絡を入れた。 (突っ込みたいなぁ……) 「ううん。まだまだ我慢我慢」 ウィンヘヴンは自分にそう言い聞かせて誘惑を押さえこみ、それの様子を観察する。 もっとも、距離があるので正確な部分は分からない。 とりあえず見えている範囲で2体いるので、それをAFを使って連絡する。 ブレスは武器を構えると、ゆっくりと近づきながら『それ』の姿を確認した。 スキルがある以上、無理に接近する必要はない。 十分距離のある状態で物陰に隠れ、それの様子を観察する。 大きさは……1mほどだろうか? ネコのように見える部分もある……ネコを無理矢理1mくらいにまで膨らませたら、こんな形になるだろうか? 鋭そうな爪に、口からはみ出したような大きな牙。 変異した外見から察するにエリューションビーストのようである。 動きの方はどこか鈍く、どたどたした感じがある。 観察しているうちに更にもう1体似たような存在が、茂みをかき分けるようにして現れた。 フェーズは1か、2か? 少なくとも3という事は無いだろう。 油断は禁物だが、過大評価もそれはそれで問題ある。 貴志やウィンヘヴンがAFを使って待機所や他班、向かってくる迎撃班たちに連絡を入れる。 さほど時間をおかず8人のリベリスタたちが到着し、警戒を続ける4人の目の前で戦いが始まった。 5人が前衛に立ち、3人が後衛から攻撃を行い、或いは前衛たちを回復や付与で援護する。 堅実な戦いを目に留めつつも辜月は周囲を警戒した。 (追加で何か現れたら迎撃班の負担が大きくなりますし) 観察していた辜月の目に、戦場から少し離れた奥の茂みが揺れるのが映る。 そちらに目を向ければ似たような何かが1体、茂みの陰から這い出して来るのが見えた。 暗視スコープを使いながら念のためにブレスに確認してもらえば、確認したブレスは頷いて軽く辜月の肩をたたく。 すぐに貴志とウィンヘヴンが待機所に、そして迎撃班の後衛の一人に連絡を入れる。 騒々しい雑音に混じって了解の返事の後、迎撃班の前衛の一人が陰で見えないE・ビーストの側へと警戒する態勢を取った。 援軍の出現に動ずる事もなく、やがて8人は全エリューションの撃破に成功する。 報告と、短いやりとりで互いを労った後、迎撃班たちは撤収。 そして4人は、哨戒を再開した。 ●3日目20:00 初日の夜にエリューションが確認され緊張が高まったものの、それ以降は両班共に遭遇は無かった。 エリューション、アザーバイド共に出現したようではあるが、他の班が対処したようである。 「それじゃ、気をつけてね」 互いの巡回路を確認し合うと、イーゼリットはB班の者たちに声をかける。 8人はそれぞれの班に分かれ幾度目かになる夜の巡回を開始した。 同じルートだと悪い方向に慣れが発生する可能性があるというブレスの提案を受けて、一行は班はそのままに受け持ちのルートを1日毎に交代する形を取っている。 ちなみにA班は万葉、カイ、イーゼリット、アルトリアの4人。 万葉が暗視を使用して視界を確保し、カイは千里眼を使用して。 昼間と比べれば視界は悪くなるが、万葉にとっては暗闇の影響は殆んどなく、カイも普通に見るのに比べれば確認できる範囲は広い。 イーゼリットは超直観を活かして些細な変化も見逃すまいと視線を走らす。 万葉は些細でも気になることがあれば皆に告げ、皆が気付いた些細な点についても話し合い、確認するように心がけた。 二手に分かれて哨戒を行っているので時間には充分余裕がある。 アルトリアが最初の巡回で皆と確認しあった要所をしっかりと押さえるように哨戒を続ける。 定期的にB班と連絡を取り合いながら4人は公園内を巡回し……やがて交代の時間が訪れた。 到着したリベリスタたちに任務を引き継ぐと、8人は休息場所であるホテルへと足を向ける。 引き継ぎと同時にうつらうつらし始めたウィンヘヴンは何とか、かろうじてという様子で部屋に辿り着いた。 サンドイッチやおにぎりなどの手配を頼んだカイもシャワーを浴びるとすぐに仮眠に入る。 貴志もしっかりと休息を取ろうと眠りに付き、アルトリアも次の哨戒に備え横になった。 「一度くらい浴場っての、使ってみようかな」 シャワーで済ませていたイーゼリットはそんな事を考え最上階へと足を向ける。 誰もいないといいけど。そんな風に思いながら到着した大浴場は願い通りというべきか実質貸し切り状態だった。 軽く身を流し湯船につかると、体が強張っていたのだという事を実感する。 「哨戒って意外と緊張するのね……」 誰に言うでもなく呟いてからイーゼリットは、暫しの間ゆっくりと湯につかりながらこれまでと今後に想いを馳せた。 何とか3日が経過した。残りはあと、2日である。 ●4日目11:15 最初に発見したのは千里眼を使用していたカイだった。 空を飛ぶ何か。それは閉じない穴の近くに、突然現れた。 カイの言葉を確認するようにアルトリアが双眼鏡でそれを見ようとするものの、不規則に動く為に完全には捉えることができない。 その間に、それは林の中へと降りていく。 木々が茂る林の中……その枝葉の陰に降りたのだとすると、距離はともかく障害物の多さ、総合的な厚さなどで千里眼で捉える事も難しくなる。 「こちら哨戒チーム、ポイント丘の上の広場付近で事象」 イーゼリットがとりあえずで連絡を入れた。 任務の継続を考えれば距離を取るべきだが、対象の確認ができていない。 万葉が皆に向かって頷くと、気配遮断を使用しての接近を開始した。 ゆっくりと……静かに。音を立ててしまえば、せっかく気配を消していても意味がなくなってしまう。 やがて万葉は、大きな樹に止まっているそれを発見した。 大きさは3mほどもあろうか? 太い枝をしならせ止まり木にしているそれは、鳥のような、しかしどこか野太い鳴き声を発している。 首の長い巨大なトカゲのような外見で、前足はなく蝙蝠のような翼をもっている。 そして……1体ではなかった。 それは、2体いた。 例えるなら飛竜とでも表現するべき、それ。 エリューションではなく、アザーバイドだろうか? ある程度まで観察した万葉は、気付かれないように後退し皆と合流しようとする。 その時だった。 2体に合流するように飛来したもう1体を、イーゼリットが視界の隅に捕える。 「敵、数3体」 距離を取ろうとしながら彼女は万葉から告げられた敵についての情報を簡潔に連絡した。 飛来した1体が鳴き声をあげ、留っていた2体も応えるように鳴くと翼を広げる。 アルトリアは皆を促し念のためにと闇纏を発動させ……4人は一斉に駆けだした。 既に連絡は行ってある。 AFからは迎撃班を向かわせたと連絡が入っていた。 「追われてる、こちら上の池周辺から展望広場方面へ移動中、3体の追撃を受ける」 機敏に動けるようにと装備を整えていたイーゼリットが逃げながら現状を連絡する。 万葉は後方を確認した。 敵は遠距離攻撃を持ってはいないようである。 だが、道や池で移動を制限される自分たちに比べれば、移動に関しては絶対的に有利だ。 速度はそれ程でもないが距離は少しずつ縮まっているように思える。 ならば牽制しながら迎撃班の到着を待つべきか? その時だった。 「迎撃班、展望広場付近に到着!」 AFから事務員の声が響いてくる。 その言葉を信じて、4人はそのまま展望広場に向かって駆けた。 「すまない、遅くなった!」 4人を発見したリベリスタたちが息を弾ませ駆けより、後方から飛来するアザーバイドたちを確認する。 敵についての情報を短く報告すると4人はそのまま擦れ違うように展望広場を駆けぬけた。 ●4日目11:30~その後 戦いに巻き込まれぬようにと距離をとった4人は、そのまま戦いが終わるまで様子を窺いながら待機することにした。 先程と同じように不意の襲来がないとも限らない。 自分たちは直前に気付けたが、もし気付くことなく増援の奇襲を受けるような事になれば危険が過ぎる。 「油断無く、見落とし無く……っと」 カイは再び自身のスキルを使用し、イーゼリットや万葉も戦場と周囲を警戒した。 アルトリアも双眼鏡で辺りを観察する。 幸い敵の新手などはなく、戦いはアークのリベリスタたちの勝利に終わった。 そして4人は迎撃班の者たちと言葉を交わし合うと、哨戒を再開したのである。 その後は何もなく、期間である5日間は過ぎた。 8人は任務を終え次の者達へと哨戒を引き継ぎ公園を一旦後にする。 そう……これは一旦、でしかないのだ。 公園では常にではなくとも異変が起き、エリューションやアザーバイドが出現し続けている。 いつかそれが、この事態が収束するまで。 彼らは、彼女らは……リベリスタたちは、戦い続けることになる。 公園が、かつての……人々の憩いの場であった姿を取り戻す、その日まで。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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