●迫る刃 薄暗闇の中、男は懸命にその足を動かしていた。 路上に転がるゴミ箱や看板などにその身を打ちつけようがおかまいなし、ただただ懸命に駆け抜ける。最早息が上がっているどころの騒ぎではない。全身の筋肉という筋肉が悲鳴をあげ、呼吸器がこれでもかと言う程酸素を取り込もうともがいている。 しかし男は動きを止めない――いや、止めるわけにはいかなった。 やがて路地を抜けて開けた場所に出る。 ジジッ、と消えかけの街灯がその光を点滅させる。 「――っ!! っはぁはぁはぁっ!!」 そこで男は漸く一気に息を吸い込んだ。 体中の酸素が入れ替えられていく。喉の奥が張り付くような感覚が男の眉間に皺を寄せる。 落ち着かない息を吸っては吐き出しながら、男はちらりと自分の後方に視線を送る。 (来るな――) 視線を這わせながら願ったことはそれだけ。 それ以上は望まない。 しかし―― とっとっ。 無常な足音が男の耳を打つ。 思わず身を震えさせる。 「あ……あぁ……」 呻きにも似た声を上げた男は思わずその場に座り込む。 ここに来るまでの間に既に力は使い果たした。 例え体が動いても、もう全力で逃げる事はできない。 実際全力で逃げて追いつかれているのだから、これ以上は望めないだろう。 ジジッ。 一旦消えかけた街灯が、点滅を繰り返した後に再び点灯。 その光に映し出されたのは一筋の不気味な口元。 「おにーさん、どこへ行くんだい?」 暗闇から発せられた声はとても澄んだものだった。 男は座り込んだまま、両手の力で後ずさりをする。 「ふふっ、そんなに逃げなくても大丈夫だよ。別に食べるわけじゃないんだからさ」 その代わり、とクスクス笑いながら影は言う。 「少しだけ、協力してもらうよ?」 次の瞬間、男の意識は深く沈んでいた。 ●長い一日 「厄介なことが起きたわ」 開口一番『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)はそう言い放つ。 いつも無表情なイヴには珍しく、その顔に焦りの色が見える。 尤も、彼女が何かを切り出すときは大抵何かが起こるときなのだが。 「依頼よ。今回はとあるアーティファクトの回収もしくは破壊」 いつもの依頼、と言えばそうなのだろう。 アーティファクトはそれ自体が強力であり、手にした者は何かしらの加護か災厄を受ける事になる。そして依頼として来る以上、九割以上が災厄であるのだが。 「物は……ガントレットよ」 「ガントレット?」 リベリスタの問いにイヴは頷きを返す。 「名前は特にないわ。ただ、つけた人間の身体能力を著しく強化するだけのもの。効力だけならとんでもないモノだけれど、そこは欠点があるわ」 イヴは一旦言葉を切ってリベリスタたちを見回す。 「使用時間の限界があるの。使用すれば五分で筋肉断裂、十分で全身の筋肉が破裂するわ」 「……使えるのかそれ」 「普通に考えれば無理よ」 苦笑しながら言うリベリスタに、イヴはふるふると首を振って答える。 いくら強力だからと言っても、発揮して再起不能になるのでは意味がない。 「誰だって身体に大きな異常がでれば動けなくなる。でも……もし、それを気にしない人間がいたら――」 ごくり、と誰かが唾を飲み込む音が響く。 「し、しかしそんな人間がいるはずが……」 「そう、いないわ。作らない限りは、ね」 「え?」 言いながらイヴは手にしたぬいぐるみをぎゅっと抱きしめる。 「私が視た景色には、真昼の繁華街で狂ったように叫びながら何の罪もない人々を殴り続ける一人の男性と、それを嬉しそうに見詰める一人の少年が映っていたわ」 語るイヴの口元は、微かに震えていた。 余程酷い光景だったのだろう。 「ガントレットは男性がつけてたわ……その人は、全身の至るところから出血しながらその拳を振るっていた……まるで痛みを感じていないかのように。本来なら、アーティファクトのことだけでいいのだけれど……」 そこでイヴは小さな瞳をそっと閉じて沈黙する。 数瞬後、強い光を秘めた瞳をそっと開いたイヴは、リベリスタたちに言い放つ。 「一般人の被害を、最低限にとどめてほしいの」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:鳴海 鏡一 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 4人 |
■シナリオ終了日時 2011年05月27日(金)23:45 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 4人■ | |||||
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●路地裏 喧騒な市街を一歩離れると、そこは別世界へと切り替わる。 ビルの谷間の薄暗さ、漂う危険の香り、全てが表とは切り離されたように錯覚する。 そんな場所に一つの影。 「ふむ、この辺りが良さそうですね」 雪白 万葉(BNE000195)は周囲を見回しながら呟いた。 一見して細身の優男な万葉。そんな男が裏の路地に入ればどうなるか。 「おう兄ちゃん、こんな所に何のようだ?」 声と同時にゾロゾロと姿を見せる複数の若者たち。所謂ストリートギャングというヤツだろうか。彼らの手にはナイフやら鉄パイプやら物騒なものが握られている。 「やれやれ、物騒ですね」 澄ました顔で肩を竦める万葉の態度が気に食わなかったのだろう、男たちの顔に一気に怒気が浮かぶ。 「てめぇ……ナメてんのか、あぁん!?」 「ナメてるわけじゃないんですけど……見てないで何とか言ってくださいよ」 興奮する男たちを余所に後方に視線を送る万葉。その先には―― 「ふん。くだらん」 『百獣百魔の王』降魔 刃紅郎(BNE002093)が心底詰まらなさそうに言い放つ。腕を組んだまま射すくめるような視線とただならぬオーラを放つ刃紅郎の姿は、一般人にとっては恐怖以外の何物でもない。それでも何とか虚勢を保った男たちは、それぞれに手にした得物を構える。しかし。 「……去れ」 語気を強めて重く放たれた一言、更に殺気が乗せられたものとなれば男たちが耐えられるはずもなく、散り散りに逃げていく男たち。 「さすがですな」 拍手をしながら賞賛の言葉を投げるのは『怪人Q』百舌鳥 九十九(BNE001407)。 「何がさすがなのかは知らんが、貴様に言われるのだけは納得いかん」 「酷いですぞ?!」 大袈裟に悲しんでみせる九十九に不服感を全面に現す刃紅郎。 「まぁまぁ、取り敢えず場所は確保できたのですからいいじゃないですか」 と、『宵闇に紛れる狩人』仁科 孝平(BNE000933)は苦笑を浮かべながら言う。 そう、彼らがここに来た目的は場所の確保。 「万葉さん、皆さんに連絡を……」 振り返った孝平が万葉に連絡を促す。 「わかりました」 何事もなければいいが、という一抹の不安を胸に抱きながら万葉は手元の端末を操作する。 ●繁華街 行き交う人々、鳴り響くクラクション、流れる音声広告の数々。 いつもと何ら変わることのない街の風景。 そこに現れた一人の男。両の手に不気味なガントレットをはめ込んだ男は、ぐるりと辺りを見渡す。その男の様子が余りに現実離れしていたため、人々は思わず足を止めて見てしまう。 「おいあんた、そこにいたら通行の邪魔だぞ」 通行人の一人が男に声を掛けた瞬間、男は相手の顔面を掴みそのまま持ち上げてしまう。 一瞬でざわめく周囲。男は相手を持ち上げたまま空いている手を振りかざす。 静寂と緊張が周囲を支配、誰しもが「ヤバイ」と感じた瞬間。 男の振り下ろす腕を横切るように爆ぜた一陣の風。 「危なかった……」 安堵の息を吐いた『捜翼の蜥蜴』司馬 鷲祐(BNE000288)は、抱えていた男性をそっと地面に降ろす。男が拳を振り下ろすより早く、鷲祐が捕まっていた男性を救出したのだ。男性は「ありがとう!」と礼を述べてすぐさま走り去る。 男は一瞬鷲祐に視線を送ったものの特に興味を示さず、すぐさま別のターゲットに向けて動き出す。 狙われたのは逃げ遅れた一人の女性。 高速で狙いをつけた女性の傍に移動する男。再び振り上げられた腕が女性に飛来。 ゴガッという鈍い音。 男の腕がめり込んだのは『デイアフタートゥモロー』新田・快(BNE000439)の腕。 十字に固めた快のブロックはまさしく鉄壁と言える。 「させない……っ!」 気合一閃、快は男を弾き飛ばす。 よろめく男が体勢を整えようとしたその時。 「余所見は良くないねぇ!」 いつの間にか近付いていた『終極粉砕/レイジングギア』富永・喜平(BNE000939)が、男のガントレット目掛けて、得物であるショットガンを振り下ろす。 乾いた金属音と共に男が再び体勢を崩す。 だが男はすぐに体勢を戻すと、現れたリベリスタたちから一気に距離を取る。 言葉は発していないものの、その身体から湧き出る怒気が否応なくリベリスタたちを刺激する。 「決まったよぅ!」 携帯電話を閉じながら叫ぶ『蜥蜴の嫁』アナスタシア・カシミィル(BNE000102)。 それが意味することは唯一つ。 一瞬の視線の交錯――それで全てが伝わった。 鷲祐がそのスピードを駆使してヒット&アウェイを繰り返し、その隙間を縫って喜平が攻撃。そして男の注意を快が全面で受け止め、合間合間でアナスタシアが誘導しながら攻撃を含める。 相手の能力が上回っている以上、その全てが全力。余裕などない。勿論それでは倒すには足りない。 が、男の場所を移動させるという目的には十分だった。 ●再び路地裏 「……来ますよ」 呻くような声で仲間の到着を告げる万葉。 待機していた者たちの間に緊張が走る。 一瞬の静寂。 まず飛び込んできたのは喜平と鷲祐。 まるで吹き飛ばされてきたかのように路地裏へと転がる二人。 「ちぃっ!」 「くっはー! 効くねぇ」 舌打ちを零す鷲祐の横で若干笑みを浮かべながら腕を振る喜平。 遅れて姿を見せたアナスタシアが鷲祐の傍に駆け寄る。 大丈夫だと分かってはいてもやはり心配ではあるのだろう。その瞳には不安感が表れていた。 そんな相方にチラリと視線を送った鷲祐は、無言のままアナスタシアの頭にぽふと手を乗せる。 「おーい? 俺も頑張ったんだけどー?」 やってられんと言わんばかりに苦笑を浮かべた喜平の言葉。せめてもの抵抗だった。 と、そこで轟音。 周りのガラクタを破壊しながら飛ばされてきたのは快。当然一緒にガントレットの男も姿を見せる。 ここまで来る間に攻撃を受け止め続けていた快。その身体には至る所に傷が出来ていた。 しかし自分の身体よりも気になることが一つ。 「彼の身体もそろそろ限界だ!」 アーティファクトの活動限界。男の身体、特に手足からの出血が確認できる。 「お任せください」 静かな決意と共に詠唱を開始する『節制なる癒し手』シエル・ハルモニア・若月(BNE000650)。 男の周りに微かな風が巻き起こり、同時に男の手足から出血が引いていく――シエルのスキル『天使の息』である。 シエルの詠唱と同時に『百の獣』朱鷺島・雷音(BNE000003)が快の傍へと降り立ち、その身体に符を貼り付ける。 「すまない」 「気にするな。君たちの怪我を少しでも癒すのがボクの役目だ」 力強く頷いた雷音は喜平と鷲祐にも符を張りに向かう。 勿論それを黙って見逃してくれる男ではない。が―― 「貴様の好きにはさせん!」 怒号一閃、グレートソードの閃きと共に躍り出る刃紅郎。 止む無く距離を取った男に、今度は数発の銃弾が降り注ぐ。 男は人間の活動限界に迫るような動きでそれらをかわしていく。 「やれやれ、アレを避けますか」 「想像以上に厄介ですねぇ」 銃弾を放った九十九と万葉は僅かな嘆息と共に再び男に狙いをつける。 そもそも自分たちより運動能力の高い、しかも動き回る相手に狙いをつけること自体がかなり難易度の高いことなのだ。 と、回復を終えた鷲祐・喜平・快もまた男を囲むように自らの位置を移動させていく。 前衛が男の足を止め、後衛が男を狙い打つ。そして前衛を入れ替えながら、男の身体と前衛の傷を回復する。一進一退の攻防ではあるが、片や敵を回復させながら、しかもこちらからの攻撃は限定されている状況だ。当然持久戦になればこちらの不利である。 しかし、続くかと思われた攻防は思わぬ形で終わりを告げることとなる。 ●決着 一向のうち最速を誇る鷲祐、その自慢の脚力で地を蹴り、男との距離を一気に詰める。 同時に手にしたナイフを薙ぐ。男は器用な姿勢でそれを避ける。 その鷲祐の後ろにはカシミィル。 鷲祐の肩口に手を添えてムーンサルトの要領で鷲祐の身体を追い越し、そのまま男目掛けて足を振り下ろす。 気付いた男はカシミィルの足をガントレットで強引に払った。 その隙を狙って巨漢の二人――刃紅郎と喜平が己の得物を振りかざして肉薄。 右側から喜平の、左から刃紅郎の打撃と斬撃。 だが男はこれもバックステップで避けきる。 着地点を狙い澄ましていたのは万葉と九十九。遠距離から左右のガントレットを目掛けて攻撃を放つ。 クリーンヒット、とはいかないものの命中。 瞬間ではあるが動きを止めた男。待っていたのは孝平。 【ハイスピード】を乗せた孝平から繰り出されるレイピアの刺突の連撃。勿論狙っているのはガントレットだ。 ピシリ。 乾いた音と共にガントレットにヒビが入った。 (あと一息) そう思った孝平の横腹を激痛が支配する。 「かはっ……!?」 息を吐いた孝平が辛うじて視線を移すと、男の足が自分の身体にめりこんでいる。 ガントレットを狙っている、という行動にさすがに男も気付いたようだ。 それを逆手に取られてしまった。 崩れ落ちる孝平。その頭を男の拳が狙い打つ。 「させないっ!」 気合一閃、孝平の身体を突き飛ばして割り込んだ快。そのまま振り下ろされた男の拳をその身に受け止める。 体中が粉砕されたかのような痛み。しかし快はそれに耐えて男の腕を掴む。 このままでは埒が明かないと判断した快の、半ば捨て身の策である。 「時間がない! 構うな! 俺ごとやってくれ!」 口元から血を流しながら叫ぶ快。 男はトドメをさそうと拳を振り上げる。 だがその拳を現れた糸が幾重にも絡み取る。 「死なせは、しない……っ!」 『臆病ワンコ』金原・文(BNE000833)の放った気糸。何度も集中し狙い澄ましていたのが今、漸くつながる。 振り払おうと躍起になる男。そのすぐ傍に二つの黒い影が迫る。 二つの影は『影使い』クリス・ハーシェル(BNE001882)のもの。【シャドウサーヴァント】により生み出された影と共に男の身体を更に気糸で締め上げていく。 「今だ、刃紅郎!」 クリスの声と同時に影が揺らぎ、後ろからグレートソードを構えた刃紅郎が姿を現す。この時のために刃紅郎は影の裏手に位置取っていたのだ。 「でかしたクリス……出来ておるな、貴様は!」 叫んだ刃紅郎はそのまま快が掴んでいる腕に狙いを定め、一気に剣を振り下ろす。 同時に喜平も狙い済ました一撃を同じ腕に叩き込む。 快もそれを感じ取り、すぐさま腕を手放して後退。 二閃の攻撃を受けたガントレットはガキィン、と乾いた音をたてて砕け散る。 その瞬間を狙い、万葉と九十九の攻撃が締め上げられたままの反対のガントレットに命中。こちらも粉々に砕け散った。 ガントレットを失った男は一瞬ガクガクと痙攣したかと思うと、そのまま地面に突っ伏した。かなりの負担が身体にかかってしまったのだろう、その所々から出血が見られる。 男と、そして怪我を負った孝平と快もまた簡単に治療を受ける。 と、そこに飛び込んできた声。 「へぇ、終わっちゃったんだ?」 突如聞こえた声は場違いとも言えるほど軽薄なトーンであった。 ●予感 「本来いるはずの場所にいなかったから探しちゃったよ。しかももうやられちゃってるし」 くすくすと笑いながら聞こえた声はリベリスタたちの頭上から聞こえた。 見上げれば建物の窓枠に一人の少年が腰掛けていた。 リベリスタの誰もがその存在を認識はしていた。 ただ、男との戦闘中にはその姿も、気配さえも感じ取れなかったために意識していなかった。 尤も声の主の言葉通りであるならば、戦闘中には近くにはいなかったことになるが。 「……このままの姿勢で失礼、貴方があの厄介な物を彼に与えた方ですか?」 「へぇ、一応は考えてるんだ?」 押し殺した緊張感と共に紡がれた万葉の言葉に、挑戦的とも取れる態度で返す少年。 「……アレはお前が作ったのか? それとも与えられたのか?」 少年の態度に既に我慢の限界を迎えていた鷲祐が、棘のある口調と共に射抜くような視線を向ける。 そんな鷲祐の様子に少年は肩を竦めて首を振る。 「何をそんなに怒ってるのか知らないけど、少なくとも僕が作ったものじゃないよ、アレは」 「貴様……っ!」 少年の言葉に思わず反応しそうになった鷲祐の肩をカシミィルがそっと抑える。 「今回の目的は一体何なのかしらねぃ?」 問い掛けるカシミィルの口調は柔らかいもの。しかしその目は決して笑ってはいなかった。 「目的? ないよそんなの。ただのお遊び。ま、もう壊れちゃったから帰るけどね」 余りにあっけらかんと答えた少年に、一同は思わず言葉を失う。 「やれやれ。こちらも興味はなかったんですが……さすがに言葉を失いますな」 苦笑交じりの九十九の言葉。 黙っていた刃紅郎は一瞬眉を顰めた後少年に背を向けた。 「話すだけ無駄だ。何より聞くだけで虫唾が走る」 吐き捨てるように呟いた刃紅郎、その刃紅郎に肩を借りて漸く起き上がった快は、痛む身体に鞭打ちながら少年の方へと視線を送る。 「一つ、わかっていることは、君は――俺の敵だ」 「あっはっは、まぁ仲良くしようなんて思ってないよ、安心して」 快の宣戦布告に、少年は笑いながら答える。 一部のリベリスタたちの我慢は既に限界に達していたものの、そこはぐっと堪えた。 「ま、結構頑張ったんで、あんたの名前位は教えて貰えるよな?」 飄々とした態度を貫いたままの喜平に、少年はふむと小首を傾げて悩む素振りを見せたが、それはそれで面白いと判断したのか笑顔で「いいよ」と言葉を返す。 「僕の名前は槍柄一平(やりつかいっぺい)。チーム『笑う髑髏(ラフィング・スカル)』のメンバーだよ」 無邪気な笑顔を浮かべた少年――一平は、そう言い残して姿を消した。 一平が姿を消した後もしばらくの間警戒を続けていた一行だったが、特別何もないことがわかると急いで帰還準備に取り掛かった。 幸いガントレットの影響化にあった男性にも命に別状はなく、ほっと胸をなでおろした瞬間となった。 不気味な効能のアーティファクト。 それを無作為に使用する謎の少年と、謎のチーム。 事件自体は大きな被害もなく無事に解決した。 しかしリベリスタたちの心には何とも形容し難い、もやもやしたものを残したままとなってしまった。 ~Fin~ |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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