●笑う鬼 波のさざめきが夜闇に響く。音を立てる者は乏しく、延々と静寂が流れ続けていた。 ゆっくりとした一定のテンポで、砂を踏む音が聞こえる。女性だ。たった一人で、彼女は砂浜をゆっくりと歩んでいく。髪を夜風が撫ぜ、それを抑えつつ沖合に目を向ける。単調なリズムを刻む波を見つつ、彼女は穏やかな表情をする。座り込む。波は動きを止めないのに、時が止まっているように、ゆったりと時間が流れていく。 空気の音が乱れ、風がピタッと止む。彼女はハッとして、右に、左に、顔を向ける。波は動きを変えない。変わらない。ざわつく心が耳を研ぎすませる。 聞こえた何かの音、声。感じ取った僅かな、しかし確かな違和の方に意識を向ける。上。空。”それ”は流れる雲に混じって影を落とし、彼女に向けて落下していた。立ち上がる。どうしたら、と右往左往。どこに逃げたら、何をすれば。躊躇が歩みを進ませない。”それ”は寸前に迫っていた。 落下の圧力が彼女を襲う。地に倒れ、意識が飛びかける。覚束ない視界が”それ”の姿を捉える。二本の角、六本の足。頭は牛で、背中には二対の羽が見えた。怪物と呼ぶに相応な姿で、またそれに違わぬ精神は今まさに彼女を喰らおうとしていた。僅かな抵抗と思しき腕の振りが足の一本に触れる。ぬめりとした感触が気持ちに悪いと共に、その奇怪さ、醜悪さを身に知らしめた。”それ”はだんだんと数を増やしていく。異形の群れに、彼女は既に抵抗の意志も術もなく、ただおとなしく最期を待つしかなかった。 彼女の抵抗の如何には全く目もくれず、戯れにも似た様子で、貪っていく。口から吐かれる毒は、対象の神経を麻痺させると共に、その肉を柔らかくする。足を鎌の様に器用に扱い、彼女の体を切り刻み、そして喰っていく。 全てを喰らい尽くすと、”それ”らは口々に言葉を吐く。 「こんな上手いものが転がってる世界にいままで来られなかったなんてな。もったいないったりゃありゃしない」 「もう自由なんだ。好きなだけ喰らってやる」 人には耳障りな笑い声が、波と共に辺りに広がった。 ●鬼退治 「それは『牛鬼』という、伝承上の妖怪によく似ています」 映し出された光景が映す怪物。『運命オペレーター』天原 和泉(nBNE000024)はそれを忌々しげに見ていた。 「ま、『似ている』という事ですから、それそのものであるという確証はないです。皆さんがあれを退治すればいいだけですから……とりあえず、あれは『牛鬼』と呼称しますが」 アザーバイド『牛鬼』。鬼の体に牛の頭。二対の羽を持ち、小距離の飛行ならば可能であると言う。毒を吐き、その毒で痺れた相手を、鋭い足で切り裂き、食べる。 「これが出現するのは岡山県のある海岸です。時間を問わず、人が歩いていれば襲ってくるみたいですね。予知ではたまたま一人でいただけです」 しかし、と彼女は唐突に言葉を切る。 「妙な事ですが、この怪物がこういった状況で出現する、という以外にわかっている事はほとんどないんです。移動してきたリンクチャンネルやD・ホールの場所、彼らが今現在どこに生息しているのか……わかっているのは、予知で見えた彼らの生態位なものです……未知は多いですが、目先の危険を排除するのが先決です」 出現する敵は五体。行動パターンは全て同じ。攻撃は強力だが、知能はそれほど高くはないようだ。 「出現条件はわかっていますから、十分に準備して依頼にあたってください。よろしくお願いします」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:天夜 薄 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 2人 |
■シナリオ終了日時 2012年01月31日(火)22:59 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 2人■ | |||||
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●知識 『運命狂』宵咲 氷璃(BNE002401)は一人、本を開いている。牛鬼は数々の伝承の残る妖怪だ。もしかすれば、過去の神秘を紐解く事で、隠された真実が浮かび上がるかもしれない。そう考えた。 恐らくは、彼らはこの世界に順応し、世代を重ねたアザーバイド。ならば住処は鬼ヶ島? 否、鬼だからといってそれを想像するのは些か安直がすぎるかもしれない。 然れども。岡山に伝わる牛鬼の伝承はそれほど多くない。果たして、牛鬼の事がそれほどわかったわけではなかった。無駄骨か。彼女は思わず溜め息を吐く。 氷璃の視線が、書物のある一頁を捉える。そこに載っていたのは牛鬼に化けて人を襲ったという怪物。 まさか、ね。彼女は本をパタンと閉じた。 ●悪食 「鬼退治だなんて珍しくわかりやすいお仕事ね」 片桐 水奈(BNE003244)の足取りはそれほど重くはない。様々な要素が複雑に絡み合って、いくつも難題をクリアしなければならない仕事は、アークでは少なくない。もちろん、ただ敵を打ち倒せば依頼完了、などという依頼も相応の数あるのだが。 それでも、鬼退治の一言で片付けられてしまうこの仕事のわかりやすさは際立っている。最近のそれに類する依頼の多さは、何か別のもの、それも鬼以外の者も出てくる前兆だろうか。エリス・トワイニング(BNE002382)は疑問を述べる。 「百鬼夜行も…あったから…どんなものが…出てきても…おかしくない。でも…色々と…面倒」 ポツリポツリと繰り出す言葉の節々には、僅かに気怠さが感じられる。それでも、崩界を招く者、人を襲う者を野放しにしておくわけには、いかないのだ。 「火のない所に煙は立たぬものよ。さぁ、まずは煙を払いにいきましょうか」 氷璃の言葉を先導に、彼らは戦いの準備を始める。装備や力の付与を終えた彼らは、浜辺に出て、敵の襲来を待つ。浜辺の砂に足を取られぬように、予め付与した、あるいは元々持っていた翼で低空飛行をしながら。 真冬の昼空に太陽が爛々と浮かび、眩しく目を刺す。陽光を遮るように手をかざして、上空を警戒しながら、彼らはうろつく。それがいつやってくるとしても、後手に回っていたら、勝てるものも勝てない。だが、どこに。 『偽りの天使』兎登 都斗(BNE001673)の耳が、些細な音の揺れを感じる。都斗は周囲や上空に目をやり、その音の主を探す。どこか遠くに、おいしくなさそうな敵の姿が、あるはずだ。 遠くの空にそれは存在した。海岸線をなぞって、こちらに近付いてくる。虫のそれが巨大になったような二対の羽は、バタバタと気持ちの悪い音を奏でていた。姿形は太陽が逆光になっていて確かめるのが難しい。 「準備はいいですか?」 『LawfulChaticAge』黒乃・エンルーレ・紗理(BNE003329)は冷静に仲間に声をかける。リベリスタ全員が敵を確認する頃には、それらの姿はすでに、彼らの真上にまで至っていた。 リベリスタたちにそれらの影がかかると、影の動きがピタッと止まる。数瞬の静止の後、それらは急激に降下を開始した。重量を感じさせる巨体が、重力に従って隕石とも思えるような勢いを生み出していた。それを食らえば、リベリスタと言えど怯みを免れない。彼らの目が、隕石の軌跡を追う。どこに落ちる、自分の所か、それとも。 かくして落ちる牛鬼の巨体は、そこにいた十人から五人を選び取り、圧し倒そうと試みる。都斗はその音を敏感に察知し、避ける。紗理とユーフォリア・エアリテーゼ(BNE002672)もしっかりと、自分の頭上から降る巨体を見、避けた。 しかし。『子煩悩パパ』高木・京一(BNE003179)と『禍を斬る剣の道』絢堂・霧香(BNE000618)は間一髪でそれを避けられなかった。反応がやや遅れたせいか。巨体の生み出す圧力が、二人を襲う。それでもしっかりと気を持ち、意識を絶やす事はなかった。 「効きますね、でも、この程度じゃ怯みませんよ!」 京一は素早く体勢を立て直し、牛鬼たちの様子をうかがう。五匹集まってうごめく姿はさながら虫の集会場。 「うぁ・・・近くで見るとよりいっそ醜いね」 都斗は前に出つつ、正直な感情を述べる。すると牛鬼たちが都斗を見、悪態を吐く。 「我らを見にくいなどとは、大層な物言いだな」 「愚かな人間共らしい醜悪さよ」 卑しく笑みを浮かべるそれらも大概であったが、その場の誰も口には出さない。体躯から表れる不快、言葉の節々に散見される傲慢、何よりも、自分たちを見る目の鋭さからうかがい知れる食への貪欲から。 「お前らも美味そうだ。人間よ、おとなしく食われるが良い」 ●非食 牛鬼たちが肉を求めて動き出す。前衛を買って出た五人が素早く前に出て、一匹ずつ彼らを抑える。 「どーれ、いっちょ腕試しと行くか!」 『酔いどれ獣戦車』ディートリッヒ・ファーレンハイト(BNE002610)は一匹の牛鬼の前まで達すると、気合いを剣に込めて牛鬼に打ち込んだ。その一撃は確かに強力であったが、牛鬼の足をすくませるには至らない。 「小童が、我を舐めるな!」 振り回された鋭い足がディートリッヒを襲う。腕を掠めた感覚から、牛鬼の強力さがうかがえる。 「誰が舐めるかよ。存分に戦うとするぜ!」 霧香が連続的に攻撃を繰り出している近くで、ユーフォリアは残像を作り出すほどの高速で、相手を翻弄する。自身のゆったりとした声を追い越さんばかりのスピードで。 「貴方の相手は私ですよ~」 多くの幻の斬撃は、牛鬼に隙を生み出す。翻弄され、鈍くなった牛鬼は、しかしその言葉から高圧さを除くことはない。 「効かぬなあ、女子よ。素直に貴様の肉を寄越すのだ」 「お断りですよ〜」 角をユーフォリアに向け、突進する。彼女はそれを避けて、次の攻撃に移行する。その後ろで、紗理は自分の担当する牛鬼を攻撃して自分に引きつける。 「世界にあだ為すものは成敗するのみ!」 途切れない攻撃で牛鬼の動きを抑える。その脇から抜け出そうとする別の牛鬼の姿を見、彼女は都斗に指示を出す。 「都斗さん、そちらのカバーを!」 「うん、わかってる!」 都斗は神秘の力で気糸を寝る。展開された気糸が、牛鬼に絡み付こうと伸びた。 「さぁおいで。絡め捕ってあげる」 縄で縛るようにキツく締め付けられた牛鬼の顔が歪む。しばしの束縛の後、フンと力を込めて糸を払う。僅かすら痺れを感じず、牛鬼は不機嫌な顔で角を都斗に向けて突き出す。 「無礼者め、こうしてくれる!」 勢いにまかせた突進は都斗を後方へと吹き飛ばす。なお都斗に近付こうとする牛鬼の前に、京一が立ちはだかる。 「おっと、それ以上は行かせませんよ!」 撃った鴉が牛鬼と激突する。拮抗の後、力強く式を押し、消し去ったもののその顔は怒りに満ちていた。 「貴様……生きては帰さぬぞ!」 水を含むように頬を膨らませると、その口から紫色の液体を吐き出した。飛び散ったそれは京一とその周辺にいた都斗やエリスに降り掛かる。まともにそれを浴びたものは、体中が痺れに襲われた。 エリスの前には水奈が立ち、彼女の代わりにそれを浴びた。彼女は痺れながらも、エリスに向けて微笑を投げかける。 「……待ってて」 彼女の手から光が放たれる。光は異常を受けた者の体の痺れを払う。『百の獣』朱鷺島・雷音(BNE000003)も同様にブレイクフィアーを放つと、異常はすっかり消えていた。 「人を襲う化け物には破滅の末路がお似合いよ」 氷璃の組み上げた魔術が四色の光となって牛鬼に突き刺さる。直撃には至らないが、それでも与えたダメージは決して少なくない。 「おとなしく滅されていただけないかしら?」 「それはできない相談だな」 牛鬼は笑う。顔に不快は映らない。歪んだ愉快に満ちていた。 「我は食う。お主らは食われる。それが全てだ」 「無粋なものですね」 紗理が吐き捨てた声を、牛鬼は意に介すこともなく、ただ気色悪く笑んだ。 ●意気地 毒が全身に回る感覚は、もう何度目になったろうか。手足が痺れ、動くこともままならず、牛の顔をした魔獣が迫る時間をただ待つだけの恐怖、仲間の放つ光でそこから解放される安堵。だんだんとそれに慣れてくる。否、もっと強大な敵に対し、死をいとわぬ戦いをしてきたのならば。似た感覚はもう何度となく経験したかもしれない。その度に、対峙した敵に恐怖し、それの最期には優越だけを身にまとって、恐怖を払ってきただろう。 恐怖は完全に拭えるものではない。個人差はあれど、本能がそれを恐れるが故に。 紗理は体を懸命に動かそうとする。痺れは体の動きを拒み、意識を無視する。動け、動け。指先が動く。それに気付いてすぐ、光に包まれているのがわかった。動ける。ナイフと短剣を掲げ、連続攻撃を仕掛ける。 「この剣閃は虚実どちらか……」 牛鬼は体を少し横にやり、避けようと試みる。直撃はしなかったが、その体には浅からぬ傷がついた。 「虚しいものよ、そのような攻めしかできぬとは!」 しかし、何故なのか。なぜどんなに攻撃されてもこいつらは余裕を失わないのか。戦いを楽しみながらも、ディートリッヒは身震いする。劣勢に立たされてなお悠然と構えるその心は傲慢か、腹心が故か。与えたダメージ量は相当多いという手応えもあるのに。 「図太い奴らだな!」 突き出した剣は牛鬼の額を襲撃する。もろに攻撃を受けた牛鬼は、なお余裕に満ちた顔で、減らず口を叩く。 「いかんなぁ……死ぬわけにはいかんなあ!」 突進。突き飛ばされたディートリッヒは横向きに転がって、素早く立ち上がる。その間に京一が入り、陣形を整えようと試みる。 「矮小な人間など、取るにも足らぬほど弱くあるべきなのだ……喰らわせろ、貴様らの肉を喰らわせろ!」 声を荒げて、牛鬼は毒を吐く。その声から、余裕が僅かに欠け落ちていた。 強がるには、折れぬ心が必要だ。心が折れたその時に、弱った心が露見する。 畳み掛け時だろうか。弱る牛鬼に攻撃の集中の度合いを傾ける。 式の鴉と魔光が飛ぶ。煽るように氷雨が降り、やがて力強く拳が打ち込まれる。立て続けの攻撃に、息が虫のように小さくなる。 「うおぉぉぉぉ……戯けが!」 腕を振り、自身の周囲の敵を切り裂く。弱々しいながらも血を流させたが、窮鼠の攻撃にしても、あまりに弱かった。 「消えて、ください……!」 多くのフェイントを交えた剣尖に、牛鬼の目は奪われる。実に気付かず、顔に剣を突き立てられて初めて、自身の敗北を知った。 「さぁ、一気にいくよ!」 都斗は声と共に戦気を上げて自身の抑える牛鬼に攻撃する。相手の数が、減る。それは戦士の士気を大いに上げるものだ。 「蝶のよ~に舞い~、蜂のよ~に刺しちゃいます~」 チクチクと肌を刺す連撃を受け、牛鬼は顔を苦くする。牛鬼は自分たちの劣勢を肌で感じていた。いつの間にか、余裕は影を落としていた。 「ほらよ、さっさとくたばっちまいな!」 ディートリッヒはユーフォリアに加勢する。足をがくっと挫いたように折った牛鬼は、最後に高速の斬撃を受けて、泡を吹いて二度と動くことはなかった。 「もう…あなたたちが…おとなしくしたら…どう?」 エリスの声かけに、牛鬼はフンと鼻を鳴らす。 「不甲斐ない同胞のようにはならぬ!」 吐いた毒は、形勢を傾けるには及ばない。氷璃は弱った彼らに、後期とばかり疑問を投げる。 「貴方達、生まれは何処? 鬼ヶ島? それとも鬼城山?」 「生まれなど訊いてどういう腹だ? それにそんなもの覚えておらぬ」 「貴方達を封印したのは誰? 憎んでいるのでしょう?」 「憎む? 我は人を喰えればそれで幸せよ!」 ただ本能を糧に生きる彼らは、想定にあたる答えなど返さない。脳内も欲で満たされ、精々こんな疑問が過るだけだった。 この者は何を訊いておるのだ? アザーバイドである自身について、それは何の情報ももたらさないと悟った彼女は落胆し、吐き捨てる。 「十分よ、それじゃ、地にお還りなさい」 展開された魔方陣が漆黒の閃光を放つ。一匹の牛鬼が石化し、動きを止める。霧香がそれにソニックエッジで攻撃すると、そのまま砕けて死に至った。 「終わるものか!」 角で紗理を突く。腕を抑え、与えられた傷に動くことができなかったが、すでに時は遅かった。 「おいしくなさそうだからぼくは食べないけど、食べられたくないからね!」 気糸が牛鬼を縛る。痺れは、今度は彼らを襲う。 「くそぉ、くそぉ!」 「お黙りなさい」 巻き起こった炎が牛鬼を包み、言葉通り、二度とその口が言葉を紡ぐことはない。 「さぁ、ラストだ!」 ディートリッヒが目の前に残る最後の牛鬼を剣で一閃する。力なく崩れ落ちる牛鬼は、濁声で今際の言葉を紡ぐ。 「人間風情が……こんな、こんな……」 最後までリベリスタへの見下す態度は変わらなかった。しかし同時に、リベリスタの勝利も変わらない。 ●軌跡 出現時、彼らは遠くから飛んで来ただけだった。恐らく、どこかに住処を構えているたのだろう。海岸線をなぞった先、何があるのだろう。氷璃の疑問は、絶えない。 「こっちとしちゃいきなり湧いたようなもんだ。お手上げだよ、こりゃ」 ディートリッヒは早々に思考を止める。腕試しも終わった。また同じものが出るとしても、戦えばいいだけだ。今はその時ではない。 「そうですね。でも皆さん無事でよかったです」 「えぇ、そうですね」 京一に肩を借りながらも、紗理は落ち着いた声で無事を喜ぶ。 「でも、アザーバイドなのに出て来たD・ホールが確認出来ないなんて不思議ですね~」 最近立て続けに起きる鬼の事件も似たようなものだ。何か関連があるのだろうか、と彼女は首を傾げる。 「例えば……この辺って遺跡とか神社みたいのってあったっけ。土地勘がないと、難しいわね……」 水奈は遠くに目をやるが、確かな答えが得られるはずもない。 「牛鬼…みたいなものが…出てきたけれど…ここの…昔話に…牛鬼の…話が…あったのか…気になる」 物語の終わりはどうなのだろう。それが、この敵、ひいては鬼騒動を解決するヒントになり得るかもしれない。しかしエリスは答えを持たない。 「塵輪鬼、という怪物に関するお話はあったけれど……あれと鬼騒動の解決が関連するとは思えませんわ」 氷璃が補足しても、確かなものは見えてこない。 「飽きた。早く帰ろうよ」 都斗が皆を急かす。彼らは少しためらったが、そこにいても更なる何かが発見できるようにも思えなかった。彼らはその言葉に従って、冬の砂浜を離れた。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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