●土管に座りながら、こう考えた ぬこにして大きすぎる、虎にしては小さすぎる。 腰かけている筒状の左右から、チラチラと『尾っぽ』が見えている。 フリフリニャーニャー、右へ、左へ、上に斜めに、なんとも呑気なものである。 煮え切れない雲を眺めていたら、「今宵は雪か」などと、自然に口から出てしまった。 「どうやら余も呑気に毒されたらしい」と自嘲を禁じ得ない。 禁じていた事を禁じ得なかったのだから、このままでは疲れ損だ。 そこで余は「何か一句を」と土管の上で漂流する事を決したのである。 ああでもない、こうでもない、と句想を巡らせていたが、いつの間にか尻の下が荒ぶっていた。 「ふぎゃあぁ! フ――ッ!」 「フ――ッ! ワガハイのである!」 只、ドラぬこ共が餌の奪い合いをしているのだろうと思っていたのだが、どうも只事ならぬ。 小首を傾げながら、『Care kills a cat(好奇心がぬこを殺した)』という一文を暗唱してみたが、元来『心配がぬこを殺す』という言葉だったと聞き覚えていて、途中でやめにした。 気が気でならなくなって、そおっと頭を覗かせたのであったが、『ぬこみみと、ぬこの尾っぽをつけた小汚い少女』と、相対して『枕のように肥えたドラぬこ』が睨み合っているのみである。 少女はさて置くとして、枕のように肥えたぬこは、枕にしたらなんとも"もふもふもふもふもふもふもふもふ"心地よかろう。 ――ふと気がつけば、余の周囲。 土管を囲むようにして、枕のようなぬこが何匹も見える。 平べったく座っているらしい。 どうも油断ならぬ。穏便な風には見えぬ。 見えぬのだが、余の願いはここに成就したらしい。 「『熱燗か 寝釈迦に寒梅 ぬこまくら』」 ――おそらく余はとても疲れているのだ。 ●ぬこでなしの世へ行くばかりである 「もふもふなアザーバイド」 ――ガタッ! 驚愕のあまり立ち上がったリベリスタがいた。 『リンク・カレイド』真白 イヴ(nBNE000001)が告げた一言は、それほどのものだった。 立ち上がらぬまでも、他メンバーには戦慄がほとばしり、黙す者もいる。 「ふとっちょなぬこみたいな感じ。ぶさかわいい八匹。でもぶさいく。顔とかお腹を左右にひっぱると伸びるの。すごくのびる。ぶさいく」 玉の様な汗が頬い、落ちる音が聴こえるほどの静寂。 リベリスタ達の姿勢は真剣そのものであった。 「ちょっと攻撃的。引っ掻いたり、顔面にボディプレスしてくる。けっこう痛いかも。あと、ボスぬこはボディプレスしたまま顔に張り付くよ」 なんという火力か破壊力。強靭なクロスイージスでさえも、膝を屈さねばならぬ事態は想像に難くない。 絶望の色。 否、中には今直ぐに飛び出したい戦闘狂もいるだろうか。 「ボスぬこを中心に、士気の高いシモベぬこ3ひき、士気の低い一般ぬこ4ひき」 火急速やかに、もf――退治せねばならぬ! 「ちょっとまって」 ――何事かッッ! 「アザーバイドに囲まれる形で、変なおじさんがいるの。昔の千円札に載ってた人? と結構似てる。あと土管の中にも変な子がいてボスぬこと喧嘩が始まりそう。二人とも助けてあげて」 成程、これほどの強大な敵に囲まれていては、足も竦んで動けないだろう。 「どう頑張っても最初に一回は必ず戦うとおもう。勝てばおとなしくなるみたい。あと、Dホールは空き地の隅っこ。ぬこやっつけてもいいけど、帰してあげてもいいよ」 これは僥倖。最悪はDホールに押し込めれば良い。 ギリギリまで粘れるという事だろう。 「はいこれ、マタタビ。持ってるとぬこから集中攻撃される。ボスぬこも喧嘩止めてぬこぬこ出てくる。人数分あるよ」 ――マタタビッッ! そういうのもあるのか。 「救出と住宅街っていう事だけは忘れないようにね。よろしく」 ――意は決した。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:Celloskii | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年02月02日(木)00:30 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●ぬこをモフれば爪が立つ 夕焼けが顔を出した。 煮え切らない雲を染めていた橙色が、小道に射し込んだと思えば、風が通り過ぎてまた隠れていく。 寂しき灰色の道を、空しき寒風が抜けて、八つの影法師がチラチラ浮かんで走り去る。 勇気で心を武装して、堅く武装した意志(こころ)に、木を掌(たなごころ)。 小石を蹴飛ばした音が、雑踏に響いて消えていく。…… 空き地へと突入した八人の勢いは、煮え切らない空を払うが如くに颯爽としていた。 獣達の視線が、キッと八人の影法師へと集中する。 現れた八人に対して、土管に座る壮年は、首を捻って腕を組み「尊(た)っとい」と何やら呟く。何かはただの誰一人も知らぬ。 「にゅっふっふ……ぬこと対決するこの日をまっていたのですぅ」 耳をピコピコさせる『ぴゅあで可憐』マリル・フロート(BNE001309)は、鼠のビーストハーフであった。此度の敵は天敵とも言える。 「よし、モフり倒す! ――じゃねぇ、きっちりお帰り願おうか」 「例えこの身が滅びても、ネコをもっふもふ…じゃなかった凶悪な敵を元の世界へと押し戻してみせまする!」 言葉の前後が混沌とする緋塚・陽子(BNE003359)が一歩踏み出せば、セップクも辞さない勢いで風音 桜(BNE003419)が握り拳を突き出して見せる。掌にセフィロトの木(マタタビ)が光って唸る。 「ああっ、すでに天国の様相! ……待って、まだだよ! ここで終わりじゃない!」 最初からクライマックスに入出する赤翅 明(BNE003483)がキッと姿勢を正し、目に物見よと娑羅双樹(マタタビ)を手に悟りを説く。 「……確かに、ぬこはかわいい」 ここへ『さくらのゆめ』桜田 京子(BNE003066)が静かに並ぶ。 「抱っこしたくなるし、首のとこくしゅくしゅして少しでも気を引きたくなる」 既に魅了されている様な言葉を発しながら、片手に木片、もう片手に運命を喰らう銘の銃を携え、両腕を胸前でクロスさせた。 「……ぬこは気まぐれ。飽きたら逃げようとするし、爪だって立ててくるし、にゃあにゃあ鳴いて嫌がったりする」 獣を知り尽くしたかのように、凛と見据える京子の目は意思を宿して固い。 五人は並ぶ。 腰に手を当てたり、京子の耳もぴこぴこ動いたり、既にクライマックスに突入しかけている様はまさに臨戦。 一斉に、印籠の如く突き出したマタタビ。沈黙、そこから盛大に―― 『『『『ぶにゃ~』』』』 「鳴き声、クドっ?!」 「うわ! うわ! こっち向いたのじゃ!」 後列。 迫る声に仰天する『レッツゴー!インヤンマスター』九曜 計都(BNE003026)。片掌に何やら一升瓶を携えている。 その隣、目の奥に光を覗かせて『嘘つきピーターパン』冷泉・咲夜がこの日、"偽る術"をも剥ぎ取り、恐るべき獣へと挑む腹積もりである。まさに獲物を狙うかの如き、老獪さを称えた眼光であった。 「……救える存在は全て救って見せるのが貴族の義務なれば」 腹積もりを決した咲夜に対して、腹積もりを決しかねている『黒太子』カイン・ブラッドストーン(BNE003445)のしのび声が響く。視線は奥へ奥へ、土管に座る壮年をただ見据える。見据えて、周囲の獣達へと目が泳ぐ。 「偉大なる我には、如何なる存在であろうと手を差し伸べる義務がある」 先ずはやるべき事をやってから……、早く戦いたいという"闘争本能らしきもの"と、忍耐が火花を散らし、せめぎ合い葛藤している。 「――故に、ぬこたちも救ってみねばならぬ!」 声高らかに葛藤を振り切る様は、咆哮の如く。そして眼前の獣達も触発されたかの如くに―― 『『『『ぶにゃ~』』』』 ――その闘争心を顕わとする。 魅惑の至宝、マタタビの耐え難き誘惑で、土管の中からのこのこ現れる一際大きな巨体。 『ごにゃ~』 獣の咆哮、戦いはここに始まった。 「ワガハイの勝利である!」 ●情にマタタビさして流される 「またたび出す前から、あたしを見る目が生き生きとしてるのは何故ですぅ?!」 視線は、マタタビを繰り出してない筈のマリルに向く。それはもう、一斉に。 「と、とりあえずはまたたびでぬこたちをひきつけて……」 マリルがマタタビを出した瞬間――、獣達の長が飛ぶ。 ぼふ……っ! 何かが砕ける嫌な音と共に、追撃の様にマリルの顔へとへばりつくソレ。 「?!????!??!?」 声にならぬ悲鳴を上げるマリル。 「速い! ぬこまくらなのに!」 「……動けるデブ……っ!」 驚愕のカイン。続く計都も、獣達の長の素早さに驚嘆を禁じ得ない表情で、全員に翼の加護を施す。 施されて、カインがジャンプを繰り出す。 "闘争本能らしきもの"と、忍耐がせめぎ合い、早く救出を終わらせようという意思。これがボスぬこの次の次の手という結果をもたらしたのだろうか。そしてその顔は必死だ。 土管の前に着地するカインは、お弁当やら缶詰を展開し、壮年へ静かに告げる。 「人生の迷い子たちよ、今はただ我が手を取り、この場を離れるが良い」 壮年は黙したまま頷く。 「それが貴殿らに差し伸べられし救済である!」 壮年は重々しく厳かに口を開き―― 「尊(た)っとい」 「――ッ?!」 謎のじゅもんが唱和された。 「もにゅ?!?も!」 「なんて羨ま……恐ろしい攻撃だ……!」 へばりつきを受けたマリルを見て、戦慄を禁じ得ない陽子のこれが、油断を生んだ。 獣は一匹ではない。枕型の獣が跳躍し―― 「しまっ!?」 ぼふ……っ! 厚い装甲であっても獣のこの攻撃に、意味はない。 『ぶにゃー』 しかし、陽子の一連の挙動は演技であったのか。その胸裏は本人のみぞ知る。 すかさず放たれるギャロッププレイ。 腕でホールドし、逃がす気配すらない。そのまま枕にして―― 「斃るとは! 肉斬骨断! 陽子殿の心内もそれに御座るな」 桜も同様の心内に在り、感心の音を上げる。ここへ続き影が舞う。眼前。二つ。 ぼふ……っ! ぼふ……っ! 一撃、二撃。ただの二撃が強烈に桜の体力を穿つ。 柔らかでちょっとぬくもりがあって、ぬくくて。…… 「もっふもっふにしてあげ……じゃなくて、不惜身命、粉骨砕身! 拙者の決意を受け止めてみせよ!」 放たれる黒い衝撃が、今の二匹へと穿ち返す。 『『ぶにゃ~』』 「えぇい、ずるいのじゃ。わしも、もふもふしたいのじゃー」 恐るべき獣の、恐るべき攻撃から、身を守る為の結界が咲夜の手より放たれる。 咲夜は後列。 じたじたしながら、前へ出ない事の歯がゆさを噛み締める。 作戦に徹すると決して、偽る心も何処かへ置いてきた。とどのつまり、ダダモレであった。 飛び交う影、反撃に転じる面々。 ここへ京子にも、影が忍び寄る。 ぼふ……っ! そのしっとりとしたぬくもりを味わいつつも、この厳しい戦い。想いを胸裏へと響かせる。 「(思い通りにいかない所もある、猫だもの。あ、結構いい匂い)」 携えたる銃よりばら撒かれるは、二連続で繰り出される弾丸の雨。 「って、ぬこ死なないよね!? 思いっきり撃っちゃったりするけど大丈夫だよね?」 放たれた弾丸が直撃して、弾丸はその強靭な弾力性でもってぽよんと跳ねる。跳ねるが効いているらしく、そして大丈夫らしい。 ホッと安心する京子は、急ぎリロードを行う。 「目指すはボスの上行くぬこきんぐ……じゃなくて、ワガハイちゃん! タンマしてくれたら明のお弁当あげるー!」 クライマックスから立ち直った明が正気に戻り、おばあちゃん直伝の猫まんま風おにぎりを繰り出す。 「む、誰かワガハイを呼んだにゃり!?」 土管の中からぬこぬこ出てきた少女が、ねこじゃらしを見つめるぬこの様な表情で明を見る。 「はっ!? ぬこみみ、ぬこしっぽ……、ビーストハーフ(ぬこ)?」 少女を計都が確認するのと同時――明に対して影が翔ぶ。 ぼふ……っ! ぺち……っ! 片や空中からの飛来。片やパンチ。 恐るべきは後者。直接神経を焼き切る色欲の大罪の如き一撃。 「……お」 「お?」 計都が応じると、フルフル震えて涙ぐむ明の顔。立ち直った直後にも関わらず―― 「……おぬこ様を還すなんてやだぁ!」 ――比喩なしでクライマックスの明であった。 ここに、戦いは山場を迎える。 ●意地を通せば、破滅のオランジュミスト 触ればぷにぷに、むにむに、毛は柔らかでぬくもってて、冬の寒さにうれしい位ぬくくて。…… ぼふ……っ! 陽子の顔面に一撃。姿勢が崩れ、膝を折る! 流血、顔から滴る赤い雫が、地を黒く染め上げ、苦悶の顔。 「もふもふだ……」 ……辛うじて『致命傷』で済む。 厄介なバッドステータスの如き状態。 「大丈夫で御座るか! 陽子殿……む!?」 ぼふ……っ! ぼふ……っ! ぼふ……っ! 桜が陽子へ庇い入った所へ、足部位狙いが炸裂する。 足を集中的に攻撃されては、身動きが―― 「暖かいで御座る……」 苦痛の顔に顔をゆがめる。 「ぬこ相手、いや、ぬこ相手じゃからこそ、各々準備は万端にじゃぞ」 咲夜がそわそわしながら、ブレイクフィアーを使うと、明のクライマックスが今度こそ解き放たれる。 「何やってるにゃり? もぐもぐ」 「尊(た)っとい」 事態を読めない両者の声は、壮年と少女を救出したカインと計都へ向く。 小汚い少女は、持ち込まれた食品を頬張る。 「まさかとは思うッスけど、一緒になってマタタビに引き付けられたりしないッスよね?」 マタタビを少女に近づけてみるものの、反応は無いらしい。 ついでに壮年にも向けるが、微妙そうな顔をした。 「その辺、どーッスか? 自称チーターだけど、実際はピンク猫のビスハだとご近所でも評判の京子さん?」 「私は猫じゃなくてチーターだから」 忙しそうに。名残惜しそうに。獣を引き剥がす京子が軽口に応じる。 「マリルさんもかわいい」 数の多い獣の対応に、忙しく動いていた京子がふと呟いた一言。 京子自身も計都も、そちらへ視線を動かす。 カインは粛々と『戦法敵の大将首を取り、指揮をくじくのは兵法の基本である』と、そちらへ視線を動かす。 マリルの方―― 「「「あ」」」 ――窮鼠猫を噛むという言葉がある。 マリルは相変わらず獣達の長に付き纏われていた。粘着質といってよい。 後列へ下がろうにも、最初におびき寄せた段階から、執拗に付きまとわれたのだからたまらない。 顔面は何回ボディプレスされたのか、合流を阻止するドロップキックされたか。 結構顔は赤くなっていた。 いよいよもって追いつめられたマリルは、キッとまなじりを決し、橙色の兵器、最終兵器を構える。 橙色が青々としたマリルと色彩が調和し、一つの芸術作品の様に自然とそこに在る。 黄昏の光を、そのまま持ってきたかの様な魔性の橙。それの封印を、寛容も慈悲もなく、解き放つ。 長年の想いを、全霊を乗せた一撃―― 「覚悟するのですぅ!」 ――飛沫、の如きものが静かに小さく跳ねて散る。それは『破滅のオランジュミスト』。 硝煙の如く、鼻孔をくすぐるその芳香が立ちこめ、圧倒的な奔流がぬこまくら達を襲う。 なすすべなく目を鼻を覆うぶさいく達。 地味に京子と同じ、弾丸の雨も混ぜている。 ミストは踊る。逃れる事を決して許さない。超嫌がってるシモベの一角。制裁、打倒、撃滅。ごろごろ転がり果て、悶絶、苦悶。 「「「「「ぶにゃ~」」」」」 「にゅっふっふっふっふ!!」 快哉! とばかりに笑いを浮かべるマリル。 戦意の低い獣達がこれで白旗をあげる。 京子がばら撒いた弾丸に、陽子と桜、明が丹念に蓄積させた被害を土台に、最終兵器が心を折ったのだ。 「うけてみよ! 秘・奥義! ネコマクラーッ!!!」 足に纏わりついた獣達へ苦痛の呪いを放つ桜。先の最終兵器で相当苦しんでいた為か、戦意を失う。 京子の無数の弾丸が残った桜の足にいる獣をノックダウンすれば―― 「もふもふしたいのじゃー!!」 ――ほぼ同時に、とうとう咲夜が痺れを切らせた。怒りの傷癒術が陽子を襲う。 「勝たないといけなかった」 怒りの傷癒術を受けた陽子が、ホールドしたまま脳天逆さ落とし如くに獣を地面に叩き付けて締め上げる、エキセントリックなギャロッププレイ。 これが最後のシモベの意識を奪う。派手だが、最後の締めだけが有効である。 残るは獣達の長のみ。 「誰もが幸せであるために! 何より、もふもふするために!」 忍耐強くせめぎ合う胸の内。カインが暗黒を繰り出す。 暗黒、これが二つ。今度こそクライマックスとばかりに明の黒き波動を放つ。 「今だよ、暗黒! やややややーーっ!」 『ぶにゃ~~!』 獣の断末魔。咆哮。 今ここに、明の願い『ぬこきんぐ』は成就した。 ●とかくにぬこの世はモフだらけ 「ぬこども、あたしに勝てるとおもったですかぁ!」 『ぶにゃう~……』 マリルに獣達の長が頭を下げる。部下達も頭を下げる。 「せめて一度でももふもふするのじゃ!」 「……フッ」 我慢していた咲夜とカインが、まさに解禁といった心持ちで、盛大にモフる。 触ればぷにぷに、むにむに、毛は柔らかでぬくもってて、冬の寒さにうれしい位ぬくくて。 「良く伸びるですぅ」 特に、縁の下の力持ちという位置でいた咲夜にとって、これは最上にして究極。むにむにが誘う至福の桃源郷。 「はああああ……」 咲夜の口から、あったかい溜息がダダモレであった。 「にゃ、ん。にゃにゃむにゃぶにゃ、にゃん」(訳:ここは一献。共に酌み交わして、手打ちとしよう) 計都はタワーオブバベルでもって、停戦を呼びかけようとした所で、戦況はクライマックスであった。 獣達の長が応じて飲み交わす。 計都が持参したものは、マタタビを焼酎に漬けたマタタビ酒。獣達の長は非常に満足らしい。 酔いも巡り、ぬこの国は住みにくいという愚痴をタラタラ述べていた。 ぬこの世が住みにくいからとて、ぬこの一分子。大人しく帰るとの言質を取り付けた。 ぬこ達は帰り、ブレイクゲートが施される。 「さらば、ぬこよ。また会おう!」 計都と獣達との間には、深い友情が芽生えたのであった。 そして陽子の表情は名残惜しそうに―― 「流石にいつでも堪能とは行かないよな」 ――拳をギュッと握る。ゲートを抜け切れない程、一回り大きい獣達の長を押し込んだぬくもりを確かめる様に。 「良くは知りませぬが、ネコはビール飲ませて足を滑らせて落ちるのがお約束らしゅう御座りまする。南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏」 桜の言葉に、計都と陽子は思う。 大分酔っ払っていたと。これが計画通りなのかどうかは、計都の胸中にある。 「ワガハイとトモガラ?」 「えっと、私チーターだから」 さて此方は、土管の中にいた少女。 幻視が見えている、という事は紛れも無くビーストハーフである。 「ぬこ達と違って帰るおうちが無いなら、アークにおいでよ。あったかい寝床とごはんもくれるよ!」 「ごはん!?」 明の言葉に耳をピッと動かす少女。 カインがよく見れば、少女の口周りには何かの肉片と赤い……。 ――いや、よそうと頭を振る。あれは缶詰の何かだと。 「尊(た)っとい」 壮年は、食い入るようにラノベを読んでいる。カインが渡したものだ。 その肩をぽんと咲夜が叩く。 「うむ、疲れておるせいで可愛い夢をみたのじゃろうて……忘れてしまうがよかろう」 精一杯モフを堪能してほっこりした笑顔から魔眼。 これにて神秘は秘匿されたのであった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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