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初めの敵はやっぱりこいつ

●川の流れに潜む恐怖
 そこには普段と変わらない三高平の風景が広がっていた。
 昼下がりの日差しが暖かな日。のどかに流れる時間は一見、何の変哲も無い川辺といえた。
 しかし、異変はそこに確かにあった。
 気持ち良さそうに群れで泳いでいた魚たち。その一番後ろの一匹が、ふいに何か慌てるように激しく暴れだし、そして、今度は逆に急に動きを止めると、尾の方からゆっくりと身体が崩れていった。 
 一見何も変わらない水の中、消えた一匹の事を忘れたかの様に群れはそのまま泳ぎ続ける。だが、異変は一匹だけですまなかった。また一匹、もう一匹と次々と魚たちが川の流れに溶け出すように消えていく。
 普段と変わらない三高平の風景の中、異様な光景が広がっていた。

●お城の周りで経験値稼ぎ
「ちょっと近所にスライムが現れたから倒してきて」
 あの、ぷるぷるしてて、RPGとかでよく最初のザコ敵に出てくるやつ。リベリスタたちが集められた会議室にてアークのフォーチュナである真白イヴにそう告げられ、教えられた現場は三高平湖から流れる川。本当に近所だった。
「生まれたてのEエレメント。1匹だけで配下エリューションもいないよ」
 当然フェーズも1。まさに小手調べにふさわしい。軽く片付けて経験値にしてくれる。それを聞いたリベリスタたちは、それぞれ思う気持ちは別々なれど、どこか軽い気持ちを抱くリベリスタたちも多かった。
「攻撃も体当たりとか、自分の体を水しぶきみたいに飛ばしてくるとか、そんなのしかない」
 攻撃方法も原始的で脅威になりそうなものではなさそうだ。安心しきったリベリスタたちに、でも、とイブは説明を続ける。
「身体が酸で出来てるから、触られるとちょっと痛いのと、身体が決まった形をしてないから殴ったり切ったりはあんまり効かないのは気をつけて」
 一度引き締まりかけた会議室の空気がやはり楽観的な軽いものになる。
 酸の身体に触られて、運が悪いとちょっとしびれるくらいの事はありそうだ。だが、一人で戦うわけでもない。特殊な攻撃がそれだけなら、大したことにはならないだろう。
 ただの打撃が効かなくとも、魔法的な攻撃をできる手段はいくらかある。ただの打撃も全く効かないわけではないようであるし。
 所詮はスライム。強敵にはなりえない。
 もう他にはないのか?というリベリスタの質問にイヴはうなずいて、最後にもう一つだけ、と応える。
「酸のエリューションなスライムは水の色……ほとんど透明に近い色をしてるから、ちょっと見つけにくいかも」
 フェーズ1のエリューションは基本的に潜むという。この酸のEエレメントも、透明な身体でどこかに身を潜めているのだろうか。
 こちらから見つけることが出来なければ、敵を倒すことは出来ないし、敵の攻撃がどんなに陳腐な威力であろうと、気付かずに受け続けることになればいつかはやられてしまう。
 ただ楽なエリューション事件などほとんど無い。今回もどうやらザコだと安心するには未だ早いらしい。この姿無き敵を見つけるのは大変かも知れないが、場所を特定して攻撃できる状態になれば、そう苦労する相手ではないはずだ。
 「それじゃ……がんばって」
 イヴの言葉に背中を押され、リベリスタたちはそれぞれ事件解決に向けて動き出すのだった。



■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:風見鶏  
■難易度:EASY ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 4人 ■シナリオ終了日時
 2011年05月30日(月)23:40
 はじめまして。野間崎 天です。これからよろしくお願いします。
 というわけで、出遅れSTが送る、お城の周りで経験値稼ぎしましょう。そんな推奨レベル1~1のシナリオです。
 某RPGの影響で、世間ではザコの象徴のようなモンスターですが、実際にいたら、不意打ちはしてくるは、武器は壊されるは、物理攻撃効き難いは、酸で痛いはで、そうとうやっかいな敵だと思います。あ、このシナリオのスライムには武器破壊能力はありませんが。
 今回は戦闘も大事ですが、見つけるまでの過程や方法が重要になってくるかと思います。
 見つけるまでに全てを懸けるも良し。見つけるのは他の人に任せて倒すのに全力を尽くすも良し。どちらもバランスよくまとめるのも良し。あなたのPCはどんな行動をとりますか?
 皆様からの思いのこもったプレイングをお待ちしております。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
デュランダル
雪白 桐(BNE000185)
ソードミラージュ
ソラ・ヴァイスハイト(BNE000329)
ソードミラージュ
天月・光(BNE000490)
ナイトクリーク
金原・文(BNE000833)
ナイトクリーク
五十嵐 真独楽(BNE000967)
インヤンマスター
門真 螢衣(BNE001036)
マグメイガス
須藤 凛(BNE001580)
スターサジタリー
襲・ハル(BNE001977)
■サポート参加者 1人■
クロスイージス
セリオ・ヴァイスハイト(BNE002266)
   

●華やかな少女(?)達
 三高平の川にスライムが出た――そんな依頼を受けてやってきた九名のリベリスタだったが、正直なところ、今回の依頼に対しての危機感は決して高くはなかった。というのも、ブリーフィングの段階で「発見が困難だが強力ではない」と明言されていた為であり、注力すべきは水と同化したそれの探索に他ならないからだ。
 
 そんなわけで。
「わぁ……今度の依頼に参加するのは、女の子がいっぱいなんだ。すごーく楽しそうだねっ!」
「女の子みんなで川遊びみたいで、なんだか楽しそうだよね……って、遊びじゃないんだった。油断せずがんばろ!」
 ピンクの防水オーバーオールを身に纏った『臆病ワンコ』金原・文(BNE000833)は、川原に集まった同胞達を見て嬉しそうに声を上げた。普通に会話しようと思えば彼女には勇気が居る。依頼のような状況下に置かれれば年齢も身分も関係なく「同士」であり「戦友」と呼べるこの状況で、バックアップを担当する『うめももFC(非公認)会長』セリオ・ヴァイスハイト(BNE002266)を除いて全員が女性である、という状況は渡りに船だったのである。
 ……元気よく応じる『ビタースイート ビースト』五十嵐 真独楽(BNE000967)や、そんな彼女を優しく撫でる雪白 桐(BNE000185)がよもや否であるとは思いもよるまい。本人達は一切気にしていない問題だが、その様子を見た『魔眼』門真 螢衣(BNE001036)が目を泳がせている様は、ある種微笑ましくもあるのだろうか。

『素兎詐欺』天月・光(BNE000490)、『ガンナーアイドル』襲・ハル(BNE001977)、桐の三人が手分けして張り巡らせた結界、その流域を戦場と定めた彼女たちは、各々が用意した対スライム用品を広げつつ、会話に興じることとなる。因みに、流域一帯の事前封鎖に関しては「時間が余りに足りない」とにべもなく断られたのだが、それはそれ、肌寒さの残る時期に好き好んで川原に足を向ける人間もおらず、桐が配したパイロンのこともあってか、人目を避ける事には成功済みである。
 そして、今回の作戦では超直観を駆使する『でんのうむすめ 1ひき』須藤 凛(BNE001580)と『ぐーたらダメ教師』ソラ・ヴァイスハイト(BNE000329)、ハルの三人の働きが肝になる。ソラと凛に関しては同じ部の生徒と顧問という気のおけない間柄なこともあり、高効率での調査が可能なことも、作戦の確実性をより強いものとした。

「じゃ、ハルは真ん中辺りを、凛部員は下流から、皆の作業を観察して頂戴ね。私は上流からあたるわ」
 教職についているソラらしく、二人へと指示を飛ばすと、他のメンバーの準備行動をひと通り確かめてから結界範囲の端、上流に当たる方へと足を踏み出した。
「早く終わらせて……川原で遊びたいわ。ビールが飲みたいわ」
 素直でよいことである。

●スライム探索最前線
「エリューションの影響を受けた原形質状生物ですか……研究の良いスパイスになります」
 気を取り直した螢衣が、スライムに思いを馳せながら自作の網を川の下流へと設置し始める。網の代替品の作成に際し、彼女が密かに相当な重労働を課せられたのは致し方ない事だったのかもしれない。とは言え、一般品のそれに比べれば酸で出来たスライムへの耐性は高い為、彼女の苦労は無駄ではなかったのだろう。多分、きっと。
 奇しくもソラについていく形となったセリオは、バケツに予め用意していた魚を放流していく。狭いバケツから解き放たれた魚達は、あるものは上流へと身を向けて流され、あるものは能動的に、下流へと緩やかに下りていく。

「真独楽ちゃん、一緒に餌を撒いてみない?」
「うんっ、いーぞっ! ついでだから、仕掛けの手伝いもお願いだ!」
 文の提案に、缶詰を開けつつ元気よく応じる真独楽。ロープの先に石をくくりつけた仕掛けを既に幾つか作り終えていた彼は、中途であったその作業を文と軽快に進めていく。ある程度作り終えた所で、二人はハルの方へ駆け寄り、持ち寄った餌を撒くことを説明する。
「それにしても、スライムかー……『弱いモンスターの代表格』見たいに言われているけど、実際の所は結構手強いのよね。相手に不足はないわ!」
「まこ的には、『合体失敗』なイメージだなぁ」
 ハルと真独楽、思い描くものはそれぞれ違う。下流で熱心に捜索を続ける凛などは、真独楽寄りのイメージを抱いているようであるが、原生生物のような外見をしてることもあってか、イメージもまた流動的なのかもしれない。ハルの持つイメージが最も原型に近いのだろうが、その通りだとすれば大いに強敵たりうる相手である。今回の手合いも、油断して一方的な攻撃を受ければ少なくはない被害を受ける。そう考えるからこそ、ハルの視線はより強く熱を帯びるのだ。

「日は暖かくなりましたけど、濡れると寒いですからね?」
 桐はというと、戦場になるであろう川べりから若干距離を置いたところで焚き火を焚き、戦闘後を見据えた行動を取っていた。事前に川幅を図るなどの基本も押さえていただけに、彼の細かい気配りは結果としてスムーズに作戦を進める手助けとなった。

 緩やかな午後の日差しが水面を反射し、きらきらと鮮やかに光る。風に冷たさが残ることもあるが、午睡には悪くない好天に恵まれたのは、果たして幸か不幸か……思いの外活発に泳いでいく魚たちを眺めながら、しかし凛の目は鋭かった。
「1ドットの変化も見逃さない」
 ……うん、気持ちは分かるけどドットより現実はきめ細かくて非情なのである。

●どうする? ▼
 魚たちが、文と真独楽が撒いた餌へと群がる中、それは起きた。一瞬早く『それ』に気づいたハルは、事の一部始終を視界に収め、精神衛生上よろしくない映像を焼き付けた。映像と肉眼ではまるでリアルさが違う、この状況は正しく、彼女が知るところの「スライム」の所業だった。捕食行動というのは、何にせよグロテスクである。
「――見つけたわ!」
 ハルが、分散していたメンバーに聞こえるよう声を張り上げる。上流、下流から距離を詰めるには幾許かの猶予が要ることを直感で理解した彼女は、静かに神経を研ぎ澄まし、次の一手へと想いを馳せる。
「えへへ、隠れたってムダだぞ!」
 それよりも早く動き出していた真独楽は、両手から生み出した軌跡を水面に打ち込み、ぎりぎりと締め上げる。ハルの声に弾かれるように動き出していたスライムではあったものの、真独楽が仕掛けた罠の只中に居た為に、その居場所はかなり分かりやすく、動きの予測も容易だった故に、位置をあっさり看破され、動きも封じられてしまう。加えて、文のカラーボールである。
「隠れたって無駄なんだから!」
 意気込み強く放られたそれは、着水後僅かに水面で揺れると、スライムの表面で溶け崩れ、その姿を赤く染め上げる。水に溶けないインクだったことも幸いしたのだろう、その姿は白日の下、明白に晒されることとなった。
 ……因みに、比較的近い位置に陣取っていた桐はといえば、愛剣「まんぼう君」を火に曝しつつ、全身の気を高め、次の一手の準備を進めていた。
 
「見つけたうさっ!」
 真独楽とスライムの根性比べに割って入る形で、爆発的な加速を以て光が迫る。手に構えるのはあからさまに巨大な人参……ではなく、「いっぽんでも人参ソード」。一応、れっきとした刺突剣である。で、服装はといえば、いつの間にやらスクール水着姿。どうやら制服は幻想纏いにでも転送したらしく、残っては居ないが……戦いを楽しんでるのがよくわかる。
 光が勢いに乗った一撃をスライムに突き出すが、返ってくるのは強い反動。勢いがあった分反動も大きかったのか、勢い良くレイピアが後方へ吹き飛び、あわや肩が抜けるかと錯覚する程であった。
「……おん・となとな・またまた・かたかた・かやきりば・うんうんばった・そわか……」
 静かに、だが朗々と流れ出す螢衣の祝詞。言葉は形を成し、緩やかにスライムを包みこみ――完全な呪縛を与えることに成功した。真独楽のギャロッププレイと重ね、スライムから行動権はほぼ剥奪されたといって構わない。
 全員の動きを読んだ上で、ハルのショットガンは最善のタイミングで散弾を吐き出す。地上へ引き出す準備は完了したとは言え、一撃一撃をしっかり叩き込むことは肝要である為だ。
 だが、その散弾もスライムの表面に弾かれ、あらぬ方向へと飛ばされていく。幸いにして、跳弾として仲間を傷つけることはなかったものの、たしかに中々の物理抵抗力だ。
「――きっとあれ」
「それじゃ、タライで試してみましょうかね?」
 凛の魔弾が、射程ぎりぎりから鮮やかにスライムを撃ちぬく。痛みに耐えるように身悶えするその姿は、インクを取り込んでよく見える……が、気持ち悪いことには変りなかった。ソラが幻想纏いからタライを引っ張り出すと、寸暇を置かずセリオへ。既にセリオの手で自動治癒の準備が完了している二人にしてみれば、多少の無理で傷つく状態ではないがために、博打に近い手を打つにはうってつけのメンバーだったのである。
「じゃあ、まこも手伝うぞっ!」
「そう、じゃあお願いするわね」
 真独楽は、その金盥をカバーするようにして中華鍋を差し出し、ソラ、セリオ、そして真独楽の三人の得物(確保用)によってスライムは地上に上げられるかと思われたが、ところがどっこい、スライムは酸性生物である。しかもそこそこ強い酸らしく、金盥をぶち抜き、中華鍋を半ばまで溶かし、桐が赤熱した「まんぼう君」を振りかざし、咄嗟に何名かが距離を置き――

●ラッキーなんとかとその後の話
 そこから先は、かなりのスローモーションとして認識された。
 要は、桐が本来狙っていたタイミングよりも早く金盥の底が抜けるイベントが発生し、しかし十分加熱された「まんぼう君」によるメガクラッシュは彼が想定した通りの効果を発揮し、とは言っても危険なので皆必死で避けた結果、吹き飛んだスライムの残滓が空中を舞い……まあ、賢い紳士淑女ならば後は分かるな?
 
「見えそうですから気をつけてくださいねー」
「ぬわっ!しかし、今はスライムを倒さないと」
 桐の眼前で光の腹部の布地が溶け、思いの外露出は少ないとは言え大胆な格好になり。
「うわわっ、折角可愛いの買ったのにぃ……!」
 文が精一杯時間を掛けて選んだウインドブレーカーに穴が空き、奇跡的に中の文は無事であり。
「む、結構痛いんだな……っ」
 真独楽の尻尾に滴り落ちた体液は音を立ててその尻尾を僅かに焦がし。
 もう何ていうか、全員それなりに衣類が溶かされたりで大変だったのです。べちょり。
 
 桐の一撃で盛大に吹っ飛んだスライムではあったが、螢衣の呪縛が継続していたことや文、真独楽らの気糸が油断なく締め上げたことで身動きも取れないまま、逃走の機会を逸してされるがまま。各々、微妙に涙目だったりするが気のせいだろうか。
 因みに、セリオの献身的なオートキュアーの連続により、吹き飛んだ時に付着した体液によるダメージも、行動権を得た後の攻撃も受けた側から回復され、一切の窮地を待たずして決着がついたのであった。

 そして、ある種誰も得しなかったラッキーアクシデント後。
「桐ぽん、ぼくをぶっとばしてあまつさえ乙女の柔肌を見たねっ!」
 左手にはこんがり焼けた芋、右手には愛剣を携えて桐へと迫る光。当の桐はといえば不可抗力と言ってはばからず、強かに逃げ回っている。
「……経験値稼ぎの割には、結構手間が面倒だった」
 ため息をついて座り込む凛だが、鼻を突く芳香には逆らえない。ふらふらと足を向ける先では、ソラのバーベキューセットによって簡単な宴会が執り行なわれていた。
 というのも、戦闘後に「打ち上げしたい」と尻尾を振っていた文を見透かしたように彼女がバーベキューセットを取り出したからであり、身体を動かした後だけあってか、全員が全員、大喜びで祝杯を上げたのである。
 当のソラはと言えば、用意したビールで至極幸せそうな表情を見せていたという。
 宴会が終われば、真独楽の提案により戦場周辺の清掃活動に勤しむリベリスタ達。敵はエリューションのみならず、環境相手にも気を配らなければならないのは、必然といったところだろう。

「……ところで光さん、持ってきた凝固剤は使えなかったんですか?」
「『温めてから投入してください』って書いてあった……」
 お粗末。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 代筆を担当させていただきました、風見鶏です。
 OPの作成や基礎の構築は野間崎 天STによるものですので、概ね好意的に受け止め、出来うる限りリプレイに盛り込んだつもりです。
 プレイングに対する回答、判定要素についてはリプレイで必要な限り述べさせていただきましたので、多くは語らないこととします。
 しかし、皆さんの個性は強く楽しんで執筆させて頂けたことは確かです。
 では、またの機会に。