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去り年より来る者

●侵略者
「んんん~~っ……。 相変わらず、他の世界の空気ってやつぁ……不味い、まぁるで炭酸の抜けたビールの様に不味いではないかぁ~…っ!」
 しがれた男性の声、まるでRPGで出来そうなラスボスだったり、とにかく悪役が似合いそうなはまり役な声である。
 意外とこんな声をしていながら、同僚に『○○くん、今夜いっぱいどうだぃ?』なんて、いってるかもしれないが……。
「相変わらずどうでもいいところを気にされますな、隊長は……。 しかし我等の一兵卒とはいえ、ああもふがいない結果を抱えて帰ってきたのは、実力不足というだけでもありますまい。」
 ため息をこぼしつつ、割り込んだのもナイスダンディな声だ。
 所謂ベテラン兵士の声といえばしっくりきそうな、重低音溢れる迫力のある音声。
 意外とインスタントラーメン等を口にすると『最高だっ!』だとか、言ってるお茶目なところがあるかもしれない。
「んもぅ、こんなシケたところにわざわざ来たんだから……可愛い子がいないと、やる気が出ないわっ」
 こんな喋りをしているが、こちらも渋い声だ。
 どこかで司令塔をこなしつつアイディアを口にしたりすると似合いそうだったり、筋骨隆々の変態とか言われても文句は言えないだろう。
 とりあえず気持ち悪いので、親指突き立てて解けた鉄の中に消えていただきたい。
「貴様はまたそんなことを……任務に私情を挟むな」
 ナイスダンディな声が呆れた様子に戒める。
「いいじゃないっ、これが私のモチベーションを上げるのよ! 可愛いボーイを愛でるのが私の生き甲斐なの!」
 少年か、少女ではなく少年か。
 再びため息が聞こえる最中、悪役声が息を吸う音が割り込む。
「きーさーまーらー。 戦場でチーパクうるせぇんだぁよ! いいか?俺達にたて突いたらどうなるか……骨身に染みるまで教えてやらねぇと舐められっぱなしだ。 戦いだ、戦争だ、喧嘩だ、殺しだ、虐殺だ……っ! 今日からはここを……地獄に改装工事だ野郎共っ!」
 ……最初に何か口走ったのは貴方ではないかというのは心にしまいこみ、彼等の侵略が始まろうとしていた。
 
●侵略者の正体
「……口だけでなく、実力も確かよ。 彼等を放っておけば甚大な被害が出るわ、その前に彼等を倒してほしいの」
 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は、スクリーンに映った映像を消すと、リベリスタ達へ振り返る。
 その前に彼等が一度に口を揃えて問うた事。それは、何故画面に二足歩行した兎が3羽立っているだけだったのかだ。
「その……以前に兎のアザーバイドを倒し、送り返した事があったの。 どうやら、その仕返しらしくて上官達が乗り込んできたって所ね」
 兎の上官とは何か? にんじんの食べる順番でも決まっているのだろうか?
 不可思議な返答にリベリスタ達の心に色んなツッコミという質問が浮かぶも、口にさせぬ内に説明が続く。
「あの悪役声の兎、黒兎ね。 彼がリーダーみたい、徒手格闘に優れ、離れればエネルギー状の飛び道具を手から放って攻撃も可能なオールレンジの戦闘能力を持つわ」
 スクリーンに浮かぶのはあくまで二足歩行の兎、黒、灰、白の3羽。 何処と無くシュールだ。
「いい声をしてた兎、灰色兎は姿や気配を消すのが得意で奇襲がメインになる筈。 武器はナイフ、投げつけて使うこともあるから気をつけて? 下手に接近攻撃を仕掛けるとカウンターを仕掛けてくるわ」
 兎に暗殺はされたくなかろう。
「最後に白兎。 こっちは飛び道具がメインで、重火器を取り扱うわ。 ……その、場合によっては接近戦でベアーハグをしてくるみたいだから、気をつけて」
 接近される時の要因は……間違いなくあれだ、目当ての相手ということだ。
 一通りの説明を受け、上の空なリベリスタ達。流石にこんな敵を鵜呑みに理解しろというのも難しい筈。
 イヴの咳払いに、ハッとした彼等は一同に彼女へ視線を戻す。
「息の根を止めなくてもいいわ。 彼らも危なくなれば逃げるでしょうし、こちらに手出しするのが一苦労と思わせれば十分よ。……ということで、頼めるかしら?」
 これも何かの巡りと頷くリベリスタ達であった。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:常陸岐路  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2012年01月30日(月)22:03
【ご挨拶など】
 初めましての方にはお初にお目にかかります、再びの方にはご愛好頂きありがとうございます。
 ストーリーテラーの常陸岐路(ひたちキロ)で御座います。
 さて、今回の敵は……以前書かせて頂きました『もふもこ兎祭り』の続きとなっております。
 といっても、此方をまったく見てなくとも、変態兎をシバくというところだけご理解いただければまったく問題ありません。
 どんな感じかな? と、気になられた方は御一読いただければとても私が喜びます。
 話としてはお笑い要素と戦闘要素主体をイメージしております。
 兎に何か言ってくだされば、可能な限り反応させたいと思うのでよろしくお願いします。
 
【戦場】
廃工場
〔詳細〕
・町外れにある廃棄された工場です、近々取り壊し予定らしく所々老朽化しており、強い衝撃を受ければ崩れそうな場所もあります。敵が潜んでいる一角は正方形型の建物になります。
・2F部分として建物の隅を囲む形にキャットウォーク(細い通路、体育館の両脇にあるような通路)があります。キャットウォークと床までの高さは大体3m程度です、また壁から突き出した通路なので、通路の下に潜る事も可能です。
・全体的に暗いので、普通の人間でしっかりと視認可能な距離は4~5mぐらいでしょう。
〔工場内の各エリア〕
西北~北側~東北:北に外と繋がる大きな扉があります。西北、東北には大きな機材が並び、姿を隠しやすく、キャットウォークに上がれる螺旋階段もあります。
西側~中央~東側:西、東側はキャットウォークを支える柱や機材が点在しているので、隠れやすい場所です。此方のキャットウォークは一部ひび割れしています。中央は腰ぐらいの高さがある瓦礫や廃棄物が点在していますが、開けた場所です。姿を隠すには難しいでしょう。
西南~南側~東南:砕けたガラスや、使われていない燃料入り一斗缶等が点在しています。遮蔽物はキャットウォークを支える柱のみなので少ないでしょう。

【敵情報】
共通:2回行動します
初期配置:黒兎は工場の中央、白兎は南側キャットウォークにいます。灰兎は何処かに潜んでおり、ぱっと見ただけでは位置はわからないでしょう。

〔黒兎〕
近遠両方から攻撃可能、全体的にステータスが高めな為、防御力、回避力共に少し高いです。生半可な攻撃では倒すのに時間がかかるでしょう。
《攻撃手段》
・格闘:素早い連続攻撃を仕掛けてきます、まさに目にも留まらぬコンビネーション。少々威力が高いのでご注意を。
・オーラ弾:掌からエネルギー状の球体を数発放ち、遠距離攻撃を行います。命中力が高めですが、威力は普通です。
・ハイテンション:発動を1ターン目とし、2ターン目終了までの間攻撃力がアップします。1回しか使用できません。

〔灰兎〕
HPは少ないですが、回避力と隠密性に優れます。攻撃を当てることが重要です。
《攻撃手段》
・ナイフ攻撃:近距離であれば切りつけ、遠距離ならば投げナイフを使い、攻撃します。命中力が少し高く、場合によって出血状態になることがあります。
・隠密:一度もダメージを受けずにターンを終了した場合、姿が見えなくなります。この行動が発生している状態で、灰兎が攻撃を仕掛けると威力が上がるのでご注意を。また、攻撃すると効果は消えます。(初期配置時、この行動が発生しています)
・カウンター:近接攻撃を受けた際、一定の確率で組み付き、攻撃を無効化します。そのターンの間、灰兎が攻撃をされた場合、カウンターを受けたリベリスタを盾にします。

〔白兎〕
回避能力は低いですが、頑丈なので高い攻撃力で挑まなければダメージに繋がりづらいでしょう。
《攻撃手段》
・重火器攻撃:距離や相手に合わせ、遠近両方に重火器を使った攻撃を行います。威力は高いですが、命中率は低めです。
・爆発物攻撃:広範囲に攻撃する爆発物を投擲、または射出して攻撃します。対象となったリベリスタの付近(5m程度)にいる、別のリベリスタもダメージを受けますが、対象の受けるダメージより低いダメージになります。
・ベアーハグ:白兎好みの少年キャラに限り、走りながら接近しベアーハグで攻撃してきます。場合によって麻痺状態になることがあります。

【勝利条件】
3羽を撃退、可能ならば撃破する事が作戦目標です。敵はそれぞれHPが危うくなると危険を察知し、ディメンションホールを生成し撤退を開始します。この時に逃がさない様に戦うことも可能ですが、死に物狂いに襲い掛かってくるので戦闘力がアップするのでご注意ください。

参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
インヤンマスター
焦燥院 ”Buddha” フツ(BNE001054)
マグメイガス
烏丸 兎子(BNE002165)
覇界闘士
焔 優希(BNE002561)
覇界闘士
浅倉 貴志(BNE002656)
クリミナルスタア
細・遥香奈(BNE003184)
ダークナイト
皐月丸 禍津(BNE003414)
ダークナイト
バゼット・モーズ(BNE003431)
ダークナイト
逢坂 黄泉路(BNE003449)

●本気な兎
 薄暗い倉庫の中には妙な光景がある。
 成人男性ぐらいの大きさをした黒兎が、荒れた室内で仁王立ちで扉を見据えていた。
 同じサイズの白兎は物騒な得物を片手に、そんな黒兎を見下ろしている。
「もぅ、来たんだからさっさといきましょうよ!」
 渋い声の癖にオネエ口調、頼むから毛むくじゃらの姿で身を捩るのはやめていただきたい。
「貴様には~わからんか? むこうからやってきてくれるんだぞ?」
 その言葉とともに、目の前の扉が開かれた。
 逆光の筋が帯状へ広がり、少々明るくなる工場内。
「いやぁ~いらっしゃいませクソッタレ共! ここが今日のパーティー会場だ」
 鼻を利かせ、辺りを探る『てるてる坊主』焦燥院 フツ(BNE001054)。
 サングラスをかけた『紅蓮の意思』焔 優希(BNE002561)も、研ぎ澄まされた聴覚を用いて音のセンサーを働かすも、特定には至らなかった。
(「どれだけ巧妙に隠れたんですかね」)
 同じく前に立ち、姿を探る浅倉 貴志(BNE002656)も、ここの中で呟く。
 テルと共に透視と熱感知を用いて突入前に探りを入れていたが、気味が悪いほどはっきりしない。
 最初のターゲット、灰兎が見当たらないのだ。
「なんだテメェ等、時化た反応しやがって。 タマ落としたのか?」
(「落とす落とさない以前の話だわ」)
 無表情のまま、辺りを見渡す細・遥香奈(BNE003184)のドライな突っ込みは心の中でだけ紡がれる。
「どれ、じゃあ白け切る前にパーティ始めるか」
 その言葉と共に黒と白の兎が構えを見せた。
 無論、瞬間的にも彼等へと気が向くだろうがそれが狙いなのだ。
「くるぞ!」
「くる!」
「きますよ!」
 力を使い、探りを入れていたフツと優希、貴志が同時に反応する。
 瓦礫に埋もれるようにして身を隠していた灰兎が、瓦礫を撒き散らしつつ飛び出すと俊敏な動きでナイフを振るう。
 狙われたのは『邪龍』皐月丸 禍津(BNE003414)、だが3人の言葉もあり初手はランスの柄でガードに成功。
 振り払おうとランスが下がった一瞬を逃さず、踏み込んでの突きが彼女に迫る。
「っ……!」
 半身反らし、刃は脇を切り裂いた。
 柄頭で素早く反撃を試みるが、灰兎は直ぐに間合いから飛びのいてしまう。
「プレゼントフォーユー、受け取れ」
 灰兎へ放られる人参、バゼット・モーズ(BNE003431)が投げたものだ。
「何のつもりだ? 俺達が人参で言う事でも聞くと思ったのか?」
 切っ先を向けたまま、人参を確かめる様に嗅ぐと、舌先が表面を撫でる。
「上司が猛りやすいと苦労が絶えないだろう。 心中察する」
 はんと苦笑いを零すと、渡された人参を齧る。
 先程の仕草は、何か盛られているものがないか確かめたのだろう。
「うむ、なかなか美味い。 ここにもいい人参があるものだな」
 しかし、ナイフを突きつけ人参を葉巻の様に横から銜えつつ喋る姿はシュール。
 言葉と仕草があっていないような、あっているような。
「君等がそのまま帰ってくれればうれしいんだが、どうだ?」
 人参が口から零れ落ち、地面を転がっていく。
「隊長の意思は俺達全員の意思だ。 猛り感情を爆発させようとも常に心は冷静な方だ、それに従う事に苦労はない」
 交渉は決裂らしい、その言葉が戦いの狼煙となった。
「それなら容赦しねぇ!」
「いきますっ!」
 『斬弓虚刃』逢坂 黄泉路(BNE003449)と烏丸 兎子(BNE002165)が先制攻撃を放つ。
 光の矢と魔力の弾丸が降り注ぐも、合間を縫う様に滑らかな動きで後ろへと下がる。
 回避先を狙うようにしてバゼットと禍津の刃が追撃をかけるが、うまくナイフで攻撃を滑らせてしまう。
「動きを止めてくれる!」
 俊足の足蹴りから放たれたカマイタチが空を切り裂き、灰兎へ迫る。
「ぐっ……!?」
 流石に動きが早くとも、この連続攻撃には対応しきれないようだ。
 ナイフで受け止める暇もなく、直撃した灰兎は後ろへと仰け反る。
 更に遥香奈の弾丸が頭へ迫ったが、眉間を掠る惜しい結果に終わった。
「逃がしませんよ!」
 回避後の僅かな隙を逃さず、貴志の斬風脚が再び灰兎を捉える。
 胸元に優希の傷とあわせ×字状に傷を受け、ボタボタと血が床を汚す。
「うらっ!」
 一斉攻撃に弱り始めた灰兎へ、フツがペイントボールを投擲。
 迫るそれをナイフで切り落とすも、飛び散った汁が体に付着し、毛皮を汚す。
「小賢しい事をっ」
 援護しようと近づく黒兎の前へ、優希が立ちふさがる。
「邪魔だ!どけぃっ!!」
 退けと言わんばかりのハイキック。 ここで避けてしまえば目論見通りになってしまう。
「異世界の格闘家か、面白い。 その腕前、見せてもらおう!」
 右から迫る蹴りを右腕でしっかりとガードすると、腕に伝わる鈍痛は耐えれないものではない。
「あっつーいキスをプレゼントよ!」
 密集した陣形を取ったのは間違いではないが、白兎の爆発物攻撃からすれば格好の獲物だ。
 放たれた爆発物から広がる爆風、煙。 フツが守護結界を広げていなければ大ダメージになっていたところだろう。
 ダメージを受けた遥香奈、禍津、兎子も大事には至らない。
 だが、この時に禍津の足元がふらつくのを灰兎は目ざとく捉えていた。
 
●猛攻な兎
「オレが援護する、作戦道理頼むぜ!」
 手傷を負った3人へ届けるのは、歌声の様な透き通った詠唱。
 そして鳴り響く祝福のメロディが、傷口を癒していくのだ。
 ベストタイミングなサポートが入り、リベリスタ達の猛反撃が始まる。
「中々の腕前ですぞ、こやつら……っ!」
 怪我は負ったが、灰兎はまだまだ動ける。
「切り裂く!」
 優希の刃を身を低くして回避し。
「食らえっ!」
 黄泉路の漆黒の矢をナイフで弾き落とし。
「そこ……っ」
 兎子の魔法弾の嵐は横っ飛びにいなし。
「間合いが甘い!」
 そこを狙った禍津の刺突を転がって掻い潜る。
 灰兎の姿が徐々に周りの風景に解けるように滲み始め、毛皮にインクをこびり付かせたとは言えど、このまま消えられては強力な反撃を受けてしまう。
「……っ」
 しっかりと照準を合わせ続けていた遥香奈の攻撃が始まった。
 撒き散らされる弾丸は、兎の表面をかすめ、浅い傷を追わせていくが能力の発動は封じることに成功。
「ならばっ!」
 弾丸の雨が止むと、灰兎は禍津へと走る。
 無論、灰兎のブロックを請け負った貴志が間に入り、回し蹴りからの風の刃を放つ。
 肩を僅かに切り裂き、少量のダメージを与えるが勢いは止まらない。
 互いに至近距離に到達すると、貴志から牽制の左ジャブ。
 僅かな動作で払う兎は腹部狙いに右手のナイフを突き出し、貴志の交差した両手が打ち払う。
 反撃に体を沈めて、兎の脚を蹴り払おうとするが跳躍で逃れ、兎は彼の肩を地面代わりに手で叩いて宙返り。
 彼の頭上を飛び越えた勢いで迫り、ナイフを禍津へと振り下ろす。
「うぐっ……!」
 防御が間に合わず、ざっくりと胸元を切り裂かれてしまう禍津。
 白兎の攻撃で、それほど耐久力がないと思われたのだろう。
 どうにか、槍で振り払い、追撃は逃れたものの受けたダメージは大きい。
「退かんか小僧!」
 黒兎も灰兎の動きに気づき、禍津を狙おうとするが優希が阻む。
「言われて退くと思うか!?」
「退けといってんのが判らんのかクソガキャァッ!!」
 激昂する兎、しかし表情は兎のままである。
 その合間も容赦なく白兎のバズーカが一面を焼き払い、バゼットが被弾するも傷は浅かったのが幸いだ。

 中々身を隠せない灰兎の体力は、徐々に磨り減っている。
 優希の斬風脚を避ける瞬間、膝から崩れ掛かり、どうにかガードする様子から限界が近い。
 神経を集中させていたバゼットの掌が、バスタードソードの刀身を静かに撫でていき、溜め込んだ力が赤き光となって刃に宿る。
「逃さん!」
 狙いも十分、埃を巻き上げ、一足飛びに灰兎へと跳躍。
「いくぞ!」
 それに合わせ、禍津も走る。
 加速する体、構えたランスには徐々に漆黒の光が宿っていき、力が蓄えられていく。
 まずはバゼットの刃が踏み込みながら足元を薙ぎ払い、残った力を振り絞って飛び退くが攻撃は終わらない。
 剣に掛かる遠心力をそのままに反転、そして軌道は全力で振り下ろす縦一線へと変化する。
 赤き軌道が光の筋を描き、防御のナイフごと灰兎の腕を切りつけると、禍津がバゼットの背後から跳躍していた。
「止めだっ!」
 彼の肩を蹴り、勢いを殺さぬままの命を穿たん一撃が灰兎へと放たれたのだ。
「ぐぉぁっ!?」
 慢心相違の体が必死に急所だけは反らし、その一撃を直撃していく。
 嵐の日の立て看板の如く地面を転がった灰兎は、不屈の精神で起き上がると異次元の扉を作り、そのまま飛び込んでいった。
 
「ば、馬鹿なっ……!」
 予想以上に早い灰兎の撤退は黒兎にとっては予想外の出来事だったようだ。
(「今がチャンス……です!」)
 気の緩みを逃さず、兎子が呪文を紡ぐ。
 その名を魔曲・四重奏、交響曲の如く4つの属性を束ねて放つ強力な魔術。
 ウィザーズロッドから放たれたそれは、黒兎に直撃したかに見えた。
「ぐぅっ……」
 間一髪、全力の防御で凌いだようだ。
 直ぐには動けまい。動きを止めた黒兎へ、貴志が追撃を掛けた。
「次は貴方の番です!」
 連続して放たれた回し蹴りから生まれる風の刃は、暴風雨の如く黒兎を襲う。
 飛び散る命の飛沫が辺りの床や柱に血化粧を施し、容赦なく体力を抉るのだ。
 刃の嵐が過ぎた後、黒兎の息は荒く流れは完全に彼らの下にあるかに見えた。
「……貴様等ぁっ。 ちょっとオイタが過ぎるな、こりゃぁお仕置きのお時間だ」
 まだ動ける。確かな手ごたえを実感した貴志にとっては、他のメンバーより衝撃は大きかろう。
 その最中、フツは落ちついて己が役目を全うし、仲間の治療に専念する。
(「どう見ても、そっちがお仕置きされてるわ」)
 怒りの言葉にかまうことなく遥香奈は無言のままトリガーを絞り弾幕のシャワーを浴びせる。
「貴様等の最大の不幸はぁ、たった一つの事だ」
 黒兎の振脚が床をめくり上げ、分厚いコンクリートの盾が生まれると鉛の礫が吸い込まれ、勢いが殺されていく。
「何が不幸だ、ウサギ!」
 黄泉路が漆黒の矢を連発し、再び黒兎を襲う。
 しかし、そこから動くことなく直撃する矢だけを直接掴み、掌に束ねて捕まえてしまった。
「この、俺と戦ったことだ。 地獄を味合わせてやる……」
 握りつぶされ、へし折れた矢が光となって消えていく。
 これだけ悪役台詞を吐きながらも兎なので締りがないところである。
 
●黒兎
「さぁいくぞ……」
 優希に指差しすると、一気に攻撃の間合いへと踏み込んでくる。
(「さっきまでと雰囲気が違う、本気ということか」)
 全力の力で襲い掛かる黒兎は、フックで顔面を狙う。
 まだ目で追いきれる速度と、しっかりとガードの構えを見せる、が。
「がっ……・!?」
 防御を暴力で叩き潰し、腕ごと顔面に叩き込みながら強引な直撃打を与える。
 ぐらんと揺れる意識、必死に守りを固めようとする優希だがトンファーも駆使して防御しているとは思えない程、力で防御を突き破られてしまう。
 更には白兎が彼を狙い軽機関銃で一斉掃射まで合わせてきたのだから、大変なことになっている。
「どうしたぁ! ガードがゆるゆるだなぁ!」
 しこたま拳を浴びせられてしまった優希の意識は墜落寸前にまで追い込まれ、膝から崩れてしまう。
「烏丸! 二人で治療だ!」
「は……はいっ!」
 どうみても一人で間に合う範囲の傷ではない。
 フツは直ぐに兎子に呼びかけると、優希の下へと駆け寄る。
 黒兎が止めを刺そうと近づけば、そこを遮ったのは貴志とバゼットだ。
「貴様等はどれだけ……、耐えれるだろうなぁ?」
 貴志の斬風脚が吹き荒れ、鋭い突風が襲うが。ことごとく弾かれ、避けられダメージにならない。
(「あの攻撃で当たりもしないか……」)
 今、攻撃を仕掛けて当てられる自信はない。バゼットは手堅く守りを固めながらも、意識を集中させ一瞬の隙を逃さんと黒兎を睨む。
「調子に乗るなっ!」
 黄泉路の攻撃に合わせ、遥香奈と禍津も共に飛び道具の一斉掃射が放たれる。
 そこへ体力の回復した優希が彼の脇を走り抜け、黒兎に取り付いた。
 再び始まる拳の語り合い、直撃すれば再び大変な事になるのは身をもって体感した為、優希も先程よりも丁重に防御に専念する。
 だがそれと共に狙っているものもあった。
「今度こそ眠らせてやるぞクソガキィァッ!」
「それはお前の方だ!」
 業を煮やした黒兎の大降りの一撃。狙いを弾いた優希だが、反動の強さに彼は攻撃を出せない。
 だが、じっと照準を合わせていた黄泉路ならば狙える。
「終わりだ、ウサギ!」
 黒き矢はまっすぐに狙った場所へと吸い込まれていき、胸元を貫いていく。
 錐揉み、宙を舞う兎にもう動けまいと誰もが思ったであろう。
「貴様等、次こそは地獄送りにしてやるぞっ!」
 目を見開き、捨て台詞を吐くと勢いに流されるままゲートの向こうへと消えていくのだった。

●最後の戦い
 白兎のマシンガン弾幕を掻い潜りつつ、遥香奈は辺りを見渡す。 
(「如何にか引き摺り下ろさないとね」)
 先程までの派手な戦闘で辺りの瓦礫は崩れ、キャットウォークを支える柱も皹が多く走る。
 同じ事に気づいた禍津へ、アイコンタクトを配らせれば光と弾丸を白兎目掛けて放つ。
「何処狙ってるのよ、下手糞さんねぇ~!」
「足元だ」
 言葉に気づいたときにはすでに遅い、攻撃を受けすぎたキャットウォークは柱から崩壊し、兎は急落下だ。
「貫け、我が漆黒の闇よ」
 禍津の魔閃光が白兎に直撃し、ダメージを重ねていく。
 崩れたコンクリート片でうまく身動きが取れない今がチャンスなのだが、それはこちらの攻撃も阻み、威力が減衰してしまう。
 兎子の魔法も、黄泉路の光の矢もダメージとしては微々たる物だ。
「やったわねぇ~!」
 出来たところで、一気に距離を詰めればバスタードソードを振りぬくバゼット。
「そろそろ終わりにしたいのでな」
 赤熱の光に似た刃は無遠慮に白兎の毛皮を横一線に切り裂く。
 ふらっとしたところで、貴志や優希の攻撃まで叩き込まれ、兎は瞬く間に追い込まれていた。
「こんのぉ、やってくれたわね~!あんた達!」
 後衛へ銃を突きつける兎の間へ、フツが滑り込む。
「お前さんの相手はオレだぜ」
「って、あらやだ、中々渋くて可愛いのがいるじゃないのー!」
 目をつけられたのはフツだ、視線が彼に向かった瞬間、ぴたりと動きが止まったのが証拠だ。
「じゃあ、お相手していただけるかしらっ!?」
 内股に、肘は90度、腕は外へ45度程度に開き、口元から涎らしきものを零しながら全力疾走で白兎が彼へ迫る。
 この光景にブロッカーを名乗り出たフツも、ぞぞっと悪寒が背筋を走った。
「し、してやるぜ!」
 ここを守るといった以上、突破させない。
 組み付こうとする腕を払い、身を反らし避けてと繰り返すが一瞬掴まっただけで一気に腕の中に吸い込まれてしまう。
「つ~かまえた~!」
 乾いた砕ける音、プレス機にでも突っ込まれたかのように圧縮されるフツの酸素が搾り出される。
「……がんばれ!」
 何故か嬉しそうに親指を突き立てる兎子、それどころではないフツは早く助けろともがくが伝わらない。
「男は度胸!何でも試してみるもんさ!!……だそうです、よ?」
「いや、あれ苦しいんじゃないのか?」
 冷静に突っ込む黄泉路、目を合わせ一瞬の間を置けば、はっとしたように気づく兎子。
「離すのです」
 そして貴志も極めて冷静に背後から蹴りをお見舞いし、深いダメージと共にフツを開放させる。
 四つん這いに地面にうなだれる彼の様子から察するに、相当苦しかったのだろう。
「もぅ、私のお楽しみタイムの邪魔をしないで!」
「黙りなさい」
 ここまで無言を貫いた遥香奈の口からとうとう暴言が零れた。
 この兎共は可愛らしくもなければ、命のやり取りをしているはずなのに口数が多い。
「世界中の兎に詫びてから帰ってもらうわ」
 スライドから奏でられる装填音、ふらついて動きの遅くなった的は外さない。
 頭部目掛けて、鉛が吐き出され煙が飛び散る。
 派手に頭部に直撃しているのだが、白兎の頭部はオリハルコンか? 貫通する様子がない。
「これで……最後、です!」
 準備を終えた兎子の魔法が杖の先端に渦巻く。
 4種の光が螺旋状に絡まった強力な魔法が放たれ、虹色の軌道が空を彩る。
「お、覚えてなさい! 今度来た時はこんなんじゃすまな。 ぐはぁぁっ!?」
 顔面に魔法のパンチが炸裂、勢いに流され飛んでいく先にはディメンションゲートだ。
「いや、もう来るんじゃないぞ」
 下半身がゲートに吸い込まれた状態でも、白兎の無駄口は終わらない。
「今に見てなさい! ここを兎の楽園にしてやるわっ!」
 普通の兎なら良いが、お前らは願い下げだと全員が心の中で呟く。
「警告だ。 次に来た時は本気で倒しに行く」
 バゼットの脅しに、白兎は中指を突き立てる。
「上等よ! 今度こそ本気で倒しに」
 言葉の途中でゲートに吸い込まれ消えていく白兎。
 リベリスタに破壊されるゲートと共に戦いは終わりを告げた。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 お待たせしました、如何だったでしょうか?
 どうしてもあれもこれもーと書きたくなってしまい、いっぱいいっぱいに書いてしまう私なのですが、今回は文字数最高記録を一人で更新してしまいました。
 削除してしまった部分も結構あるかと思うのですが、楽しんでいただければ何よりです。
 戦闘に関しては、バゼットさんがセットしていないスキルを指定されてしまったところ以外は特に問題はなかったと思います。
 ですが、妙に運命的なダイス目が出たり、演出的にきつい展開が出てきたりと、データ化する部分に関しては色々とあって面白かったです。
 因みに、優希さんが倒れてしまいそうなシーンがありますが、HPが一気に二桁台に到達する謎確立が発生してしまったのですが……ダウンはしてないのでご安心を。
 憎めないお馬鹿な敵、これが今回の敵さんのイメージでした。 きっと再び攻め込んでくるでしょう。
 その時はボコボコにしてあげてくだされば幸いです。
 ではでは、ご参加頂き、ありがとうございました~!