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絶鬼!! 滅鬼!! 暗鬼!! 豪鬼!!

●開封
 岡山の建築現場に突如姿をあらわした大きな大きな人影四つ。
 それは、虫喰いとは似て非なる次元の狭間より這い出た災厄の落とし種。
「グハハハハッ! 自由だ! 糞忌々しい封印め、次はあやつらにたっぷりと味わわせてやる」
 鬼。
 旧時代の、今日においては伝承としてのみ語り継がれるおぞましき侵略者。
 黒、白、赤、青、の化粧を全身に施した巨体は、立ち並ぶ鉄骨の柱を空手で引き抜き、ブンブンと風を薙いで豪快に笑った。
「妙苞、珍毘、希坤、腕鳴らしにひと暴れと行こうや」
 オウともガオともつかない荒々しい声で応じた他の三鬼も、近くの鉄骨を抜き取り、赤鬼のあとに続いた。
 目指すは天空に明滅する無数の灯り、即ちビルのネオンが彩る繁華街――。


●ブリーフィングルーム
「皆さん……どうやら、またみたいです」
 『運命オペレーター』天原 和泉(nBNE000024)は手にした書類を読み上げる。
 万華鏡によれば今日から数日後に岡山県内のとある建築現場に『鬼』が現れ、近くの繁華街で無差別的な破壊活動をおこなうとされている。
「そういうわけで、こちらのほうも早急な対応をしたいと思いますので、皆さんよろしくお願いします」
 敵は四体の巨大な体躯をもつ異界の住人と思しき存在。見た目に似つかわしく、むきだしの鉄骨を得物に襲い掛かってくる。
 物理的な破壊力はアークのリベリスタをして苦戦せしめるにもおよそ充分なものだが、反面、頭のつくりはかなり単純なようである。
「目標出現まで時間的な余裕はまだありますので、先回りして出現地で撃破するようお願いします。戦闘に伴う建築物などの損壊は事後にこちらで処理する予定ですから、ご心配なさらずに。皆さんは敵の撃破に集中してください」

 *

●依頼目的
 岡山に現れた『鬼』を殲滅すること。
 まずは街の安全第一。次に自分達の安全確保を。




■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:小鉛筆子  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2012年01月25日(水)23:34
(いまさらですが)あけましておめでとうございます。小鉛筆子です。
本年もどうぞよろしくお願いいたします!
……というわけで今年一本目は、鬼でございます!

黒鬼の妙苞、白鬼の珍毘、赤鬼の怪陀、青鬼の希昆が今回の討伐対象です。
特にどれが大将格ということはありません。強さはみんな大体同じくらいです。
遠隔攻撃スキルは無いですが、状況によっては持っている鉄骨を投げつけて来たりはするかもしれません。
時間帯は夜。
幸い、現場付近に一般人は見当たらず、囲いもあるのでおおっぴらに人目を引くようなことは無さそうです。
思いっきり暴れちゃってください!!

ご参加お待ちしてます!
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
ソードミラージュ
神薙・綾兎(BNE000964)
覇界闘士
祭雅・疾風(BNE001656)
覇界闘士
宮部乃宮 火車(BNE001845)
デュランダル
虎 牙緑(BNE002333)
覇界闘士
浅倉 貴志(BNE002656)
マグメイガス
ラヴィアン・リファール(BNE002787)
スターサジタリー
織村・絢音(BNE003377)
インヤンマスター
風宮 紫月(BNE003411)


 八人が現場へ到着し、周囲を警戒していると間もなくして、がなり声をあげながら四人の鬼が次元の狭間を破いて現世に姿を現した。

「グハハハハッ! 自由だ!――」

「鬼相手に力比べか! いいねぇ。やってみたかったんだ、こういうの」
 『輝く蜜色の毛並』虎 牙緑(BNE002333)は笑み交じりにこぼした。昔話によくある鬼退治の英雄のように自分も勇敢な戦いが出来るだろうか。
「桃太郎というわけではありませんが、平成の鬼退治といきましょう」
 浅倉 貴志(BNE002656)は静かに流水の構えをとった。
 八人は鬼の目の前まで駆け寄る。
「鬼の数は四体か」
 『正義の味方を目指す者』祭雅・疾風(BNE001656)も身を構えて相手の出方に目を凝らす。
「いつ何時、誰に封印されたか知ったこっちゃねけどよぉ? 次は誰にたっぷり味わわせてやるってぇ?」
 挑発するように一歩進み出た『業炎撃』宮部乃宮 火車(BNE001845)が赤鬼へ発する。
 鬼達はリベリスタを見止めるや、憤怒の形相を露わに岩のような筋肉を筋立たせる。

「ニンゲンどもめ! ここで会ったが百年目……我らを縛り付けてくれた礼を、まずはうぬらに返してやるわッ!!」

「街で暴れて貰うわけにはいかないな! 鬼退治といくぞ! 変身!!」
 アクセス・ファンタズムから武具を呼び出して身に纏う疾風。仲間達も一斉に鬼へ向かって行く。
「覚悟完了……」
 『淋しがり屋の三月兎』神薙・綾兎(BNE000964)は人知れずそう囁きながら赤鬼へ向かう。

「時代遅れ っつー奴だ!」

 火車ははじめから狙いを澄ました赤鬼へ突っ走ってゆく。
「構う事ぁねぇえ! 赤鬼の怪陀! かかって来いオラぁぁあ!」
 赤々と燃える拳を目一杯引き絞り、赤鬼の怪陀の顔面を殴りつける。
「こんガキャ、舐めくさりよって!! 生きたまま叩きにしてくれるわッ!!」
 引き抜いた鉄骨を大きく振り上げ、懐に飛び込んだ火車の脳天へ渾身の力で叩き落した。
「手前の武器は鉄骨か? 人の作った鉄骨ぅ!?」
 頭部から血を流しながら火車は赤鬼を睨め上げて笑った。
「ぬゎにィ?」
「ぎゃははは! いいぜぇ? 人の作ったモン武器にして、かかって来いよ? なあ!?」
 火車は目を見開いて笑ってみせ、なお相手の怒りを煽る。
「おのれ糞ガキ……」
 血管を浮き立たせた赤鬼。追撃を加えようと再び腕を振り上げた矢先に、死角から回り込んで綾兎の残影剣が胴を払った。
「邪魔すんなぁ! 今これはオレと! コイツの!! ケンカんなったんだよ……!!!」
 凄い剣幕で綾兎を追い払い、改めて赤鬼を見上げる。
「うぬの事情なんぞわしにやどうでも良い事! 骨の一片も残さず踏み砕いて、墓すら築けんようにしてやるわッ!」
「面白れェ!! こっちこそ! 全部圧し潰して、遺恨のねーよう終わらせてやるよ!」
 太い風切音が火車の頭上から迫る。横へ転がりそれをサッと避ける。ドスン、と地面が小さく震えて斜めに突き刺さる鉄骨の柱。
「でぇええぇりゃあぁあ!!」
 素早く柱を駆け上がる火車の拳が炸裂。しかし大きく振り上げられた鉄骨と一緒に火車の体は放り出され、空中で無防備な状態になったところへ鉄骨の大打撃を喰らう。
「ぐ……ぉお……!!?」
「所詮はこんなもんか、ニンゲン!」
 横薙ぎに来た鉄骨が火車のあばらを砕いた。喉をのぼってきた血が火車の唇を汚し、地面にいくつもの点を打った。
「ごは!」
 火車の窮地にフォローを出そうと後衛から赤鬼へ牽制の攻撃が飛ぶ。
「だから邪魔すんじゃねぇ……!」
「で、ですが……」
 言いよどむ後衛の仲間を尻目に流水の構えで立ち上がる。
「遠慮すんな? こっからだろうが!」
 火車が見せる不屈の闘志に赤鬼も興が乗ったのか、ニヤリと笑って火車の復帰を待った。
「おいガキィ、その根性は買ってやる。今の内に忘れず念仏も唱えておけよ……ケッヘッヘッヘ!」
「オレはしぶといぜ?」



 流水の構えで距離を詰める貴志が向き合うは黒鬼の妙苞。
「死ねぇえいニンゲン風情がああ!!」
 いきなり鉄骨を投げつけてきた。貴志は軽いステップで横へ飛び退いてこれを回避。鉄骨は空中を回転しながら風を薙ぎ、重々しく地面を抉って土砂を飛び散らす。
 怒鳴りながら突進してくる巨体へ、貴志は離れた位置から斬風脚で迎え撃った。かまいたちが鬼の肩を切り裂いて小さな出血を起こさせる。
「もうすぐ節分、鬼は外だ。お呼びじゃねえよ、お帰り願おうか」
 『リトルダストエンジェル』織村・絢音(BNE003377)の放ったスターライトシュートが黒鬼にも命中。
 貴志は後衛に注意が向かないよう気を付けながら、自分にも接近させない意識で鬼の周りを右へ左へと動いている。
「……彼らの攻撃力……油断なりませんね。それならば──些少ではありますが」
 『朔ノ月』風宮 紫月(BNE003411)は印をむすび、守護結界を張った。
「最初の一撃をよけたからっていい気になるなよ。あれは単なる小手調べだアッ!!」
 貴志の体を掴もうと伸びる手。身を引いたものの、長く尖った爪が貴志の服を引っ掛け、肉ごと切り裂いてゆく。
「くっ……!」
 痛みに歯を食いしばりながら反撃の蹴りを繰り出す。
「痒いのう。そんなちょこまかした蹴りで俺を倒せるとでもおもっているのか。あぁ?」
 貴志は黒鬼の言葉には取り合わず、動きにだけ注意を払っている。

 一方、疾風が相対する青鬼の希昆は、初手に『突撃だぜ子ちゃん』ラヴィアン・リファール(BNE002787)の魔曲・四重奏を喰らって体の動きを麻痺させられていた。
「お前のターンは無い! ずっと俺らのターンだぜ!」
 勝ち誇った笑みで青鬼を見据えるラヴィアン。そしてこの隙を逃すまいと疾風も業炎撃で一気に攻め込む。
「喰らえっ!!」
 爆ぜる火の粉。そして青い化粧を施した体を火炎が包み込むように燃え上がる。
「ぐ……ぬぬぬうぬぬぬ、な、何をした小娘……!?」
「鬼さん鬼さん、ちょっと俺らと勝負しようぜ。お前らが勝ったら、俺らを好きにしていい。俺らが勝ったら、お前らはどこから来たのか喋ってから死ぬ。どう?」
「何ィ……? 我らを次元の狭間へ追いやったのはうぬらニンゲンどもではないか。忘れたなどとは言わせぬぞ……!!」
 青鬼の剣幕に眉をしかめるラヴィアン。そして疾風はこう零した。
「まさか私達の祖先にあたる人達が、彼らを……?」
「くくくくそッ……おい珍毘! 手を貸せ! 妙な術で自由が利かねえ」
 青鬼が白鬼を呼びつける。
「行かせるわけにはいかないんだよ」
 立ちはだかる牙緑がそれを阻む。
「ここでオレ達が成敗してやるぜ!」
「退いたらんかあッ!」
 白鬼の珍毘は牙緑へ鉄骨の柱を叩き下ろす。
「そんなデカい得物振り回したって当たんなきゃ意味ねーよ」
 白鬼の攻撃ははずれて柱が土にめり込んだ。直後にできた大きな隙に牙緑はギガクラッシュで打ち返す。背中に大剣をぶち当てると白い化粧の下から鮮血が飛び散った。悲鳴を上げながら鉄骨を振り回して牙緑の横っ面を狙う。
 ガチンッ。
 互いの得物が中途で激しく衝突し合い、金属のギリギリと擦れ合う音が鳴る。
 絢音の複数攻撃が鬼達にまとめて命中する。厚い肉壁に埋め込まれる弾丸に鬼達も歯噛みする。
「ぬおおおぅ!!」
 踏み止まった牙緑に体重を傾けて押し飛ばした白鬼は、青鬼に攻撃を加える疾風へ突進した。
「あぶない、祭雅さん!」
 紫月から注意喚起が発され、振り返る疾風へ白鬼が体当たりを喰らわした。
 すぐさま式符・鴉が紫月のもとから放たれて鬼を追撃。怒りを刺激された白鬼は紫月を睨んだ。
「猪口才な真似を!」
 青鬼の加勢に入るのも忘れて、今度は後衛へ走ってゆく白鬼。
「おい珍毘! 俺に手を貸せ!」
 迎え撃つは絢音のスターライトシュートにラヴィアンの魔曲・四重奏。
「攻撃は最大の防御! 撃って撃って撃ちまくるぜ!」
 魔法にはあまり耐性が無いのか、青鬼に続いて白鬼も足を止めてその場に硬直した。
「ぬおっ!? しまった、また奇怪な術にしてやられたか!」
「ど阿呆、珍毘! こんなところで後れを取ってどうする!?」
 青鬼が白鬼の失態を責めるように大声を上げた。
「何をぬかす! うぬこそ同じ術にしてやられたまんまではないか!」
 などと言い合いをしている鬼の背後から追いかけてきた牙緑の大剣が白鬼を叩き切る。
「オレはこっちだよ。見えてないの?」
 ニヤリと笑い、脇へ滑り込んだ牙緑はさらにもう一撃。
「こんなところでまたしても……!!」
 わなわなと全身を震わせて麻痺から脱した白鬼は、月の下で鈍い金色に光る眼を牙緑へ向けると、再び鉄骨を拾い上げて迫るギガクラッシュを打ち払った。
 スパッと真っ二つに割れた鉄骨をすり抜けて、牙緑の振るった刃は白鬼の肩を抉る。血飛沫が尾を引いて足元へ飛び散り、鬼の形相にさらなる血気が宿る。
「殺す……殺すぞ……!!」
 白鬼は短く切れた柱を牙緑へ投げつけて彼の剣先を逸らすと、重々しい巨体を宙に舞い上がらせて強烈な跳び蹴りを見舞ってきた。
 対応しきれずに直撃を受けてしまう牙緑。
 続けざまに手刀を振り下ろして止めにかかる。
「死ぃねええぇいッ!!」
 しかし綾兎が横をすり抜けるようにして剣を振るい、それを阻んだ。
「……サシの勝負、邪魔しちゃった?」
「おのれぇぇぇ……!」
 綾兎の残影剣で隙が生じたところをすかさず反撃に転じる。絢音と紫月の牽制にでさらに体勢を崩したところへギガクラッシュが直撃。
「ほら、こいつはおまけだぜ」
 牙緑はそう言って左手に掴んだ豆を白鬼へ投げつけた。
 鬱陶しそうに両手を掻きながら白鬼は苛立ちを募らせる。
「おんのれ、おのれおのれぇぇえぇ!!」
「たばかりよったなニンゲンどもめぇぇ!!!」
 青鬼は未だに身動きできず、疾風の一方的な攻撃に甘んじている。
「平和を乱す存在を見過ごすわけにはいかない。……このまま一気に終わらせる!!」
 度重なる火炎に焼かれ、ラヴィアンの魔曲に蝕まれ、流石の鬼といえども遂に体力の限界を迎える。
「う、う……ら……さ、ま……」



 貴志は守りを固めるスタイルで敵のブロックに専念していた。
 対する黒鬼は『意気地の無い奴』やら『亀もどき』やらと、貴志の堅実な戦法をしきりに揶揄しては動揺を掻き立てようと試みるが、彼が心動かされる様子は一向に無い。
「気に食わん奴めッ!!」
 何度目かの森羅行ののち、黒鬼が怒鳴った。
 殴っても蹴り飛ばしてもすぐに元通りの構えをとって立ちはだかる貴志の落ち着き払った態度が、鬼の癇に障ったようである。
 彼が反撃もそこそこに自己回復で注意を引いている間にも、黒鬼の方は絢音筆頭に射撃をおこなう後方の仲間達によって少しずつではあるが確実に体力を削られていた。
「鬼とヴァンパイア、どちらが生き残るに相応しい鬼か、決着をつけましょう」
「なぁにィ~イ? ニンゲン風情がほざきおって、じきに後悔させてくれるわ!!」
 鬼の手刀を、貴志はトンファーで捌いて懐へ潜り込む。
 ボッと音を立てて宿る拳の炎を、針が穴を穿つが如く鋭さで鬼の腹へ叩き込んだ。
「ハイィィーーイッ!!」
「うごァ!?」
 バックステップで素早く距離をあける貴志へ手を伸ばして、苦し紛れの反撃を試みる黒鬼。貴志は鬼の風切る爪をスウェーでかわしながら次の挙動へ移る。
「!?」
 しかし、さらに一歩踏み込んできた黒鬼が彼の頭を鷲掴みにして捕らえると、自らの重みを加えて地面へ顔を押し潰した。
 今度は掴んだままの頭を吊るし上げられ、鼻から出血をして赤く血塗られた貴志の顔が月夜に晒される。
「喉笛を潰して二度と呼吸できんようにしてやる!」
 鬼の眼が鈍く光って貴志を睨み付けている。こめかみに刺さる爪に凄まじい握力がぐいぐいと頭骨を圧迫してくる。
「鬼さんこちらってな。そら、豆鉄砲をくれてやるよ」
「……うぬは次に殺してやる!」
 埋め込まれた弾丸に顔を歪め、黒鬼は絢音を振り返る。一瞬の注意が逸れた瞬間に、貴志は黒鬼の腕へ脚をかけてぶら下がり、手首に吸血の牙を突き立てた。
「うあ゛痛っ!! ……小ッ癪な真似をッ!!」
 無様に悲鳴をあげた黒鬼は貴志を手放した。怒った黒鬼は貴志と絢音を交互に睨んで右往左往している。
「一手、一手を確実に。そういう作業は、嫌いでもないので……!」
 じっくり集中して放った紫月の式符・鴉も相俟って黒鬼は自らの怒りで混乱し始める。
「まとめてブチ殺すァ!!――」
 いきり立って血眼の形相で後衛へ向かおうとする黒鬼。しかし貴志が脚払いでそれを止める。
「俺のターン!」
 そしてラヴィアンの魔曲・四重奏が黒鬼を襲い、翻弄した。
「そんでお前のターンは無い! ずっと俺らのターンだぜ!」
「沈んでよ、ねっ……」
 なし崩しに青鬼、白鬼、と葬った疾風と牙緑、そして綾兎も貴志に合流し、一気に七対一の圧倒的優勢に立つ。
「最後まで油断せずにいくぞ!」
 疾風の可変式モーニングスターが黒鬼を強かに打ち据える。
 貴志は仲間の合流に感謝して一旦敵との距離をおいて森羅行で態勢を整えた。
 果敢に攻め入る牙緑のギガクラッシュを黒鬼は寸でのところでかわしたが、続く綾兎の残影剣には後れを取ってこれをまともに喰らった。
「……物騒な連中にはさっさと退場してもらわないと、ね」
 綾兎を捕らえようと手を伸ばす黒鬼だが、周囲で動き回るリベリスタからの干渉もあって綾兎の速さに対応できていない。
 絢音がアーリースナイプで狙いを澄まし、頭部を直撃。肉薄する三人を目前で凌ごうと両腕を掻いて攻撃を薙ぎ払う。
 貴志の斬風脚に振り返った黒鬼は死角を牙緑に取られて重たい一撃をその身でまともに喰らった。
「ぐぬぁああぁっ鬱陶しい!! うぉら怪陀ァ! ガキ一匹に梃子摺っとるばあいかッ!! わしの助太刀に入れコラ!!」
 言われて赤鬼は初めて周囲の状況を再確認した。
「な、なんじゃこら!?」
「ど阿呆!! うぬが戯れに高じてる間にしてやられたんじゃ!」
「……くぉのクソガキ、たばかりおって!!」
「んなもん知った事じゃねぇ。オレは手前とのケンカを楽しみたかっただけなんでなあ!」
 リベリスタの七人も改めて火車の姿に目を留めたが、全身血みどろだった。少なくとも一度は赤鬼に倒されているに違いない。
 彼の達ての希望で、敢えて手出しせずにいたが……。
「目の前の人間一人から相手にできねーのか? あぁん!?」
 黒鬼の加勢に入ろうとする赤鬼を、火車は後ろから掴み掛かって思い切りぶん殴った。
「ならば、うぬに止めを刺してから往くまでよッ!!」
 と、振り向きざま遠心力の乗った赤鬼の一撃を、火車はもろに受けた。弾き飛ばされ、ぼろ布のように倒れる。

「………」

 しかし、火車は再びむくりと起き上がって不敵に笑いながら、また赤鬼へ刺すような視線を向ける。
「オッケー……、良いな。鬼ってのはやっぱそーこなきゃな……?」
 彼がそこまで差しの勝負にこだわるのは何故なのか。
「……この薄気味悪いガキめ。切り刻んで二度と起き上がらんようにせねば懲りぬか!」
 再び火車の拳に炎が燃える。
「怪陀! コラ聞こえんのか!? 早う加勢してくれ!」
 助けを請うが赤鬼は来ない。
「諦めるんだな」
「大丈夫、オレ達がすぐにぶっ飛ばしてやるから」
「逃げる、という選択肢は与える心算はありません。──お覚悟を」
「今度は封印で済むなんて思うなよ」
 絢音の弾丸が黒鬼の脚を貫いた――。
 バッドステータスに縛られた黒鬼は抗うことが出来ない。
 立て続けに繰り出されるリベリスタの攻撃に、赤鬼の加勢はとうとう入らなかった。
「我らを討ったとて、いい気になるなよ……いずれ――」
 残るは赤鬼。

「オレ独りでやりてーんだけどなぁ……」
「無茶を言わないでください。宮部乃宮さんはもう充分戦いました」
「気持ちは分からなくもないけど、オレ達も無事に依頼を終わらす義務があるからな」
「火車さん、交代しましょう」
 火車は渋々仲間の助太刀を受け入れた。しかし前線から外れる気は無いと見えて、依然誰よりも前へ出て行こうとする。
 客観的に見る今の火車は、とても『大丈夫』などと云える姿じゃない。
「さあ、お前で最後だ。覚悟しろ!!」
 八対一となった形勢が最早不利に傾くことは無い。ラヴィアンの魔曲がここでも猛威を振るい、それ以降、赤鬼はサンドバッグ状態で反撃すら許されずにリベリスタ側の猛攻に晒されたまま、間もなく葬られた。



 綾兎が周囲に何か痕跡が無いかと目を凝らすと、鬼達の出てきた場所と思しき空間の歪みの痕跡らしきものが窺えた。
「……ここから出てきた……の、かな?」
「大昔に封印されたものが、何かのきっかけで解けたのかもしれないね」
 疾風はその痕跡を見詰めながら、自身の推測を口にする。
「帰ったら本部に調査を依頼してみよう」
 岡山の伝承などを調べれば、なにか手がかりとなるものが得られるような……そんな気がしている。
「それにしても、ずいぶんと派手にやりあったな」
 荒れた建築現場を見渡しながら絢音はそう呟く。
「撤収前に少しだけでも片付けをしておいてやろうぜ」
 声を掛けられた紫月が震え出した手を押さえながら、小さく頷いた。
「どうした?」
「いえ……」
「なんだ、……震えてるのか?」
「え、ええ、その……。まだ覚悟が足りないのでしょうか。困った物です……」
 そう言って眉を下げる紫月の肩をポンポン……と、絢音は優しく叩いた。


■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 おつかれさまでした。
 前でブロックする役目の方々が高レベルというのもあって、戦闘不能はほぼ回避できました。
 回復手段こそ少なかったですが、フェイト復活もありましたし、戦術等々バランスが取れていて安定感は高かったように思います。

「鬼の名前が読めない」 というお声をいくつか頂いたので、紹介しておきますね。
 黒鬼の妙苞(みょうほう)
 白鬼の珍毘(ちんび)
 赤鬼の怪陀(かいだ)
 青鬼の希昆(きこん) ……でした。

 ご参加ありがとうございました!