＜三ツ池公園特別対応＞不定形の蝶の撃退
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●承前 三ツ池公園、『閉じない穴』――深夜。 度重なるエリューションやアザーバイドを吐き出し続け、リベリスタ達が最警戒に当っているこの地。 突如として穴から現れたのは、時代も人種も年齢も問わない沢山の男女。 皆一応にして、辺りを見回していて何が起こったのか判らないといった表情を浮かべている。 続けて上空に現れたのは、光を纏って虹色に輝く『不定形の蝶』。 大きさは巨大で、10メートル近い全長を有している。 思わず上の蝶を見上げる人々だが、その表情は恐怖に凍りつく。 蝶の羽は鱗の様に変質し、一枚一枚が呻き声を上げる人間の顔の様な姿をしていた。 鱗の様なそれは蝶の羽ばたきによって分離し、次々と現れた『貪る蟲』が下にいる彼等の元へと降り注がれていく。 『蝶』が何度も羽ばたきを繰り返し、その場に現れた人々を『蟲』が貪り始める。 この夜。阿鼻叫喚の声が公園を満たし、混沌と一方的な殺戮に満ちた世界が広がろうとしていた。 ●依頼 アーク本部、ブリフィングルーム――。 座っていた草薙神巳（nBNE000217）は集まったリベリスタに対し、軽く会釈する。 『運命オペレーター』天原和泉（nBNE000024）が全員集まったのを見て取り、話を始めた。 「失踪事件や神隠しという話は何処かしらで、皆さんも聞いたことがあると思います」 時代や年齢を問わず、何処かへ消失した人々。世界中にそのような事例は数多く存在する。 「どうやら彼等は別々の理由でそれぞれバグホールから異界へと入って、そしてこの日に突如『閉じない穴』から帰還してきます」 分析したフォーチュナ達によれば、最も古い者で半世紀近く前から行方不明になった者も存在している。 しかし彼等は消失してからの記憶が何れも皆無な為、気がついたら此処にいるという状態の様だ――その数は全部で108人。 全員消失した時点からの記憶がなく、一切外見的にも年を取らず特段変化もしていないらしい。 「今回の皆さんへの任務は、その人々を追って出現する敵の核となっている『不定形の蝶』を一秒でも早く倒す事にあります。 和泉に続いて、神巳がフォローするように発言を引き継いだ。 「俺と別働隊が出現した人達の護衛と『貪る蟲』の対処に回るつもりだから、皆は『蝶』の討伐に専念してもらいたい」 現れたエリューションフォースの集合体『不定形の蝶』のフェーズは３。 人間を貪り食らう『貪る蟲』を振り巻く他、単体としても恐るべき能力を持つエリューションである。 「敵はかなり強烈な相手だから、もし戦闘の継続が難しいなら撤退を考えて構わない。 けれど今回は沢山の命が懸かってる。せめて避難が完了するまで、できるだけ踏み止まって戦って欲しい」 神巳は願い出るように、ひとりずつと右手で握手していく。 左手は相変わらずポケットに入れたままだったが、真剣な眼差しでリベリスタ達を見つめていた。 |
| ■シナリオの詳細■ | ||||
| ■ストーリーテラー：ADM | ||||
| ■難易度：HARD | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
| ■参加人数制限： 8人 | ■サポーター参加人数制限： 2人 |
■シナリオ終了日時 2012年02月12日(日)23:47 |
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| ■メイン参加者 8人■ | |||||
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| ■サポート参加者 2人■ | |||||
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●顕現 三ツ池公園、『閉じない穴』――深夜。 度重なるエリューションやアザーバイドを吐き出し続けている空間は、特務機関アークのリベリスタ達が最警戒に当っている区域だ。 ただ今回、穴から現れるのは人に仇為す存在ではない。 時代、人種、年齢もバラバラな無害な人々の集団。 近くでリベリスタ達が声を張り上げて避難勧告を促している。 続けて上空に現れたのは、光を纏って虹色に輝く『不定形の蝶』。 大きさは巨大で、10メートル近い全長を有していた。 そこへ駆けつけたリベリスタ達は一斉に臨戦態勢を整えていく。 リベリスタの中でも最速の一人、『光狐』リュミエール・ノルティア・ユーティライネン（BNE000659）が自らの速度を更に高めて言葉の毒を吐く。 「コチトラ……現在ノ測定上リベリスタノ最高数値ハッテンダ……ツイテコサセネエヨ」 当然のように、『不定形の蝶』は向かってきたリベリスタへ大きく羽ばたいた。 広範囲に死毒をもたらす燐粉が巻かれ、数体の『貪る蟲』が地上に落とされていく。 ぼとり、ぼとり、ぼとり。 だがリベリスタ達は落ちてきた『貪る蟲』へ集中をしている余裕はない。 別働隊に蟲を任せて、自分たちは『不定形の蝶』という肉厚で醜悪な蝶を相手どらなければならないのだ。 源カイ（BNE000446）が後衛の盾となる位置に配置して、足元から伸び上がった意志を持つ影を作り出す。 「折角この世界へ生還が叶ったのです、必ずこの脅威を振り払い救ってみせます」 照明弾を風圧の影響を受けない様、高い位置に打ち上げ視界を補う『終極粉砕機構』富永・喜平（BNE000939）。 明るくなった丘の上の広場は、毒の鱗粉に塗れていることが一目でわかる。 蠢く６本の触手を見て、喜平は自分の感覚が可笑しいのかを考えた。 「何故に蝶なんて呼称を……優雅さの欠片も無いんだが」 それに答える様に同じ蝶の字名を持つ、『告死の蝶』斬風糾華（BNE000390）が不機嫌に足元から伸び上がった意志を持つ影を作り出す。 「蝶？ 蝶ですって？ こんな物を蝶だなんて私は認めない！」 その横をすり抜けていた『悪夢と歩む者』ランディ・益母（BNE001403）が全力の得物を高速で旋回させ、激しい烈風で最初の一撃を蝶へ叩き込む。 「先手必殺！ 続け！」 ランディに続いて一気に間合いを詰め、激しい雪崩の如き威力をもって『不定形の蝶』を強引に地面へと叩き付けたのは『初代大雪崩落』鈴宮・慧架（BNE000666）だ。 「初手一陣、参ります」 大きさが大きさである為、地面へ叩きつけられたのは羽根と触手の一部のみだが、充分な初手である。 「私は後衛だねっ！」 そう言いながら『いつも元気な』ウェスティア・ウォルカニス（BNE000360）が詠唱によって体内を活性化させ、神秘の力を増幅させていく。 慧架のお陰で狙いやすくなった触手へと、『錆びた銃』雑賀龍治（BNE002797）が素早い動きで６本同時に光弾を撃ち放つ。 「突如『閉じない穴』から帰還した者達とそれを追う異形、か」 気になったとしても、今は成すべき事を成すだけだと龍治は次手の準備を始める。 穏やかに微笑みながら詠唱をするのは『嗜虐の殺戮天使』ティアリア・フォン・シュッツヒェン（BNE003064）。 「ふふ、また醜悪なのがでたわね。此処に出るのはこういうのばかりなのかしら」 蝶から十分な距離を取っていた為にティアリアは鱗粉の毒素に掛からず神秘の力を活性化させ、強力に循環させていた。 来栖奏音（BNE002598）もティアリアに続き、神秘の力を高めていく。 「一手遅れてしまいますが……回復がメインですので」 寸での所で範囲に入らなかった龍治や慧架、十分な距離を保ったティアリアと奏音は影響を受けずに済んだが、『不定形の蝶』が最初に撒き散らした鱗粉はゆっくり前衛達に降り注いでいる。 慧架と喜平は運良く遮蔽物でその鱗粉を免れたが、他の前衛四人は真正面から鱗粉を吸い込んでしまう。 一撃目であるからこそ死毒にも堪えられるものの、何度も鱗粉が降り注げば危険である事には変わりはない。 リベリスタ達は自分達が相手取った敵の脅威を、これから知る事になる。 ●死闘 その闘いは、正しく壮絶という言葉が相応しい。 口に引っかからぬよう避けながら面接着でとりつき触覚を攻撃していくリュミエール。 攻撃した傍からリュミエールをめがけて触手の一本が彼女に咬みつき、リュミエールの手数には及ばなくとも少なからず着実にダメージを与えていく。 そして、羽ばたきを何度も繰り返す死毒の鱗粉が彼女の身体を蝕んで脂汗をかかせた。 同様にカイが死毒を堪えながらも、自らの影と共にリュミエールの狙う触手を全身から放つ気糸で締め付けていく。 ６本あるうちのもう一本がカイに齧りつき、利き手と反対の腕を鮮やかな赤色に染めた。 絶叫が木霊する。カイの叫びに続いて、ランディが叫び声をあげたのだ。 得物を高速で旋回させ、激しい烈風で範囲内の触手を叩いた直後に、羽にある無数の蟲の口がランディに齧りつく。 ランディの攻撃で触手を一本落とさざるを得なくなった『不定形の蝶』が、羽根を動かしてランディを覆ったのだ。 糾華がそれを見て、自らの影と共にランディを覆う羽根に全身から放つ気糸で締め付け持ち上げようとする。 だが、彼女も死毒の鱗粉による毒素が響いて、持ち上げきる事が出来ない。 「コンナモノ、は、蛾であることすら、おこがましいっ……否定、し尽くしてあげるわ！」 僅かに持ち上がった羽根の隙間から赤色に塗れたランディが転がり出る。 もう一度一気に間合いを詰めた慧架が、激しい雪崩の如き威力をもって反対の羽を強引に大地へと叩き付ける。 「貴方の存在はこの世界では危険過ぎます……！」 その間に墜ちた羽根へ狙いを定めた喜平が高速で跳躍し、『不定形の蝶』の触手へと多角的な強襲攻撃を展開する。 （世間一般では、こんなゲテモノも蝶的なカテゴリーに含まれるの！？） そんな雑念を必死に振り払いながら、出来るだけ千切れそうな触手を狙った事もあり、蝶は二本目の触手を落とす。 慧架と喜平の二人にも墜ちた羽は食らいつき、千切らないまでも真っ赤な線を二人の身体に残した。 ６本が体力を共有しているわけではない事を悟った龍治が、素早い動きで残りの触手４本同時に光弾を撃ち放つ。 「やれやれ……一息吐く暇は無しか、人使いの荒い」 蝶からの直接攻撃を受ける場所にいないからこそ、龍治は淡々と狙い打ち続けられる。 そして、その繰り返した狙い撃ちが徐々に触手の動きを鈍くさせていた。 龍治の攻撃をウェスティアが援護する。 自らの血液を黒鎖として具現化したウェスティアは黒鎖を濁流として落とした羽の半分と触手呑み込み、溺れさせていったのだ。 何度も繰り返し黒鎖を操り続けて、ついに彼女が三本目の触手を落とす。 ティアリアが邪気を退ける神々しい光を何度も放ち、前衛を苛む死毒の穢れをようやく振り払う。 彼女が光を掲げる中で、奏音も必死にリベリスタの体力を回復させ続けていた。 もう一度、『不定形の蝶』が低空へ浮かび上がると、残った３本の触手が熱を感じない光を投げ掛ける。 不定形の蝶の触手たちに特筆すべき重傷を与えた２人と、邪気を払う光を翳している――ウェスティア、龍治、ティアリアが光の対象とされた。 ウェスティアは幸運にも自分の黒鎖が目の前を覆って居た為に直接その光を浴びる事は免れる。 ティアリアを狙った光に反応して、ランディが身を挺して庇った為に彼は直撃を受けてしまい、龍治も狙い撃ちに集中して逃げ切る事が出来ない。 結果、ティアリアは回復に回る事も出来ずにひたすら繰り返し穢れを払う光を翳し続けていた。 リュミエールが光を吐き出した直後の残った触手を目にもとまらぬ速さで羽の一部と一緒に千切り落として沈黙させていく。 カイも焦ったようにもう１本の触手をスローイングダガーで切り落とした。 それに続いて、喜平がランディの代わりに前衛へと躍り出る。 先程まで毎回決めていた素敵ポーズを諦めて、光の飛沫が散るような攻撃を撃ち出す。 芸術的な技の冴えで華麗にして瀟洒なる無数の刺突は、糾華のオーラで作られた死の爆弾を植え付けて炸裂させたのと相まって、片方の羽を完全に沈黙させた。 「貴方如きに名を使わせるほど、蝶という括りは醜くないわ！」 糾華が珍しく激昂して吠える。 蝶は羽を沈黙させた糾華に狙いを絞って頭を近づけると、醜悪な口を大きく開いて彼女を飲み込もうとした。 叫ぼうにも、頭だけが異常な機敏さで彼女を追う。 自らを庇った両腕が、蝶のべたべたした体液と糾華の真っ赤な血液で染められていく。 意識を失いかける直前、糾華は武器を手放して運命の糸を掴んだ。 「コンナモノに使い捨てる命なんて存在しない……！！」 同じ蝶の字名があるのも汚らわしい、本当の蝶という名前を、蝶という名の運命に愛されたのは自分だと、糾華は致命傷から立ち上がる。 天使の歌が糾華の両腕を癒して、彼女に武器を拾わせた。 慧架が最後の１本である触手を雪崩で沈黙させると、残りは胴体と片方の羽だけになる。 飛び上がれもせず、無様に蠢く巨体は胴体で器用に身体を起こした。 ウェスティアも、奏音と共に回復に専念すべく攻撃の手を休める。 錯乱したランディは、残る僅かな理性で前衛から少しだけ距離を置く。 龍治も、前衛から距離を置くのを錯乱しきる直前の僅かな理性で必死に仲間から距離を置いた。 「この腕は味方に振るう為にあるわけでは無い……」 残った胴体が最速で最も多く手数を撃つリュミエールを狙い、カイがそれを全力で庇った。 ウェスティアの天使の歌が間に合わず、カイは運命を手繰り寄せる。 運命の糸は、カイの脳裏に12年前の悲痛な叫び声を呼び覚ましていた。 思い出したくもない記憶は、運命の力と共に怒りの力でカイを奮い立たせる。 「醜い蟲が、アイツでないモノが、アイツの真似事などするな！」 怒りに任せた一撃は残った羽へ誰よりも強い一撃を与える。 更に蝶と呼べない容貌になった『不定形の蝶』は、大きく唸りをあげてまた片方の羽で羽ばたく。 ティアリアの光でランディと龍治が正気に戻された時、彼らは仲間から離れて互いを討ち合い深手を負っていた。 運命を手繰り寄せて、ランディが立ち上がる。 「ふざけんな、俺は全力で……お前を、倒す！」 ランディと反対側に退避した龍治も、運命に愛された者としてまた自らの運命を手繰り寄せる。 「とっとと、片付けねばならんからな……」 今度は慧架に向けて蝶の頭が動きを見せる。蝶は今までで一番大きく口を開いて、慧架自身を全て飲み込むつもりだ。 それにいち早く反応した喜平が既に重傷を負っている慧架を全力で蹴り飛ばす。 「慧架！ 頼む、間に合え…！」 飲み込まれてしまえば、運命に愛されたとしても生き残る見込みはない。 喜平の蹴りで大きく飛ばされた慧架は、運命の糸も手繰れない絶望から救われる。 そして、蝶はそのまま喜平を飲み込もうとした。 反射的に、リュミエールが蝶の後頭部へ上って連続した剣戟を加える。 それによって大きく開きすぎた口が小さくなり、喜平は蝶の頭部で押しつぶされた。 10メートルもの巨体が体重をかけて頭で押しつぶそうというのだ。 彼の口元から大量の鮮血が蝶へ浴びせられる。 「滾れよ、俺の運命……出来るから、ここに居るんだろ」 引き寄せた運命の糸は、決して細くない。 間一髪の所で運命に愛されて、彼は心臓をつぶされる事を免れたのだ。 誰も傷を負っていない者がいない状態で、まだ死の舞踏会は続く。 最早誰がいつ戦死したとしてもおかしくない状況。 蝶による羽ばたきを多く繰り返された為に、まだ退避しきれない108人を守る為の戦いを、リベリスタ達は挑んだのだ。 ●塵芥 リュミエールは、今までで最も多くの手数で『不定形の蝶』に傷を増やしている。 だが、一番近い場所である面接着で胴体に貼りつきながら暴れ狂う羽を仕留めるのは大分難儀な出来事だと言えた。 後衛で回復を続けるウェスティアには、戦況が一望できる。 だからこそこのまま戦いを続けてもう一度鱗粉が撒き散らされれば、撤退すら出来ずに倒れる仲間が現れる事も、よく理解出来ていた。 手傷の深さと苦しさに、彼女も歯を食いしばりながら戦いを続けている。 「私はもう絶対に誰も失ったりしたくない……だから、皆を救えるだけの力を……！」 蝶の片方の羽がもう一度羽ばたきを見せた時、彼女が自らの血脈を犠牲にした黒き鎖の津波が蝶を襲う。 それによって蝶の動きが僅かに止まった瞬間、危機へと向かっていた運命の歯車に僅かながらズレが生じた。 リベリスタの位置しない側、南門へ向かう後方から爆風が巻き起こり、蝶が生み出した『貪る蟲』のひとつが蝶へと飛んできたのだ。 人間大程もあったその大きな蟲は、爆風で加速度を増して蝶の胴体――下腹部を強かに叩きつける。 ウェスティアが爆風のした方向へ振り返ると、どこからきたのか20トンもの大きなトラックが横倒しに倒れていた。 トラックの巨体と戦闘を繰り広げる側にだけに巻き起こった砂煙で、その向こう側の様子は窺い知れない。 だがリベリスタと避難していた人間たちの姿が見えないという事は、おそらく一番危険な場所からは退避出来たのだろう。 彼女はそう思うことにした。 胴体と分厚い片羽というアンバランスな状態で起き上がっていた蝶は、鎖と蟲の直撃によってバランスを完全に崩し、そのまま地に墜ちる。 どんなに敵が強敵であろうとも、攻撃を再開する為にはこの状態から立ち上がらなければならない。 全員が最後の気力を振り絞って思い思いの攻撃を、次々と大地に這いずりまわる蝶であったモノへと叩きつける。 ウェスティアの誰も失いたくないという気持ちは、彼女の運命の糸と絡み合って歯車の切り替えになったのかもしれない。 もうティアリアは、穢れを払う光を翳さなくていい。 奏音と共に天使の歌が二重奏され、全員の致命傷ともいえる傷を癒していく。 リュミエールは無傷だった後頭部へと、決して止まらないかのような澱みなき連続攻撃を加える。 慧架が恐るべき速度を持った鋭い蹴撃でかまいたちを作り出し、蝶の腹を抉った。 「人間の我侭かもしれませんが、諦めてください」 リュミエールへ抵抗するように貌をあげた蝶へ、カイがオーラで作られた死の爆弾を口元へ捩じり込むように、植え付け炸裂させて蝶の口元を痛々しく歪ませる。 胴体の脚部へと喜平が片足を上げた素敵ポーズを取って高速で跳躍し、強襲攻撃を繰り広げて足元を沈黙させた。 「上位世界の連中は遠慮という言葉を知らんのかね。もっとも、……こちらも手加減なんてしないが」 じたばたとみっともなく暴れる羽先へ糾華が全身から放つ気糸で締め付け、羽先の自由を奪う。 「貴方如きに名を使わせるほど、蝶という括りは醜くないわ」 射撃を繰り返して戦況を見てきた龍治は、飛んできた大きな蟲を逃れる暇さえ与えず魔弾で瞬時に射抜き、リベリスタへ向かってくるモノを全て排除する。 その時、ランディが全身のエネルギーを武器のみに集中させて羽の付け根へとエネルギーの球を溜めて一閃した。 「最後の羽……殺ったァ！」 絶望は、絶対的な確信を持つ希望へ。もう胴体しか動くことの無い蝶など、リベリスタ達の敵ではない。 ウェスティアが、前衛後衛入り乱れて総攻撃する中へ自分もと一緒に駆けてきた。 彼女を見て、リュミエールが早く来いと手招きをした。 今度は、全員で。 振りあがるそれぞれの武器と、それに混じる詠唱。 「「「せーのっ！！」」」 『不定形の蝶』はその名の通り、形を定めない塵芥へと還る。 誰一人として欠ける事はなかった仲間達は、死地を潜り抜けた達成感に一息を吐く。 動きが鈍り白色と化した『貪る蟲』を掃討するのに、そう時間は必要としなかった。 |
| ■シナリオ結果■ | |||
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| ■あとがき■ | |||
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