●大切なもの ごめんね、シロ。もう会えなくなっちゃうね? その言葉を、その頃のシロは理解できなかった。 けれど、それから数日後にシロはその言葉の意味を何となく理解することができた。 けれどそれが何故なのか、シロには理解できなかった。 ひとりぼっちだった自分に優しい声をかけてくれ、あたたかなごはんを食べさせてくれたその子は、石の下で眠りについたらしかった。 たくさんの人たちが悲しそうに、泣きながら、その石に花や食べ物をそなえていた。 シロはそれを物陰に隠れて、じっと見ていた。 供えられたものに興味があった訳ではない。 ただ……なにかが気になったからである。 数日経った、ある日のことだった。 線香のかおりが漂う石の前でクーンと鳴いたシロは、次の瞬間唸り声をあげて木々の繁る近くの林へと向き直った。 煙に似た……けれど確かに実体のある何かが、不気味な呻き声をあげながら次々と姿を現わし立ち並ぶ石碑へと近づいてくる。 けれど、シロはそれらには怯まなかった。 天にむかって吼えたシロの体から眩しい光がほとばしると、近づいてきた不気味な存在たちは呻き声をあげ動きを鈍らせる。 だが、『それ』は動きを止めず逃げもしなかった。 冷たく、暗い声を響かせながら……シロを囲むように集まり始める。 それでも、怯むことなく。 目覚めたばかりの一匹のホーリーメイガスは、天にむかって再び気高い咆哮を発し……エリューションたちに牙を剥いた。 それが、じぶんにできるただひとつの……恩返しと、思ったから。 ●勇気と無謀の境界線 「すみません、急ぎの依頼です」 マルガレーテ・マクスウェル(nBNE000216)はそういってディスプレイに表示された地図の説明に入った。 「郊外にある周囲を林で囲まれた霊園なんですけど、ここにE・フォースたちが現れるんです」 E・フォースたちはここへ留まりフェーズを進行させようとするらしい。 「ですが、偶然なのか居合わせたリベリスタが単身これに挑み、エリューションたちを撃破しようとします」 残念ながら、その目的は叶わない。 E・フォースたちの数は多く、対してそのリベリスタの実力は未熟の極……覚醒したばかりの存在なのだ。 「無茶がすぎるとは思います、でも……できることなら助かってほしいんです」 そう言って切り換えたディスプレイの新たな画像に、その場にいたリベリスタたちは一瞬驚きの表情を浮かべた。 白いきれいな毛に覆われた、一匹の雑種っぽい犬の姿が画面に表示されたのである。 「シロ、と呼ばれていたらしいこの犬は、フェイトを得ています」 実力は未熟ですが、れっきとしたホーリーメイガス。 犬としてはかなり賢く、何よりリベリスタらしい心を持っているようである。 「急いで向かえばE・フォースが現れた直後くらい。戦闘直前くらいに霊園に到着できると思います」 幸い到着時には周囲には人はいないらしい。 「シロはエリューションたちに敵意を向けてますので、変に刺激しない限りは皆さんと敵対することはないと思います」 力を得た影響なのか犬としてはかなり知性が高めらしいので、リベリスタたちのことを味方と思えば力を使って援護してくれるようである。 使える能力は2つ。 味方一人を癒す力と、聖なる光で周囲の敵を焼く能力だ。 もっとも、力を得たばかりでどちらも決して強力とはいえない。 それでも一生懸命、エリューションと戦うリベリスタたちを援護してくれることだろう。 「霊園に現れるE・フォースは全部で10体。能力的には全て同じみたいです」 近距離の一体を神秘的な力で攻撃する力の他、周囲の敵を恐怖で弱体化させる能力を持つようだ。 「耐久力そのものはあまり高くはありませんが、物理的な攻撃は効きにくいみたいです」 動きは早くはないが遅くもなく。回避も似たようなものらしい。 ただ、不自然で不気味な動きのせいか攻撃を回避し難くはあるようだ。 「1体1体は強くはありませんが、数が多いです」 充分に注意して下さいと言ってから、マルガレーテは少し迷って……つけ加えた。 「任務は全てのエリューションの撃破です……ですが……もし良かったら、シロも守ってあげて下さい」 もしかしたら、その子も新たなアークの一員なのかも知れませんし。 マルガレーテはそう言って、リベリスタたちを見送った。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:メロス | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年01月24日(火)23:34 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●想い出たちの眠る場所 霊園に到着したリベリスタたちは、息つく間もなく捜索を始めた。 「シロは霊園区画内にいるのかな? E・フォースは林か?」 霊園内を確認しようとした『正義の味方を目指す者』祭雅・疾風(BNE001656)の耳に不気味な呻き声のようなものが響く。 続いて唸り声らしきものも皆の耳に飛びこんできた。 (亡くなった人に恩返ししようなんて泣かせる話だね) 疾風が駆けだし、続くように『太陽と待ち合わせ』パルフェ・オブリビオン・シオ(BNE000750)も走りだす。 胸に抱く想いは、今回が初の任務となる彼女も同じだ。 (恩返しのために必死に戦おうとしているシロさんを放っておくことはできません) 同じ駆け出しのホーリーメイガスとしてもぜひ力になってあげたい。 (これも何かの縁かもしれないな) 仲間たちと共に急ぐ『求道者』弩島 太郎(BNE003470)も、そんな気持ちを抱いていた。 どうやら今回の事件に絡んでいる犬のリベリスタ――シロも、革醒して間もないホーリーメイガスらしい。 「種族が違っても、リベリスタの心は共通なんだね~」 『おこたから出ると死んじゃう』ティセ・パルミエ(BNE000151)も誰に言うでもなく口にした。 (猫として犬はちょっと苦手だけど、なんだか仲良くなれそうな気がするよ) 「絶対、助けてあげないとね!」 その言葉にヒルデガルド・クレセント・アークセント(BNE003356)も頷く。 (亡き者への恩に報いる為に敵わぬ相手に立ち向かうか) 「その意気や良し、ならばわたくし達が助力し、その差を埋めようぞ」 「これも見習わなければなるまい」 ふたりの言葉に『ナイトオブファンタズマ』蓬莱 惟(BNE003468)も肯定を示した。 (恩返しか。犬は忠義に篤いと聞いたが本当のようだな) 「敵の正体は皆目見当付かないが、まあいい、これはそういうのは苦手だ」 駆けていけば霊園の一角に開けた空地が見えてくる。 接する林からはブリーフィングルームで確認したE・フォースらしき存在が次々と姿を現わして初めていた。 そして、ひとつの石碑の傍らでその異形たちに向かって唸り声を発する白い犬が一頭。 パルフェは一直線にシロを目指し、他の者たちも間に割り込むように駆けた。 エリューションたちは、そしてシロも、突然現れた来訪者たちへと意識をむける。 ティセ、疾風、ヒルデガルド、惟の4人が前へと出る。 「数が多いな、助太刀するよ! 変身!!」 疾風はシロに向かって微笑むと、アクセスファンタズムを起動させた。 後衛たちはちょっとシロ寄りに位置を取る。 (死んだ恩人を守る為に一人……もとい一匹で立ち向かうってか) 不思議そうに自分たちを見上げるシロをじっと見てから、明神 火流真(BNE003346)は表情をくずした。 「くー、イイヤツじゃねーか。俺も気に入ったぜ!」 クーンと不思議そうに鳴くシロに笑顔で宣言する。 「俺達はお前に助太刀するぜ! なぁに、犬っこ一匹助けられなくて何がアークだ、ってな!」 ますます不思議そうに首をかしげるシロにむかって、パルフェが話しかける。 (飼い犬……いや、違うか) その姿を視線の隅に留めながら、明神 禾那香(BNE003348)は誰に言うでもなく呟いた。 「墓の主は野良犬にも優しい子だったのだな」 エリューションたちは、すぐ傍までせまっている。 「さて、リベリスタ『弩島 太郎』の初陣か。気を引き締めていくとしよう」 念のためにと結界を発動させた太郎も、話をする一人と一匹へちらりと視線を向けた。 (しかし、エリューションの出現にたまたま居合わせた、というのは……偶然なのだろうか?) それについて深く考える時間はない。迎撃態勢を整えるのでもやっとだ。 もっとも、急いだ甲斐はあった。 シロを完全に後衛へと位置させることに成功した状態で、リベリスタたちは戦いを開始した。 ●呼びかけと、応え 「私達はあのE・フォース達を倒しに来ました。目的は同じようなので協力しませんか?」 パルフェは武器を治めた状態でシロに話しかけた。 普通は伝わらない言葉も、今は彼女の発動させる能力によってシロへと届いている。 「私個人としてはシロさんの力になりたい。ただそれだけなんですけどね」 素直な気持ちを口にすれば、うなずくように、協力を約束するように、パルフェの言葉にシロはワンと返事をした。 その間に前衛たちは既にエリューションと接敵していた。 「攻撃は最大の防御って言うもんね!」 その場の誰よりも早く動いたティセが、エリューションたちをシロの方に向かわせないようにと立ち塞がり、斬風脚を放つ。 攻撃があまり効いたようすはないが、靄のようなE・フォースの体の一部が切り裂かれ、そこから力が流れだし始めた。 様々な状況を想定していた疾風とヒルデガルドは、エリューションとシロの位置関係を確認しながら行動にうつる。 疾風は流水の構えを取り、ヒルデガルドは能力によって脳の伝達処理速度を向上させた。 太郎は魔方陣の展開によって魔力の矢を作りだす。 「ふんっ!」 気合を乗せた掛声と共にティセと同じ標的に狙いを定め、矢を放つ。 その一行に対し、現れたE・フォースたちが次々と襲いかかった。 人間の手足や顔などを無造作に混ぜ合せたような姿をした霧のような靄のような朧気な存在は、不気味な呻き声を発しながら近づくと……その一部を伸ばし、あるいは薄めるように広げ、リベリスタたちを攻撃する。 生あるものを憎みでもするかのように怨嗟の声らしきものをあげるそれは、考えなど無いかのように唯々、近寄れる者に襲いかかる。 前衛たちは後衛を狙わせないことには成功したものの、代わりに10体全ての化け物たちを4人で押し止める形になった。 ティセと疾風は3体ずつ、ヒルデガルドと惟が2体ずつ、エリューションたちを足止めする。 それでも、ティセと疾風は多数のE・フォースたちと対峙しつつも危なげなく戦いを行っていた。 ティセは機敏な動きでエリューションたちの攻撃を回避し、疾風の方は流れるような動きで攻撃をいなすことで負傷を軽減している。 ヒルデガルドは攻撃を受けはしたものの、直撃を避けることには成功しているのでダメージは決して大きくはない。 一方で惟は靄のような腕に掴まれ生命力を奪われはしたものの、怯むことなく前衛として立ち塞がっていた。 (これには動物会話等の殊勝なスキルはない。故に、行動によって身の証を立てるしかなかろう) 2体のエリューションから受けたその傷を癒すように、禾那香が清らかな存在に呼びかけ、癒しの微風を呼び寄せる。 万一敵が前衛を突破してきた場合に。 そう思い後衛を庇えるようにと禾奈香の隣に位置をとった火流真は、いつでも動ける体勢を取りながら体内の魔力を増幅させた。 癒しに感謝しつつ惟は己の生命力を暗黒の瘴気へと変換させ、エリューションたちに向かって放出する。 惟の見る限りエリューションたちはその攻撃にかなりの耐性があるように見えた。 ならば、様子見は充分だろうか? もう一方の攻撃を試すべく惟は構えを取り直した。 ●守る者、支える者 炎を纏ったティセの一撃がエリューションを直撃する。 「それにしても手応えがなくて気持ち悪い……ここお墓だし、これってもしかしなくてもオバケ?」 一度考え始めてしまうと止まらない。 かたかたぷるぷると体が震え、猫耳がぺたーんと、尻尾がだらーんと力なくたれさがる。 (うう、怖いけど! 怖いけど! 倒しちゃえばいいよね!) 反撃とばかりに伸ばされてくる腕らしきものをティセは機敏に回避する。 一方で疾風は可変式モーニングスター[響]による打撃で攻撃に対する敵の耐性を確認していた。 通常の打撃と、それとは異なる神秘の力を行使した攻撃。 厳密な判断は難しいが、敵のようすから見ると与えるダメージに大きな差異はなさそうに思える。 疾風自身が物理的な攻撃力に突出して優れているが故だろう。 ならば覇界闘士としての能力を活かせる攻撃の方が効果は大きいといえるかもしれない。 そう判断した疾風は響に炎を纏わせた近接攻撃で、時折連続で攻撃を繰りだしながらエリューションたちにダメージを蓄積させていった。 敵の攻撃は構えで受け流し、流し切れぬ攻撃は防御することでダメージを打ち消し、或いは最小限に押さえていく。 「さて、どのように攻め立ててくれよう」 ヒルデガルドは敵の動きから行動を予測し、それらを基に敵の弱点を精確に突く攻撃によってエリューションたちにダメージを蓄積させていた。 物理的な攻撃ではあるが、敵の要所を正確に突く一撃は実体のうすいエリューションに対しても効果を充分に発揮している。 同時に、敵が後衛に向かおうとする動きを見せれば作りだした気の糸で牽制するように攻撃をしかける。 前衛たちは敵の攻撃を完全に阻み、そのお陰で後衛たちは攻撃や回復に専念していた。 エリューションたちの攻撃で傷ついた惟へと、太郎が気迫のこもった掛け声で癒しの力をもたらす。 「無理は絶対にしないでくださいね?」 前には出過ぎないように。 後衛での援護に回ってもらうように頼むと、シロはその言葉に応えるようにワンと鳴く。 それを確認したパルフェはアクセスファンタズムから武器を取出し、活性化させた魔力を循環させた。 攻撃によってエリューションたちはその数を減らし始めている。 だが、前衛達も決して無傷では無い。 「ここからが本番だ」 禾那香はそう呟くと……傍らのホーリーメイガスに、シロに、話しかけた。 ●仲間、だから 「シロよ、恩返しをと思う気持ちは間違っていない」 だがな、想いを受け、心を得てしまったのならば1人では生きてはいけない。 「一人でなくてもいいという事実を知った君は独りであることに耐え切ることが出来ないでいるように思える」 伝わっているのかは分からない。 それでも、真摯な、まっすぐな瞳で自分の瞳を見返してくるシロに、禾那香は語りかけた。 「大丈夫だ。フォローはわたしに任せておけ。なに、わたしに面倒を押し付けてくる存在が一人増えるくらい全く問題ではないさ」 ワゥンと肯くように吼えられて、禾那香も応えるように頷いた。 「そうだ。火流真に比べたら、君は随分と人間が出来ている」 「……っておい、火流真に比べたらってなんだよ禾奈香!?」 抗議の声には答えずに、禾那香は力を集めると邪気を退ける聖なる光を作りだした。 周囲に撒き散らされ前衛たちの攻撃を鈍らせていた霧が、生みだされた光によって払われる。 「……ったく、纏めて爆ぜな!」 続くように火流真が魔炎を召喚し、エシューションたちを巻き込むように炸裂させた。 惟も闇のオーラを収束させ単体を狙い撃つ魔閃光に切り換え、エリューションたちを弱体化させダメージを与えていく。 「このような場合は各個撃破が基本か」 標的は後衛を狙おうとするものか、味方の攻撃によってダメージを受けた対象だ。 パルフェも他のホーリーメイガスたちと回復が被らないようにと声を掛け合いながら詠唱で清らかな存在に呼びかけた。 まだまだ力量は足りないかもしれない。 それでも、全身全霊を掛けて。 癒し手たちは連携し、前衛たちの傷を癒していく。 太郎は気迫のこもった掛け声と共に。 禾那香は仲間たちの負傷や敵の攻撃を減じる力の影響を確認しながら。 3人は、いや、3人と1匹は、声を掛け合い力を併せた。 多くの場合は回復が足りていたので、シロは咆哮と共に放つ聖なる光でエリューションたちを攻撃した。 効果は弱めだったものの、一度だけ強い光がエリューションたちを怯ませ、能力を一時的に低下させる。 力を使い切った後もシロは前には出ず、応援するように吼えつづけた。 そして前衛たちは後衛たちの援護を受け、前線を支え続ける。 ヒルデガルドや惟の受けた傷を天使の息が癒し、聖なる光が動きを鈍らす靄を払う。 戦いが長引き負傷が蓄積してきたティセも癒しを受け、3体のエリューションを倒しきれはしないものの完全に足止めすることに成功していた。 疾風は森羅行を使うほどの負傷を受けることなく、業炎撃によってE・フォースたちを退けていく。 物理攻撃に対する防御力から吸血攻撃による回復は難しいと判断したヒルデガルドは、自身の攻撃手段を切り換える。 「絶対にやらせはしないんだから!」 炎を纏ったティセの一撃が急所に直撃し、1体のエリューションが燃え尽きるように姿を消した。 その頃には他の前衛たちも1体、疾風は2体のエリューションを打ち払っていた。 後衛たちの集中攻撃も加わり、エリューションの撃破速度は加速していく。 この時までは長かったが、ここからの時は……短かった。 しばしの時を経て、すべてのエリューションが消滅する。 そして、 静寂を取り戻した霊園の中には……8人と一匹が全員倒れることなく、それぞれの足で立っていた。 ●アークのリベリスタ 「これも若輩の身だが、共に並び立つ仲間がいるというのは心強いな」 構えを解きながら惟が口にする。 太郎も構えを解くと、霊園内を見回した。 戦いの終わったその場所は、静寂を取り戻している。 ここは、たくさんのものが静かに眠り続ける場所なのだ。 或いはそういった何かがエリューションの力によって形を得てしまったという事なのかもしれない。 ティセは並ぶ石碑のひとつ、最初にシロがいた墓石の前で……手を合わせた。 「あの子のために、この場所を守りたかったんだよね?」 尋ねれば、クーンと小さくなきながら……シロはティセを見上げて、しっぽをふる。 「キミがこの世界が好きで、その身に代えても守りたいと思うなら、アークに来てみない?」 続くようにパルフェも呼びかけた。 「これから先も今回のようなことは起き得ります」 悲しい思いをする人、動物が出ないように一緒に力を使っていきませんか? 疾風もしゃがみこむと、シロの頭をなでながら話しかけた。 「アークに来ないかな。たまにはここにお墓参りに来ればいいと思うし」 惟もアークに来るかとシロに尋ねる。 脳内嫁が、可愛くて健気な犬に惹かれたらしい。 禾那香は、持ってきたドッグフードをあげながらシロを優しく撫でた。 犬は好きだ。 「……一緒に、来るか?」 来てくれると嬉しい。 そう話しかける姿を、火流真は何も言わずに眺めていた。 (……こいつ犬好きだからなぁ) 口に出しては言わない。それでも何か感じたのか。 「…………何だ、火流真、その顔は」 「別にっ。お節介は程々にしとけよ!」 視線に気づいた禾那香が問えば、火流真は吐き捨てるように言ってそっぽをむいた。 (……でも、ま、なんだ。シロも中々良い根性持ってるみたいだし) 誘ってみるか。 そう思い、少年もシロに話しかけた。 俺達の所、アークに来いよ。 「べ、別に禾奈香に同調する訳じゃないけどな!」 誘った後、弁解するかのようにちょっとムキになって声を張り上げる。 「アークであたしたちと一緒に、この世界を守ってみようよ?」 ティセの、みなの呼びかけにシロはしっぽを振ってから……墓石を、振りかえった。 邪魔をしないように、リベリスタたちは霊園の外へと足をむける。 シロは石碑にむかってクーンとないたあと、天を仰いだ。 何かを告げるような、宣言するような咆哮が、あたりに響く。 そして、一匹のホーリーメイガスは……墓石に背を向け、駆けだした。 やさしいひとたちを、たいせつな仲間たちを、追いかけて。 想い出をくれた、たいせつなせかいを守るために。 こうして一匹のホーリーメイガスが……この日、アークの一員に加わった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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