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【温泉物語】もしも秘湯に潜む影があったら

●霧の中に響く音
 訪れる者も無い深い山奥。
 そこでは異界からの招かれざる来訪者達が、未だ向こう側に居る恐るべき彼らの主をこちら側に呼び出そうと、夜な夜な冒涜的な儀式を行っているという――
 
 私はとあることが切っ掛けでそんな都市伝説を聞きつけ、好奇心からその真実を解明しようとその場所を目指すことになった。
 今から思えば何故そんな事をしようとしたのか。悔やんでも悔やみきれない。

 頑なに口を開こうとしない非協力的な地元の人間に金を握らせ、強引に説き伏せて情報を得た私は、人間の侵入を阻むかのように茂る森へ足を踏み入れ、濃霧に惑わされ何日も彷徨った。

 異様で不快な湿気の中、身体は泥だらけになり、水も食料も尽き、方向感覚も失われた。このまま誰にも看取られること無く野垂れ死に、獣の餌となって食い散らかされ骨を晒すのが、隠された謎を暴こうと禁断の領域を侵した私に対する罰であり呪いなのであろうか。静かに確実に忍び寄る死の気配を前に私は絶望し、なす術は何も無く待つしかなかった。

 死を覚悟したその時、濃密な霧の向こうから奇妙な音色が聞こえて来たのだ。こんな山奥に私以外誰がいるというのか。私は既に正気を失ってしまったのか。

 生き物の鼓動の様な太鼓の音色。そうまるで神に捧げる囃子の様な――

 朦朧とした意識で薄暗い霧の中を芋虫の様に這い、音のする方を目指す。草木を掻き分けて道なき道を進むと急に周囲が開けた。

 そこは小さな泉だった――いや、正確に言うと温泉だった。
 水面から立ち上る湯気が周囲に熱帯雨林の様にじっとりと湿気をもたらしている。私をさんざん苦しめた霧はここから発生していたのであろうか。そんな事より、これで数日ぶりに喉の渇きを癒し、身体中にこびり付いた不快な泥落とす事ができる。

 不意に与えられた希望に、私は残された気力を振り絞ってよろめきながら水辺に近付いた。

 突然、背後から強く肩を何者かに突かれてバランスを崩した。
 状況を理解する暇も無く、衝撃と共に私の服は引き裂かれた。いつの間にか太鼓の囃子が頭が割れそうな程に響き渡り、視界がぐにゃぐにゃと捻じ曲がる。
 突き飛ばされ、地面に転がされたかと思った直後、今度は身体中に気味の悪い粘着く液体を浴びせかけられ、その刺激臭に酷い吐き気と痙攣を催す。
 薄れ行く意識の中、良く分からないが複数の影が私を取り囲んでいるのがぼんやりと見えた。
 突然、人のものとは思えない様な怪力で強引に引き起こされ、今度は空中高く舞い上げられ、一瞬の静止状態から激しい勢いで泉に叩き落とされた。気管から入る水に溺れるより先に全身の骨が砕け、私の人生は
ここで終わってしまったのだ。

●Deja-vu
「山奥の秘湯、天然露天風呂」
 アーク本部、ブリーフィングルームに集まったリベリスタ達を前にフォーチュナ・真白イヴはいつもの様に淡々とした調子で切り出した。
「慰労会……じゃないよな。何か前にもそんな話を聞いた様な気がするが……」
「きっと気のせい……今回の任務はある山中の露天温泉に開きかけている小規模なディメンションホールを破壊する事。それとその近くに現れるE・フォースの撃破。今は周辺に人が居ないけど、放っておくと数日後に好奇心旺盛な自称神秘研究家がやってきて殺され、その後ゲートも開いてしまう。そうなれば、別チャンネルから強力なアザーバイドがやってくる事も予測される。必ず阻止して」
 そこで言葉を切るとイヴは集まったリベリスタ達一人一人を見回し、一呼吸置いて続ける。
「E・フォースは全部で5体。温泉に人間が近付くと現れる。全ての個体がBSを与える攻撃能力を持っていて、連携しながら襲ってくるから充分に気を付けて」
 頷くリベリスタ達。
「ああ、そうそう……」
 立ちあがり準備を始めたリベリスタ達にイヴは最後の注意を告げる。
「……言い忘れていたけれど、温泉は美肌に火傷、切り傷の治療に効能があるらしいの。
 仕事が終わったら、ゆっくり浸かってくると良いわ」
「どこかで聞いたなその台詞」
「きっと気のせい」


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:柊いたる  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2012年01月26日(木)23:34
柊いたるです。4つめのシナリオリリースになります。
妙なノリですが危険度は高いですので、くれぐれも油断されぬよう。

■勝利条件
5体のE・フォースを倒し、ディメンションホールを破壊する。

■敵
E・フォース×5
外観は人間の成人男性によく似ていますが、人間とまともなコミュニケーションは取れません。

1:コードネーム『ストーム』 常に太鼓を叩き続け、戦場に存在する敵の能力を低下させます。直接攻撃はしてきません。 固有スキル:嵐を呼ぶ太鼓囃子
2:コードネーム『ミスト』 速度に優れ、死角から防御力を低下させる攻撃を放ってきます。 固有スキル:変移抜刀脱衣斬り
3:コードネーム『ダイバー』 近接パワー型。非常に強力な一撃を放ち、それを受けた者を昏倒させます。 固有スキル:浴槽落とし
4:コードネーム『レイン』 直接攻撃力は低いものの、状態異常でダメージを継続させてきます。 固有スキル:綺麗綺麗
5:コードネーム『アンカー』 何故か他のE・フォースの攻撃を受けており、自分からは攻撃をしてきません。 固有EXスキル:End of the world
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
クロスイージス
アラストール・ロード・ナイトオブライエン(BNE000024)
デュランダル
宮部乃宮 朱子(BNE000136)
クロスイージス
春津見・小梢(BNE000805)
ソードミラージュ
山田・珍粘(BNE002078)
クリミナルスタア
桐咲 翠華(BNE002743)
クリミナルスタア
セシウム・ロベルト・デュルクハイム(BNE002854)
ソードミラージュ
黒乃・エンルーレ・紗理(BNE003329)
ホーリーメイガス
護堂 陽斗(BNE003398)

●霧の中を進むもの
 深い山中に立ち込める濃密な霧の中を進む集団があった。
 この様な場所を探検するには軽装過ぎる少年少女達。
 そう、彼らこそがこの地の怪異を解決するために派遣されたアークのリベリスタ達なのだ。

「事前に都市伝説について調べてみたけれど、以前からこの辺りで度々謎の失踪事件が起きていた様だわ。村人は不信心者への神罰なんて言っていたけれど、詳しい所までは聞き出せなかったわ」
 そう語るのは『消えない火』鳳 朱子(BNE000136)。
「ふむ、見方を変えると邪教の儀式現場の様なありさまですね。好奇心、猫を殺すと言いますが、死人が出無いに越した事は無い」
 先頭を歩く『祈りに応じるもの』アラストール・ロード・ナイトオブライエン(BNE000024)が騎士道の信奉者として事件を放置はできないと朱子に続き、『剣を捨てし者』護堂 陽斗(BNE003398)も、
「異様な状況とはいえ、敵の力は強大。必ず儀式を止めなければなりませんね」
 と、『ChaoticDarkness』黒乃・エンルーレ・紗理(BNE003329)と顔を見合わせて深く頷き合う。
「温泉にやってくる不埒な輩、タチ悪いことこの上ないわ。世界にあだ為すものを成敗するだけの話」
 紗理の声に皆が決意を新たにした。

 一方その傍らでは、
「しかしイヴ嬢の言葉、どこかで聞いたような………でじゃぶ、ってヤツですか………」
 神妙な面持ちの『虎人』セシウム・ロベルト・デュルクハイム(BNE002854)に、
「おや、あなたもですか」
 『残念な』山田・珍粘(BNE002078)が応じる。いや、那由他・エカテリーナさん(自称)らしいので、できればそう呼んであげて下さい。
「私なんかこれと良く似た依頼に参加したような気がするんですけれど……まぁ、それより、ゆっくり温泉に浸かるために頑張ると致しましょう」
 その通り。細かい事は気にしないのが一番である。
 温泉と聞いて、『銀猫危機一髪』桐咲 翠華(BNE002743)も
「さっさと依頼を片付けて………のんびり骨休めをしたい所ね?」
 と、期待に大きな胸をさらに膨らませ、その横では『まだ本気を出す時じゃない』春津見・小梢(BNE000805)が
「温泉だー、ひゃっほーい」(棒読み)
 そう言いながら気だるげに伸びをした。

●Shadow dancer
 霧深い山中を強行軍するリベリスタ達であったが、『万華鏡』を制御し、未来を見通すアークが誇る天才フォーチュナ、イヴから与えられた前情報もあって、迷う事無く目的地へと近付いていた。

「静かに。何か聞こえてきませんか?」
 周辺を警戒していた珍ね……いや、那由他さんが一行の歩みを制した。
 立ち止まって耳を澄ませば、確かに霧の向こうから太鼓の音が響いてくるのが分かった。
「いよいよね。準備はいい?」
 紗理の声に全員が装備を再確認し、不測の無い事を確かめると、音のする方へと歩みを再開する。

 そして、鬱蒼としていた森が開けると、一行の目の前にその温泉が静かにその姿を表した。 
「あら、なかなか風情があるじゃない……」
 揺れる水面と如何にも秘湯然とした神秘的な佇まいに、翠華は思わず心を奪われ声を上げる。
「上から来ます! 気を付けて!」
 紗理の警告の叫びと『それ』が頭上から降って来るのはほぼ同時だった。
 人の形をした黒い霧の様な存在。
 あわやという所で翠華は飛び退き、なんとか不意打ちを避ける事が出来た。
 一行が体勢を整え、武器を構えると、温泉を囲む木々の間から、ゆらりゆらりと幽鬼の様な黒い影が最初の物と合わせて5体、姿を表す。太鼓の音が一層大きくなり、リベリスタ達の身体が重く思う様にならなくなり始めた。
 
「まずはストームを!」
 中折れ式の狩猟用拳銃を構えたセシウムが、一心不乱に太鼓を叩く影にバウンティショットの速射を放つ。その弾丸は狙い通りに影の腕に命中し、その身を一瞬止めさせるが完全停止させるには及ばない。
 続いて翠華のハニーコムガトリングが影達の頭上から、嵐の様に弾丸の雨を降らせる。

「私はダイバーの抑えを……ってどれがダイバー!?」
 DIVA-紅刃剣を手に敵へ斬りかかろうとした朱子は狼狽した。
 そう、敵の姿はどれもはっきりしない影の様なもので、これといった特徴が無いのだ。能力こそイヴから聞いていたものの、それを使用するまでは自己紹介でもしてくれない限り、区別がつけられない。

 ザシュッ!
 
 注意が逸れたその隙をついて、影の一つが朱子の死角から鋭い斬撃を浴びせ掛けた。
 致命傷は免れたものの、鋭い刃で服が切り裂かれ、朱子の白い肌が見え隠れする。
 その光景に思わずセシウムは目を奪われるが、ここは戦場。一瞬の油断が命取りになりかねないと、目の前の敵に視線を戻す。

「『変異抜刀脱衣切り』……という事は、こいつがミストですね」
 行動から察したその敵をアラストールは裂帛の気合いと共に繰り出したヘビースマッシュで叩きつけ、他の影と入れ替わらぬ様にその行く先を塞いだ。
「絡め手に長けるか――だが、その詐術、正面から叩き潰そう」
 手にしたブロードソードが光を受けて煌く。
 同時に陽斗の翼の加護が皆に飛行能力を与えた。不利にならぬ様に地上スレスレの低空飛行を維持する。これで足元の悪さは気にしないで戦う事ができる。

「私はレインだけど……どっち?」
 小梢の前には2体の敵が立ち塞がっていた。向かってくる事からレインとダイバーなのだろうが、やはり外見に違いはなく、見分けが付かない。
 連携に翻弄され、小梢は気味の悪い粘液を浴びせられ、怯んだ所をもう一体、ダイバーに背後から動きを封じられるとあっという間に空中高く舞い上げられた。
 落下と同時に温泉に叩き込まれ、大きな水柱を上げる。嫌ほど湯を飲まされ、意識が朦朧とする。
 
 低空を滑る様に珍……那由他が駆け抜け、煩わしい太鼓を叩き続けるストームに幻影剣で斬りかかる。その切っ先が影の一部を切り裂き、体勢の崩れた所へ合わせて紗理がソニックエッジでアナーキック・レイピアの目にも止まらぬ連続突きを叩き込む。
 影は苦悶の雄叫びを上げる様に揺らめいた。致命傷と迄は行かなかった様だが、確かな手応えがあった。かなりの痛手を負わせたに違いない。
 
 続いてセシウムがブレイクフィアーで忌々しい太鼓の呪いから、仲間達を解放する。重く気だるい気配が失せ、これでリベリスタ達もようやく本領を発揮するべく体勢を立て直す。

「何が出来るのかは、知らないけど……本当に厄介な相手ね?」
 そう呟きながら翠華は敵の動きを警戒した。一向にこちらへ攻撃してこない個体、アンカー。その不気味さが頭から離れない。
 その時、アラストールの一瞬の隙を突いたミストがアンカーへ向かって突進し、その高速斬撃を放つ。
 考えるより早く翠華はその身体をミストとアンカーの間に割り込ませ、自分が受ける事でその攻撃を防ぐ。
 幸いダメージは浅いものの、服は切り裂かれ、際どい所でその役目をどうにか果たしている状態だ。
 
「要は敵が死ぬまで死ななければ勝ちなんだ」
 ダイバーをブロックする朱子がメガクラッシュで敵を温泉に向けて吹き飛ばす。
 その間にも脳裏にアンカーの事がちらついて離れない。
(アンカー………最終走者………錨? 儀式成立にはその場で誰かが死ぬのが条件なのだろうか……?)
 ミストを抑えるアラストールも考えは同じ様だ。互いに視線を交わし、頷き合う。
 アンカーの死が何らかのトリガーである事は間違いないようだ。 

 陽斗もアンカーの傍に立ち、攻撃を仕掛けて来る影達を退けていた。明確な敵であるリベリスタだけでなく、味方をも攻撃する影達。その行動には意味があるはず。そしてそれは決して好ましい結果を生まないだろう。
 ――ならば、それを達成させてはいけない。
 戦場に陽斗の天使の歌が響き渡り、傷付いた仲間達に再び戦う活力を与える。

 小梢は立ち上がり、頭を振って纏わり付く吐き気を払拭し、自らのブロック担当であるレインがアンカーを目指すのをを見つけ、その前に立ち塞がる。
 先程は不覚を取ったが、今度はそうはいかない。パーフェクトガードの鉄壁の構えで絶え間無い猛攻を防ぎきる。

「消えて、ください……!」
 数合の打ち合いの末に、紗理と那由他の同時ソニックエッジによるコンビネーションプレイでストームが切り伏せられた。その姿は文字通り霧が散る様に空中へ搔き消えて行く。
 二人は次のターゲットを求めて周囲を見回し、次はダイバーへ走る。

 紗理と那由他がダイバーを抑える朱子の元に駆け付け、セシウムと翠華も援護射撃を絶やさない。
 同時に切り裂き、穿つ。息の合った連携攻撃に打たれ強さを誇るダイバーの膨大とも言える体力もじりじりと削り取られて行く。
 四方からの攻撃に手の回らなくなったダイバーの死角から翠華のナイフ、神風招来がその名に違わず疾風の様に放たれる。
「隙を見せると、痛い目にあうわよ?」
 ダイバーの頭部が吹き飛び、黒い霧が掻き消す様に散って行く。だが、彼らはその様子を悠長に見守る事は無く、即座にレインと戦う小梢とミストを抑えるアラストールに加勢し、攻める者と守る者を特化させた得意のコンビネーションでそれらを撃破する。
 メンバーの盾となっていた朱子やアラストール、猛攻を受けた小梢もボロボロであるが生きている。

●Final Countdown
「後はアンカーだけ……」
 朱子が最後に残った影を睨む。今まで攻撃をして来ず、味方からの攻撃をあえて受けていた謎の敵である。警戒を緩める事は出来ない。
 
 アラストールは温泉の水面上の空気が不自然に揺らめいている事に気が付いた。
「これは……ディメンションホール」
 ゆらゆらと白い霧のカーテンの様にも見えるが、その向こう側から得も言われぬ邪悪な気配を感じ、背筋に冷たいものが走る――

 おおおお……

 苦悶の叫びか主への祈りか。不快な声ならざる声を上げてアンカーは温泉に入り、身を揺すりながら異界と現世を結ぶゲートへと近付いて行く。

「何かする気です。気を付けて!」
 アラストールの警告に朱子が素早くダッシュし、アンカーの背後からメガクラッシュで弾き飛ばし、ディメンションホールから引き離す。
 即座にセシウムと那由他が吹き飛ばされたアンカーへ駆け寄って行く手を遮る。

 その時、リベリスタ達は刺す様な視線を感じた。
 何かが居る。
 この場に残っている敵はアンカーだけ。他に何が居るというのか。

「ゲートの向こうからものすごい殺意が……」
 異変に気が付いた紗理が指差すその先、ディメンションホールの揺らめきの向こう側から低い地鳴りか唸り声の様な響きが聞こえて来る。
 気配を感じたのかアンカーが狂った様に暴れ出す。主にその身を生贄として捧げようとしているのか。

「早くゲートの破壊を!」
 アラストールの叫びにディメンションホールへと陽斗が走る。
 見えないが何かが近づいて来るのを感じる。それも危険な何かが。一刻の猶予もならない。
 全てのリベリスタ達がそう直感した。

 水上を飛行し、ホールに近付いた陽斗がブレイクゲートを使用する。
 ガラスの割れるような硬質な音が響き渡り、まだ小さくて不安定なディメンションホールはいとも容易く崩壊を始めた。揺らめきは止まり、霜に覆われた氷壁の様に姿を変える。

 もの凄い衝撃と共に氷壁に亀裂が走った。
 何かが向こう側から攻撃している。
 瞬く間に氷壁が打ち砕かれ、何かが飛び出して来た。そうそれは――鉤爪の付いた巨大な腕。
 腕だけで見上げる様な大きさだ。ゲートが小さくて本体はまだ向こう側から出て来られないようだが、全身を想像するのも恐ろしい。
 体表を気味悪く脈動させた『それ』は探る様に手を振り回し、嵐の様に水を割り、周囲の木々を引き倒す。
 直撃を食らえばリベリスタといえども無事では済まない。
 もし、そいつが向こう側から出てきたら――

 だが、その不安は杞憂に終わった。
 ブレイクゲートにより崩壊の進んでいた入口はそれを維持する事ができなくなり、内側へ向かって崩れて行く。一際大きな破壊音と共にディメンションホールは消滅し、周囲に静寂が戻ってきた。

 腕は氷壁のあった地点で寸断され、落下すると沸き立つ泡の様にドロドロと融解して消えて行く。
 振り返ればアンカーもまた同じ様に地に倒れ、風に溶けて行く所であった。

●おんせん!
「お、おわったー」
 小梢がフラフラになりながらもガッツポーズをとる。
「温泉でゆっくりしたい。温泉でカレーが食べたい。ゆったりたっぷりのんびりー」

 それを聞いたセシウムの顔が緩む。
「きっと一仕事済ませたあとの温泉は格別なはずです。おや、温泉は一つしかありませんね……不思議な事にメンバーの大半は女性ですね……」
「うむ。温泉は良いな、日頃の疲れがとれそうだ」
 いそいそと服を脱ぎ出すアラストールさん(性別不詳)。豪快に何も隠さず……おおい!
「ああ、こんな事もあろうかとタオルを持って来たので使って下さい」
 身体を見ない様に顔をそむけながらタオルを渡す陽斗君。ナイスフォローだ。

 よいこもみてるび-えぬいー。きよくただしいびーえぬいー。けんぜんはぎむです。

 タオルを配った陽斗は自分自身も服を脱ぐ。下に水着を着ていたのだ。
「あら、あなたも? 準備が良いのね」
 と、翠華さん。セクシーのはらりと服を落とせばその下はスクール水着。
 わお。スクール水着ですよスクール水着。(大事な事なので二回言った)
 翠華さんの西瓜の様な胸が小さなスク水にぎゅうぎゅうに押し込められてとても苦しそうです。
 見てはいけないと思いつつガン見してしまうのはセシウム君だけではあるまい。
 てゆうか、二十歳にもなってスク水とかどうなんですかえらい人。
「季節外れだから、これしか売ってなくて、仕方がない事なのよ?」
 そういうなら仕方ないですね。うん。

「いやー、前にもこんな経験をした気がしますが、気のせいでしょうかね」
 珍ね……那由他さんも持ってきた水着に着替え、早々に湯に身体を沈める。
 あまり身体を見られて、あれこれ言われたくないからのだが、詮索しないのがマナーである。 

 水着を持ってこなかったメンバーにもタオルが配られ、そのお陰で無事にみんな仲良く混浴と相成った。
「ん……一仕事を終えた後の温泉は、気持ち良いわね」
 翠華の声に朱子や紗理も笑みで応える。
 激しい戦いだったが、一件落着。温泉に入って身体も心もリフレッシュ。
 ちょっと周囲の風景が滅茶苦茶に壊れているけれど、気にしちゃいけない。
 ここは誰も知らない秘密の温泉。しばらくはリベリスタ達が独占しても許される事だろう。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
皆さんお疲れ様でした。大変楽しく執筆させていただきました。