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【ヤミィのアトリエ】ひとりの力、みんなの力

●ただいま気分的には試験中
「ええと……これじゃちょっと普通すぎるかも知れない」
 頭をおさえたようなポーズで少女は考えこんだ。
「……かといってどういうのが良いか分からないし……」
 工房の中には幾つかの機材が準備だけ整えられたまま放置されている。
 彼女が頭を抱えている机の上には何冊もの本やノートが山積みになっていた。
 ノートの開かれたページには様々な文字や方程式らしきものが記されている。
 書きなぐるという表現がぴったりの字体は、決してきれいとはいえない。
 けど、気持ちはすごくこもっている感じだった。
 方程式に気持ちが重要かどうかはともかくとして。
「……やっぱり何か依頼とかで役に立つものが良いよね……でもそんなキチンとした物が作れるわけないし、そもそもどういうものが役に立つかなんて分からないし……」
 彼女がここに来ることになったきっかけ。
 アークという存在を初めて知ったその日。
 リベリスタと名乗る人たちに色々話は聞けたけど、その時の彼女はただ知らないことに驚いて感心するばかりだった。
 応用したり、こういうのがあれば楽そうかな……みたいな考えまでには至らなかったのである。
 その日のことを思い出して……少女は表情をすこしゆるめた。
 もったいなくて使っていない、尖った色鉛筆。
 ぬいぐるみに、ペンダント。
 それは、ただ贈物をもらったというだけではない。
 おくられた幾つもの言葉と、想い。
 あの日のテーブルに並んだ、パイやタルト、クッキー。一緒のお茶会。
 ……頑張るみんなの役に立つような物が作れたら。
「……いや! でもそんな凄い物とか作れるわけないしっ!! でもありきたりのものじゃ意味ないし……」
 そもそもありきたりのものって何だろう?
 考えれば考えるほど、頭の中が……ごちゃごちゃとこんがらがっていく。
「あーもーっ!! ……うぅ、全然思いつかない……どうしよう……」

●張り詰めないブリーフィングルームにて
「すみません、ちょっとお手伝いみたいな感じのお仕事なんですけど……」
 マルガレーテ・マクスウェル(nBNE000216)はそう言ってから、ファイルを開いて幾つかの資料をブリーフィングルームの机の上に広げてみせた。
 十代中盤くらいの少女の写真が張りつけられたペーパーには、色々な説明文がつけ加えられている。
「ヤミィさんという方なんですが、以前にエリューション事件というか事故を起こしそうになりまして……」
 その縁で最近三高平市に引っ越してきてアークに所属された方らしいんですが。
 そこまで言ってからマルガレーテは少し考えこみ……単語を積み重ねるようにして説明した。
 要約すると、真白博士に試しに何かつくってみろと言われ、それを真剣に受け止め過ぎて……考え過ぎて……行き詰ってしまったらしいのである。
「……自分は試されているのかも、くらいの感じなのかもしれません」
 博士にいってみたら、そういうプレッシャーの中で何かを作るのも大事だみたいな感じで返されました。
「ある意味、試練みたいなものなのかもしれません」
 そういってから……けど、とマルガレーテは付け加えた。
「ひとりで無理なら誰かに力を借りて良いんじゃないか、と。そんな感じのことも博士は言ってました」
 それがアークなんじゃないかと……そういう事なんじゃないかと思います。
 そう言ってマルガレーテは、もし時間があるという方がいましたら何かアイデアの提供とかお願いできないでしょうかとリベリスタたちを見回した。
「いえ、キチンとした協力とか資料提供とかじゃないんです。ちょっと話をしたり聞いたり、差し入れとか持っていったり……とか」
 そういうことならと幾人かが快く応えれば彼女は笑顔で礼を言ってから、つけ加えた。
「あの、すみません。こういった時でなければ無理ですし……よかったら私も行かせてもらえませんか?」
 普段は絶対に無理ですし、こういう機会に一度、みんなと一緒にいってみたいんです。
 お願いしますと頭を下げる少女に、苦笑いなどを浮かべつつ。
 リベリスタたちは肯定をかえした。



■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:メロス  
■難易度:EASY ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2012年01月19日(木)22:57
オープニングを読んで頂きありがとうございます。
メロスと申します。

今回は何かの実験を行おうとして悩んでいる少女にアイデアの提供をしてみませんか?
という依頼になります。
登場人物に関しましては、
シナリオ『ヤミィのアトリエ』の方を御参照下さい。
前登場時にくらべると、やや明るくなった様子です。

依頼の方向性は、ネタ、コミカル+ほのぼの系、辺りです。
何でも言ったりしてみたりすれば最終的に『風が吹けば桶屋が儲かる』的にアイデアが閃くと思いますので、あとは皆様の思うままに。
思いつく事、作ろうとしてみる事が大事ですので、仮に思いついたものを作ろうとして失敗したとしても依頼そのものは成功となります。

マルガレーテが同行させて頂きます。
頑張ってアイデアが浮かぶ御手伝いをとか言ってますが、差し入れと称してお菓子を買ったり等、パーティー気分な所があります。
何か言えば難しい事等でない限り、言われた通りの事を行おうとすると思います。

それでは、興味を持って頂けましたら。
どうぞ宜しくお願いします。
参加NPC
マルガレーテ・マクスウェル (nBNE000216)
 


■メイン参加者 8人■
インヤンマスター
朱鷺島・雷音(BNE000003)
ナイトクリーク
源 カイ(BNE000446)
覇界闘士
宮藤・玲(BNE001008)
クロスイージス
内薙・智夫(BNE001581)
デュランダル
イーリス・イシュター(BNE002051)
インヤンマスター
風宮 紫月(BNE003411)
ダークナイト
ユーキ・R・ブランド(BNE003416)
ダークナイト
阮 武 淑(BNE003427)

●「ヤミィは大切なお友達だ。彼女が助けを求めているなら助けるのだ」
 手作りワッフル、喜んでくれるといいな。
 持ちよったお菓子を確認しながら『百の獣』朱鷺島・雷音(BNE000003)はマルガレーテに話しかけた。
「素敵なお誘い感謝なのだ」
 フォーチュナも一緒に楽しむことは大事なのだぞと言えば、そう言ってもらえて嬉しいですと笑顔がこたえる。
 そんな姿を眺めながら源 カイ(BNE000446)も去年会った少女のことを思い返した。
(フフッ、ヤミィさん頑張ってますね)
 新しい場所でがんばっているという話に自然と笑みがこぼれる。
「それでは、お手伝いも兼ねて陣中見舞いといきますか」
 マルガレーテさんもよろしくお願いしますねと挨拶すると、少女も宜しくお願いしますと荷物を抱えたまま器用に挨拶した。
 お菓子等、かなりの品を買いこんだ彼女であるが、軽装に見えるのはおそらく隣の少女の影響だろう。
「重くはないのですが、けっこうかさばるのです、うぐぐ……」
「……あの、先輩? 少し持ちましょうか?」
「だいじょうぶなのです! へっちゃらなのです!」
『あほの子』イーリス・イシュター(BNE002051)は元気に応えた。
「お菓子! 飲み物の準備! パーティの為いろいろともっていくのです!」

●「……他に足りない物はないでしょうか?」
『朔ノ月』風宮 紫月(BNE003411)は荷を確認しながら尋ねてみた。
 折角パーティをするのだから、色々と用意はしてみたい。
 そう思った紫月は、マルガレーテとふたりで買い物に行ってきたのである。
 購入したのは飲み物やお菓子作りに必要な材料など。
 ちなみに材料の方は既に彼女の手でお菓子に変わっている。
「調理をできる場所はあるみたいですけど、作っていった方が確実だと思います」
 そんな意見に頷き、事前にお菓子を作っておいたのである。
 食べやすいサイズに作られた沢山のどら焼きが、彼女の荷のひとつだった。
 カイの方も今回は腕によりを掛けてお菓子を用意している。
 ミルクレープ、シフォンケーキ、プリン。
 食べ盛りな方もいらっしゃるでしょうからと用意は少し多めに。
(そうそう、珈琲も忘れてはいけません)
「僕のお店で出してるオリジナルブレンド、ヤミイさんに味わってもらいたいです」
 かぼちゃのタルトを用意した『寝る寝る寝るね』内薙・智夫(BNE001581)は他にも色々と用意している。
(ヤミィさんがアイデア出すお手伝いが出来ればいいな)
 プレゼント用に白水仙を綺麗に包み、パーティーの飾りつけ用にリボンも用意。そして……
(パーティーの準備もあるし、作業用の服に着替えて行かないと)
 そう思って彼が用意して着用してきたのは……メイド服だった。

●「智夫さんはメイド服! 可愛くって似合うねー!」
 同じくプレゼントを用意した『天翔る蒼狼』宮藤・玲(BNE001008)は智夫を褒めたあとで、ふと首を傾げた。
「けど……メイドさんって女の人じゃ、むがむぐっ」
「まあまあ先輩、その辺は無しということで」
 言い切る前にマルガレーテが止める。
(これだけの人数が集まれば、きっと良いアイディアも思い浮かぶのではないでしょうか……)
「古くから、三人寄れば文殊の知恵……とも言いますし」
 にぎやかな皆の様子を眺めながら紫月が呟いた。
 その呟きに、ユーキ・R・ブランド(BNE003416)も同意を示す。
 話に聞いたヤミィの悩みは、彼女がとても親近感を感じる内容だった。
「私も後方にいたころは、リベリスタの為に何をすべきか大分考えていた時期もありましたもので」
 任務参加という意味では新米の身ではあるけれど、後方の先輩という意味でなら力になれるかもしれない。
(後方の先輩として少し肌を脱ぎましょう)
 一方、イーリスもヤミィの力になろうといろいろ考えていた。
(ヤミィさんは、私達のために、何か作ってくれようとしているのです)
「でも、ちょっと考えすぎなのです」
 なごませるのです!
 あらたな発想は! 柔軟な心から、うまれるのです!
 リラックスしてもらうです!
(そのためには、私自身も、たのしむのです!)
 テンションを継続したままイーリスは力をいれて発言し続けた。
「あそぶのです! マルガレーテさんも一緒に! パーティなのです」
「はい!」
「わたし! くっきーとか、まるがれーてとか! すきなのです!」
「はい! ……えっ?」
「うぐぐ、そんなお菓子なかったのです」
「ああ、なるほど」
「はい、そこまでよ」
『蓮姫』阮 武 淑(BNE003427)に窘められて一旦ふたりの掛け合いは休止。
 一行はヤミィのアトリエを訪れた。
「お久しぶりだ、ヤミィ」
 雷音は届けて欲しいと言われて持ってきたのだと、いちごのタルトを見せる。
「あ……お久しぶりです」
 見知った顔に少女は、懐かしさをにじませた笑顔で嬉しそうに挨拶した。

●「お久しぶりです、そして改めてようこそアークへ」
 カイの言葉にみなさんのお陰ですとヤミィは笑顔で応える。
「ヤミィさん、どうもお久しぶりです」
 ぺこりとお辞儀をした智夫に少女もお辞儀で返した。
「初めまして、風宮紫月と……宜しくお願い致します」
「あ、どうも御丁寧に。こちらこそ宜しくお願いします」
 丁寧な紫月にあわててキチンと畏まって挨拶した直後。
「はじめまして! わたし! いーりすいしゅたーなのです!」
 ……えっ?
「じつは、ゆーしゃなのです!」
 ぇ、えっ!? 勇者?
「じゃじゃーん! くらっかー! ぽこーん!」
 もちろん戸口ではいきなり炸裂させません。
「……びっくりしました……よ、よろしくお願いします」
 続くように淑が、そして玲も挨拶する。
「というわけで、今日は気分転換も兼ねてパーティーをしませんか?」
 笑顔で提案した智夫に続くように、雷音も大きく頷いてみせた。

●「樽っ!!」
「どうしたんですか? イーリスさん?」
 アトリエの隅に置かれた木製の樽を指さして叫んだ彼女に、少女が首を傾げた。
「まあまあ、そっちの方面は突き詰めると危険なのでスルーの方向で……」
 とにかく用意をしないとと、ヤミィを巻き込んでの準備会が開始される。
 最初にぱぱっと掃除をしてから、智夫は気分が変わるようにと用意したリボンでお部屋を少し飾りつけ。
 淑はそれを手伝ってから、パーティに彩りをと故郷から持ち帰った蓮花の造花を飾る。
 テーブルの上に皆の持ちよった沢山の品々が所狭しと並べられ、甘い香りに混じるように紅茶の香りが、そしてカイの淹れた珈琲の薫が漂い始めて。
 にぎやかで元気な声と共に、楽しげなお茶会が始まった。
「ワッフル美味しいです~」
「喜んでもらえて嬉しいのだ」
 こっちも食べて欲しいのだと、雷音は親友に託されたいちごのタルトを。
 カイのミルクレープも美味しそうに。シフォンとプリンに目移りして。
 紫月のどらやきもにこにこと頬張りながら、これは緑茶が欲しくなりますよねと口にすれば、はいどうぞと智夫が、湯飲みに入った御茶を。
「メイドさんですし、こういうのは得意なんですよ」
「けど……メイドさんて、むがむぐっ」
「はい、先輩。そのままそのまま~」
 デジャヴュとかいうのを感じさせる光景。
「わたし! カバ王に憧れているのです! サバンナの王者なのです!」
 いっぽうでイーリスも先程のテンションを維持している。
 自分の言動に問題か何かを感じて、そこから何か閃いてもらえれば。
 真剣に話し合うというよりも、気軽に雑談する路線で。
「なので! 私! いつも通りに、振舞うのです!」
 ちなみに「カバがサバンナの王者?」とマルガレーテは首を傾げたが、ヤミィは目を輝かせたので何か閃いた可能性はある。
 にぎやかな御茶会の中で、玲は自分で育てた小さなオレンジ色のミニ薔薇の鉢植えをヤミィへとプレゼントした。
「わ~こういうの、キチンと見たのって初めてな気がします」
 そう言いながら、おっかなびっくり受け取って珍しそうに、嬉しそうに、しげしげと眺める。
 綺麗な花を見てヤミィさんが少しでも微笑んでくれたら嬉しいな。
 そんな想いをこめながら。
「少しずつ花開いて、初夏まで楽しめるよ」
 そう口にすれば、ありがとうございますと笑顔の花が咲く。
 他の皆にも一鉢ずつ。
「マルガレーテさんには、可愛らしいピンクのを」
「ありがとうございま~す♪ 何か大人のレディ扱いしてもらった気分♪」
 同じ薔薇なのに色々な色。
 それぞれの色に、それぞれの笑顔。
「綺麗だね」
「はい、綺麗ですよね」
 その言葉の指すものの素は、きっと同じ。
 智夫もそっと包んだ白水仙の花を、少女に贈る。
「なんでも、白い水仙の花言葉は『神秘』だとか」
 神秘に携わっておられるヤミィさんによく似合うと思いますと微笑めば、少女はお礼を言って大切そうに花を受け取った。
「ここは、あたたかいのです。お腹一杯になったら、ねてしまうかもしれないのです」
 はなちょうちん、われると! おきるのです。
 そう言いながらイーリスはすでにうつらうつらと。
「わたしっ! すぐ、ねむくなったり、おなかがすくのです!」
 ……でもけっこう元気みたい。
 皆のようすを見ていた淑は、リズムの拍手だけ頼むと……唇から、自らが生みだした歌を紡いだ。

●明の花 晴の花 宵の花
 共に咲く場は違うと知っていても。
 求めてしまうのでしょ?
 探してしまうのでしょ?
 紡がれる言葉に、少女はハッと表情を変えた。
「それが サガというものだから」
 嗚呼。
 うたいての姿を見ながら、どこか遠くを見ているようにも感じられる瞳をして。
「蓮姫さんって素敵だね。なんか俺の……ほごしゃ? の人に似てるー!」
 そんな玲と話しながら紫月は、考えこんだ様子のヤミィに話しかけたあと……ふっ、と問いを投げかけた。
「そういえば、ヤミィさんは何かお悩みがあるのだとお聞きしましたが……」
「……あ、はい……ちょっと」
 迷うような仕草をした少女の耳に、淑の歌うフィナーレが……染み入るように、響く。
 だからせめて仲良く咲きましょ。
 この日は 永いから。
「……そうですね」
 どこか頷くような仕草をして、苦笑いするような表情で少女は研究のことでと語り始めた。
「やっぱりどうしても経験は不足しちゃってますから……」
 色々な話が聞けたら。そう口にする彼女に智夫は尋ねてみた。
「以前は風邪の特効薬を作ろうとされていましたよね?」
 初心忘れるべからず、といいます。怪我を治すとか、そういうお薬を作ってみてはどうでしょうか?
 微笑んでそういった智夫に続くように。
「現場の意見……ね……」
 玲は少し考えこんでから、口にした。
「一番辛いなって思うのは、人質とか一般の人に被害が及んでしまった場合かなぁ」
 仲間が傷つくのも恐いけどまだ頑張れる。
 カイも頃合いを見計らうようにして自分の意見をのべた。
「依頼では回復役不在とかのケースもあったりするので、体力回復とか状態異常への抵抗上昇を促す飲み薬があると助かりますかね……」
 例えばタブレットとかだと携帯に便利でしょうかね。
「……なるほど。あ、でも私、博士みたいに効果を安定化させるって上手くできなくて……せっかく意見をもらってるのにすみません」
 本当は一人でちゃんと出来ないといけないのに。
 申し訳なさそうにそういった時だった。
「違うぞ、ヤミィ、それはちがうのだ」
 雷音が真剣な顔で、そう言ったのは。
「……朱鷺島、さん?」
「違うぞ、ヤミィ。ボク達は組織だ」
 ボクたちの参加する依頼も何人ものチームで行われる。
 つまり……
「友達には、手を貸してもらっていいのだ」
 その……すこしだけ口ごもってから、もっと真剣さを増した表情で雷音は言った。
「ボクは友達だから、いくらでも頼ってくれていい」
 難しい宿題とかでたら、ボクもヤミィの力を借りに来る。
「まあ……つまり気軽にあそびに、もとい研究のお手伝いに来ていいか、と聞いているのだけれども……」
 段々ごにょごにょと小さくなっていった声は、最後の方は本当に聞き取れないくらいに小さかったけれど……
 けれど、少女には関係なかったかも知れない。
「雷音ちゃんっ! 大好きーっ!!」
「わーっ!?」
「あ、ご、ごめんなさいっ!? 私っ!?」
「うう、ん。大丈夫だぞ! ちょっと驚いただけだ」
 そう言って、視線をあわせると何かがこみあげてきて……ふたりは自然と笑顔になった。

●「ヤミィさん、少し肩の力が入りすぎているのではないでしょうか?」
 たまにはリラックスされた方が良いアイデアも浮かぶと思いますよ。
 智夫の言葉に紫月が続ける。
「そういう時は……私は、外に出て散歩をしてみたり……自然を楽しんでみたりしていますね」
 そういう点ではリベリスタも普通の人と変わりはありません。
 そう言われて、今度はヤミィも素直にうなずいた。
 まだ少し固いところはあるけれど、さっきまでと比べると気負ったような雰囲気はやわらいでいるように思える。
「それにしても、真白のパパに見込まれるなんて、大したモンよねえ」
 淑はそう言ってから、でもな……と、すこしだけ表情を変えた。
「結局は自分のやり方を通すしか無いんだと思う」
 人はあくまで他人で、だからこそ愛おしいんだけど。
「相手を愛すためには、自分を、自分の生き方を愛さないとな?」
 認めてるか? 自分のスタイルをサ。
「自分の、スタイル……ですか?」
 ヤミィの言葉に、淑は頷いてみせた。
「アタシも歌うたいなもんでサ、作詞してメロディ付けてバンド探して酒場回って、ひとりで全部を背負ってるわけ」
 そう言ってから、かるく、微かに首を振ってみせる。
「でもね、それでも一人じゃないわけよ」
 支えてくれる人。見守ってくれる人。どこかで観ていてくれる人。
 いろんな縁で、物事は出来てるもんでね。
「ほら見てみな。あんたの為に、みんな、縁を繋ごうとしてるぜ」
 そう言われて、少女はあらためて……みなを、見回した。
 アトリエの中にいる、今日集まってくれた、自分のところに来てくれた、皆を、ひとりひとりを、見て。
「……戦う事もそうですが、今生きている日常を楽しむ事……そういった事も、きっと大切なのだと思います」
 紫月の言葉に、なにかが滲みそうになって……ヤミィはあわてて目元をこすると。
「ありがとうございます」
 たくさんの意味をこめて、微笑んだ。

●「一生懸命作って頂ければ我々が必ず活かします」
 つまりまあ、何を作っても良いのですよ。
「我々の心にやる気が補充されるだけでも充分効果があるのです!」
 ユーキはヤミィにそうアドバイスした。
「私が嘗て言われた所では『物の効果自体でなく、それを込めた心が一番響く』との事でしてね」
 誰かの為にものをつくる、その心は滲み出るものなのだ。
 良いものを作ろうとした意志、失敗してはいけないと気負った焦り。
「そういった込められたものが実際、一番励みになるとの事でした」
 そう言ってから驚いた表情の少女に向かって、ユーキは苦笑いする。
「……言ってて理解しています」
 これ、気分は楽になるんですが具体的に物を作る上での助言にはなっていない……という。
「いやはは、頼りない先輩で申し訳ない……ですが、言った事にウソはありませんよ?」
 そう言って、今度は苦笑いではなく本当の笑顔で彼女は口にした。
「何を作ってもいいんです。我々はそれを活かします。そう言う意味では……そうですね」
 私達を信頼して下さい。
 持ってきた物は何かに活かす。それが前線の心意気だ。
「そう、私は先達から教わりましたので、ね?」
「……ありがとうございます。でも、それなら思いっきり、色々……ねだって下さい」
 ユーキの笑顔に、ヤミィも笑顔で応えた。
 出来るかどうか分からないけど、一生懸命がんばってみます。
「ううん、頑張りたいんです」
 だから、なんでも言ってみて欲しいんです。
 こういったのが欲しいとか、役立つとか。
「役立つもの……そうだなあ」
 雷音が考えこむのと同時にイーリスが手を上げた。
「にほんにきて、さいきょうだとおもったのは、こたつなのです! つよいのです」
「そう来ましたかっ!」
 そんなやりとりに心がほぐれて、いろんな言葉が自然と零れる。
「よく懐中電灯は使うが支給のものは可愛くなくて飾りっ気もない」
「いや、別にかわいくなくてもよいのだが少しくらい持ち歩いてかわいいものが――」
「そうだなあ、あとは――」
「それと――それと……う、わがまますぎたかな?」
「ううん、わがまま言って欲しいです」
 どうなるかは分からないけど、それを聞いて一生懸命作ってみるから。
 今は無理でも、いつかきっと。
 ねえ、と玲は声をかけた。
 青い薔薇の花言葉って知ってる?
「昔は『不可能』『有り得ない』って意味だったんだって」
 でもね、今は色んな人の努力の結果、本当に青い薔薇が作られるようになってからは『奇跡』『神の祝福』って言うんだって。
「素敵だね!」
 はい、と再び笑顔の花が咲く。
「時には行き詰る事もあるでしょう、そんな時はハメを外したり友人に頼るのが良いですよ」
 もう一度、念を押すように。カイが紡ぐ。

 完成でも失敗でも、それはきっと、素敵な思い出。
 一緒に笑い合えるのが嬉しい。
 その日、雷音が養父にメールにおくったメールは、こう締めくくられていた。
「お友達のお手伝いをしてきました。楽しかったです」

 見上げた空はきっと……出逢ったあの日と、同じ色。


■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
お疲れさまでした。
今回も楽しく、そして心地好く、執筆させて頂きました。
参加して下さった皆様に、感謝を。

また機会ありましたら、どうぞ宜しくお願いします。