● 夢を見た。万華鏡を通しての、夢。 穴から何かが出てくる。けれど、それが何かは見えもしなかった。 ただ、公園の中心にD・ホールがぽっかりと出現すると、何か出てきた。 「……遊ぶ、遊べ、鬼ごっこだ」 見えないそれは、落ちていた玩具を拾う。 先が赤く、取っ手は黄色い。よく見かけるピコっと鳴るだけど玩具のハンマー。 はたから見れば、それがただ浮いているように見える。 だが、そこには確かに何かが居る。 空いたD・ホールからの浸入者は、辺りを見回した。 おや、なんだ、近くに子供がいるでは無いか。 振りかぶり、振り落とされるハンマー。 響いた音は――ピコッ! ● 年も明け、落ち着いてきた今日この頃。 『未来日記』牧野 杏里(nBNE000211)は考えていた。 アザーバイドということは分かっていた。ただ、引っ掛るのは遊ぶという二文字。 「とりあえず、遊んできてください」 杏里の依頼……いや、お願いはただそれだけ。 出てきたアザーバイドは遊べと言っていた。特に害は無さそうだが、神秘の面とかこの世界の事情とかそういうものを引っ括めると、放置はまずい。 「杏里は真面目で本気です……!! 杏里も行きますので、宜しくお願いします」 杏里は深々と頭を下げた。 「いや、遊ぶって何して遊ぶんですか?」 リベリスタの一人が杏里に聞いた。 杏里はもう一度アザーバイドの言葉を思い出す。 「ああ、うーーーーーん……鬼ごっこが適切だと思われます!」 という訳で、鬼ごっこ、しましょう! 「ただ、普通の公園なので穴が開く前に行きましょう。一般人対策してから、遊びましょうね!」 神秘の世界のルールに乗っ取り、楽しく遊ぼう! |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:夕影 | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年01月19日(木)22:56 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●vs一般人 本日は晴天なり。 遠足、遊び、野外の遊びに打って付けのお天気となった。とは言ったものの、時刻は既に五時。最近は日が少し伸びてきたものの、暗闇が辺りを覆うのに時間はそうかからない。そんな中でリベリスタのお仕事は始まる。 子供が複数人、砂場で遊んでいた。そこにカチっとスイッチを入れる音が響き、子供達が眩しい明かりに目が眩む。 「ごめんね、ぼく達。此処、ちょっと工事するから……時間も時間だし帰ろうね」 『千歳のギヤマン』花屋敷 留吉(BNE001325)が子供達に懐中電灯の明かりを照らしながら話しかけた。 普段とは違い、愛らしい猫ちゃんフェイスは幻視で隠し、服装はいかにもな作業服。 子供達は子供達で、えーと不満を言いながらも帰路に着く。留吉が公園の出口まで、暗い道を光りで照らし続けたのは彼の優しさなのだろう。 その頃、公園のベンチでは一組みのカップルが愛を囁いていた。 「がっでむ! カップルとは、強敵ッス!」 『レッツゴー!インヤンマスター』九曜 計都(BNE003026)がその光景を見ながらどこで話しかけるかタイミングを探していた。ていうか爆発しろ。 すると計都の横を『あほの子』イーリス・イシュター(BNE002051)が、堂々と通り過ぎる。計都がどきどきしながらその姿を見守った。 「ここ、封鎖するです! 点検するのです」 そう言いながらイーリスが話しかけると、カップルが驚く。 威風発動! ドドーンバリバリーっと音が響かんばかりの勇ましさが伝わったか、男女は口を開いたまま首を何度も上下に振る。 「もうしわけありませんが、ごきょうりょく、おねがいいたしますです」 イーリスが指差すのは公園の出口。そこへ足早にカップルが向かっていく。とりあえず公園内の一般人は避難できただろう。 それを見ていた計都がやれやれと苦笑した。 所変わって、出入口。 「うぃ~っすぅ! 工事のバイトっすぅー閉鎖閉鎖ー!」 少々広いこの公園には出入口が四箇所あった。 その一人、『白雪姫』ロッテ・バックハウス(BNE002454)も赤いコーンを出入口に置いていた。 途中で一般人が、此処工事でもするんですか? と聞いてきたが、そうなんですぅ~と臨機応変に対応。 それにしても不満なのは己の姿。 普段はお姫様の格好だが、今日は動きやすい服にスニーカー。あらやだ、プリンセス感皆無。 ちょっとしかめっ面しながら、赤いコーンをぽんぽん置いていく。ロッテできる子! はたまた、違う出入口。 『嗜虐の殺戮天使』ティアリア・フォン・シュッツヒェン(BNE003064)が不良なお兄さん達に囲まれていた。 此処溜まり場なんスけど、とか。マジ工事とか無いわー、とか。 邪悪ロリに限ってそんなのに怯む訳は無いが……さて、どうしようか。魔眼で蹴散らすために計都を呼ぼうか。 口々に言われる事を全て半目で聞き流しながらAFを取り出す。 「計都、ちょっとこっち来てもらっていいかしら?」 「おけおけー、いいッスよー!」 すると、不良達が何独り言してんのwwwという感じで笑い始めた。 すると、今の今まで不良にノータッチだったティアリアが、やっと不良達を眼に映す。 これ以上、不良の言葉を耳にするのも限界と感じたか、眼はかなりのマジ。 「さっさと何処かに消えないと、迅速に殺戮するわよ」 と言いつつ、ごとりと落ちてきたのはいかにも血祭りが似合いそうな鉄球。その瞬間、公園の烏が何か邪悪なものに反応して一斉に飛び立っていった。 やばいこの人、はかり知れない闇を心の中に飼ってると瞬時に感じた不良は、ギャーッと叫びつつ本能のままに逃げいていく。 それを見ながら根性無いクズ共ね、と再びAFで連絡。 「やっぱり来なくていいわよ」 「そ、そッスか……?」 はっと、小さな虫の知らせに体がびくっと反応した『未来日記』牧野 杏里(nBNE000211)。 「今、なんだか叫び声が聞こえませんでした……?」 焦った声色で隣に居た『もそもそ』荒苦那・まお(BNE003202)に聞いてみるが、まおは顔を斜めに向けて返事をした。 頭に着けたバンダナが風に揺れ、マスクの中をもそもそと動かしながらコーン設置作業を続ける。 「アークには戦わない依頼もあるんですね」 如月・真人(BNE003358)が杏里が持ってきた赤いコーンを出入口に並べていた。 今回は鬼ごっこするだけの依頼。いつもこんなのばかりだったらいいのに、と真人は苦笑いしつつ呟いた。 それには杏里も同意。同じように、にこっと笑いながら全てのコーンを設置し終わる。 そんなこんなで全ての作業が終了。 公園の中心で『スターチスの鉤爪』蘭・羽音(BNE001477)がベンチの上にランプを置く。夜路を照らす、淡い光りのランプ。 そして消えた一般人の気配。感じる神秘のにおい。 「ロッテ着いた~」 「……お疲れ、さま」 くるくる回りながらやってきたロッテを羽音が抱きとめた。 そこへリベリスタ達がぞくぞくと集まってくる。少し範囲を保ちつつ、公園内に広く結界が展開された。 「杏里くん、はじめまして。今日は、がんばろうね!」 「こちらこそですっ! 無害なので、戦力にならない私でもお手伝いできれば、と」 留吉が杏里の頭をなでなで。それに杏里は照れる。 「さて、そろそろ時間ですかね」 それから杏里がぼそっと呟くと、公園の中心にぱっくりとDホールが顔を出す。 何もない砂の地面に足跡ができた。何も無いけど、確かにそこには何かがいる。 その証拠がぴこぴこハンマーだ。落ちていたのが浮き上がり、空中で静止している。 「遊ぶ、遊べ、鬼ごっこだ」 鬼ごっこ開始の合図か。声が聞こえた瞬間、ハンマーが勢いよくこちらへ向かってきた。 ●vsアザーバイド 「タンマ!!!」 開始の合図と共に計都が叫ぶ。 すると、計都の眼前で振り上げられたハンマーが止まった。 「このチャネルじゃ、鬼ごっこのオニは、この格好をするのがルールッス!」 タワーオブバベルで話かけながら、差し出すのは鬼の面とそれに似合う衣装。 「……そうか」 上位世界のアザーバイドだからか。物理も神秘を通さない強者の余裕か。あっさりと渡された物をその体に身に付けた。 これで何処にいるのか一目で分かる! だが、空間に浮かぶ服はとても滑稽だ。 「よろしくね、鬼くん!」 留吉が可愛らしい笑顔で鬼へ話しかける。握手に差し出した右手に、ぬくもりを感じた。確かにそこには何かが居た。 それを見ながらも計都は瞬時に走り出す。それに釣られてリベリスタ全員が走り出した。 今度こそ開始! 「はっ……はうっ」 杏里は走って逃げていたものの、どうにも体力が無い。 迫るぴこはんにびくびくしながらも、二本の足で抵抗していた。 「杏里、だいじょうぶ……?」 「ひゃぁー、これは大変ですねっ!!」 羽音が心配しながら杏里の手を引いた。目に移るのは追ってくる鬼。ちょっとこれでは追いつかれてしまう。 鬼ごっこをやるなら、全力でやろう。久々に楽しい依頼だもの。 「ちょっと……いい?」 「へっ!?」 ふわっと杏里の足が宙に浮いた。羽音に持ち上げられ、所謂お姫様抱っこ。 幻視で隠してあるが、自慢の鳥足を更に早く動かし逃げる。 だが、鬼も鬼で負けない。迫るぴこはんが振り落とされる。それにタイミングを合わせるように羽音は俊敏に急カーブ。 ぴこはんは尾羽を掠ったが、ぴこっとは鳴らなかったのでセーフ! そのまま杏里は羽音の首に手を回して掴まり、羽音はそそくさと逃げていった。 次に鬼が目に止めたのは留吉だった。 ジャングルジムを盾にしたちきんせんぽう! だがそれも王道だ! 鬼が近づいて遊具の右から回って攻めようとすれば、留吉は同じく右へ。逆も然り。 くるくる回って、留吉は捕まらない。 こういう遊び、大勢でしたかったんだよね! 留吉の顔がにやにやと緩む。 そして、隙あり! 後ろの茂みに留吉がダイブして逃げていき、鬼は取り残された。 鬼が静止しつつ見つめたのはトイレ。もそもそ、もそもそ。うん、何か居る。 すぐに近づいて見たものの、中には誰もいない。さて、何処だろうか。 ふと、気配を感じて上を見た。 まおの足がちらっと見えたのに反応して飛び上がる。 鬼の目がどこにあるのかは分からないが、飛び上がってきた鬼とまおの目が合った気がした。 すぐにまおはトイレの建物の上から木へと飛び移る。あっちへぴょん、こっちへぴょん! 行先はどんどん暗くなっていく。 追いかけてくる鬼の面も、あっちへこっちへ曲線を描きながら向かってくる。 それを目に止めながらも、鬼様こちらです……と心の中で呟くが、まおはその時前を見ていなかった。 「まおさーん! 前!」 「危ないッスよー!」 さり気無く、地上で走っている真人と計都がまおに呼びかけてみるが、逃げるのに必死で聞こえなかった。 刹那、まおはガツンと何かにぶつかる。それは木々の間に立つ電灯であった。 ぶつかった瞬間に真人と計都は目を強く瞑った。いやぁ、あれは痛いよ……。 そのまま、ぽとりと落ちたまおはぶつけた部分を摩る。 「大丈夫かい、まおくん!」 留吉が草をかき分けて、がさがさと出てきた。 取り出した救急箱からシップを取り出して貼ろうとしていた、が。 ――ぴこっぴこっ 「うあーーーっ!」 「タンマー! って、だめかな?」 デデーン、まお、留吉、アウトー。それでも鬼は中断することは無い。 鬼の面がぐるりと真人と計都を見た。それーっ逃げろ! 「わ、ひゃっ!?」 計都は飛んで離脱していったものの、真人がその場に滑って転んだ。 ――ぴこっ デデーン、真人、アウトー。 ●vsリベリスタ(悪知恵とか自分自身とか) 「おにさんこちら!!」 鬼の耳に聞こえたのは、イーリスの声。 鉄棒の上に器用に乗りながら、指をビシっと鬼へと向ける。かくれんぼでは無いけど、正々堂々、正面からの勝負! 鬼は釣られる。お面がすぐに近づいてきて、イーリスの背中を追った。 「これがゆうしゃなのです! いきざま!」 ジャングルジムの上に乗っかってはお尻を叩く。こらこら、勇者ご乱心。 細い棒をつたっては走っていく。ついにはアスレチックの縄の上に到達。 「……こっち来ちゃうとはね」 「てぃありあさん! にげるです!」 アスレチックを盾にして隠れていたティアリアさえ巻き込んでイーリスは逃げる。ティアリアも居場所がバレてしまっては逃げる以外に他は無い。 二人がアスレチックから抜け出して、広い公園を走った。 「ふふふ……出番ですよぉ~」 「おおっ! ファミリアーですね!」 そこらで見つけた猫をロッテが支配する。それを杏里が物珍しそうに見つめていた。 追われているイーリスとティアリアを助けるために、くらえ! 猫ちゃん攻撃!! 猫が走っていって、鬼のお面にパンチ! これは可愛い。鬼の精神に魅了のダメージ! イーリスがそのまま走っていき、ティアリアがロッテを見つけて此方へ走ってきた。 「あと、よろしくね」 「「へ?」」 ティアリアがロッテと杏里の間を風と共に抜けていった。その後ろから猫を抱えた鬼が迫ってくる。 「杏里ー、ロッテー、危ない……よー」 羽音がかなり遠くから伝えてみたものの、時既に遅し。 ――ぴこっぴこっ 「「あっ」」 デデーン。ロッテ、杏里、アウトー。 ――敗者の檻。 とは言ったものの、ジャングルジムの中に捕まった五人は居た。まるで檻、そんな感じ。 「胡座よりも正座の方がよさそうです」 まおは地面に正座しつつ杏里に話しかけた。 「牧野様はどっちがいいと思いますか?」 「あはは、汚れちゃいますけど正座が……らしいですかねっ!」 杏里もまおの正面に正座する。そんなまおに留吉は救急箱から取り出したヒヤロンをぶつけた場所に当てていた。 「結構捕まってないですね」 「はいですぅ~悔しいのですぅ~」 真人が捕まっていないリベリスタを思っている最中、ロッテは使役した猫を撫で撫でしていた。 「残りは……あと四人か」 留吉がシリアスな雰囲気でキメッ! でも可愛い。 「あっ羽音さま~ファイトですぅ~」 「わっ、ロッテしーっ。場所ばれちゃう……」 ロッテは無邪気に羽音に手を振ったが、羽音はそれに首を振ってわたわた。 捕まった子にタッチすれば解放! とかそういうルールが無いのがしょんぼりだが、まあ仕方無い。 公園の中央は静かだった。 ティアリアも元のジャングルジムに戻り、息を潜める。いないのはイーリスと計都か。 嵐の前の静けさはすぐに終わる。茂みの奥から計都が勢いよく飛んで来た。 「ヒャッハーー!! くるぞー!! 逃げろッスー!!」 ……その後ろに飛んでる鬼を連れて。 イーリスは鬼に捕まっていた。というか飛んでる鬼に担がれていた。 捕まった経緯をダイジェクトに報告すると。 こうえんのさくのうえなのです! おにさんこちらなのです! きたのです、にげろー! つるんっ あっ! ガィインッ! きゅっ!? ……ぴこっ←おそるおそる という訳である。 話は戻り、イーリスをジャングルジムの檻へと突っ込むと、鬼は羽音達を追いかける。 それっ逃げろ! 捕まえて響く音は――ぴこっ! ●エンドレス鬼ごっこ その後、何回鬼ごっこを繰り返したことか。 「四回。もう、限界ね……帰ってワインでも飲みたいわ」 パワフルで元気いっぱいのアザーバイドに追いかけ回され、ティアリアは疲れきった体をジャングルジムの棒に座らせる。 「はやくつかまえるのです! あ、あっちいったのですー!」 「イーリスさん、それじゃあバレちゃいますよっっ」 まだまだイーリスの体力はいっぱいで、それに杏里が微笑む。目の前で真人が走っていったから鬼に伝えたイーリス。 「いやー、流石に苦行ですよ……!」 ぴこっ! そして真人が捕まった。 鬼が眼を光らせると、捕まっていない羽音の体がびくっと震えた。 羽音は走り出して逃げようとしたが、少し様子がおかしい。というのも追いかけて来なかった。 「……楽しかった」 計都の耳にはそれだけ聞こえた。それがエンドレス鬼ごっこの終わりの合図。 「ん? 終わりッスかね?」 計都が敗者の檻から出てくる。それに続いて、終わりという言葉が聞こえたリベリスタ達がぞくぞくと中央に集まった。 皆泥だらけに、数人は傷だらけ。全力で鬼ごっこした結果、ボロボロだった。 「鬼くん、気をつけて、かえるんだよ。うがいするんだよ」 上位のアザーバイドに風邪という概念があるかは置いておき、留吉は鬼の頭らへんを撫でた。 「エーデルミューズ。わたしのたからものなのです」 降参の印にあげた宝物がアザーバイドの胸で光る。 「また来るッス! お友達ッスよ!」 「楽しかったのですぅ~また来てく……あ、それ駄目なのですぅ」 一期一会。戻ってきてはいけないけれど、再び会える事を願って。 そして最後にまおが手を振る。その瞬間、アザーバイドはDホールの中にすっぽりと入って消えていく。 そしてそれを塞げば、神秘のお仕事はおしまい。 「それじゃ、コーンとか回収するよ!」 留吉が手を叩いて、リベリスタに告げた。 「終わったらお兄さんがジュース奢ってあげるからねっ」 疲れきった体だが、更にお片付けが残っている。 リベリスタが帰路に着くのは、もう少し先になりそうだ。 「……これがリベリスタのお仕事ですね」 その八人の姿をフォーチュナは優しく見つめていた。 まだまだ寒い時期の中。温かいリベリスタ達の心が見えた気がする。 深まる闇は濃く、深く。それでも目の前には希望の光りがあった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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