●神域の守護者 初詣の賑わいの余韻を未だ残す1月半ば、深夜とも無れば神域たる境内は静寂に包まれる。 一時の賑わいを取り戻した里山の山野に蠢くは、冬の眠りを妨げられた獣の類かそれとも…… 降り積もった雪を蹴散らし、『それ』は闇の中を駆ける。 木々を、森を、岩肌を飛ぶように逃げる獣を追い詰め、『それ』は闇夜を飛翔する。 参拝客を狙った不埒な獣だ。 女性客の持っていた荷物を狙い、子供を泣かせ、人々を不安にさせた、許せざる『敵』だ。 ヤツは逃げおおせると甘く考えているだろうが、我がテリトリーにおいて働いた無礼の数々、赦すわけにはいかぬ。 ――例え、逃げ惑う獣であろうが、その程度の距離など、取るに足らぬ。 『それ』が白い巨体を震わせ、攻撃を放つ。 異様に伸びる打撃。『それ』はニホンザルに一撃を食らわし昏倒とさせると、満足したように雄叫びを上げる 「グオオォォォォォォォッ」 月夜に照らされ、吠え猛る姿。それはそれは立派な鏡餅であった。 ●……で? リベリスタの問いかけに『リンク・カレイド』真白 イヴ(nBNE000001)は何時にも増して醒めた目で淡々と続ける。 「……E・ゴーレム。フェーズ1。1だから、一応少しは戦える程度」 なるほど、鎮守の杜の守護者くらいはやってのけれる程度の能力らしい。それでも世界にとっては十分な脅威ではある。 で……と、モニターに映される巨体。正月飾りに注連縄までついたでっかい鏡餅。 大人が手をつないで5人分くらいの胴回り、もっちりモチモチとした姿は果たして何人前か? 「見ての通りの鏡餅。神社に奉納された物が、正月の熱気に充てられて革醒しちゃったみたい」 革醒に到るプロセスが酷くどうでも良い事例に等しいのは、ここ最近の崩界化の影響だとしたらこれもまた業が深い。 「勿論、討伐してもらうわけなのだけれど、倒し終わった後も、弱いエリューション反応を出しながら存在し続けることになるから……」 増殖性革醒現象を防ぐ為には全部食べなければいけなくなる、と。 おいおい、これ一匹で何人前だよ。 「そうね、この大きさでは8人でも食べきるのはなかなか厳しい物がある、そこで、みんなに心強い助っ人を準備したわ」 どーんと開かれるブリーフィングルームの扉。 うおおっと勢い良く現れる姿は、勢いと色彩がまさにピンクタイフーン。 『NoSweetNoRound』丸井 あるな(nBNE000009)は、サムズアップすると、爽やかかつ堂々と言い放ちやがった。 「おもちをたらふく食えるときいてやってきました!」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:築島子子 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年01月21日(土)23:38 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●事の次第 空気の澄んだ冬空の下、とある里山にある神社の宮司は、はてと首を傾げた。 神社のデンッと奉納されていた鏡餅がない。 胴回り大人5人ほどもある立派な立派な鏡餅。 飛んでいくわけでも、歩いて行くわけでもあるまいに……と、首を傾げども答えは出てこず。 それよりも、近隣住民と共に杵で搗き上げた手作り鏡餅。 そのまさかの紛失により、近々開かれる鏡開きをどうすれば良いものであろうかと、頭を抱える事となったそうな。 閑話休題。 ●鎮守の杜の遭遇 神社を取り囲む鎮守の杜は、周囲の里山を取り囲む山々の森と混じり、より深い静寂と木々に囲まれていた。 そこにいるのは巨大な鏡餅。台座で地面を蹴り、正月飾りを翻して山をかけるその姿は、明らかなる異様。 最早エリューション現象と成り果てたE・ゴーレム鏡餅を仕留めるべく……その余波による増殖性革醒現象をも腹に収めることにより収束させるべく駆けつけたリベリスタの人数は9人。それプラス非戦闘員の調理担当職員数人。 「エリューションなのに鏡餅とか、縁起が良いのか悪いのかわかんないね」 鏡餅エリューションを見て、素直な感想を口にしたのは、『おこたから出ると死んじゃう』ティセ・パルミエ(BNE000151)だ。 「でもでも! 普通の鏡餅ならカチカチになって大変なのに、今回のはモチモチしてるから割る必要なくて食べやすそう!」 そう、モチモチなのだ、このエリューション。モチモチの~等という攻撃をしているせいなのか、つきたての弾力を残したもち肌鏡餅なのである。 「鏡餅って、だいたい割る前に腐ってるの。年越し前に割っちゃいけないらしいの」 へぇ、そうなんだ。意外な薀蓄を披露しているのは、『Unlucky Seven』七斜 菜々那(BNE003412)。 「ナナなら腐らせるぐらいなら思い切って割っちゃうの。その方が鏡餅も本望だと思うの。だからこの子も一思いにナナが割ってあげるの」 愛用のショーテルを手の内で弄んで割りたい割りたいと連呼するその瞳が異様に熱っぽくてちょっとエロい。 でも、モチモチだそうですよ。 「えー、なんでー!?」 お腹ぺこぺこなフードファイター達も参戦。 「今日はコレの為に飯抜いてきたんだ」 「おお、奇遇じゃな。妾もお腹をすかせておいたのじゃ!」 考えることは皆同じ、『赤錆烏』岩境 小烏(BNE002782)と『回復狂』メアリ・ラングストン(BNE000075)は、ぐーぐー鳴るお腹を抑え鏡餅と対峙する。 「妾も一応は異国の民ゆえにな、ジャパニーズフードに挑戦なのじゃ!」 メアリ、初めてのお餅。 「さっさと終わらして、飯にすんぞ……いや仕事だと分かっとるぞ」 これを倒せば本日最初の食事にありつける小烏も、人払いの結界を張り、戦いへの備えは十分だ。 「これだけ大量のモチ、腹に収めきれとは、無茶を言う」 バゼット・モーズ(BNE003431)も目の前に鎮座する物体に唸りを上げるが、いや、先に倒してからだ、と頭を振り思考を切り替える。 「ふむ、そうだな。鏡開き……確か、鏡餅を割り開き食す儀式の日であったか。今日という日に相応しい日であるな。では、心置きなく食す……前に、エリューションを討伐せねばならなかったな」 どうにも食欲に思考が引っ張られる者もいるようで、アルトリア・ロード・バルトロメイ(BNE003425)も真面目な腹ペコさんとして正しい反応を示していた。 「お正月が過ぎたらお餅がエリューション化、どんな人の熱気がそうさせたんでしょうか?」 首を捻る如月・真人(BNE003358)。ほら、元旦の一年の計とか、おみくじとか、巫女さんとか……人類の欲望は留まる事を知らずとか。 「フェイズ1のエリューション。初の実践としては手頃な相手といったところでしょうか。ですが油断は禁物。未熟な身ではありますが全身全霊で行かせて頂きます!」 『鉄騎士』ベアトリクス・フォン・ハルトマン(BNE003433)が、美貌を凛々しく引き締め、槍を握る。 「時はきた! 機はじゅくせり! 者共いまこそ、あのもちめをたらふく食いあらすとき! ものども、とっつげきー!」 我らがお気楽娘、『NoSweetNoRound』丸井 あるな(nBNE000009)の号令にリベリスタは戦闘態勢に移る。 それに呼応するように、鏡餅も身を低く構え、グオルルゥゥゥ……と、唸る。 戦闘開始。 かくして、決戦の火蓋は切って落とされた! ●激闘! 暗黒鏡開き 「せんてひっしょー、早くおもち食べたいー」 誰よりも早く、機先を制し、鏡餅に肉薄したのはティセだ。 放った蹴りは真空の刃となって、鏡餅の一部を切り取る。 「あ゛~! 土がついちゃうっ!?」 放物線を描き空を舞う鏡餅の一部は、そのまま重力に従い大地に叩きつけられる! かと思いきや、調理職員まさかのナイスセーブ。 グッと親指を突き立てるティセと職員。言葉がなくとも通じ合える事もある。 襲い来る鏡餅。冬の冷たい風、乾燥した空気に当てられ、表面は冷たく硬く変質していく。それはさながら、モチモチでありながらカチカチ。お餅だから許されるこの理不尽。 「おっと、こっちも守りを固めさせてもらうぜ」 小烏が式符を手に取り、宙に舞わせる。飛び交う式符。それは場を覆う守護の障壁となり、鏡餅の攻撃に対する防壁となる。 「では……行きましょう」 暗黒騎士達が、動き始める。 「割るの、壊すの、弄ぶの……っ!」 ヒュンヒュンと、手に持つ曲剣を回転させ左右に交叉。キィンッと澄んだ音を立て組み合う2本のショーテル。 それはさながら弓の様。『Serpent head』『Serpent tail』長と短の二本一対のショーテルは組み合うことで、大弓『Serpent』となる。大蛇の糧とするは暗き衝動。 菜々那はにぃっと笑い、引き絞る。黒いオーラは弓の形になり、解き放つ! 魔光の鏃は空を裂き、鏡餅へ迫る。 「闇に堕ちしこの力でも、守れる正義はある」 誓いを立てるかのように、アルトリアは眼前に剣を掲げる。誓うは正義。掲げるは剣。 闇を纏い、鏡餅を見据える。さあ、尋常に勝負。 「私も行かせていただこう」 カソックに包まれたバゼットの身体が隆起する。服の下より盛り上がる肉、それは筋肉だ。その隆々たる肉体が軽々と剣を扱い、振り下ろす。 神の使徒たる奇跡の御業ではなく、我欲に満ちたこの業が身に宿ったことに悩み、苦悩した事はあれど、業以上に己を律するのは己でしかない。 アルトリア、バゼット共に通ずる想い。己の正義を奮う場所を、意志を決することに、業の清濁などで左右されはしない。 動きの鈍い鏡餅に魔光が突き刺さる。魔光のオーラが餅の力を削ぎ落とす。 一気呵成。リベリスタは意気を上げ攻撃を立て続けに叩きこむ。 ティセの鋼爪に纏った火炎が鏡餅を焼く。 食欲を進める芳ばしい薫りが広がる。きゅるーっと誰かのお腹が鳴った。 鏡餅も負けては居られない。何しろフェーズ1とは言えども、LV1(ひよっこ)には十分な強敵。 過分な生命力に加え、その伸縮自在な身体に硬度を上げた肉体。 唸るモチモチの猛威にリベリスタの傷も瞬く間に増えていく。だが…… 「ことしも回復やったるぞよ~。治しまくりじゃ!ひゃっはー」 メアリーが天使の歌を歌い、真人が気力を分け与える。 リベリスタの回復力も去る事ながら、鏡餅の耐久力も大したもの。 戦いは長期戦の様相を成してきていた。 そして双方の被害を増やしながらも、時は巡る。 鏡餅は体の傷を増やし、リベリスタは鏡餅の猛攻の前に真人は倒れ臥していた。 「そら来い、社の守護者。境内を荒らす不届きモンを追っ払うのが手前ェの役目だろう!」 小烏の術符が鴉となり、鏡餅を啄む。啄む。お餅を食べるために啄む! 身を削られ、怒りに慄く鏡餅。そこに生まれる決定的な隙。 「今だ、あるな君」 バゼットの言葉にあるなは、よしきたっと応え跳躍する。 バゼットの、あるな君、腹ごなしを兼ねて共に少し戦って貰えるかな、という提案にまんまと乗せられ、あるなが跳ぶ。 放たれた2本のチャクラムを繋いだオーラの紐。絞首、束縛。鏡餅に絡みあい動きを縫い止める。 「あるなさんは、甘くねー!」 ビシッとカッコつけて着地する。自己評価。あるなさん超かっこいい。 「闇よ……」 精神を研ぎ澄ませ集中を重ねていたベアトリクスは二槍を構える。身に帯びるは身体を侵し命を削る暗黒の瘴気、実体化した瘴気が槍の穂先に集まり、繰り出す! 「我が痛みを、呪いとなり刃と化せ」 アルトリアは麗剣を掲げ振り下ろす。身体に刻まれた傷が、流れる落ちる血が、苦痛の呪剣を成し空間を裂く刃となる! 瘴気と呪剣が鏡餅を覆い……ピシッ……ピシッ……徐々に広がっていくひび割れがその生命の最後を示していた。 バンッ 音を立てて四散する鏡餅。 四散する欠片を素早くキャッチする調理職員。スタイリッシュな動きによるナイスアシスト! ●Les's お餅パーティー 四散したお餅を回収し、調理職員達は一斉に調理に取り掛かる。 では待ちに徹するリベリスタは何にするかというと……? 「寒いよー。おこたから出ると死んじゃうー」 正に称号の通り、幻想纏いより大型コタツを取り出したティセはそそくさとコタツの中に退避する。 もちろんこの山中には電気は来ていないので炭火鉢で対応。ああ、極楽極楽。 戦闘不能で意識が飛んでいる一人以外、リベリスタ総勢8名、コタツの中でぬくぬくタイム。 火鉢から余った炭火で七輪でお餅を焼き始める。手際がいいね、調理職員。 「うーん」 菜々那はあるなの顔を見、んーと、唸る。それ見て同じく顔を傾げるあるなさん。 「あるなちゃん、ナナとちょっとだけキャラが被ってると思うの。深刻な問題なの」 髪の色はピンクだし、体格ちっちゃいし、輪郭丸っこいしね。 あ、でもね? 会心の笑みを浮かべる菜々那さん。 「だけどこっちの丸さはナナの勝ちなの。うふふふ!」 お胸を強調。持ち上げ、これでどうよと見せつける。菜々那さんの猛烈アピール! 「な!? な、なな、なななー!?」 「呼んだ?」 「よんでねーっ!!?」 圧倒的な戦力差。絶望的なまでの将来性。見えない明日を見せつけられ、あるなさんが猛然と声を上げる。負け犬の咆哮だ。 「ま、まあ、あるなさんはみかんの大器ですし! 今は勝てなくても来年は勝てるかも知れないですし!」 口から滑り出る言葉は、嗚呼、虚し。丸井あるな、敗北す。 嗚呼、居た堪れない、居た堪れない。救われないものが打ち拉がれるこの場の空気を救ったのはやはりお餅であった。 コタツの上にドンと置かれる、焼き餅、磯辺焼き、餅ピザと焼いた餅系レパートリーの数々。 もちろん、醤油、砂糖醤油、大根おろしに砂糖にきな粉、コタツに並んだ調味料の数々は餅を楽しむには十分すぎる。 裏では追加がどんどん作られている。お餅料理のフルコースだ。 「おぉ、おお、おー! みなのもの、思うがまま食らうがよいー!」 泣いたあるな、大いに復活。猛然とお餅に挑む。 VS鏡餅、第2ラウンドの始まりであった。 事前に準備した胃腸薬。空腹で仕事に挑んだこの勝負。勝機は十二分にあり! 「今日という日に、糧を与えてくれたもう神の慈悲と恵みに感謝を」 バゼットの敬虔なる祈りと共に始まったお餅会、猛然と食べているのは期待を一身にあるなさん。 周囲に勧められるまま、差し出されるまま、猛然と食べる。食べる。喰らい尽くす! 次に迫るはアルトリア。箸を器用に使い、じっくりと味わいながら、食べる。食べる。 「うむ、美味い。いや、これも美味だ。うむ、好い」 丁寧に味わっているのに、ペースも早い、量もすごい。 食べる。味わう。食べる。味わう。ひたすら味わい食べる。 なんというハイペース。これが噂の腹ペコ騎士か!? 「運動後の空きっ腹に染み込むねぇ、こいつは美味い!」 小烏も次々と餅に手をつけて、口の中に放り込む。 味のアクセントには紅白なます、酢の酸味が餅に疲れた舌と胃に心地いい。 「うむ、存分に味わおう」 満足気に頷くと箸を伸ばす。 「むぐむぐ、ナナ、戦うレベルは1(ヒヨッコ)だけれど、食べるレベルならたぶん20(スペシャリスト)だと思うの」 モグモグと、口いっぱい頬張る菜々那はきなこ餅メインで攻める。 「これくらいはよゆーなの」 餅料理はまだまだ出る。 そして、その事に純粋喜ぶ者たちもいた。 「おお、これが雑煮か!」 メアリ、初めてのお雑煮。 口に咥えて、引っ張る伸びる。 「ガムみたいに伸びるのう!」 キャッキャッと悦び食べるさまは、童女のよう。 同じく、餅を食べること自体が初めてのバゼットも餅を食す。 まずはスタンダードに醤油と餅。 不慣れな箸を不器用に構え、まずは少量醤油に浸し、食べる。 「ほうっ」 感嘆の声を上げる。これは、なかなか。 「これは美味い。まだまだいける」 2個、3個と口の中へ放り込む。 続けて配膳されたのは雑煮。 まじまじと見つめ、ふぅむと唸る。餅の浮いた澄まし汁。 「なるほど、モチを入れたスープなのだな」 一口すする。餅を口に運び、咀嚼する。 「……あっさりとしていて、柔らかいモチと良く合う」 感動が、驚愕が、バゼットの胸を過る。 これも美味い! 日本の料理はどうなっているんだ! オーマイゴッド! 感動を胸に、バゼットは猛然と餅を食べ始めた。 ベアトリクスは瀟洒にお餅を食べる。 任務第一を信条に、様々な調味料で、飽きが来ないよう、呑み込み切れないものは緑茶で流しこむように。 一定のペースを守りお腹の容量を死守しながらもお餅に費やす。 「美味しいですが、少々つらいですね。ですが、これも任務です!」 自ら喝を入れ、餅の山に果敢に挑む。 「かならず、総て食べ切ります」 ベアトリクスの黒い双眸には強い意志が宿っていた。 ティセは嬉しそうにお餅を食べる。 「あるなちゃん、これは甘くないよー」 磯辺焼きをあるなに分ける。 「あるなちゃん、これ、角餅だから丸くないから大丈夫だよー」 ニコニコしながらお餅を分ける。 かつて、これ程までにあるなさんの言うことを尊重した人がいたであろうか? いや、ない。あるなさん感涙。 お餅を食べることに一生懸命。おいしーおいしーとご満悦。 お雑煮もおいしー。 お汁粉もおいしー。 きな粉もおいしー。 納豆は……ちょっとパス。 揚げてお塩でおかきもおいしー。 「うーん、まんぷくぷー」 嬉しそうにこたつに横になって、目の端に映るはお餅の追加。 嫌な汗が背中に流れる。 そしてリベリスタの苦闘が始まる。 バゼット、メアリの様に体を動かし消化を進めようとする者。 ベアトリクスのように、気力と運命で乗り切ろうという者。 小烏とあるなの様に、お互い大食い勝負とすることにし、ひたすら詰め込む者。 ティセのように、そっと食べ切れないものを豪炎撃で隠滅する者。 そして、アルトリアと菜々那のように、表情もペースも変わらず、ひたすら食べ進める者。 限界の果てにある勝利に向けて、リベリスタは邁進する。 食べ切れず、倒れ伏す者。 最早完食を諦め、食べられる者のサポートに徹する者。 様々な脱落者を出し、最終局面へ……。 そして残った遠慮の塊。 最後に残った焼き餅が一つ。 菜々那が、箸を伸ばそうとし、そのまま、流れるようにゆっくりとコタツに突っ伏した。 とうの昔に限界を超えていたのだ。 痛覚遮断。それにより、身体の限界のサインを超え突き進み、結果、ここに伏す。 残るは、アルトリアとあるなの2人。顔を見合わせるとふと笑う。 「まさか、ここまでの剛のものとはおもわなかった」 設定食いしん坊を甘く見ていたと、あるなは笑う。 「運動後の食事だからな、いくらでも入るのだ」 アルトリアは涼しい顔で言う。そういう問題じゃないだろ。その場にいる誰もが思っていた。 2人は同時に箸を伸ばす。 2つの箸は、交差し、すれ違い、決着を得る。 餅の、最後の1つは、アルトリアの手に! こうして、リベリスタ達の長く(お腹が)苦しい戦いは、終焉を迎えたのであった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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