●この番組は御覧のスポンサーでお送りします 「フハハハハハハ、我が能力さえあれば恐れる者など何もない……そう、何もな!」 男(ノーフェイス、三十五歳独身男性)は床暖房の利いた3LDK二階建てのリビングで肘ついて寝っ転がっていた。 「俺の能力は……そう、必殺の『シリアス爆破』!」 男(ノーフェイス、初恋は15の夏)がリモコンの電源ボタンをぽちっとなすると、テレビで何か適当なことやってようかみたいなダラダラしたバラエティ番組の再放送がやっていた。 手元のポテチを開封する男(ノーフェイス、趣味はもやしの栽培)。 「どんな危機があるかは知らん……だが、俺を倒せる者がいるなら、倒してみるがいい!」 ●チャンネルはそのまま 「以上です。分かりますね」 「いえ全く」 リベリスタ達は一斉に手を振った。 さもありなん。 ハードボイルド映画みたいに『わかるだろう』な顔をしていたガハラさんだったが、あまりに皆が乗ってくれないのでひとつ咳払い。 「コホン……つまり、ノーフェイスが現れたので退治して欲しいと言うことなんですよ」 それは分かってますけどもって顔で続きを待つリベリスタの皆さん。 和泉は手元のメモを机に広げた。 「彼の能力はそこそこ高いようなのですが、一つ厄介な技があるんです。それが……『シリアス爆破』」 「「『シリアス爆破』!?」」 一斉に身を乗り出してみるリベリスタの皆さん。 でも何言ってんのかやっぱよく分からなかった。 「簡単に言えば……シリアスなだけで爆破されます!」 「「な、なんだって!?」」 もっかい身を乗り出してみるリベリスタの皆さん。 漸く理解してくれたと見るや、最初のハードボイルドな顔に戻るガハラさん。 「そういう訳なんです。普通なら手も足も出ないでしょう。ですが皆さんならきっと……きっとやれると、信じています」 ぎゅっと手を握る和泉。 「おう、任せとけ!」 リベリスタンズは夕日(のカキワリ)に向かって一斉に走り出したのだった。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:八重紅友禅 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年01月20日(金)23:38 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●今の内にキレイなもの見といてねー。 流れる小川。 小鳥たちの声。 そよ風。 「ま、こんなもんでいいか」 『灰の境界』氷夜 天(BNE002472) はキレイなカキワリを撤去すると、『これまでのあらすじ』と書かれたプレートを立てた。 「時は平成(中略)万華鏡に導かれし戦端、今ひらかれ~い」 ぽぽぽぽぽぽん。 和太鼓の音と共に始まるオープニングテーマ(歌:一人カラオケ中の天)。 「説明しよう! 天は『僕ってまぁ性別とか年齢とかどーでもいいってーかそもそも何もかもオフザケっぽいと巷で評判っつーか普段から緩いんでいつもなら仕事なら真面目にやんなきゃなーって感じだけどシリアスなしなら逆にイイんじゃね?』って言ってる僕本人のことである!」 ジャスト12秒。ストップウォッチ止めてドヤ顔の天。 「むしろシリアスってな~に~!」 諸手挙げて飛び跳ねる『ラブ ウォリアー』一堂 愛華。 二人はタンバリン片手にマイクを掴み、どこへともなく叫びたてた。 「「レッツ・パァァティィィィィィ!!」」 一方その頃。 「どーもー、通りすがりの真人間やけど。突撃となりの晩御飯にきたでー」 『桜梅桃李』鑑 さくらが真顔でドアを開けた。 ポテチ袋片手に硬直するノーフェイス。ポップコーンつまみながらテレビ見てたアンデッドたちも一斉に振り向いた。 さくらはやけにでっかいシャモジのようなもの(別名バールのようなもの)を床に下す。 「ほれ、ここに書いてあるやん。突撃となりの……」 「それは分かったけど」 途端、別の扉から現れる『モヤシ』焔 優希。 もう名前の時点でお察し頂けるとは思うが、ぱっと見巨大なもやしだった。 って言うかもやしのキグルミだった。 胸には『大切に育立てて下さい』の文字。 モヤシ……じゃなかった優希は軽やかにスキップしながら部屋を周回し始める。 右から左に視線で追って行くノーフェイスさんたち。 そうこうしている内に、お炬燵の上で仁王立ちする『緋月の幻影』瀬伊庭 玲を発見した。 腕組みしてくわっと目を開く玲。 「クックック妾はかの聖戦(ラグナロク)の時代から続きし吸血鬼一族の末裔だそして今は眼帯で隠しているがこれを外せば左目の『緋き悪魔の邪眼(スカーレッドティフェル・アイ)』がお主らを跡形もなく消し去るだろうまあこの場におる全ての者がただではすまぬがのうそして貴様シリアル(非誤字)を破壊(ハカイ)する能力(チカラ)つまり妾に対する対抗最適効果(アンチ・スカーレット・スキル)じゃな間違いなく『機関』の刺客かしかしその程度の異能力で妾に勝とうなど片腹痛ぐわあっくそっこんな時に暴れ出しおったか沈まれ我が左腕ぇ……!」 ジャスト25秒。 玲はぜはーぜはーと呼吸を整えた。その後ろで『くそっくそっ』と言いながら悔しがっている天。 一方のノーフェイスは。 「くっ、何者かしらんが……今シリアスっぽいことを言ったな? クククでは味わうがいいシリアス爆破の恐ろし」 「ああん?」 『突撃だぜ子ちゃん』ラヴィアン・リファール参上。 ラヴィアンはひょっとこのお面を被ってノーフェイスに絡んだ。ぐいぐい当たる額部分。 「お前今のセリフシリアスって言えるの? このお面被った俺見てもまだシリアスできんの? え? 今そんなシリアスなの?」 「いや、その……」 「ねえコミカルだよねえこれ、俺爆破したらコミカル爆破になっちゃうけどそれいいの? タイトル詐欺じゃないの?」 「だから、その、当方は……」 縮こまって対応に窮するノーフェイス。 関係ないですけどさっき『縮こまって』を『知事困って』と打ち間違えました。あなたの言う知事って誰の事? 「いらっしゃいませー!」 『ドッキリ』と書かれたプレートを担いでノーフェイスの横を素通りしていく『てんてるぼうず』天照・砌。 その後ろをファンタジックにスキップするモヤシ。もとい優希。 砌はムーンウォークで戻ってきて、ちゃんとカメラに向けてプレートを誇張した。カメラどこにあんのか知らんけども。 一方その頃パート2。 「突撃! 隣のばんごはーーーーーーん!!」 『おいしい大豆』ヘルマン・バルシュミーデは窓ガラスをぶち破って部屋へ突入した。 すちゃっと着地するヘルマン。 彼が顔を上げると、そこにはキングサイズのベッドが置かれていた。くつろぐモヤ……いや優希。 「…………」 ヘルマンは無言で寝室を出ると、ノーフェイスとアンデッドの前を素通りし、炬燵の脇にある大きな窓を開けた。 流れ込む冬の空気。プレートを密かにアピールする砌。 ヘルマンはネクタイとジャケットを整え、外に出る。 でもってこちらを向いた。 深呼吸。 三歩下がって助走をつけ……。 「突撃! 隣のばんごはーーーーーーん!!」 「また来たー!」 ヘルマンは窓ガラスを突き破って部屋へ突入したのだった。 ●生きてる勇気を微笑む余裕を愛する心を明日への希望を運ぶよこの世の皆に的なアレ。 で、どうなたかってゆーと。 「はいアンデッドさーん、あっついうちに食べちゃってー」 あつあつのおでん鍋を炬燵に置いて、愛華はアンデッドの後頭部を鷲掴みにした。 そして力任せに鍋へ突っ込む。 「もぎゃあああああ!!」 「焦らないでゆっくり食べて~」 一回持ち上げ、再びアンデッドの顔を鍋へスパーキング。 「アンデッドさんに食べてもらいたくて愛花がんばりましたぁ♪」 「はい今晩はコチラ、田中ドドベンチャはんのお家でご飯いただこぅ思いますー」 隣で冷静にレポートを始めるさくら。 横から襲い掛かろうとしたアンデッドをシャモジのようなもので突き上げると、ソファに沈めてひたすら足蹴にし始めた。 「お母はん、子供三人もいて大変やろー」 「そうでもないですー」 微笑ましい会話をしつつアンデッドをスパーキングし続ける愛華。 その脇では……。 「妾の最高戦力(ヴァッフェ)ことドレットノートの力『緋の舞踏(ダンシングリッパー)』にてこの家ごと散るがいいわぁ!」 玲が、ソファでくつろいでいたアンデッドに容赦のないダンシングリッパーを叩き込んでいた。 たやすく行われる家庭内暴力、みたいなテロップが右下に現れる。 そっとモザイクが入る玲の顔。そして甲高く変わる声。 「吸血鬼(ヴァンパイア)は吸血鬼(ヴァンパイア)らしく貴様らの生命力を吸血して使わせてもらうぞクックック!」 「お、おのれ……さりげなくシリアスなセリフを混ぜおって……!」 頬にねじり鉢巻きの跡がついたノーフェイス。 彼は反撃とばかりに身構え……た途端額に突き刺さる矢。 「うるせー御託並べんなー!」 びょいいいいんと上下に振動する矢。真顔のノーフェイス。 天はもっかい矢をつがえて言った。 「人の嫌がることしちゃ駄目って学校で習っただろうが! 子返事はイエスかハイだー!」 もう一発びょいいいいいいん。 その横で、モヤ優希が体育座りしてノーフェイスの横顔を見つめていた。 振り向くノーフェイス。 頷くモヤシ。 そして二人は手を取り合ってリビングを走り出した。 と見せかけてー。 「魔閃光殺法!」 砌が暗黒の衝動を持つ黒いオーラを収束して放った。もう説明文を途中からコピったことが丸分かりだった。 だが普通とは違う点がある。そう、彼は腕を真っ直ぐ突出し指に力を込めていながらさりげなくオーラは腹から出していたのだった。 「しかしオーラは腹から出る……か」 「それやりたかっただけだろ!」 額に血管浮かせて振り返るノーフェイス。 すると、砌はモヤシ(優希じゃない方のやつ)を一本ずつむしってもしゃもしゃ食っていた。ぼろぼろこぼす暗黒剣。 「もやしうめー」 「や、やめろ! モヤシを喰うな!」 砌は手を止め、近くにあったロクヨンのメモリーパックを高速で抜き差しし始めた。 「ジョ○ットかわえー」 「やめろゲームの記録媒体を抜き差しするな!」 続いて砌はテレビのチャンネル設定をいじる。 「テレビ神奈川入らないかなー。キョーダ○ン見たいんだけど」 「やめろウチのテレビは千葉テレび~むしかしねえんだよ!」 砌に掴みかかるノーフェイス。 するとそこへ、冷蔵庫を開けっ放しにしたヘルマンが大股で近づいてきた(冷蔵庫はちゃんと閉めましょう)。 「納豆が……」 「え?」 「納豆が無いじゃないですかあ!」 肩に手を置き、渾身の腹パン。 「どういうことですか! どうして納豆入ってないんですか! 何考えてるんですか! あれほどF5連打するなって言ったじゃないですか!」 高速で腹パン(業炎撃)するヘルマン。 「なに? お前のシリアスってその程度なの!? 本当にそれでいいの!?」 横からひょっとこのお面をぐりぐり押し付けながらラヴィアンが魔曲・四重奏をしかける。 その様子を、モヤシは体育座りで見つめていた。 やけに澄んだ目だった。 ●この番組は御覧のスポンサーの提供でお送りしております 「この季節、お鍋やねー!」 さくらが業炎撃で風呂場に突入した。 崩れ落ちる壁。 彼女の後ろから愛華が登場。ノーフェイスの襟首をしっかりつかんで引きずって来ていた。 いやだーはなせーと暴れるノーフェイスをアツアツの風呂にスパーキング。 「ぐあああああああああ熱いいいいいいいいい! 身体が冷える冬の日に突然熱い風呂に入ると途轍もなく熱いいいいいいい!」 「いやーなかなか独特な鍋やなあ、うち食べんけど」 暴れるノーフェイスを足蹴にして沈めにかかるさくら。 「最近ブラックジャック覚えたんですよぉ、使ってみますね~。イェ~イ!」 反対側からは愛華がブラックジャックで沈めにかかる。 隣のカウンターが60を切った頃、ノーフェイスは二人を押しのけて風呂から飛び出した。 それでは宣伝タイム60秒でーとかいう声を背にリビングへ転がり出るノーフェイス。 どうでもいいがアンデッド達は軽く死んでいた。もう死んでるけど、もっぺん死んでいた。何故か全員おでんに顔突っ込んでいた。 「じ、地獄だ。相手が全くシリアスにならないなんて……ありえん……」 ぜーぜーと荒い呼吸をするノーフェイス。 「うおりゃー!」 すると突然、背後からラヴィアンのドロップキックが炸裂した。 そこから怒涛のキャメルクラッチ(よいリベリスタはマネしてはいけません)。 ノーフェイスたまらずタップ。 が、しかし。 「うぐぐぐぐ……ついに本性を現したな。シリアスに戦えば戦う程我が能力シリアス爆破が……」 「いいのか、俺を爆破したらお前も巻き込まれるぞ」 「……はっ!」 普通だったら別にそんなことないのかもしれないが、シリアス爆破に限っては自爆アリの設定だった。硬直するノーフェイス。 「今の内だ、やれ!」 「ぴーえすぴーのメモカ抜いてきたぞー!」 砌がノーフェイスにダイビング抱付。 そして今日一番のシリアス顔で言い切った。 「ノーフェイスを、倒す!」 途端、砌を中心に激しい爆発が起こった。ちゅどーんって音がした。 アフロになって転がる砌。 這いつくばって逃げようとするノーフェイス。 「くっ、まさかこの俺までもがシリアスで爆破されるとは……」 「えい」 がしり、と背中に抱き着くモヤシ(栽培されてない方のやつ)。 彼はアルミ手錠でしっかりとノーフェイスとの腕を繋ぐと、顔だけ盛大にシリアス化した。 と言う訳で、しばらくスーパー優希タイムをお楽しみください。 「もう逃がさんぞ世界の敵め!」 ちゅどーん! 「死んでも離さないぞ!」 ちゅどーん! 「貴様も爆発の巻き添えにしてくれる!」 ちゅどーん! 「貴様と俺は運命共同体、消炭になろうと逃しはしない!」 ちゅどーん! 「いくらでも言ってやる、ノーフェイスを倒す!」 ちゅどーん! 「シリアス爆破だと小癪なまねを!」 ちゅどーん! 「シリアスの世界でしか生きられない唯一の存在意義を奪うなら」 ちゅどーん! 「地獄の炎に焼か」 ちゅどーん! 「シリアスを守るべく何度爆発を」 ちゅどどーん! 「シリアスのためにフェイトを」 ちゅどどどどーん! 「シリアスへの愛ゆえに」 ちゅどどどどどどどどーん! 「シリアスをなじった愚かさをあの世で詫び続けろおおおおおお!!」 「もう言わないでええええええ!!」 爆発で吹っ飛んでいくモヤシ。 砕けて飛んでいく薄型テレビ。そして炬燵。そしてソファ。そしてジャグジー風呂。 その惨劇を前に、ヘルマンはアクション映画に出てくる主人公の顔で振り返った。 「皆さん、大丈夫でウヴォアー!?」 「奴めここを嗅ぎ付けおったか妾と『機関』の両方を同時に潰して一石二鳥ということじゃなしつこい奴等じゃ貴様許さん許さ……くっ、離れろ! 死にたくなかった早く妾から離れウヴォア!?」 ヘルマンと玲も一緒に吹っ飛んでいく。 そして、3LDK二階建てのお家はぺちゃんこに潰れたのであった。 ●もうちょっとだけ続……いてたまるかあ! ぺちゃんこになった家を眺めつつ、天は朗らかに笑った。 くるりと振り返れば、お面を捨てたラヴィアンやアフロの砌たちが立っている。 「これにて一件落着っ」 流れ始めるエンディングテーマ。 小気味よいギターソロから始まり、ピアノ伴奏が混じり合う。 引いていくカメラ。 さあ始まるぜみんなの好きなあのテーマ。 アス――。 「あ、ごめん。まださくら達瓦礫の下だ」 「マジでか!?」 そいつはやべえぜと言いながら瓦礫へと飛び込んで行くリベリスタ達。 彼らの頭上では雲が穏やかに流れる。 そんな空に、涙を流したノーフェイスの顔が浮かんでいたような気がした。 もし彼がいたならば、こう述べていたことだろう。 「もうシリアスはこりごりだよー!」 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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