●無為自然 老人は、ただ前を見据えていた。 其処には、竜がいた。精悍な表情、細長くも力強く威厳を感じさせる胴体、硬質でありながら繊細な鱗。まごうことなき竜のそれであった。 だが、おかしな事にその竜には色がなかった。正確に言えば、輪郭を保つ黒、影を落とす灰、そして白。それらが幾つもの異なる濃淡で共存しているだけなのだ。あたかも墨のみで描かれた、水墨画のように。 その竜を、老人は茫洋と、何処か虚ろな瞳で見据えていた。その手には一本の筆。そしてその傍らには、老人の瞳に映る竜をそのまま閉じ込めたような、水墨画があった。 ●画竜点睛 「新たなアーティファクトが確認されました」 モニターに映った画像を指し、天原和泉(nBNE000024)がそう告げる。 「場所はこの山奥、その森の中にある邸宅です。現在、渡会絵師が仕事場として使用しているとの事です……渡会絵師についてはご存知ですか?」 首を横に振る者達の為に説明すべく、和泉は手元の資料に目を落とす。 渡会辰巳。日本画家であり、特に水墨画に長ずる。老齢であり名のある絵師達には敵わないものの、その技法、その表現力は確かで、隠れた愛好家に根強い人気を誇るのだとか。 ただ、性格にやや難があるらしい。典型的な職人気質で、頑固なのだそうだ。人と激しく衝突する事はないが、寡黙で何を考えているのか判らない事に加え、譲れないものの為には梃子でも動かなくなる性質なのだとか。尤も、本人も自分のその性格を判っていて、独り山中に移り住んでいるところもあるようだ。 「その渡会絵師が、アーティファクトを保有しています。アーティファクトの名称は“点睛ノ絵筆”」 モニターに、一本の絵筆が映し出される。しかしよく見るとそれは、柄の部分が鈍い金色の鱗のようなもので覆われていた。色が色だが輝きと言えるようなものは殆ど感じられず、注視しなければ判らない程度のものではあったが。 データによると、この“点睛ノ絵筆”は、筆を執る者に超絶技巧を与える。但し、代償として、描いた絵の枚数だけ、視力がじわじわと失われてゆくのだ。 「幸いにも絵一枚に対する視力の低下は微々たるもので、加えて渡会絵師はまだ、この絵筆を一度しか用いていないようです。ですから、次の絵を描かれる前にアーティファクトを回収出来れば、渡会絵師の、絵師としての人生を護る事が出来る筈です」 しかし直後、ただ……と和泉が表情を僅かに曇らせる。 「このアーティファクトには、もうひとつ、厄介な性質が備わっているとの情報もありまして……」 何と、描いた絵がそのまま具現化すると言うのだ。しかも、具現化した絵は一定の条件を満たさない限りは何度でも蘇る。 「渡会絵師は図らずも、これによって一体の竜を産み出してしまいました。その戦闘力はフェーズ2のエリューションに相当します」 詳しくは此方を、と和泉から配られた竜のデータに目を通すリベリスタ達。 「敵の生命線は自らが描かれた絵……つまり渡会絵師の描かれた竜の絵を、燃やすなり破り捨てるなりすれば、竜は消滅します。竜も自らの生命線を護るべく徹底抗戦してくるでしょうから、気は進みませんが全力で事に当たって下さい」 お願いします、と和泉は頭を下げる。そのまま暫く顔を上げなかったのは、憂いを帯びた表情を、隠し切れなかったからであろうか。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:西条智沙 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年01月24日(火)23:36 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●不撓不屈 山中、竜が唸り声を上げる。 その双眸には、八つの影が捉えられていた。彼等はアーク所属のリべリスタとして、アーティファクトの回収任務に就いた者達だ。 「まずは絵師との接触を図るため、その障害となる画竜の相手をしませんと」 『鋼鉄の戦巫女』村上 真琴(BNE002654)の発したその言葉に、他のメンバーも頷く。アーティファクトは竜の護る邸宅の中、渡会絵師の手に。ならば、此処を突破しなければ始まらない。尤も、目の前で瞳をぎょろりと光らせる竜が、それを簡単に許すとは思えなかったが。 それでも、押し通らねばアーティファクトの回収は不可能。 「水墨画の竜と戦えるなんざちょいとロマンがあるね」 「絵とはいえ竜は竜。腕もなります」 「竜退治か……気を引き締めてさっさと終わらすっスね」 伝説上の存在と戦えるとあって、『獣の咆哮』ジェラルド G ヴェラルディ(BNE003288)、『銀騎士』ノエル・ファイニング(BNE003301)、そして『忠犬こたろー』羽柴・呼太郎(BNE003190)の戦意も昂揚する。それを感じ取ったのか、竜も既に身構え、臨戦態勢だ。絵のそれとは思えない程の気魄でもって、威嚇する。 「――瀧丸」 愛刀の名を紡ぐ、『水龍』水上 流(BNE003277)。その凛とした声は、竜の放つ威圧感にも屈さぬ強き決意を纏って響いた。無論、彼女でなくとも引き下がる者はいない。 ●真実一路 (画竜点睛、かくも字の如く……か) 流水の如き緩やかな構えを取りながら、『彼岸の華』阿羅守 蓮(BNE003207)は考える。彼の竜は、水墨画とは言え絵師にとっては我が子にも等しき存在である事であろう。芸術家と、その作品との関係は、そういうものだ。 恐らく、そう簡単には絵の破棄を承諾してはくれないだろう。ならば、取るべき行動はひとつだ。 (無粋だけれど、蛇足を引かせて貰うとしよう) 一点の曇りもなく、その瞳に竜を宿し、注視し探る。この番犬ならぬ番竜の、突破口を。 竜へ、その生みの親へ思いを馳せるのは、『ルーンジェイド』言乃葉・遠子(BNE001069)も同じく。 (画家さんはキャンパスに魂を塗り込めるのだと、聴いた事があります……) それは、どんな画家もきっと同じだと。だから、絵師も、自身の書画に魂を塗り込めているのだろうと。力強さと繊細さを兼ね備えたその竜の姿に、遠子は魂を見た。 けれど其処には、絵師そのものでない、混じり気が存在した。それは人智を超越した技巧で、竜を芸術として更なる高みに上昇させているものの、“渡会絵師の竜”たらしめる要因ではない。絵師も、こんな手段で自らを高める事をよしとしていないのではないか。そんな気がしてならなかった。 しかし彼女はその思考を頭の片隅に追いやって、気を静める。脳の伝達を飛躍的に上昇させ、更なる集中力を得る。 傍ら、『鬼出電入の式神』龍泉寺 式鬼(BNE001364)は印を結び、守護の結界を展開する。彼女は、アーティファクトの名を思い出していた。 (故事の如く飛び去る竜を創り出すまさに点睛の筆というわけじゃな。しかし……式鬼はこれが真の点睛とは思わぬ) 画竜点睛とは、ある画家の描いた竜の絵に瞳がない事を疑問に思った者の要望で、瞳を入れたところ竜に魂が宿り飛び去った、というもの。式鬼は、彼の画家であったからこそ、竜に魂が宿ったのだと考えている。ならば執る者全てに、魂を与える力を授けるそれは見せ掛けだけの高みしか与えない紛い物。 各人が備えを終えた、その刹那――竜の咆哮。それを皆の耳が捉えた時には、竜に駆け出さなかった者全ての下に、槍が如き雷光が飛来し、拡散した。 式鬼と蓮は咄嗟にひらりと身を躱すも、遠子が僅かに躱し切れず、貫かれた腕が鋭く痛み、痺れた。小さく呻き声を上げるも、彼女は喰いしばる。其処に、式鬼の癒しの札が飛んだ。 「無事かえ?」 「はい……何とか」 幸いにも痺れはすぐに治まった。麻痺に至らなかった事に内心で安堵の溜息を吐きつつ、遠子は体勢を立て直した。その様子に、竜は自らの攻撃が一定の成果を挙げられなかったことを見て、追撃しようとするが、その試みは失敗に終わる。横合いから、接近してきていたジェラルドが、その槍にありったけの気合を込めて、突貫したのだ。 絵師とその邸宅への被害を配慮し放たれたメガクラッシュ。目論見通り竜は踏ん張りが利かず吹き飛んだ。だが、一瞬の内に空中で体勢を整えると、その反転を利用し尾でかまいたちを作り出す。危なげなく回避に成功するジェラルドだが、その横をすり抜け竜は元の位置に戻ろうとする。だが、続く第二波。ノエルの、信念の名を冠した白銀の騎士槍によるそれだった。彼女の意志が力となり、竜にぶつかり、弾けんと猛る。しかし、寸でのところで躱された。あの様子ではまた戻ろうとするだろう。だが其処へ、すかさず踏み込む流が、名の通り流れるように技を繋げる。 「龍図は数え切れぬ程に見て参りましたが、此れは見事。なれど、荒ぶる龍なれば鎮めるが我が役目」 彼女の意志を宿した瀧丸は、鋭く牙を剥き、その切っ先で竜を更に弾き飛ばした。それでも矢張り竜は体勢を立て直し、睨み付けてくる。 「竜の力、見せていただきましょうか」 ノエルが、挑発するように言い放った。 ●察言観色 事前に真琴によってもたらされた十字の加護によって、依然リベリスタ達の戦意は高い。一方の竜も、劣勢にありながらも未だその王者の風格を保っていた。 其処に、狙い澄ました遠子の気糸が、真っ直ぐに竜を目掛けて飛来する。神経を研ぎ澄ませて放たれたそれは、通常であれば躱す事すら困難な程に的確な狙いを以て、竜に襲い掛かっていた。しかし、敵は並外れた俊敏さ、回避率を生かして直撃を免れた。それでも、首の付け根に刺さり、今度は苦しげな咆哮を上げる。しかし元が絵である為か、怒りに我を忘れるような事態には至らなかったようであった。 竜の首に生じた傷を見て、状況を注視する事に専念していた蓮が、首を傾げる。 (そのまま当たっていたら……?) その間にも、竜はのた打ち回る。だが、突然竜の動きが止まった。 「ふむ。此方は効果があるようじゃのう」 見れば、式鬼が呪印を周囲に幾重にも展開させ、束縛の結界を構成していた。それによって、竜は身動きが取れなくなったのだ。 時を同じくして、蓮が先程の気糸と首の付け根の関連性に気が付く。本来は的確に敵の弱点を射抜く筈の、遠子の気糸が僅かに逸れたとなれば弱点は近くにある筈。そして、見つけた。 「逆鱗が、あるみたいだね。皆、意識して狙ってみてくれるかな」 怒涛のラッシュが始まる。ジェラルドが、ノエルが、呼太郎が、流が、連続攻撃を加えてゆく。動きの鈍った竜は、何度も逆鱗を撃たれ、その度に悲痛な咆哮を上げる。 更には蓮も前線に加わり、炎を纏った拳で竜を打つ。真琴も全身全霊の一撃を竜へと送る。遠子も式鬼も、後方から援護し、逆鱗を狙う。後少し。誰もがそんな確信を抱いた瞬間、竜の呪縛が解けた。扉の前に戻るのが困難と判断した竜は、後衛に再び天雷を浴びせようと身を震わせる。 だが、それに気付きいち早く動いた者がいた。 「大人しく……墜ちるッスよ!」 呼太郎が、気合を込めた剣の一撃を、竜に見舞う。輝けるオーラを伴ったそれは、竜を地に叩きつけた。バシィ、と響く衝撃音。痙攣して動かなくなる竜を認めて、真琴が声を張り上げる。 「今です!」 頷いて、小屋に突入したのは遠子、式鬼、ノエル。絵師の説得を彼女等の任せ、他のメンバーは竜の抑えを継続する。 やがて、竜が再び雄叫びを上げ、飛翔した。竜は状況を察すると、説得班を追撃しようとするが、阻まれる。 「行かせはしませぬ」 愛刀を構え直す流に、真琴も、蓮も、ジェラルドも倣って。 (言乃葉さん達が上手くやってくれるまで……時間稼ぎくらいはしておくっスよ!) 何度蘇ろうと邪魔はさせない。彼の、皆の意志が、再度竜へと向かう。 ●胸襟秀麗 「お時間よろしいでしょうか」 鍵は掛かっていなかったが、ノエルが一度声をかけた。絵師は奥の揺り椅子に座っており、緩慢な動きで三人を振り返った。頭に手拭いを撒いたその姿は、画家と言うよりは職人のようにも見える。彼はぼんやりしたような目で、暫く無言のまま、三人を見つめていた。 「勝手にお邪魔してすみません……玄関の前にいた竜の事……そして竜を生み出した筆の事で伺いました……」 遠子の言葉に、ぴくりと僅かに反応する絵師。 「突然押し掛けた上、突然な話じゃが」 三人は、出来るだけ簡潔に事情を説明する。アークの事、アーティファクトの事。そして、彼女達の願いを。 「単刀直入に申せば、そちらの絵筆を譲って頂きたいのです」 「……」 ノエルの申し出にも、絵師は驚いた様子もない。だが、その双眸に翳りが見える。 「迷っておられるのでしょうか?」 その迷いは恐らく彼の信念から生ずるもの。ならば彼の信念とは。 「わたくしは絵には詳しくありませんが、もし辰巳さんが貫き通したいものがあるのならば……通して欲しいと思います。道具に頼る事は、ある種これまでの自身の技の否定でもあります」 その言葉に、絵筆を握り締める絵師。 「画竜点睛の由来とその故事は御存じであろう。その画家は絵から真の竜を創り出せるほどの神童であったのじゃろう。故に敢えて最後の一筆を加えなかった」 だからこそ、彼女は思うのだ。 「術の如く如何なる絵にも魂を宿せる筆など、真の点睛の筆にあらず。真の点睛の筆の在処は、かの画家がそうであったように己が腕の中にあるものだと式鬼は思う」 故に、その筆は、偽りの点睛の筆だと。 「式鬼のような絵心の一つも知らぬ素人でも魂を宿せる邪道の代物よ。御老体の様な志ある画家が持つべきものではない」 絵師の、筆を持つ手が震える。其処で、遠子は最初に自分が抱いた考えが、間違っていない事を確信した。 「絵師……貴方はその筆を使う事に躊躇があるんじゃないですか……?」 上手いだけでは誰の心にも響かない。絵師が魂をこめて描くから人の心を打つ。それを判っているからこそ、使わなかった、使えなかったのではないかと。 告げようとして、しかし、絵師が口を開いた。 「……あれは、俺が描いた。俺自身が、描いたものだ。それでも」 彼は、ゆっくりと瞼を下ろす。 「……俺の絵じゃない」 その言葉は彼なりの承諾だったのだろう。回収には成功したも同然となったが、誰も、暫く何も言わなかった。言えなかった。 それでも、ややあって、もうひとつ願いがある、と遠子は言う。 「……あの絵を破って頂きたいんです……」 絵師にとって作品は魂の一部。それは判っている。けれどあの絵が存在する限りあの竜は天に昇らず在り続けるから。 「酷いお願いと知っています……」 だけど、と続けようとする遠子だが、その先は言葉にならなくて。けれど、何かを察した絵師が、立ち上がる。彼はそのまま、ゆっくりと遠子に歩み寄ると、少し乱暴にではあったが、彼女の頭を軽く撫でた。 「……言いたい事は、判ってる。だが……それは出来ない」 「え」 「……俺の絵じゃない。それでも……お前の言う通り、あれは……俺が生み出したものだ。生まれてきた子供を……親は、殺せない」 だから、あの絵を“自ら破棄する事”だけはさせないでくれと。 「失礼します」 それを受けて、ノエルが、見つけた竜の絵を手に取った。成程力強く、美しい。そして先程戦った竜と瓜二つだった。 「……済まない」 絵師が謝ったのは、我が子か、それとも遠子に式鬼、ノエルだったのか。 誰も知る事なく、竜の絵は紙屑と化した。 ●急転直下 「く……!」 流石に呪縛の使い手である式鬼、的確に弱点を狙える遠子がいなくなると、竜の俊敏さもあって逆鱗を狙う事が難しくなる。全く当たらないわけではないが、再度撃破の運びにはなかなか辿り着けなかった。 竜も、各個撃破に目標を切り替え、流を集中して狙っていた。けれど、彼女が危うくなる度に、真琴が庇ったり、癒しを与える。その間にも、蓮や呼太郎、ジェラルドが攻撃を重ねていて。 漸く、ジェラルドの一撃が逆鱗を捉え、再び竜が地に崩れゆく。それと同時に、蓮がぱっと声を上げた。 「説得、成功したようだよ」 幻想纏いを通し確認していたのだ。それを裏付けるかのように、倒れた竜が塵となって消えてゆく。その散り際を見ながら、ジェラルドは手向けのように、呟いた。 「アンタは強くて雄大で、勇ましい。絵師の魂そのものなんだろう。相見えることができて本当に楽しかったぜ」 その言葉が終わると同時に、竜は完全に消え去った。リベリスタ達が、勝ったのだ。あらゆる意味で。 「やったッスね!」 はしゃいだ声を上げる呼太郎。すると、説得を終えた三人が、邸宅から姿を現す。アーティファクトは遠子の手に。その後ろには絵師も一緒だ。 その光景に安堵しながらも、蓮は絵師に尋ねる。 「技量を高める筆は絵師にとっては確かに魅力的でしょう。されど求道に王道無し。貴方はそれを手にあれを描いて、果たして満足出来ましたか?」 それは絵師が自らの道を取り戻せればと思ってこその問い。絵師もそれを理解しているようで、判らぬ程に微かに笑みながら、首を横に振る。 「……そうだな。高みを得る事が……画の全てではない。自らの手によるものでなければ……尚更」 「万能の筆は確かに魅力的なもの。それでも、己が魂を込めた会心の作品には到底及びもつかないものだと思います」 「辿り着くのならば己が足で。たとい辿り着けずとも、歩んだ道に嘘偽りはございませぬ」 真琴の、流の言葉にも、絵師は深く頷いた。 その時“彼”は、絵師の前で膝をつき、正面から向き合った。自らの言動全てに絵師への敬意を込めて。 「老子には、齢の分だけ、人生を重ね磨かれた魂がある。ありのままの老子の絵を、老子の魂そのものを、俺は見て行きたい」 だから、通わせては貰えないかと。 「これからも、老子の絵を見たいと思っちまいました。あの水墨画の竜の気迫は、本当に凄かった」 真っ直ぐにそう告げる彼――ジェラルドに、絵師は、 ●真・画竜点睛 ノックの音がするが、絵師は応えない。しかしそれは彼なりの許可だ。 「老子。調子は如何です?」 尋ねてきたジェラルドが声をかけるが、矢張り絵師は相変わらずで。それでも、また此処を尋ねる事の許可を貰えた時点で、ある程度心を開いてはくれているのだろう。 「……ジェラルド」 「……え?」 名前を呼ばれた事に目を丸くしながらも、ジェラルドは呼び掛けに応じる。すると、絵師が一枚の紙を手渡してきた。 其処には、竜がいた。先日の竜よりいびつな姿ではあったが、力強く、しなやかで、何より、生き生きしているように見えた。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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