●ねんし(棒読み) 明けましておめでとうございます、とそこかしこから声がする。 新しい年がきた。新しい朝がきた。 喜び勇んで外を走れ。今なら虫は寒くて動けぬ。 あの馬鹿も寒さで動け…… 『――おォい、俺様喪中のこの中でおめでとうございますとか調子ノってんじゃねぇぜ。こちとら知人の大量死なンだ、冗談じゃねえ。分かってネェんだ現実を。理解が足りないんだ野郎共。今年も初めから最悪だって理解させて、お前らに消えない傷跡を与えようなんて思うわけサ。ひゅーっ、素敵だね俺! 拍手だ! 今回の趣向ってばサイッコーだぜ? お前ら好きだろBL? とかGL? とか。キライ? 冗談吐かせよ、吐き出せよ。全部見届けてやっからさあ……!』 流石に無理か。 ●機械男と包帯男、あとロリ 「夜倉様、ぼーいずらぶ……って何ですか? 嫌な予感しかしないのですが念の為に確認しても宜しいですか? あとテラーナイト様がノーパンだったっていうのまで視えたんですけどどうしたらいいんですかコレ」 「名古屋君」 「ハイ? 何ですか夜倉様、何か目がマジですぞ?」 「この手合いを君だけに任せるのは流石に得策ではありません。かといって、僕が救援を出しても百パーセントの結果を出せるかは未知数です」 「は、はあ……夜倉様、何か企んでませんか?」 「そこで、今回はイヴ君にも手伝って貰います。三部隊による一斉行動で何とか片付けざるを得ません」 「……夜倉様、それって夜倉様がお一人で三部隊まとめれば」 「シャラップ。名古屋君だってこんなの一人で仕切れって言われてどうします? こういう時だからこそのフォーチュナ分業制ですよ」 「分業制でしたっけ……」 ●ひでぶ 「こんなのってないよ あんまりだよ」 開口一番、『歪曲芸師』名古屋・T・メルクリィ(nBNE000209)はいつもの事務椅子に座り込んで俯けた顔を両手で覆っていた。 卓上には広げられた資料。今回の任務の資料だろうか――目を落とし、 ゲェーッ。 それは奇麗な男の子と男の子がくんずほぐれつなアレやソレだったり、 人間の頭部ほどの大きさをした不気味な蜘蛛がドアップで何匹も映ったグロ写真だったり、 『てらーないとはのーぱん』とだけ書かれた不可解なメモだったり、 包帯予見師に毟られたらしい機械男の細い配線だったり。 「えぇと、取り敢えずですね、一言で纏めるとですね」 そこでようやっと顔を上げたメルクリィが顔色の悪い顔を一層蒼くして言い放つ。 「男性限定で噛まれると同性ににおピンクな感情を猛烈に抱いてしまう蜘蛛エリューションをテラーナイト様が野に放ったんでそれの討伐をしてきて下さい」 よしお疲れさん。 「あぁぁああーーちょっとちょっと帰らんとって下さいよぉぉおお!!」 機械ハンドに掴まれ阻まれ。やれやれだぜ。 「……えぇと。夜倉様より頂いたこの資料と前回の資料によると……。 フィクサード『テラーナイト・コックローチ』。元薬品会社の研究員で、害虫の生態にもその愛着にも一日の長がある人物だそうで。 不快害虫を神秘現実織りまぜて扱うことから、界隈では最底辺同然の評価をされているのですが……そんじょそこいらのフィクサードとは、まぁ、色んな意味で凄い感じですな。 詳しくはそこにある過去任務報告書にもありますので、宜しければお眼通しを」 視線の先には『By夜倉様』とキチンと纏められた資料、後で読んでおくのも良いかもしれない。 「で、問題の……『例の蜘蛛』なんですが」 メルクリィの指が先程の蜘蛛――五匹いる――の写真上に乗せられる。 「E・ビースト『スパイダー八○一』、数は5、フェーズは1。 ……えぇと、ビーエルってご存知ですか? あの、えっと、これに噛まれたりこれの発する香りを嗅ぐと、……ハイ、男性のみですが、同性に対し『そういう感じの薔薇っとした気分』……に、なりますハイ。 しかもコレ、ブレイクフィアーとか聖人の息吹とかあの辺で解除できません。厄介ですな、ホント。 ……ちょ、だからってそんな目で見ないで下さいよぅ……私の所為じゃないです。いや、気持ちは分かるんですが」 溜息。説明を続けますね。 「スパイダー八〇一は……こう、おピンク状態でない方を優先して狙う習性がある様でして。 それと女性と性別不明さんに対しては変な事にはなりませんが異常にダメージが入るらしいですよ」 そこまで説明してメルクリィが間を開ける。思案する表情。迷う顔。リベリスタを見渡し、額に手をやり肩を竦めて――言う。「場所についてですが」と。 「今回の戦場はここのここですぞ。中々広いですし明るいですし足場もしっかりしてます見取り図も渡しておきますんで迷わず行けるかと。ギミックが動いているのはテラーナイト様が予めいじったようですぞ」 言葉と共に卓上に広げられる資料。 それは連れ込み宿の一室……彼の説明通り、ムーディで官能的なおピンクの明りに照らされた大人の場所であった。ただし廃墟だったが。 「…………………。御武運を!!!」 ウワこいつ、マジで同情の目ェ向けてきやがった。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:ガンマ | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年01月23日(月)00:26 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●覚悟完了 見上げる先には草木に埋もれつつある極彩の廃墟が一つ。錆びて朽ちて割れた看板が一つ。 「へえ、廃墟とは言え連れ込み宿、いいとこじゃないの!」 こういう所で戦えるなんて、俺達ラッキーだよな。ドラマティックで止められそうにない男が振り向くほどの『いい男♂』阿部・高和(BNE002103)が男前に笑んだ。笑んだまま、 「それじゃ、トコトン戦ってやるからな……な、新田!!」 今までにない戦慄の表情を浮かべている『デイアフタートゥモロー』新田・快(BNE000439)の肩に手をポン。 絶望。恐怖。呪いの廃墟。 「やべぇよこれやべぇって何がやべぇってあれだよ男としてのあれやそれだよわかってくれよクソッタレ」 恐怖からか既に釘バットを握り締めた『黒鋼』石黒 鋼児(BNE002630)は早口小声に捲し立てる。 (俺ぁまだ中学生だぜ……?) そう、鋼児はまだ14歳。見た目は2メートルを超す厳つい体に悪人面だけど、成人はおろか高校生ですら無い正真正銘の中等部2年生。えっちな本を買うのだって躊躇っちまう様な初心な男なのである。貴重なショタ枠だね。 (それがどうよ此の状況……一足飛びで男同士がくんずほぐれつだよ意味分かんねぇよ助けてくれよちょっと涙出てきたぞチクショウ) 肩を戦慄かせる。お婿に行けない。貴重なショタ枠だね。ショタの定義って何じゃらホイ。 しかし――いいぜ、上等だ。涙を拭って顔を上げる。どれだけの危険が迫っていようが関係ない、彼はリベリスタ。世界の理を守ると決めた男。 「その男がこんな事くれぇでへこたれて良い訳ねぇだろうが。きっちり纏めて全員ぶっ潰してやらぁ!」 なんて勇気を振り絞る鋼児だったが……仲間の女性がマジ怖い。マジで。 「スパイダーやお……ちがった、はちまる……えええい!! なんでもいい! 覚悟……覚悟しr……覚悟するのは男性陣だ! 頑張れスパイダーやおい! 男性陣に噛み付くんだスパイダーやおい! めろめろにするんだスパイダーやおい! だが倒す」 本音がポロリ。ジーニア腐の腐ランダル『すもーる くらっしゃー』羽柴 壱也(BNE002639)はビデオカメラ片手に目がマジだった。どっちの味方なんだ。多分、三高平に御坐す貴腐人達の味方なのだろう…… 「今回は阿部さんがいるからセリフのひとつひとつ大事に残しておきたいし? みんなの変わる表情を一部始終録画しておきたいし? 回るベッド有効活用したいし? 要は楽しければなんでもいいんだよ!」 正に外道。そんな彼女の傍らではもう一人のジーニア腐乱ダル『安全第一』源兵島 こじり(BNE000630)がレコーダーのチェックを念入りに行っている。表情こそクールだが……壱也が『動』ならばこじりは『静』。三高平が誇るエリート腐ランダルの降臨である。 おやおや……苦笑を浮かべ、でも何だか満更じゃなさそうなのはどっちもイケる『(自称)愛と自由の探求者』佐倉 吹雪(BNE003319)。 「これがE・ビーストとかじゃなくて新種の蜘蛛だったりしたらこのまま放置してもよかったんだがなぁ。 何だがもったいない気はするが流石にこのまま放置ってわけにはいかねぇか。 まぁいいさ、倒す途中でナニかあるかもしれないし、もしもナニかあっても事故だよな、うん」 どうして『ナニ』なのか。『何』ではなく『ナニ』なのか。きっとナニかナニがナニでナニなのだろう。大人の対応だ。アダルトな意味で。 「蜘蛛討伐と聞き、同じ蜘蛛として興味を持って来た……はいいんだけど」 恐怖、狂喜、異常空間への入り口を前にしてしかし常と同じ落ち着いた表情を浮かべているのは『ストレンジ』八文字・スケキヨ(BNE001515)であった。 「とんでもない所に来たようだね」 平然。沈着。今日ほどペルソナの力に感謝した日は無い。勿論目下フル稼働中。被せたペルソナの下は異様にドキドキしていた――嫌な方向で。 (女性陣が怖い。でも敢えて普通に!) ボロを見せたら終わりだ。色々な意味で。そうだ、お守りとして彼女から貰ったお手紙を読んで心を落ち着けよう。彼女の笑顔は、自分を想ってくれる心は、この消えてしまいそうな勇気を奮い立たせてくれるに違いない。蜘蛛の因子を持つ指で開いた、紙面。 それは女の子らしい可愛い文字だった。 『何があっても大好きよ。何があっても』 (……何だろう、この、何かを悟ったような『何があっても』の繰り返しは!) スケキヨさん、貴方の彼女は三高平が誇るソード腐ラージュです。御愁傷様…… 各々が各々のアレな中、それでも『我道邁進』古賀・源一郎(BNE002735)は本当の意味で常通りの落ち着いた様子であった。恐れる理由もない。ただ心に燃やすのはテラーナイトへの怒りである。 「今迄も許し難いが、此度は尚許し難い。人の感情に手を加える様、神でも気取ったか。一時的であろうとも、度し難く許し難い」 カラリコロリと下駄を鳴らし、悠然と歩みを進めるのであった。男前。 ●ロマンティックが止まらなアッーい 「フフフ、本当何だろうこの部屋……」 口元を引き攣らせたスケキヨの視線の先。ムーディでアダルトでおピンクなお部屋でした、本当にありがとうございました。 そして、その隅にカサカサと――人間の頭部程の大きさをした蜘蛛のエリューション、スパーダー八〇一。あ、何回も説明しましたが『すぱいだーはちまるいち』ですので。 さぁ、覚悟を決めて挑もうか。 「早く倒してしまえば何て事はないさ!」 自らに言い聞かせ、スケキヨの長い指が守護結界の印を切った。 「大変だ」 快は護り刀である砂蛇のナイフを握り締めた。 大変だ。そう、会い変だ――ここにいる人に心奪われて何か過ちがあったり一線を超えたりすると、社会的にフェイトゼロになる。這い寄って来る八〇一。百戦錬磨の守護神は閃いた。 そうだ、よし、ここは『この場に居ない人』に強く思いを寄せて、その人に操を立ててるってことにしよう。 これなら精神はともかく、物理的、肉体的な被害は発生しないし。ここは背に腹は代えられない。 流石だ守護神。凄いぞ守護神。その胸に輝くぬりかべ……じゃなくってアーク青銅勲章の輝きはダテじゃない。 「というわけで相棒! 君に決めた!」 「ちょっとー、男子ーっ! 噛まれるのを怖がってどうするの、とにかく前に出ようぜ! な、新田!!」 阿部さんとハモった。気が付いたら物凄い傍に居た。ところで、何で阿部さんって『高和』って描写表記しようって思えないんだろう。ナチュラルに『阿部さん』と表記してしまうんだろう。三高平の七不思議。 「ところでこの土砕掌を見てくれ、こいつをどう思う?」 そんなこんなで阿部さんのイキリ勃つ土砕掌が八〇一にめり込む。突き刺さる。凄く……どっさいです…… 「ああ……次は業炎撃だ……」 阿部さんの熱いソレがアレを嬲る。部屋に満ちる熱。鏡に映る滾る拳。 一方で砂蛇のナイフを懸命に振るいつつ、蜘蛛が吐いた熱い白濁に精悍な顔を汚しながらも、快は偏に彼を思う。思い続ける。ちょっと昨日あたり去勢されたらしいけど想い続ける。 (アイツのことを強く考えて、スパイダー八○一を受けた時にはアイツに心に奪われるようにしよう。やっぱり俺にとって最高の相棒で、お前との絆は三高平に来て得たものの中でも最高の宝だよ。そう言えば何だろう、この甘ったるい薔薇の香りは。嗚呼、気をしっかり持つんだ。くそ、危ない、噛まれる所だった。掠めたかもしれない。集中しろ。集中……アイツの事を。最近はちょっと別の奴と一緒の依頼が多かったけど、やっぱり俺にとっての相棒はお前しかいないんだ。お前が好きだよ。お前にはこじりさんが居るのは解ってる。だから、俺は二番目でいい。好きだ、好きなんだ、どうしても――そうだ、こじりさんにも許可を貰っておこう。俺の力は、誰かの夢を守る力) 「こじりさん、俺、二番目でいいから、俺がアイツを好きになることを……許してくれないか?」 「いいんじゃない」 振り返ったそこ、こじりは流鏑馬を構えていた――快に。 え。二つ以上の意味で発した言葉の瞬間、メガクラッシュが快に炸裂する。ブッ飛ぶ。 「おっと」 そんな快を優しく抱き止めたのは吹雪の逞しい腕だった。 薔薇の甘い香りに包まれて、視線が合う。大丈夫か、吹雪の指が快の顔についた白濁をそっと拭ってやる。 「しかしお前、近くで見ると結構可愛いツラしてんな」 「え、あ……」 「それに、いいケツだ」 するり。快の肩にあった吹雪の手が彼の背中を伝い、そして臀部へ。 「っ!?」 「後でヤラナイカ?」 耳元で囁く、睦言の様な甘く低い声。 しかし快は――吹雪の腕を振り解き。 「……気持ちは嬉しいさ。けれど、俺にはアイツを裏切ることはできない! 俺の不沈艦はアイツだけのものなんだ!」 ああ、アイツのことを考えていたら、今すぐに会いたくなってきた。蠢く蜘蛛を睨み付ける。 「よし、こんな蜘蛛は俺のヘビースマッシュで一撃だ! さっさと倒して、アイツに会いに行くんだ!」 振り上げる砂蛇のナイフ。白濁まみれのナイフ。 「人は俺を――(貞操の)守護神と呼ぶ!」 「アッーーー!」 また阿部さんとハモった。気が付いたら真後ろに居た。噛まれたらしい。 「気分はエクスタシッーーー!! クロスアウット!!」 脱☆衣。阿部さんオブツナギオフ。 「悔しいっ! こんなおピンクに反応しちゃうなんて、ビクンビクンッ! でもしょうがないよな、俺もこんな事したくは無いんだが、おピンクって自分の意思じゃどうしようも無いんだ。な、新田!! いいよいいよ、俺が噛まれたヤツ全員面倒みてやるよ! その前に布団を敷こう、な、新田!! このままじゃ、収まりがつかないんだよな。顔が近くたっていいじゃない! な、新田!!」 超柔軟DE捕獲@ベッドの横に布団。 「よっしゃこいこい! な、新田!!」 快の意識はそこで途絶えた―― ●腐ランダル 「嗚呼、何ということだろう、御厨に操を立てると誓った矢先、新田・快は阿部さんの厚い胸板を目にしてしまった。「彼が欲しい」湧き上がる情欲を抑えきれない、背徳と貞操を己の天秤に掛ける三高平の守護神は、此処ではただの一人の男なのだ。それを誰が糾弾出来ようか?誰も出来ないのだ、例えるなら男は女を求め、女は男を求め、そしてホモはホモを求めるのだから。新田・快【デイアフターホモろう】の誕生である。快の吐息が甘露の様に甘く零れた。そんな彼の臀部を優しく佐倉がなぞる「新田のケツはまるでオリオンだな」止めろ、止めてくれ。そう言う快は、力が入らないのだろう凭れ掛かる様に身を委ねた。次第に高鳴る鼓動、脳裏を過ぎる相棒の寂しげな表情、「済まない……俺はもう、我慢出来ないんだ」高鳴る鼓動、合わさる吐息、交わる視線。それら全てがまるで麻薬の様に快の理性を侵し、犯し、冒す。そして気付くのだ、「ああ、そうか、俺が今まで守って来たモノはDTなんかじゃあない。(ピー)だったんだ」全てを悟る快。三千世界全てを見渡せるような気がする程、視界が開けた。もう何も偽る必要は無いのだ。新田・快の新たな冒険が、今幕を開いた」 そんなこじりの一方、腐った戦気を纏った壱也はこっそりカメラ。ベッドの周りを囲うように2台・部屋全体2台・自分用1台。ばっちり★ 「彼女にも頼まれてるからばっちり撮影しなくちゃね! さあ存分に乱れたまえふふふふ腐! いいよーいいよーもっと乱れて!」 部屋の後ろでコッソリガッツリロックオン。男の子の筋肉率高めだけど気にしない。ていうか新たな境地? 「そこちょっとくっつきが足りないな~おっと疾風居合い斬りしたらよろけちゃったおっとっと★」(ひっぷあたっく 「あちゃーベッドに近いおピンク組にも攻撃で足がもつれちゃったよいしょ★」(軽くたっくる 運営さーん、ちょっとカオスゲージに『腐』ってない?え?無い? ●オトコマエタイム 蜘蛛の攻撃を一発でも貰っちまったらアウトだ。鋼児は震えを堪えてバットを構える。近くに寄るなんて恐ろしくて出来るか馬鹿野郎。そんな前に、雄偉な背を見せ立つのは源一郎。 「深くは語らぬ。我が意、我が動きにて示さん」 自分の成すべき事は一つ――鋼児を護りきる事のみ。 体躯こそ大人のそれにも劣らぬ大男だけれど、中身は未成熟、そう、未成年なのだ。無限に近い可能性を未来に秘めた少年なのである。その上、良き想い人まで居るという。 「斯様な場にて毒牙にかからせて良い道理等皆無」 あの薔薇の臭いから少しでも遠ざける為に「壁際へ」と指示をする。紅睨は凛然と這い寄る蜘蛛へ。 「創造主、万物の王、唯一神、悪鬼羅刹に魑魅魍魎、如何なる存在が望もうとも。我が全身全霊を以て、手出しはさせぬ」 毒牙も糸も少年の代わりに身を挺し。鋼の心で硬く誓い、秘めた魂にて劣情を抑え込む。銃指は狙い違わず蜘蛛を撃つ。 勇ましい。頼もしい。恰好良い――ぽわり。鋼児は甘く蕩ける様な心地の中、頬を染めていた(超乙女チックphase1:頬を染める)。無頼をチラ見。直視は恥ずかしくって出来ない、恥ずかしい。だから、ちょっとだけ見る(超乙女チックphase2:対象をチラ見する。直視は恥ずかしいので出来ない )。もじもじ。超乙女チック。真っ赤な頬で、床にのの字(phase3:もじもじし始める。床にのの字を書いてしまう)。 「あの……」 そろり、源一郎へ近付く(超乙女チックphase4:決死の思いで対象に近付く)。心臓がヤバイ、飛び出しちゃいそう。聞こえてないみたいだ……深呼吸をして、決死の覚悟で、もう一回。 「あの」 「如何した」 「手……繋いでも、良いかな?」(超乙女チックphase5:「あの…手、繋いでも、良いかな?」決死の思いでの発言である) 「石黒が然う望むのであれば」 「ほ、ほんと?」 「男に二言は無い。――効果を受けたいので無くば、我から離れぬ様」」 「……うん、ありがと。ここに、いるね?」 (超乙女チックphase6:大胆にも指を絡めて手を繋ごうとする。この時の表情はまさに恋する乙女そのものである) 「……、――大好きだよ」(超乙女チックendphase:はにかみながらも「大好きだよ」と弱弱しく呟く) 「 」 ブチィ。何かを噛み切った様な音がした。源一郎が自分の舌を噛んだのだ。物凄い大量出血。今にもこの可愛らしい純情少年を抱き締めたい気持ちを抑え込んで。 「全ては無限の輝きを秘めた原石を曇らせる真似をさせぬが為!! 我が誓い、此の程度にて崩せるものか!」 フェイト等投げ捨てる物。頑張れ源一郎さん。 ●おぉ、えろすえろす (くっ、ダメだ、ボクには心に決めた人が……心に……いや。その人は確かこういう状況が大好きだった筈だ。成程、これが彼女の愛した世界なんだね?) 薔薇の香りに包まれて。スケキヨは口元に掛かった白濁を細い舌で舐めとって。笑みは妖艶。 「皆ボクと全くタイプの違う、逞しい男前ばかりで……フフフ、嫉妬しちゃうなぁ」 自分と正反対の人に惹かれるのはきっと、お互い自分には無いモノを補い合う為なんだろう。 背後から、そっと、吹雪の両肩に細長い指を置く。砂のオブジェに触れるかのよう、そっと。這わせる。指。情欲を孕んで。 目が合う。仮面越しだけれども。 「こんな時でもボクの素顔は見せられないけど、キミの素顔を暴いても……良いかな?」 「嬉しいねぇ。……その言葉、嘘じゃないだろうな?」 「フフ、酷いなぁ。今この時だけは、この気持ちは……ウソじゃない」 「じゃ、ゆっくりイロイロ――」 肩の上で指を重ねた。スケキヨの方が背は高い。既に零から近付く距離。吐息すら感じる距離。 壱也のカメラに背伸びをした吹雪の脚が映った―― ●最初から全開で寧ろどんと来い 濃密なおピンクの最中。 「うおおおおおカメラだけは壊させないいいいいい」 カメラに八〇一が攻撃せんとしたその刹那。壱也はその身を挺してカメラを護った。ゆらりと振り返った。殺意。腐臭。バスタードソード。踏みつける蜘蛛。でも笑顔。 「……なんでわたしに攻撃してるの? ねえなんで? ねえ? 早く男性のところに行きなさい!」 豪打。でも、その豪打で決着が着いちゃったのであった。 ●事後 端的に言うと快はレイプ目で体育座りをしていた。ガタガタ震えていた。脱げた着衣を抱き締めて。阿部さんが敷いたお布団の上で。 「おピンクでやるのもたまにはいいかも知れないな。どうだい? 少しここで休憩してから帰らないか?」 一方の阿部さんはツヤツヤな感じでご機嫌。 「新田くん、帰るわよ」 録音したレコーダーを大事に保管しながら、ほくほく顔のこじりは快の手を引き。その後に続く壱也もまたホクホクと、 「帰ったらメルクリィさんと夜倉さんかけて遊ぼうっと。どっちがいいかな?」 この前、メルひたとかひたメルとか誰ぞが言ってたよ! 「 」 スケキヨは乱れた衣服のまま頭を抱えていた。うわあああ。でも、誰かに今日の事を聞かれたら、良い笑顔でこう言おう。 大丈夫、何も無かったよ――と。 たとえそれが、素敵でも楽しくも幸せでもない嘘だとしても……。 「さーて、帰って名古屋のケツでも触るかー」 吹雪もほくほく、蒼い顔の鋼児と黙り込む源一郎を追い越して、悠々自適に三高平へ。 『了』 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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