●白靄の彼方 かつて悪夢がそこにあった。 かつて悪夢がそこに生まれた。 今も悪夢の残滓が、―― ●真相究明 「ハローモルゲン皆々様、メタフレフォーチュナのメルクリィですぞ」 そう言って事務椅子を回し振り返ったのは名古屋・T・メルクリィ(nBNE000209)。 その背後モニターには――災害でもあったのだろうか、無茶苦茶に壊れた小さなゴーストタウン。崩れた廃屋に、荒れた道路。地面は殆ど雑草で覆われ、そこに来訪者が長らく訪れていない事など容易に想像できた。 「皆々様のジョブと似通った能力を持つ存在、モドキ達についてはもうご存知でしょう。 既に11体、討伐が確認されており……その11体で全てだったんですが」 まだ終わりではないらしいのです。 「今までのモドキ達との戦闘で、たくさん疑問を抱いた方がいらっしゃるでしょう。 彼らは何処から来て――何の為に――何の所為で……。しかし遂に真相が分かる時が来たかもしません」 言葉と共にメルクリィが卓上にハンカチを広げた。念写によって地図が記されている――分かる者には分かった。これは、 「先日、PN……プロアデプトモドキノーフェイスが力尽きる際に念写したものですぞ。 この地図に記された所を丁度カレイドで見たのですよ、理由は勿論『神秘的事象が起きた』から」 フォーチュナがモニターを操作すると、元は立派な屋敷だったらしい瓦礫の周囲に漂う白い靄が一つ。 ……?良く聞けば何か、ノイズの様な音。呟き声だろうか……あのモニター上の靄からだ。 それは――後悔、懺悔、悲痛な囁き。 「E・フォースフェーズ1『残滓』。後悔や懺悔の念が覚醒したものですぞ。皆々様にはこれの討伐に当たって頂きます。強力な個体ではないのであまり手間取る事は無いかと。 それと……この屋敷跡なのですが」 メルクリィが卓上のハンカチ地図に機械の指をゴトンと置き指した。その先、地図上にはマルが付けられた箇所。 「このマルはこの屋敷を示しておりますぞ。ここを捜索すれば、モドキ達についての手掛かりが何かしら発見できるかもしれません。 ……とうとう真相が分かる時、ですな」 モドキ達。あの激闘はつい先日だったり、大分と前だったり。思いはそれぞれ胸の中。 何が出るか、真実は何か、それは自分達にどう関係してくるのか――未だ混沌としているが、きっとあの場所に手掛かりがあるのだろう。 表情を引き締めるリベリスタにフォーチュナは緩やかに頷いた。 「それでは皆々様! くれぐれもお気をつけて、行ってらっしゃいませ。フフ」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:ガンマ | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 10人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年01月14日(土)22:34 |
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■メイン参加者 10人■ | |||||
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●日輪の下で 燦々。蒼い空。白い雲。静まり返った無人の町。自然に還らんとしている廃墟の町。 どのような意図が働き、モドキシリーズがどのような経緯で生まれたのか。 壊滅したこの小さな町で何があったのか。 「任務を開始する」 いつもの様に。いつもの言葉で。然し『T-34』ウラジミール・ヴォロシロフ(BNE000680)の双眸には凛然とした色が宿っていた。解明させねばなるまい。その為に彼は集めた。捜した。世間的な情報、当時の新聞を。小鳥遊・茉莉(BNE002647)も加わった。町の歴史、大きな自然災害のような出来事、もしくは何らかの犯罪による大規模な事件等があったのか否か。 かくして彼等は到達する。皆に伝える。この町が古い歴史を持つ事を。そして――ナイトメアダウンを境に地図から消えた事を。 「お屋敷は研究所とかだったのかな。辺鄙な場所で町ごと……かなり組織的?」 その言葉の後に続く筈だった『白詰草の花冠』月杜・とら(BNE002285)の「よ~し、とら頑張って調べちゃうよ!」というハリキリ台詞は、ふわぁと欠伸に掻き消える。危うく寝坊。 彼女を車で送り届けた上にお弁当まで作った『不機嫌な振り子時計』柚木 キリエ(BNE002649)は呆れ顔で息を吐きながらとらへ例のハンカチ――PNが託した物を手渡した。目を擦り頷いた彼女はハンカチにそっと掌を翳す。目を閉じる。 サイレントメモリー。込められた記憶――どうか、本当を暴いて下さい。あれを倒して下さい。 「……だって」 目を開き、告げる。そしてとらは思い返す。 (ホリメのおねーさんは、とっても優しかった) なのに祝福の力を、呪いの力に変えられてしまっていた。何故、彼女等は記憶を無くしてしまったのか。 「彼には……任されて、頼まれてしまいましたからねぇ」 軍手、シャベル、スコップ、ピッケル、リュック、懐中電灯。完全装備。『消失者』阿野 弐升(BNE001158)の脳裏に蘇るのはつい先日戦ったPNの姿、その言葉。 「中々に素敵で愉快な御仁でしたし、頼みを聞くのもやぶさかじゃあない。こういう時は……そうですね。『COOOOLに頑張るか。COOOOLに』」 PNの言葉。あれ――おそらく『黒幕』の存在。歩を進める。『銃火の猟犬』リーゼロット・グランシール(BNE001266)もパイルシューターを手に一歩。 「我々が何を倒していたのかハッキリ解れば良いのですが」 しかし周りの荒れ様からしてもどうにも良い予感はしない。考えても仕方ないけれど。真相。『幸せの青い鳥』天風・亘(BNE001105)の視線の先には、『みにくいあひるのこ』翡翠 あひる(BNE002166)がCNとの戦いで発見した11人の写真。11つの笑顔。 彼らは名を顔を過去を忘れてもなお戦っていた。 然し――彼等と刃を交えたからか。 「彼らの心の片隅には何か不安が残ってた気がします」 亘には解らない。仲間の命を感じてはいたけど一人で居たのは何故。 そして、良くも悪くも色々な記憶が忘却の彼方に消えていく時間……それはどれ程辛かったのだろうか。 だから、知りたい。彼らの名を顔を過去を、真実を。 「強敵(とも)の遺志を継ぎ、必要なら降り注いだその不幸の元凶をぶっ壊してやります!」 写真を大事に仕舞い込んだあひるも頷く。自分が対峙した3人のモドキ――CN、YN、MN。とっても強かった。ダメかもと思った。 でも、最期は皆、満足そうな顔をして。そんな彼らの顔が忘れられない。 もう一度彼らを知れるチャンス、大事にしなきゃ。 「あひるは次、彼らに会えたら友だちになるんだ」 約束したもの。だから、一つでも知れるように。 『戦姫』戦場ヶ原・ブリュンヒルデ・舞姫(BNE000932)は顔を俯ける。 運命の寵愛、その救いの掌から零れ落ちたノーフェイス。 何人も、何人も、この手で倒してきた。その全てを終わらせてきた。 時に怒りにまかせ、時に無情に、時に不条理に歯噛みし…… 世界を守る者と、世界から拒絶された者。自分と彼らの違いは、ほんの紙一重。 (彼らは……、わたしだ) 有り得たかもしれない、運命を失った自身の姿だ。だからこそ。顔を上げる。崩れた屋敷と、漂う靄。 「真実が知りたい」 戦太刀を抜き放ち耳を澄ませた。 ごめんなさい。あぁどうしてあんな事に。自分は何て事を。頷かなければ良かった。ごめんなさい。許して下さい。何て事をしてしまったのだろう。ごめんなさい。 複数の声。後悔。懺悔。舞姫の伝える声に頷き、仲間と自分に再生の加護を授けたウラジミールは光の守護を纏いつつ残滓へと目を遣った。 職(クラス)を元にしたVTSの実験を行っていたが何かの拍子でエリューション化、モドキとはそれらが元になって作られたもの――そんな予測を立て、声を張る。 「貴殿の後悔と懺悔とは何だったかを教えては頂けないか?」 『あの時、頷きさえしなければ あの手を取らなければ 私達の所為で町が 皆が』 「何がここであったのか? その結果どういうことになったのか?」 『全部無くなってしまった 無くしてしまった』 「12体以上の存在はいるのか?」 『もう……誰も 死んでしまった 皆、死んでしまった』 ごめんなさい。すまなかった。繰り返す。キリエも声を――残滓に触れながら。じわり。肌の痛みを感じながら。 PNの話を信じれば、彼達はフェイトを失った覚醒者。 唯一、記憶を残していた彼は憎んでいる、と言った。 彼等の背後にいるのが自分と仲間を匿ってくれた存在なのだったら普通持つ感情は逆な筈。強力な存在故、力を合わせればそれを打倒も出来た筈。 なのに彼等はなぜ私達と戦う事を選んだのか。 そして彼らのジョブが綺麗に一揃いだったのも偶然とは思えない。 彼等のフェイトはその存在に、故意に削られたのだろうか。 「貴方達の存在が誰の思惑で、その者は何を目的としているの?」 見付けて、とだけ答えた。謝罪の合間から。屋敷の瓦礫に漂う。亘とあひる、弐升に舞姫も手を伸ばし、触れる――苦痛、それでもハッキリ感じた。 後悔――もっと強ければ。 懺悔――どうしてあんな事を。 絶望――自分が消えて逝く。 理解は出来なくても限界まで『知る』事を止めない。 耐えてみせると亘は歯を食い縛った。今、自分が感じる苦痛はきっと小さなものだから。 (受け止めたいな……) あひるの心にもじわじわ、残滓の声。辛い気持ち。苦痛。 舞姫の額には嫌な汗が伝う。通常は心の奥底に抑えつけている、フェイトを失う事への恐怖。直接的に突き付けられる。 自分が自分でなくなる。無くなる。消える。 少しずつ。分からなくなる事すら分からなくなる。 身体も、心も、思い出も、尊厳も、名誉も、全部。 崩壊する自我。膨らむ破壊衝動。 死を望む心すら失う無間地獄。 (全てを受け入れてみせる。……全てを聞き入れてみせる) 目を逸らしてはいけない。集中を重ねる離宮院 三郎太(BNE003381)も緊張の面持ちで先輩達を見守っていた。 とらも気を研ぎ澄ませて残滓の心に触れる事を試みる。リーディング。フォースが発生したという事は、それだけ強い心があった事。 (懺悔は、誰かを不本意に傷つけてしまったからなのかなぁ? 覚醒した後悔……自分でこうなる事を選んだの?) 読む。――ほぼ、正解か。傷付けたくなかった。壊したくなかったのに。それは、自分達が『YES』と答えたから。 刹那、残滓に触れていた者達の心に映像――赤い月の夜。薙ぎ払われてゆく町の景色。血潮に沈む自分達。藻掻く。地面。掠れる意識。ふと、傍に立つ気配。異様な形をした靴と、声。 『美味しそうな運命をしているね』 そこで途切れた。 後は、ただ後悔と懺悔の言葉を連ねるのみ。残滓から離れればあひるととらの歌が皆を癒し切った。目配せし合う。これ以上は。頷き合う。武器を構える。 「その想い、受け止めました。……どうぞ、安らかに」 弐升の気糸を切欠に。ウラジミールの光刃が、亘の超速連撃が、茉莉の魔法が、三郎太の気糸が、リーゼロットの弾丸が。 「彼らに少し、近づけた……かな。今日はこれで……さよならね」 掠れ行くそれにあひるも魔矢を、痛くないよう最期を見届けながら。舞姫も戦太刀を静かに振り上げた。 聞こえる。ありがとう。どうか。宜しくね、と。 「辛い、悲しい思いを、呪縛から解き放ちます……」 ――振り下ろした。 ●瓦礫の中で 蒼い翼を広げ、とらは上空から町を一望していた。一応スカートの中が下から見えぬよう気を付けながら。 町の崩壊は……例えるなら、小さな町の模型を力任せに薙ぎ倒した様な。 そして激戦の跡。魔法か何かで焼き払った跡、大量の弾丸を撃ち込んだ跡、巨大な刃で切り裂いた跡、etc。 かつて人で在りし者達、何らかの事情で堕ちた者達。ジャージ軍手マスク安全靴と万全準備の茉莉は大量の書類を探し当てた。その傍で丁寧な捜索を行っていた三郎太、大スコップで残骸を退けていたリーゼロットも同じく多くの書類を発見する。腐食が酷い物もあるが、読める物もあった。 トラックで瓦礫除去を行っていたウラジミールも運転席から降り渡された書類を手に取った。 それは数多の記録。戦いの記録。エリューション、リベリスタ、フィクサード、アザーバイドなど、リベリスタにとっては馴染のあるの記録だった。 アークでも良く見かける――報告書。それと同じ物だ。その何れにも、共通の文字。 <__町 リベリスタ組合> 確かに記されていた。同じ頃にキリエが透視で発見した物を弐升が瓦礫の中より取り上げる。看板。そこには同じく、この町の名と『リベリスタ組合』の文字。 「ここ、リベリスタ組織の、拠点だったのかしら……?」 あひるも件の写真と周りを見比べ呟く。周りの景色から慮るに、11人の背後に映る大きな屋敷はここにあったのだろう。キリエの予想が当たった。ここはリベリスタが居た町。これはリベリスタ達の拠点だった所。そして――彼等は、リベリスタだった。 空より降り立ったとらもその書類の記憶を読み取る。フォーチュナが。リベリスタが。アークと似た風景。間違い無かった。 (今、謎を解いても私達は彼等を救えない) 彼等は皆、笑いながら逝ってしまったのだから。キリエは仲間と共に『最後に記録された書類』を探す。 (けれど私達は、倒した彼等に想いを託された) 彼等の望みは何だったのか。探した。指が汚れるのも厭わずに (それを知り、私はこの一連の事件にけじめをつける) 見付けた。 最後にここのフォーチュナが予知したもの。 『その時』は、ナイトメアダウン。十年以上前の悲劇。 赤い月。町にやって来るだろう巨大な異形。大群。進行ルート。担当リベリスタの名前。作戦。 とらのサイレントメモリーが告げる。町を守る為。必死。命懸け。焦燥と恐怖、使命感と正義感。 然し、見付からなかった。『結果』の報告書が。 「この町とリベリスタ達はナイトメアダウン時のエリューションにやられてしまったのでしょうか?」 亘が呟く。そのエリューションにフェイトを奪われた?では残滓に触れた者が見聴きした映像は?少しずつ、だが確実に解けていく謎。小さな発見でもいい。仲間達と共に捜索に戻る。 「あ、何か大きな……箱? みたいな物が」 最中、集音装置で反響音を探っていた舞姫が告げた。因みに地下室の類は無いようだ。 リーゼロットがスコップで瓦礫を退け、掘り返す。金庫、だろうか。堅牢な箱。キリエの透視が利かない――アーティファクトか。 「面倒なんでコレでぶっ壊しますけどいいですよね。答えは聞かねぇ!」 言うが早いか。スコップからヘカトンケイルに持ち替えた弐升の一撃がそれを砕いた。強制解錠。 ひらり。舞ったのは、あひるの持つ写真と同じ写真。その下にあったのは手紙だった。他の物と比べるとやや新しい様だ。顔を見合わせる。とらが拾い上げた。 ――PNが書き連ねた物。真新しい廃墟の真ん中で一人、粛々と。 そっと開いた。 『コングラッチュレイション。これを読んで居る頃、きっと我々は漸く眠る事が出来たのでしょう。 先ずは皆の代表としてお礼を申し上げます。有難う御座います。そしてお疲れ様でした。 さて。申し遅れましたが私はこのリベリスタ組合のリーダーです。このリベリスタ組合は、私の一族を筆頭に成る小規模な正義の味方組織であります。一緒にあった写真。あれが、我々一族の集合写真であります。 取り敢えず私は今、ノーフェイスとしてこの壊れてしまった町でこの手紙を書いております。今から順を追って、全てをお話しいたしますね』 『さて、全てはあの日が始まりです。赤い月の夜。大量のエリューション。 我々は死力を尽くして戦いました。しかし、口惜しいのですが負けてしまいました。 殆どのリベリスタが死んでしまったと思います。それでもエリューションは攻め入って来る。 ……我々は町を守りたかった。死ぬ訳にはいかなかった。ですがもう体が動きません。 そこに現れたのが奇怪なアザーバイドでした。巨躯の、人間の形なのですが、頭部がありません。首なし人間です。 それは瀕死の我々に言いました。 美味しそうな運命をしているね どうだい。私に君の運命を食べさせてくれまいか そうしたら、お礼に君達の願いを何でも叶えてあげよう 我々は無我夢中で頷きました。するとどうでしょう!傷が癒え、もげた腕が生え、千切られた臓物が戻り、身体に力が満ち、我々は立ち上がる事が出来たのです。 立ち上がったのは、11人。丁度その写真に居る我々一族です。 凄まじい力を手にした我々は文字通り破壊し尽くしてしまいました。全てのエリューションを。生き残っていた全ての仲間達を。逃げ延びていた町の住人達を。町そのものを。全て』 『何も無くなった町で、朝日が上った町で、我々は大きな過ちに漸く気付いたのです。 あのアザーバイドにフェイトを喰い尽されてしまった。ノーフェイスに成ってしまった。 我々は何て事を。しかし時既に遅し。あのアザーバイドはもう居らず――それからも会っておりません。 きっとあのアザーバイドにとって我々は餌にすぎぬのでしょう。平らげた後に残るお皿にいつまでも興味を示す客がいるでしょうか?同じ事です』 『我々はとんでもない存在になってしまった。自我が記憶が無くなって行くのです。 このままだと衝動に任せて更に破壊を重ねかねない。既に自決も出来ぬ程落魄れて。 ならば。我々は結論を下しました。ノーフェイスは、リベリスタに。自分達がかつてやって来たように。 危険は一つでも少ない方が良いだろう。我々は一人一人別の場所へ別れました。二度と会わぬ事を約束しました。それが我々の別行動の理由です。生きているか否か分かったのは、一族の絆でしょうか。それだけが唯一の繋がりでした』 『そして皆、各地へ。私が最後です。なので、せめてとこの手紙を記しているのです。 この手紙を読んで居るリベリスタ。有難う。本当に有難う。私達に眠りを与えてくれて。最期は、誰も彼も笑っていた事でしょう。 きっと我々はあの世で再会できています。応援しております。ここまで辿り着いてくれた皆様なら、きっとこれからも違わぬ正義の道を歩む事でしょう。 我々の様に堕ちてはいけませんよ。シャンと前を向いて、そう、COOOOLに』 『最後に。もし、件のアザーバイドに出会ったら……どうか、我々の、皆の、仇を』 『――私からは以上です。さようなら、お休みなさい。有難う御座います』 遂に、突き止めた謎。 手紙から空へ、弐升は長い息の後に呟いた。 「彼らの無念を晴らす、と言うとちょっとクサいですかね。でも、そんな気分です」 鉄槌を握り締める。日は傾き、もうじき夕暮れに成ろうとしていた。 あひるは拾い上げる。写真。その裏には名前。彼等の――彼らが『忘れてしまった』と言っていた名前、顔。あぁ、彼女……MNのものまで。写真の中で陽気に笑う彼女。とっても優しかった彼女。 「っ……」 あぁ、そんな名前だったのね。あぁ、そんな顔をしていたのね。溢れだす気持ちにあひるは写真を抱き締めた。 あぁ――忘れない。絶対に。 ●夕紅の下で 調査を終えた瓦礫。そこへ、三郎太は花束を添えた。 自分にとって彼等は報告書の中の存在だったが、伝えたい想いは少しでも受け止められたと思う。 「ここにいるみんなは貴方達の存在をきちんと理解し、同調し、共有しにきたんだよ」 そう告げ、弔う。今は荒れ果てた場所とはいえ、嘗ては人が生活に暮らしていた所なのだから。 あひるもお花を添える。それは写真を撮った場所。彼らが笑顔で立って居た場所。 「ここに来た皆、あなたたちが大好きなのよ。また、来世であいましょう」 バイバイ。またね……最後に手を振り。 ウラジミールも黙したまま、地面にザクリと突き立てた――それは十字架。金庫の写真にあった11人の名前を刻んだ墓標。 最後まで戦った彼等に敬礼を。 そして踵を返し、いつもの様に。いつもの言葉で。 「任務完了だ」 『了』 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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