●殺し遭う その無人島は地図の上にポツンと。立ち入り禁止の海域に。 静まり返った古い遺跡はいつ誰が何の為に造ったのか。 ピカッと稲光、ガシャーンと閃光、ゴロゴロと雷鳴。余韻に地響き。 黒い巨人が闊歩する。 雷引連れ蹂躙する。 手当たり次第に撒き散らすのはカミナリ、イカズチ、雷鳴稲妻。それと閃光、そして轟音。 そこのけおののけ、雷さんのお通りだ。 邪魔する奴は黒コゲだ。 そこは強者に支配されている。 ●バトルデュエル 「皆々様モルゲーン、毎度お馴染みメタフレムフォーチュナのメルクリィですぞ」 事務椅子をくるんと回して振り返ったのは『歪曲芸師』名古屋・T・メルクリィ(nBNE000209)。 肘掛けに肘を突き拳で頬杖の姿勢、常のニヤニヤ笑いで集まったリベリスタ達を見渡した。 「サテ。今回の任務はズバリ――『ガチバトル』でございます。 それじゃ早速サクサクザックリしっかり説明していきますぞ。耳かっぽじってお聴き下さい」 そう言うメルクリィがモニターを手早く操作すると、画面上にいつどこの文化とも形容し難い古びた遺跡が表示される。 円形の……闘技場?まるでコロッセオの様だ。かなり広く、足場もしっかりしているようだ。 そしてそこを我が物顔で陣取っているのは――真っ黒く巨大な雷雲の巨人。 脚は無くふわふわ浮いている。周囲には小規模な雷雲を漂わせ、それはゴロゴロと稲光を内に立ち込めさせていた。 「E・エレメント『雷さん改』……フェーズは2。過去に討伐されたE・エレメント『雷さん』の同型強化版なんですが――詳しい関係は不明ですぞ。 雷さん改は高密度な雷雲のE・エレメント。動きこそモッタリしてますがその分タフネスですぞ! 雷系攻撃も強力で、雷さんに触っただけでビリッとして痛いです。 しかも雷なので感電雷陣麻痺になりませんし、皆々様の雷な攻撃――ギガクラとかチェインライトニングとか――はあまり効果がありませんぞ!お気を付け下さいね」 モニターの中で雷さん改がゴロゴロと雷を瞬かせた。ぐおぉーーんと吼える。 「それでは次に場所について説明しますが――宜しいですかな?」 事務椅子を揺らして放たれたフォーチュナの低い声にリベリスタ達は彼へと視線を戻す。メルクリィは機械の指でモニターの一つを示した――例のコロッセオのズームアウト画像だ。 「今回の戦場は無人島にある遺跡、どんなモンかはさっきご覧頂いたので説明は省きます……ってか説明するほどモノが無いんですが。広くて足場しっかりしてて戦い易いです以上。 時間帯は夜、満天星空で明るいので光源類や暗視の必要はございませんぞ。それから『無人島』なので『無人』です。 送迎はこちらで手配致します。任務完了の連絡をして頂ければ船でお迎えに参上致しますぞ。 ――以上で説明はお終いです。宜しいですか?」 見渡すメルクリィの視線に頷けば、「ではでは」彼は機械の指を膝上に組ませる。 「お気を付けて行ってらっしゃいませ。応援しとりますぞ! フフフ」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:ガンマ | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 6人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年03月31日(土)21:37 |
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■メイン参加者 6人■ | |||||
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●ゴロゴロ 遠くの方から呻る様な雷鳴が聞こえる。 幾つもの星の下、高く聳えた闘技場がリベリスタ達を睥睨して居た。 「敵は雷雲、オマケに闘技場と来たもんだ」 手慣らしに振るわれたグレイヴディガーの重い刃が轟と空を斬る。愛器を肩に、『悪夢と歩む者』ランディ・益母(BNE001403)は好戦的に口角を吊り上げた。後は全力で戦うだけさ。 「雷といったら古くからの神威の象徴。戦いの神様ですからね」 まるでこちらを威嚇する様な稲妻の音。戦いの気配。そんな相手とコロシアムで搦め手無しの真っ向勝負なんて心躍ります、と『白虎ガール』片倉 彩(BNE001528)はガントレットを搗ち合わせ、流水の構えを取った。 戦いを。頭の先からつま先まで痺れるような戦いを。 「ふふ、強敵みたいね。楽しめそうだわ、精一杯戦いましょう」 体内魔力を活性化させ、禍々しい鉄球を手に『嗜虐の殺戮天使』ティアリア・フォン・シュッツヒェン(BNE003064)はうっそりと微笑む。最中に雷鳴を聞きながら思う。 (それにしても……どうして蘇ったのかしらね) 雷さん。嘗て仲間達に討ち取られた筈なのだが。 「それとも全く別物なのかしら。それにしては報告書と似寄りすぎよね」 興味深い所だわ。まぁ、殺る事は変わらないのだけれど。 「台風の季節はまだ先だよなァ」 吹き抜ける一陣の風に『ステガノグラフィ』腕押 暖簾(BNE003400)は帽子を押さえて彼方を見遣った。正直雷はちょっとアレだ、金属を狙って来るから。 (まァコイツはEだし、そんな事無ェよな……) 思い息を吐き、腕に纏うはブラックマリア。 一方で、沸々と。 ペインキングの棘を握り締める『茨の守護騎士』ユーニア・ヘイスティングズ(BNE003499)の手は、皮膚が白み筋が浮き出るほど力が籠っていた。 空は晴れてるのに地上は雷雲か。空を仰ぐ瞳には、怒り。 「てめーのせいで逝った家電達の恨み今こそ晴らしてやるぜ……俺のゲーム機かえせえええっ!!!」 慟哭。空に浮かぶゲーム達の回想的な像。 (護る力が欲しい。戦う力を備えたい) 視線を落とすは大きな楯とグリモアール。『剣を捨てし者』護堂 陽斗(BNE003398)は一呼吸の後にきっと顔を上げた。 「この経験は今後に生きてくるはず……負けはしない!」 強い意志と共に放つ光はクロスジハード。戦いに赴く者達に、十字の加護で激励を。 覚悟を胸に、戦意を瞳に。 リベリスタ達は闘技場へと足を踏み入れた―― ●ピシャーン 漂う雷雲、呻る雷鳴、その中央に雷雲の巨人。 オォンと吼える声と、迸る雷光。 「中々迫力があるね、コイツは」 上等だとランディは戦斧を掲げて強引に踏み入った。雷さん改に反応を許さない。 「挨拶と行こうか――遠慮無く受け取れ!」 地を踏み締め、気を込めて思い切り振るうのは強烈な打ち込み。圧倒する重い一撃。刹那に愛器から掌へ、そして全身を巡ったのは僅かな痺れ――雷さん改から溢れる電気か。それはランディが腰に巻いて垂らしたワイヤーから地面へ逃げて行く。 どうやら神秘によるもの故か対策によって完全に防ぐ事は出来ないようだが、それでもかなり接触時の被害を減少させる事は成功したらしい。他の面々もゴムワックスやレインコート、アース代わりのワイヤー、絶縁性の手袋などで電撃対策を取っている。備え在れば憂い無し。 が、そんな中で全くそういった対策をかなぐり捨てた者が居た。ユーニアである。 ウッカリ忘れてきたとかそう言ったドジではない。態と。敢えて。電撃による状態異常も麻痺も効かないが故にそれを自分へと集中させる為の策。 「俺の速さに追いつけるか? 落とせるもんなら落としてみろよはっはー」 バチバチ放電して周囲の者を押し退ける雷さん改へ挑発の声、舌を出して、避雷針代わりのバス停を背負って目の前を鬱陶しく走り回る。が、 「……重っ!」 その重量、運び難さにやっぱ地面に立てる。これで良し、と息を吐いた次の瞬間。凄まじい閃光、それから衝撃の爆音。落とされた雷がユーニアから逸れて傍に置かれたばかりのバス停にぶち当たったのだ。衝撃に尻餅を突いた体勢で見遣った先のバス停は――既にバス停『だったもの』状態。直撃していたらどうなっていた事か、『彼』に救われた。まさかバス停に救われる日がやって来ようとは。 ペインキングの棘を握り締める。意識に呼応する如く赤く鋭く、振るわれた腕を跳びこして一突。突き立てて啜り上げ貪る貪欲の一撃。身体に奔る電撃は仲間のそれよりも強力だが、致命傷レベルと云う訳ではない。不愉快そうに雷雲の中で火花が唸った。而して更にと振り上げて。 「これはバス停の分だッ!」 赤い光が迸る。 その刹那、それを塗り替えんと言わんばかりに視界をピカリと真白く塗り潰し叩いたのは雷さん改が放った閃光、景色が瞬きが儘ならない、が、目を保護するサングラスやゴーグルのお陰で幾分かマシだった。 じわりと痛む目でティアリアは雷さん改を、それに立ち向かっていく仲間を見遣る。回復技なら認識さえ出来れば十二分。嗜虐の唇で紡ぎ出すのは守護の祝詞、輝くオーラは鎧となって仲間の身体を堅固に包み込んだ。 「ふふ、鉄壁の守護よ。安心して戦って頂戴」 事前に施されたクロスジハードとも重なり、より堅牢に。 しかし眩む視界。 翳す魔術書。 再度視界を塗り潰す光。 陽斗が放った破魔の光が過ぎ去った後、リベリスタの視界は鮮明なそれへと変わっていた。 凛然とした真直ぐの瞳が具に雷雲へ。 こんな巨大な、力強い相手と戦える機会を得られて嬉しくも思う。 (もしかして僕は楽しんでいるのか?) いつもは誰かを護る事で一杯一杯なのに、こんな心境になるなんて不思議な感覚だな。 盾を構えてあちらこちらへ放たれる雷弾を受け流し思う。誓う。無様な戦いはできない。紡ぐ祝詞は自分なりの戦い方。 稲妻が光り、リベリスタの猛撃が閃く。 何故、一度は討伐された筈のエリューションがここに居るのかは知らないが……何だ、ならばもう一度沈めてやれば良いだけの事。 「さて……ブチ抜くぜ、相棒。無頼、機械鹿。推して参る!」 誇りを胸に、運命を背に、しなやかに向けるは黒紫の女王。ブラックマリア。超速の弾丸を撃ち撃ち穿ち出す弾丸の行軍。 それは雷さん改の腕にブチ当たり、その腕の軌道を僅かにだけズラした。狙いのぶれたその一撃は、空に靡く柳枝の如くの動きを魅せる彩にとって躱す事など実に容易い。風となり水となる。雷撃さえも往なしてみせる。 「さあ、黒こげにできるものならしてみてください」 往なしたそのままの流れに逆らわず、巡る風が如く。流れる清水が如く。拳は炎、蝶の様に舞い蜂の様に刺す。突き刺す轟撃。走る電撃には目もくれず。 雲を焼く炎。その好機を見逃さずユーニアが躍り出た。構える棘は禍々しい黒、死を告げる呪いに自らも蝕まれつ振り上げる。 「誰かが言ってたぜ。電気は大切にな!」 突き立てた。反動の痛み、雷雲の痛みが彼を傷付けるがそれ以上の痛みを雷さん改に叩き込む。告死の黒に呻く――追撃の弾丸と真空刃を浴びながら異形が暴れ出した。その腕で前に出ていた彩とユーニアを重く強く打ち据える。 発電でもしてんのか?とシニカルに笑んで、後退。 優秀な回復陣、強力なサポート術、声を掛け合う堅くも柔軟な連携。死角は無い。補い合う。 戦局は有利と呼べる状況であった。 下がった二人の代わりに前へ出たのはすっかり傷を癒したランディ。触るだけでビリリと来るのは鬱陶しいが、ティアリアが皆へ施した鎧によって異形も痛い目を見るし多少の傷なら暖簾のオートキュアーが治してしまう。 だからこそ、ロスの無い様に。着実に。確実に。勝利の為。 「膝なんぞ着いてたまるかよ、絶対に」 呻り落ちる雷は暖簾が設置したバス停に落ちた。隙だらけだ。歴戦の眼差し。ド真ん中の真正面、零の距離。 「テメェが雷様って奴なら風でお返しよ! 吹き散れ!」 旋回させる戦斧。巻き起こる激しい烈風。荒れ狂う鬼が如く黒雲を切り裂き引き裂き、引き千切る。 「よう、悪ィが暫く俺が相手させてもらうぜ」 次いで前へ出た暖簾は銃指を構えた――それにしても雷さん改はバス停に見覚えはあったのだろうか。上手く働くとは、いやはや。しかしもう避雷針作戦は使えない。ならば後は撃って打って討つのみ。 タフってンなら此方もそう往かねェとな。 「タフだっつうが、流石に底はあンだろ? なら、沈め!」 射抜く眼光、精神的に黙らせる。 鼓膜を叩くのは雷が鳴る不穏な音、彩は回復治療を受けながらもじっと雷さん改を見澄ましていた。見極める。呼吸を覚える。雷雲がランディの重打に怯んだその瞬間、高速で空を蹴れば鋭い真空刃が雲を切り裂いた。 しかしタフである。そしてその一撃は重く、雷の一撃はマトモにぶつかってしまうだけで危うい状況に陥ってしまう場合もあった。 だからこそ力を合わせる。痺れに動けぬ者は引っ張ってでも後ろに下げさせ、回復手はその身を挺して守り抜く。お返しにとヒーラーの二人が放つのは危機を払う聖なる光と奇跡の福音、清らかな鎧に翼と十字の加護。正に倒れる事を許さ豪華絢爛たる癒しのラインナップである。 絶対に諦めない。 幾ら雷に打たれようとも、例え危機に陥ろうとも。絶対に。 この場でも、これから続いていくであろう熾烈な闘いの前でも。 「最後に立ち続けるのは、僕達だ!」 雷の音に負けじと陽斗の詠唱が戦場に満ちる。 清らかな詠唱。電撃による傷が消えて行く。加護を受けた己が幸運で痺れを取っ払い、ランディは雷さん改を睨ね付けた――雷閃、黒雲の電撃光線が頬を掠めて衝撃。鼓膜から脳へ、掠めて焼けた頬から脳へ。 「それで終いか?」 されど彼は怖じける様子の欠片も見せず、ならばこちらの手番とグレイブディガーを構えて吶喊する。込めるはありったけの力、粉砕の一撃で思い切り圧し込んだ。 「大丈夫ですか?」 先の電撃からティアリアを庇った彩が振り返る――稲妻を受け止めたガントレットの腕が痛い。 だが、 「我が名の下に、汝の清らなる守護を」 ティアリアが玲瓏とした声で紡いだ祝詞が輝きとなって彩を包んだ。強力な癒しの力は遍く危機を取り除く。 「痛いのは取れたかしら?」 「ありがとうございます、お陰さまで」 ふ、と息を吐いて白虎少女は敵へと視線を戻した。彼方では雷さん改を挑発すべくユーニアがアースの端を掴んでバチバチとノイズを立てている。されど警戒は怠らない、よくわかんねぇ隠し球持ってそうだから。 「どうした? 来てみろよ」 挑発の刹那、網膜を焼いたのは視界を塗り潰す激しい光で。 「!」 一瞬だけとはいえ、サングラス越しとはいえ、僅かな怯み。隙。 ならばその隙を埋めるのが自分の役割だと暖簾は拳を振り被った。雷さん改がこちらを向く。だが、今更止められないし止まらない。例え押されても意地でも留まってやる。 「俺の仁義に懸けて、倒れて堪るかってンだ!」 殴り抜く無頼の拳。拳で物理的に黙らせる。 怯ませたその時間は、仲間を治療するのに十分過ぎる時間。 「今、治します!」 ブレイクフィアーの柔らかい光。視界を拭う癒しの灯。 戦場の中央にて雷雲を伴う異形は未だ倒れず。 だが、徐々に。確かに。 直感する。決着は近い。 だからこそか、残りの力を振り絞ってか。 不穏な雷の音が増していく。真っ黒く集まってゆく。 宙に浮かんだその雷雲が凄まじい雷を孕んでいる事は見るに明らかであった―― 伏せろとは誰が言ったか、張り上げた声。 誰もが防御姿勢を取る。されどその中、たった一人だけ雄偉に仁王立つ影一つ。 雷を避けるのは頭を低くするのが基本だが、それなら敢えて頭は高く態度はでかく。 空に腕を振り上げ点を棘で刺す様に、掲げ。 「落ちろおっ!」 奔らせた声、刹那にその声を彼の姿を丸ごと飲み込んだのは凄まじい落雷。地面に響く衝撃、轟く音。 身体がバラバラになって真っ黒焦げに――なっていただろう。普通であれば。 動き出した異形へ、背負う運命によって倒れる事を拒否したユーニアはペインキングの棘を突き付けた。 「ここは行き止まりだ。行くなら俺を倒してから行くんだな」 手出しはさせない。倒れない。引きつける。倒れるまで動き続けられる事が取り柄。 彼の取り柄がそれならば、彩の取り柄はその拳。 間合いを鮮やかに詰める右拳に絶対零度の戦気を込めて。 「凍てつき砕く白虎の牙。これがあたしの切り札です!」 この時の為に重ねた集中。それは直撃と呼ぶのも憚られる程の的確な一撃。 有象無象を凍り付かせる凄まじい冷気が雷さん改を包み込んだ。 動きを封じられた異形を狙い、今こそとランディは近くの壁へと走り出した――高いバランス力を活かして垂直に聳え立つ壁を足場に蹴る、勢い、重力さえも武器にして、距離を零。 「喰らいな! 綿飴野郎!」 振るうグレイヴディガーが赤く閃く。重い一撃。 それは、凍り付いた雷雲を跡形も無く砕き喰らった。 着地の背後、星に煌めく氷の粒が降り注ぐ。 ●のち、晴れ 雷さん改の倒れた後、ティアリアは何か残留品が無いか探してみたが――残念ながら何も見当たらなかった。 果たしてあのエリューションと過去のエリューションはどういう関係だったのだろうか? そうは思うも、死人に口無し。そもそも人ではない上に言葉を交わせる様な存在では無かったけれど。 さて、と暖簾が仲間を振り見る。その手には幻想纏い。連絡を入れたので、直に船が来るだろう。 「帰ろうか、俺達も」 後に残るのは静かな風の調べのみ。 『了』 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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