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青い鬼火と狐耳の少女

●逢魔が時
 だーるまさんがーこーろんだー♪
 夕陽が沈む頃、とある地方の墓地に少年少女たちのわらべ唄が響く。
「おまえ、どこからきた?」
 ガキ大将が、知らない少女が混ざっていることに気がつく。
 黒いロングヘアで白いワンピースを着た、どことなく生気のない少女。
 変わっているのは、後頭部に狐のお面をかけている点だろうか。
 近所に彼ら以外の子どもがいるとは、聞いた覚えがなかったが……。

「お母さんを探しているの。お母さんを知らない?」
 少女は質問に答えず問いかける。イントネーションでこの地方の生まれでないと分かるが、誰かが引っ越してきたという話も聞かない。
 なんだこいつ……と、子供たちは少女を不審がる。

「なんでお母さんはいないの、お母さあん……!」
 少女がついに泣き出してしまった。
 さすがに心配になった一人の少年がかけ寄るが、彼女の周りに異変が起きる。

 ぽつ、ぽつ、ぽつ……

 暗くなってきた墓地に、青い鬼火が浮かび上がる。
「お、おばけじゃ~っ!!」
 子供たちは恐ろしさのあまり、逃げることすらできない。
 そのうちに少女の姿も変化し、お面が消えて狐のような耳と尻尾が生えてくる。

「お母さんがいないこんな世界、壊れちゃえ」

●アーク本部
「今回の依頼は、革醒してノーフェイスとなった少女とE・エレメントの撃破だ」
『駆ける黒猫』将門伸暁(nBNE000006)が集まったリベリスタたちに説明をはじめた。
「少女の名前は杉山美夜。数カ月前に、母親と旅行中、地方の祭りに行って彼女だけ行方不明になっていた」
 失踪した少女。昔風に言うと、神隠しであろうか。

「しかし、我々が彼女を見つけたときには、すでに人ではなくなっていた」
 ノーフェイス。それは運命に愛されなかった存在である。
「彼女は、いや標的はいま、先ほどの墓地で子供や女性に近づいて、満足できる反応が得られないと殺害している」
 すでに犠牲者が出てしまっている。そして、このままではますます被害は広がっていくだろう。
「じゃあ、会話は成り立つんですね?」
 リベリスタの一人がおそるおそる質問した。
「ああ、今のところ、ギリギリな。しかし説得して攻撃をやめさせることができても、一時的なものだろう」
 すでに彼女はもとに戻ることはできない。やがて自暴自棄になり攻撃を再開してしまうはずだ。
「辛い戦いになると思うが、どうかお願いしたい」
 それが、彼女をこれ以上罪に走らせない、ただひとつの方法なのだから。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:青猫格子  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 2人 ■シナリオ終了日時
 2011年05月09日(月)22:51
今回の目的はノーフェイスの少女とE・エレメントの撃破です。
まず最初に墓地で彼女を探す必要があります。子供や女性の前に現れやすいようです。
敵の能力は以下の通り。

杉山美夜(ノーフェイスの少女)
狐耳と尻尾の生えた少女。攻撃方法は大きな泣き声を上げて全体にショックを与えるのと
枯葉を舞い上げて相手を一人束縛する。
また尻尾を振ることで守護結界をつくり味方全体の防御を強化できる。

E・エレメント×3
青い鬼火の姿をしたエレメント。攻撃方法は体当たりで、攻撃を受けると火傷をする危険がある。

戦闘中に美夜に呼びかけて、彼女が動揺した場合、守護結界を作る能力は使えなくなります。
どう呼びかければいいかは色々と考えてみてください。
彼女が怒ってしまったらそれ以降呼びかけはできません。

それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
デュランダル
鬼蔭 虎鐵(BNE000034)
ホーリーメイガス
メアリ・ラングストン(BNE000075)
ホーリーメイガス
カルナ・ラレンティーナ(BNE000562)
ナイトクリーク
金原・文(BNE000833)
クロスイージス
ラインハルト・フォン・クリストフ(BNE001635)
ソードミラージュ
山田・珍粘(BNE002078)
マグメイガス
間宵火・香雅李(BNE002096)
ホーリーメイガス
フローレッテ・アリシュ(BNE002302)
■サポート参加者 2人■
ナイトクリーク
アルカナ・ネーティア(BNE001393)
プロアデプト
七星 卯月(BNE002313)

●三高平市の図書館
「ふーむ……おお、この記事じゃな。『祭りの最中、少女行方不明に』」
 メアリ・ラングストン(BNE000075)が新聞の記事を指した。
 依頼を受けた彼女たちは、行方不明になった少女とその母親の情報を追っている最中だった。
「母親の名は杉山遠子、ですね。できれば彼女に会っていろいろ聞くことができればいいのですが……」
 と、記事を読んでつぶやくのは自称、那由他・エカテリーナ。しかし本名は『残念な』山田・珍粘(BNE002078)であった。
 だが、実際には母に会うのもそう簡単なことではない。個人情報を得るには手間も時間もかかるが、時間は無限ではなかった。
「時間的な問題もあるけど、たとえば捜査の人としてお母さんに会って……どうか娘を必ず見つけてくださいって言われたらって考えるとね……わたしだったらとてもつらいな」
 というのは『臆病ワンコ』金原・文(BNE000833)。
「なるほど、確かにそうですね……」
 珍粘はうなずいた。文の母を思う気持ちももっともである。
「文くんは優しいんだね。それはとっても善いことだと思うよ」
 間宵火・香雅李(BNE002096)が言った。彼女も、彼女なりの信条に基づいて善い行いをしたいと考えていた。
 リベリスタは、時には感情を押し殺して任務にあたらければならないこともある。しかし、いつもそれを続けていてはやがて本来あったはずの感情まですり減ってしまうかもしれない。その匙加減は難しい。
「新聞はこれくらいかのう?」
 メアリが記事のコピーをまとめた。記事はどれも小さいもので、あまり多くの情報は得られなかったが。
「あとはインターネットでもう少し調べてみようよ」
 香雅李が提案する。
「そうですね、何か新しい情報があるかもしれません」
 珍粘が賛成した。

 出発の時刻に近づいてきた。
 メアリたちは、これまでに得た情報をまとめて仲間の『シスター』カルナ・ラレンティーナ(BNE000562)、 『イージスの盾』ラインハルト・フォン・クリストフ(BNE001635)、『宵月の大吸血鬼』フローレッテ・アリシュ(BNE002302)、『自称・雷音の夫』鬼蔭 虎鐵(BNE000034)たちにも渡す。
「ありがとうございます」
 特にラインハルトは、食い入るように資料を見つめていた。
「彼女のことを知れば知るほど、救ってあげたい気持ちで胸がいっぱいになります……」
 しかしそれはすでに叶わぬ願いとなってしまっていた。
「それが叶わぬのなら、せめて……」
「ラインハルトさん、あまり無理をしないでくださいね」
 思い詰めている様子のラインハルトに、カルナが声をかけた。
 ラインハルトは大丈夫であります、と笑顔を作って返事をした。
 そしていよいよ、少女の元へと向かうことになった。

●墓地
 その墓地はとても広々としていた。むこうの方まで古い墓石がずらりとならんでおり、歴史を感じさせる。
「では、拙者たちは鬼火が現れるまで隠れているでござるよ」
「何かあったらすぐに呼んでくれ」
 虎鐵と『コンダクター』七星 卯月(BNE002313)は、美夜が見つかるまでは姿を隠していることにした。

「狐耳と尻尾の少女……まるで妖怪ね」
 暗くなっていく墓地の中で、フローレッテが言う。リベリスタたちにもビーストハーフという種族がいるが、美夜はそれに近いのかもしれない。
「まあ、あんまりしんみりしていてもあれじゃ。彼女が出てこないかもしれない」
 静まりかえってしまった皆を見て、メアリが慌てる。
「そうですね、まずは美夜ちゃんを探さないと」
 珍粘たちが墓地の中で呼びかける。
「美夜ちゃーん、何処にいますかー」
「お母さんが探してますよー」
「美夜さんのお母さんが心配してるよー」
 そうしている間に空はますます暗くなり、いつのまにか星や月が輝いていた。
「美夜さん今日はいないのかな」
 墓地の広場に再び集まってきたところで、香雅李がため息を付いた。
「どうなんでしょう……それにしてもきれいな夜空ですね」
 カルナがふと夜空を見上げて言う。たしかに都会に比べて、星が多く輝いているようだった。
「天気が良くてよかったです。これだと明かりの心配をしなくていいですからね」
 珍粘は空をみあげて微笑んだ。

 そのときだった。
 皆が星空を見上げていたその間に、文の後ろに先ほどまでいなかった人影が現れた。
 黒いロングヘアの少女。狐の耳と尻尾があり、手には狐の面を持っていた。
「美夜さん……!」
 ラインハルトが驚いて声をかける。
「なんであたしの名前を知ってるの……?」
 黒髪の少女は彼女たちを見回す。幻視はエリューションには効果がない。なので文やカルナの姿が不思議な様子であった。
「ねえ……お母さんを知らない?」
 それでも、少女はいつも通りの言葉を繰り返す。
「私たちは、お母さんに頼まれて美夜さんを探しに来たんだよ」
 香雅李が少女を怖がらせないよう、優しく呼びかける。隣にいたメアリもうんうん、とうなずく。
「ほんと?」
 生気のなかった少女の瞳に一瞬、光が宿る。
「ええ、本当です。お母さんの杉山遠子さんに頼まれたんです」
 カルナが少女の母親の名前を言うと、驚いたように少女は彼女を見た。
「お母さんを知ってるの?」
「ああ、みんな知っておるぞ。だから怪しいものじゃない」
 『有翼の暗殺者』アルカナ・ネーティア(BNE001393)が少女を心配させないように、優しく声をかけた。
「だから、一緒に帰ろう、ね?」
 再び香雅李が呼びかける。しかし少女の反応は良いものではなかった。
「うそつき」
 少女の瞳に疑いの色が浮かぶ。
「お母さんはほんとはあたしのことをもう忘れちゃったのよ」

●少女との対話
「なんでそんな事言うの?」
 香雅李が戸惑う。他の者達にも不安の表情が浮かんだ。
 少女は目に涙を浮かべ、その声は震えていた。
「あたしはもうおうちには帰れない……もう二度と……」
 それ以上は言葉にならない。嗚咽はいつしか大きな泣き声に変わり、うわああんとその場で彼女は泣き叫んだ。
 普通の人間の泣き声ではない。耳の痛くなるような音響であり、衝撃波であった。
「くっ……」
 フローレッテたちは歯を食いしばって耳をふさぎ、音に耐えた。そうでなければ地面に転がっていただろう。
 音が一段落しても、何人かの身体に衝撃が残っているのが感じられた。
「!?」
 カルナが少女の頭上に三つの青い鬼火が浮かび上がるのを目にした。
「ようやく出てきたでござるな」
 隠れて様子を伺っていた虎鐵たちが駆けつける。
「鬼火は片付けますので、ラインハルトさんたちは美夜さんを!」
 珍粘がラインハルト、香雅李、フローレッテたちに声をかける。そのままアクセス・ファンタズムからナイフを取り出し、両手に構える。
「さて、邪魔な鬼火さっさと片付けましょう」
 珍粘は軽やかなステップで一体の鬼火に近づき、二本のナイフで斬りつける。鬼火はゆらゆらと揺れて実体のない様子であったが、ダメージはしっかりうけているようだ。

「美夜くん、お母さんに会えないなんて言わないで。そんなことを言ったら、キミのお母さんが悲しむよ!」
 香雅李が美夜に声をかけ続ける。
「でも、あたしはもう、以前のあたしじゃないもの。お母さんはきっともうあたしのことを嫌いになったに違いないわ」
 美夜は涙をすすり上げ続けている。彼女の尻尾がゆらゆらと揺れていた。
 その動きに呼応するように、墓地の広場に結界が広がっていく。すると鬼火たちの炎が一層青く燃え上がるのだった。
「美夜、あなたが今のようになったことは悲しいことよ。でも人を傷つけて、お母さんが喜ぶわけないじゃないの!」
 フローレッテはそう言い、ゆっくりと少女に近づく。身体に先程の泣き声のショックが残っているようだった。
 ヒュン、とサッカーボールのように一体の鬼火が彼女に体当たりをかけてきた。
「危ない!」
 カルナが叫んだ。フローレッテは起き上がったが、身体に火傷が残っている様子だ。
 グリモアールを掲げてカルナは精神を集中し、詠唱した。フローレッテの周囲に癒しの微風が生まれ、彼女を包んでいく。
「ありがとう」
 フローレッテがカルナに言うが、立っていられるというだけで火傷が彼女を蝕んでいる状況は変わっていない。

「彼女たちに鬼火が近づかないようにしないといけないね……」
 卯月の言うとおりだった。
「わ……私に出来ることはこれくらいだけど……!」
 文がコードから黒いオーラを伸ばす。オーラが鬼火の真芯を撃ちぬく感覚が文に感じられた。
「おまえたちの相手はこっちじゃ」
 メアリも鬼火に向けて魔弾を撃つ。それと同時に虎鐵が残りの鬼火に向かって素早く駆け寄る。
「あんまり抜刀はしたくないでござるので……どうだ!?」
 帯刀していた大太刀をそのまま鬼火に向けて叩きつける。それと同時に魔弾も命中する。

 鬼火は結界の力で強化されていたが、連続攻撃により一体はふらついてきていた。
 それでも残りの二体はいまだに素早く飛び回っている。
「結界が厄介ですね……」
 珍粘も鬼火への攻撃を続けていたが、なかなか止めを刺せずにいた。そしてすでに彼女も何度かの鬼火の体当たりにより火傷を負っている。
「ヒャッハー! 頑張れ、あと少しじゃ!」
 メアリが珍粘に向かって癒しの微風を送り続けている。そのおかげで珍粘は倒れずに立ち向かい続けられていた。
 とはいえ、このままではじりじりと負けてしまうだろう。本質的には結界を解かなければ解決しないのだ。

 ラインハルト、香雅李、フローレッテたちは意を決して少女に近づく。
「来ないで!」
 少女が右手を上げると、落ち葉が舞い上がり、彼女たちを遮ろうとする。
「これくらい……なんてことないわ」
 フローレッテが真っ先に飛び込んでいく。ラインハルト、香雅李たちもそれに続く。落ち葉を駆け抜けて三人は少女のもとにたどり着いた。
「美夜さん、怒ったらめっ、であります」
 ラインハルトがすすり泣く美夜に近づき、頭を撫でた。
「悲しくても、辛くても。お母さんに泣いているところを見られたら心配してしまいますからね」
「でも……!」
 美夜が顔を上げた。泣きすぎて目が腫れているのが分かる。
「美夜……お母さんはあなたのことを嫌っていないわ……あなただって、お母さんが好きでしょう?」
 痛みに耐え続け、なんとか意識を保っているフローレッテの言葉に、美夜は無言でうなずく。
 その様子を見て彼女は目を閉じた。体力が限界だった。
「ね、美夜さん、お母さんのどんなところが好きだったか、思い出せるでありますか?」
「お母さんの……好きだったところ?」
 ラインハルトの言葉に、美夜は不思議そうに聞き返す。
「できるだけ教えて欲しいのです。あなたのお母さんへの思い」
「お母さんは……そう、お母さんの作る料理がとても好きだった。お母さんは手さげ袋に、可愛いキツネのワッペンを着けてくれたの……とっても好きだった、あたしのお母さん……」
 美夜はゆっくりと記憶と蘇らせるように、言葉を紡ぐ。それと同時に、結界が解けていく。

「結界が、解けていく……!」
 アルカナが鬼火の様子を見ると、先程に比べて炎の燃え上がり方が落ち着いてきていた。
「よし、さっさと片付けるでござるよ!」
 虎鐵がオーラを纏った大太刀を振るっていく。カルナやメアリも魔弾の準備をする。
 鬼火への攻撃は先程よりもずっと効果的な様子だった。すぐに一体が倒れ、残りの二体の体力も減ってきている様子だった。
「こっちも限界に近いですね、全力で行きますよ!」
 珍粘が残り僅かな力を振り絞るかのように叫び、跳ぶ。そして一体の鬼火に対して鋭い剣さばきで立て続けに攻撃を放った。
 鬼火はゆらゆらと揺らめき、その炎がだんだん小さくなっていくのが分かる。
「く……ここまで、ですか……」
 消え行く鬼火を眺めながら、珍粘は自分の意識が遠のくのを感じていた。

「美夜くん、キミがお母さんに会うためには、守らなきゃいけないことがあるよ」
「守らなきゃいけない、こと?」
 香雅李の言葉に、少女は顔を上げる。
「お母さんに会うまで泣いてはいけない。誰も傷つけてはいけない。キミに守れるかな?」
「守り、たい……お母さんに会いたい。大好きなお母さんに」
 少女の声が震えていた。泣かない、傷つけない。それは一人ぼっちになった少女に取って無防備になるということだ。
 ラインハルトが彼女に近づき、ゆっくりと彼女を抱きしめる。
「怖くない、寂しくない」
 少女は静かに泣いていた。今までのように母に会えないことから自暴自棄になった結果ではなく、母を思い、これまでのことを悔いて。
「お母さんに……会いたい……」
「大丈夫、私が最期まで一緒に、いてあげるでありますから……!」
 ラインハルトは少女の震える肩を抱きしめながら、決意したように言い聞かせる。
 そして彼女を抱いたまま刀を抜き、自らごと少女の胸を貫いた。

「ラインハルトさん!!」
 文が声を上げた。彼女の瞳に、ゆっくりと崩れ落ちていく二人の少女の影が映る。
 文が丁度、最後の鬼火を黒いオーラで粉砕したところだった。ラインハルトと少女が一緒に地面に倒れる。
 虎鐵、カルナ、香雅李、文、メアリたちが二人のもとに駆け寄る。
「うう……」
 少女はわずかに意識が残っていた。苦しそうに息を吐いている。もちろん常人なら絶命しているが、エリューションと化した故に、いまだ生き続けていた。
「せめて、これ以上、彼女を苦しませないように……!」
 虎鐵が大太刀を全力で振りかざした。
 そして、少女は遂に息絶えたのだった。

●再会
「うう……う……」
 文は泣いていた。泣いてはいけないと分かっているのに、涙が止まらない。
「彼女はボクたちを攻撃してたんじゃない。もっと別の、一人ぼっちの寂しさとか、そういうものと戦っていたんだと思う」
 香雅李が文の肩に手を置いて、語りかけた。
 ノーフェイスであるかぎり、彼女はずっとその孤独と戦い続けなければいけなかったろう。それはどんなにつらいことだろうか。
「今、彼女は解放されたのでござるのだろうな」
 虎鐵はそういって黙祷を捧げる。
 メアリは地面に落ちていた狐の面を拾うと、少女の遺体に載せた。
「これでようやく、母と再会できるのであろうな。こんな姿での再会になってしまったが……」
 おそらく少女はこのまま、何者かに殺されたとして発見されるのだろう。そして死後ようやく母と再会できるのだ。
 こんな形でしか再会できないなんて、なんて辛いことだろう。とはいえ、今はこうするしかなかったのだ。
「リベリスタも万能ではない、でござるからな……さて、そろそろ帰ろうか?」
 虎鐵がメアリたちに呼びかける。傷ついた仲間たちを抱えて、彼らはその場を立ち去る。
 星を見上げながら、少女のような悲劇が少しでもなくなるように。
 カルナたちはただ祈るばかりだった。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 お疲れ様です。
 今回はBS回復がどうなるかなと気にしていましたが、回復役が多かったのでなんとか持ちこたえたという感じでした。
 それでも何名か重傷者が出てしまいましたが、まあ運が悪かったということで……。
 予想していた以上に、色々考えたプレイングを頂き、とても嬉しかったです。残念ながら描写に限界があるので全てを書ききれなかったのは残念ですが、本当にST冥利につきます。
 それでは、また次もご縁がありましたらよろしくお願いいたします。