●39志士、集う! 「最早、一刻の猶予もならん! 今こそ討ち入りの時だ!」 「「「オー!」」」 安アパートの一室に声が木霊する。そこには手の平サイズの小人が39人もいた。服装は和風、というか侍のように見える。もちろん、これがただの生き物であろうはずがない。ぬいぐるみのような印象を与える、39人の小さな侍達は、異なるチャンネル世界からやって来たアザーバイトと呼ばれる存在なのだ。 「我らの恩人たる巧殿に仇為す、吉良! 我々が天に代わって、罰を下してやるのだ!」 うっかりボトムチャンネルに紛れ込んでしまった39人の侍達。その苦境を救ってくれた恩人が、危機に陥っているのだ。ここで戦わねば、武士の名が廃る。 雪の降る年末のとある日。彼らの戦いは始まった。 「「「えいえいおー!!!」」」 ●平成の世の討ち入り 「みんな、先日の戦いではお疲れ様。疲れも十分に回復していないところ申し訳無いけど、事件よ」 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は、ブリーフィングルームに集まったメンバーを確認する。その表情には多少の申し訳無さが透けている気もする。 「今回、倒して欲しいのはある街に住んでいる、悪徳フィクサード。ちょっと事情は複雑なんだけど」 そう言ってイヴが機器を操作すると、スクリーンに表示されたのは侍のような鎧装束に身を包んだ小人達だった。なんとなく、生き物というよりもぬいぐるみのようだ。 「事の発端はアザーバイトである彼らが私達の世界にやって来たこと。便宜上、彼ら自身が自分達を『侍』と呼んでいるのに従って、【39人の侍】と呼ぶわね。私達の世界の侍と全く同じなわけじゃないけど、武と名誉を重んじる、戦士階級らしいから」 クロードというリーダーに率いられた【39人の侍】は、元の世界への帰り方も分からずに、我々の世界を彷徨っていた。野良猫や野良犬、果ては鼬の群れに襲われたりと中々に苦渋に満ちた旅だったらしい。 「そこでたまたま、浅野・巧(あさの・たくみ)という、今年の春に上京してきた大学生に助けられた。出会ったのは2~3ヶ月ほど前だけど、巧は【39人の侍】のことを受け入れ、【39人の侍】も恩人である巧と良好な関係を築いていたそうよ」 児童文学の1冊も書けそうな展開である。まだ話が見えてこないと首を傾げるリベリスタ達に、イヴは淡々と説明を続ける。 「うん、ここまでだったら話は簡単だった。ただ、この街には性質の悪いフィクサードがいたの。彼らは偶然、【39人の侍】がやって来たD・ホールを発見し、【39人の侍】の存在に気付いたの」 そして、フィクサードは【39人の侍】のことを世間に公表する、と巧を脅したのだ。【39人の侍】が世間の好奇の目に晒されることを恐れた巧は、フィクサードの脅しに屈して言うがままに金を払おうとする。その最中に巧がD・ホールの存在と、それによって【39人の侍】を帰す事が出来る事を知った。そこで、フィクサード達は巧を捕らえてしまったのだ。 「【39人の侍】は巧を救うべく、フィクサードのアジトに踏み込もうとしている……。ここまで言えば分かるわね?」 ようやく全てが繋がった。つまりはフィクサードを倒して、巧青年を救い、【39人の侍】を本来の世界に帰してあげればいいのだ。 「実の所、【39人の侍】達はそんなに強くない。野生動物に負けてしまう位だから。当然、フィクサードと戦ったら、あっさりと返り討ちに遭ってしまう筈。だから、彼らとちゃんと協力体制を築いて」 基本的に【39人の侍】は純朴でまっすぐな性質だ。下手に嘘をつくよりも、正直に協力したいと伝えれば、分かってくれるはずだ。 「フィクサードのアジトは、山中のうち捨てられた作業場。地下室があって、この中に巧とD・ホールがあるわ」 かなりボロい建物だ。正直、雨露を凌げる程度なので、向こうも近づけばそれなりの戦闘体勢を整えるだろう。また、フィクサードはD・ホールにも、まだ利用価値があると考えているので破壊していない。だから、十分に【39人の侍】を元の世界に帰還させることは出来るだろう。 「フィクサードは全部で3人。リーダーは吉良というフォーチュナで戦闘力は無いけど、用心棒をやっている2人はそこそこの腕前よ、気をつけて」 ちなみに、フォーチュナと言っても、『万華鏡』のような高い精度を得られる設備があるわけでもない。【39人の侍】のことを嗅ぎ付けたのは大したものだが、襲われる直前までリベリスタの存在には気付かないだろう。 「吉良達は卑怯な性格をしているわ。劣勢になれば取引なんかを持ちかけてくるかも知れない。ただ、信用はしないで。今までにもアーク以外のリベリスタと交戦した際に、取引を持ちかけて、隙をついて逃げたという記録があるわ」 油断しなければ負ける相手でもないが、油断をすると思わぬしっぺ返しを喰らう可能性はある。十分に気を付けた方が良いだろう。 「説明はこんな所ね。他に必要なことは配布した資料に書いてあるわ」 そうして、必要事項を確認すると、イヴはいつものようにリベリスタ達を送り出す。 「……あなた達なら大丈夫だとは思うけど……一応。気を、付けてね」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:KSK | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年01月07日(土)22:48 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● 異界の侍、クロードの身体は疲弊しきっていた。 偶然開いたD・ホールによって38人の部下と共に着いてしまった異世界。 そこは恐るべき強大な魔獣や巨人が住まう危険な世界で、戦いの最中に仲間ともはぐれてしまった。 「拙者の命もここまでか……」 いよいよ気力も尽き果て、クロードは倒れてしまう。 (すまない、皆の者……) 走馬灯のように頭を過ぎるのは、部下達の面影。 と、その時だった。自分を覗き込む巨大な影の存在に気付く。巨人だ。それも、今までクロードを追い回していたものよりもさらに巨大な。 せめて一撃で仕留めてくれと祈るクロード。 しかし、巨人はクロードに意外な言葉を語りかけてきた。 「こ、小人!? なんでこんなものが!? っていうか、弱ってるの!? 助けなきゃ!」 これが、異界の侍クロードと、浅野巧の出会いだった。 ● ザッザッザッ 雪の中を小人達が行進していた。彼らはアザーバイト。こことは異なる理の世界からやって来た者だ。一度バラバラにはぐれながらも、とある少年の力添えもあって、誰1人欠けることなく揃うことが出来た。だが、いまやその恩人が危機に瀕している。 小人達の、本来の世界における呼び名は「侍」。 我々の世界とは違えども、その名に掛ける誇りの重さは変わらない。恩人の敵は自分達の敵、そして自分達の敵は自分達の敵だ。 そんな思いを胸に進軍する彼らの前に、声を掛ける者があった。 「各々方、暫し待たれよ!」 そこにいたのは8人の男女。街で目にする普段着、軽装の戦闘服、果ては金属鎧に身を包んだものなど様々だ。当然、クロードは疑問の言葉を発する。仇敵吉良の放った資格である可能性もある。 「貴様ら……一体何者だ!?」 その問いに対して、『陰陽狂』宵咲・瑠琵(BNE000129)は無い胸を張って答える。 「憎き吉良めを討つべく、我らに露払いを任せて欲しいのじゃ」 「お前達の力になりたいんだ!」 まっすぐと何の衒いも無い言葉をぶつけるのは『空舞いクジラ』アニーバル・イサナ・オチ(BNE000812)。少なくとも、吉良達は悪い奴で、浅野は優しい奴というのは分かる。 そんな言葉に驚きを隠せない39人の侍達。そりゃそうだ。今の今まで、助太刀が現れることなど、夢にも思っていなかったのだから。そんな彼らにツァイン・ウォーレス(BNE001520)が事情を説明する。自分達がこの一件を知ったこと。そして、彼らの行いに胸を打たれて、協力したいと思ったことをだ。 「アンタ達の心意気に打たれた。俺達も力になるぜ」 「し、しかし……気持ちは嬉しいが、無関係なものを巻き込むわけには……」 腕を組んで考え込んでしまうクロード。他の侍達にも、巻き込むことに異を唱えるものは少なくない。 「とはあれ、助っ人による介添えは定番。義を見てせざるは勇無きなりと申すように、貴方達の想いに手伝わせていただければ」 真摯な眼差しを侍達に向ける『宵闇に紛れる狩人』仁科・孝平(BNE000933)。普段はただの優男にしか見えない彼だが、こういう時は絶対に譲らない。 「恩義のために戦う、というのはそうそう出来ないことです。どうか、ヤツらを成敗するのを手伝わせて下さい」 39人の侍達の戦力では、明らかに吉良を打破し得ない。これは明白な事実だ。個々の戦闘力は街中の動物に劣り、総力を尽くしてようやく目覚めたてのリベリスタに比肩し得る彼らである。戦力差を覆すべく作戦を立てようとも看破される以上、どう足掻いても勝利は覚束無いだろう。だから、『銃火の猟犬』リーゼロット・グランシール(BNE001266)は礼を尽くして、頭を下げる。任務成功には、彼らとの協力は必須事項なのだ。 「巧はみんなの大事な友達なんでしょ?」 『ビタースイート ビースト』五十嵐・真独楽(BNE000967)の言葉に、侍達は互いに目と目で会話をし、頷く。恩義、忠誠、義理、様々に言い換えることも出来るだろうが、詰まる所はそれこそが理由だ。 「ピンチの友達を助けたいって思うのは当然だし、まこもおんなじコト考えると思う。弱みにつけこむヒキョーな悪党を許せないキモチもおんなじ。だから協力させて!」 真独楽の素直な言葉に相談を交わす侍達。リベリスタ達の想いは確かに伝わっているが、まだ少し踏ん切りがつかないのだ。そんな時、目の前の少女が雪の上に膝をつき、クロードの手を取る。 「吉良を討つ手助けをさせて!」 これが演技であるならば、過剰な位だ。だが、『神斬りゼノサイド』神楽坂・斬乃(BNE000072)に限ってそれは無い。元々、助けを求める人を見過ごすことが出来ない性質だ。健気に頑張る侍達に対して、真剣に感銘を覚えているのだ。その瞳に偽りは無い。 そんなリベリスタ達の言葉と姿に、とうとうクロードも協力を受け入れた。斬乃同様に、彼らも雪の上に膝をつき、頭を下げる。 「誠にかたじけない……」 「なーに、わらわ達も腕に覚えはある、任せておけい!」 軽口を叩く『エア肉食系』レイライン・エレアニック(BNE002137)だが、その胸の内には感動があった。 (『侍』、確か現代にはもう殆ど残っていないという誇り高き精神を持った勇敢な戦士達の事じゃったか……。助けられた恩を返そうと皆一丸となっている辺り、確かにこの者達は『侍』じゃな……ちっちゃいけど! 可愛いけど!!) 何か別のものも紛れているような気はするけど、それはさておき。 かくして、39人の侍と8人のリベリスタで、47士が揃ったのであった!! ● 「我等、四十七人! 浅野巧殿を助けにきた! 覚悟しろ!」 雪の降る山中。吉良一味のアジトである古びた作業場に、ツァインの威風堂々とした声が響き渡る。そこにクロードが手に持った太鼓を打ち鳴らす。 「我らが友、巧殿を返してもらうぞ!」 それに対して、吉良一味は既に戦闘準備を終えて出て来る。小さい集団ではあるが、錬度のみに限って言うと、決して侮れないものがある。 「猪口才なアザーバイト共め。リベリスタに助けを求めたか。先生方、出番です」 「うむ」 「どーれ」 貧相な中年男、吉良の声に2人の男が前に立つ。二刀の刀を携えた剣士と、機械の拳を持つ無頼だ。年の頃はいずれも40前後。その年に見合った経験を重ねているフィクサードであることは、気配から自ずと明らかだ。だが、それを臆するリベリスタなど、この場にはいない。 「恩義に報いるその姿、正に忠臣じゃのぅ。微力ながら全力で助太刀させて貰うのじゃ♪」 明るい声で瑠琵は式神を召喚すると、素早く印を結び守護結界を展開させる。 「相手の御大将までの露払い、僕達が努めさせていただきます」 スラリと剣を抜き放つと、孝平は清水に接敵する。姿勢を一切崩さずに近づくと、剣を閃かせ、小手打ちを放つ。まさにお手本のような美しい一撃だ。だが、清水もさるもの。受けが間に合わないと悟るや否や、後ろに下がり、ダメージを最小限に抑えてみせる。 「相手にとって不足無しじゃ、いざ参るぞよ!」 その様子を見て、レイラインは不敵な笑みを浮かべると、猫の爪のような、五つ又のバールというか、そんなものを握り締めて踊りかかった。もちろん殴打で。 「なんだそりゃ!?」 当然の疑問の叫びを上げながら、清水は2振りの刀を振るって孝平とレイラインを迎え撃つ。まぁ、実際の所、この程度のことに気を取られていては、フィクサード稼業などやっていられない。 だが、その一撃を阻んだのは輝くオーラを身に纏ったアニーバルだった。 「チッ」 「友達助けるために、でっかい人間相手に一戦やろうとか言ってる奴らなんだ。念願叶えさせて、元の世界に返してやりたいんだよ!」 舌打ちする清水に軽く蹴りを入れて姿勢を崩させる。すると、そこに再び孝平とレイラインが切りかかっていった。 一部例外があるものの、剣士同士の戦いといった風情の戦場とは逆に、小林・平八との戦いは「外側の世界」での戦いだった。 「チャンネルを越えて生まれた友情、こんなのでダメにさせないよ!」 真独楽の叫びに応じて、足元の影が伸びて小林の頭を掴む。影は主の怒りを察してか、ギリギリ締め上げる。フィクサードは苦しげなうめき声を上げながら、影を引き剥がそうとするも、それを許すリベリスタ達でもない。 「お主達も余計な欲をかかねば、我が秘剣の錆にならずに済んだものを……」 時代劇のように芝居掛かった口調の斬乃。ちょっと状況に酔っているのかも知れない。だが、そのチェーンソーの冴えには一切の乱れも無い。闘気が爆発し、破滅的な一撃が小林に見舞われる。その後に及んで、ようやく小林は解放された。 「しゃらくせぇ!」 小林は怒りに身を任せて、取り囲む2人に拳を振るう。さすがに防御よりも攻撃を優先させているとあってはかわしきれるものでは無い。だが、それを受けても斬乃は凄惨な笑みを浮かべる。 「その程度か? 今宵も我がチェーンソーは血に飢えておるわ……!」 もちろん、それは横で世界から力を借り受け、回復のスキルを用いるツァインの支援があればこそだ。だが、そんな怖気づかない姿に小林が戦慄を覚えるのも確かな話。 と、その時銃声が響く。 「グ……あの、アマァァァァ!!」 小林が腕を抑えて苦しみ出す。憎しみの視線の先にいるのはリーゼロット。彼女の放った弾丸が、小林の機械の腕を打ち抜いたのだ。動かせなくなったという程では無いが、動きは確実に鈍る。 「フンッ」 そんな小林を一瞥すると、リーゼロットは次のターゲット――清水――に狙いを定めた。 「おお、各々方、お見事! 然らば我々も!」 「「「おー!!」」」 リベリスタ達の戦いに士気が上がった侍達は陣形を整えて、前に出ようとする。その様子を見て、慌てて止めに入るリベリスタ。 「大丈夫です。時が来るまで、力は温存して下さい」 「取り巻きに狙われたら目も当てれない……じゃなくて、吉良を倒すんだろ?」 小林か清水がスキルを放てば、それだけで壊滅してしまうのだ。だが、それをオブラートに包んだ言い方だが、侍達は素直に応じる。それでも、手伝えないことにもどかしさをかんじている節はあるが。 そこで、思いの外のフィクサードの抵抗に、回復の手が足りないことを感じていた瑠琵が提案する。 「どうもわらわ達では回復の手が足らぬようじゃ。可能ならばお願いしたい」 「おんなじ目標に向かう仲間ってコトで、足りないところを補い合いたいぞ。どーぞおたのみもーす!」 「うむ、心得た!」 真独楽の要望に太鼓を鳴らして鬨の声を上げる侍達。その声に元気が湧いてくるリベリスタ達。 まぁ、怪我の回復に関してはイヴの資料にある通り、微々たるものでしか無かったわけだが。具体的な数字に表すと、真独楽が戦闘不能にいたるような怪我の量からして2/815程度。頑張れば倍位いけるかも知れない。 一瞬、リベリスタ達の心に寂しい風が駆け抜ける。 しかし、すぐさまに気を取り直すと、再び激しい攻撃を開始した。回復が足りないのなら、先に相手を倒せばいいだけだ。瑠琵はさっきよりもっと頑張っている。 はたして、その判断は正しかった。如何に腕が立つとは言え、多対寡。動きを封じられ、傷を癒すことも出来なくては、自ずと限界が見えてくるというものだ。 一振りになった刀を振り回し、挑みかかる清水。万全な状態であればリベリスタ達とて危なかったろうが、さすがに限界が来た。そこにレイラインが精神集中し、研ぎ澄まされた一撃を放つ。 「先ほどのお返しじゃ」 ガッ いやな音を立てて、猫の爪みたいなものが清水の頭に当たる。 「まだまだぁ!」 「ならばもう一発じゃ!」 ぐわっしゃぁ かろうじて堪えた清水だったが、さすがに二度は無理だった。今度こそ綺麗に気絶してしまう。 そして、決着は同時に付く。 裂帛の気合とともに小林に放たれた斬乃の一撃。彼女のチェーンソーは主の期待を違えることなく、破滅的な威力を発揮する。 耐え切れず崩れ落ちる小林を背にして、斬乃は侍達に向かって叫ぶ! 「さあ、露払いは済みました…今こそ吉良を討つときです、侍の方々!」 ● 「ま、待ってくれ! この通りだ! もう二度と悪事はしない!」 用心棒がやられたとみるや、すぐさま吉良は土下座をした。年の初めから、これ程美しい土下座などそうそう見られるものでは無い。 「ガキを閉じ込めている扉の鍵はこれだ。あんたらも、俺みたいなフォーチュナにろくな戦闘力が無い事は分かるだろ? 抵抗もしない。この通り、この通りだ!」 その言葉は真に迫っており、本当に反省しているように聞こえる。お人好しなら思わず許すだろう。そうでないにしても、躊躇は生まれるはずだ。 しかし、純朴な侍達が躊躇の表情を浮かべるより早く、リーゼロットの銃が乾いた音を立てる。 「ヒッ、ヒィィィィィィィ!?」 「こ奴は以前も卑怯な取引で逃げ延びた事があるのじゃ。耳を貸してはいかんぞよ!」 悲鳴を上げる吉良と侍達に忠告を行うレイライン。 ポトリと吉良の懐から拳銃が転がり落ちる。 「取引を持ち掛け、隙を見て逃走。手の内は丸見えなのじゃ」 瑠琵が吉良の拳銃を蹴っ飛ばす。それを見て、いよいよ覚悟を決める吉良。それを見て取ると、孝平は笑顔で侍達を促す。 「今こそ、きっちり決着を付けて下さい」 「うむ! いくぞ、者ども!」 「「「おー!!!」」」 孝平の言葉に頷くと、クロードの号令一下、侍達は踊りかかる。 如何に小人と言えども、魂は侍。そして、その団結力には目を見張るものがあった。必死の抵抗を行う吉良だったが、多少の重傷者を出すのが精一杯で、取り押さえられてしまう。もっとも、リベリスタ達は終始、「はじめてのおつかいに子供を送り出すお母さん」の気分だったわけだけど。 「ありがとうございました。お陰様で……何とお礼を言ったら良いか……」 「重ね重ねのご好意、誠にかたじけない」 救い出された巧とクロードが頭を下げる。もちろん、それに倣って後ろの侍達も礼を取る。リベリスタ達はD・ホールのちゃんとした説明も終え、侍達は本来の世界に帰ることとなったのだ。本来であればゆっくり別れの席でも設けたい所だが、のんびりし過ぎる訳にもいかない。 「あとはまあ、離れ離れになってもらうわけだけれど。今の思いを忘れずにいるのが大事じゃないかな……多分」 アークが正義の組織で無いのは百も承知だが、こういう瞬間が寂しいのは事実だ。斬乃はちょっと歯にものが挟まったような物言いになってしまう。 「寂しいけど、元の世界で元気にやってくれよな!」 ほんの短い時間を共に戦っただけだが、思い入れは生まれるものだ。だが、それを振り切った巧のことを思い、アニーバルは精一杯元気な声で送る。 「うむ、貴殿らのことも決して忘れまいぞ……」 そう言って、1人1人、D・ホールの先へ消えていく。 「小さな侍さん達、一緒に戦えて嬉しかったぜ。その心、いつまでも忘れないでくれよ!達者でなっ!」 「まこも一緒に戦えて嬉しかったぞ! 誰よりも強くてでっかいそのココロ。しっかり伝わったからね」 ツァインと真独楽の声は聞こえたのであろうか? 孝平の手でD・ホールは砕かれる。 こうして、アザーバイトを中心とした、リベリスタとフィクサードの戦いはまた1つ終わりを告げた。 今年もまた、このような戦いは続くのだろう。 だが、この場はひとまず……。 「「一件落着」」 「じゃな♪」 「なのじゃ♪」 お後がよろしいようで。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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