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【新春大河活劇】鬼と呼ばれた男の夢



●十手魂
 男は、時代劇に恋焦がれていた。
 少年時代を支配したその小説、映像、役者一人ひとりに至るまで、彼はそれに惚れていた。
 同時に、彼は蒐集家でもあった。『それ』に関する物をより多く手に入れること、それが彼の生きがいだった。
 たとえそれが本物であろうと。
 たとえそれが偽物であろうと。
 彼の愛があってこそ、それはモノとしての価値を持つ。

 そして、強い念に晒された物品は――神秘溢れるこの世界では、当然のように力を持つ。
 たとえそれがどんなに、そう、どんなに面白おかしくても。

●勧善懲悪もどき
 夜暗を裂いて、十手を持った着物姿の男が駆け抜ける。背後には、影しかない存在が二十ほど。
 提灯を持つ者、刃を持つ者、多種多様に存在しているように見えた。
 真っ直ぐに突き進むそれらが、真正面から暴走族を飲み込んで蹴散らしていく。いいぞもっとやれ。

「……とは、流石に言えないんですよねえ。一応、一般人ですから」
 画面に映る、何処かで見たような風景に肩を竦めながら、『無貌の予見士』月ヶ瀬 夜倉はリベリスタ達を見る。
 何だろう、何処かとても同情的だ。
「今回の敵は、革醒者が持つアーティファクト『梅平の十手』の回収または破壊、及び十手が生み出したエリューションの討伐です。
 革醒者、というのも、彼……『尾仁平 蔵丸(おにひら くらまる)』はアーティファクトの影響で革醒して間がなく、善悪の判断を差し置いて自己陶酔を繰り返すタイプの男でして。今回も、単純にその力の扱い方を知らないまま振り回してるような、そんな所なんですよね。エリューションも、アーティファクトの効果なので倒せないこともないですが、増殖性革醒現象が起きるのは問題ですから……」
 はー、と大きくため息。つまりは、処遇については問わないということだろう。しかし、それにしたってあからさまな名前である。

「尾仁平自体は大した脅威ではありません。ジーニアス×クロスイージスですが、十手による能力補正以外に取り立てて脅威はないでしょう。使えてもクロスイージスの初級が全て使えるか否か、程度で。問題は控えるエリューション群です」
 そこで言葉を切ると、映し出されるのは三種の……あー、うん、某火付盗賊改方っぽいですね。

「先ず、フェーズ2『ドウシン』が一体。デュランダル相当の技術を持ち、また、低威力ながら呪縛効果を持つ範囲攻撃『宣戦』を使ってきます。動けないというのは正直、厄介ですね。次いで、同じくフェーズ2『チョウチンヨリキ』二体。若干強力なメイガス系、と考えれば話は早いでしょう。回復も、攻撃もできますが……個人的に一番警戒すべきなのは全体強化である『気合一喝』でしょうか。防御を大幅に犠牲にしますが、攻撃力が補って余りあるほど高まるようです」
 単なる配下どころではなかった。これだから最近のエリューションは。アーティファクトは。

「……それで、ですね。残る十六体、フェーズ1『ヨリキ』……性能こそ低いですが、耐久と数がある。『チョウチンヨリキ』の支援もある。馬鹿みたいな話で申し訳ないですが――甘く見れば、足元を掬われるでしょうね」
 ふう、と大きく息を吐き、目を細めた彼の表情に迷いはない。

「――何をばすべきか、は言うまでもないでしょう。最大を以って最善を」


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:風見鶏  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 4人 ■シナリオ終了日時
 2012年01月06日(金)22:14
 主に都STのせい。
 尻馬に乗っかったら思いの外難易度高めになってしまった。どうしてこうなった。

●成功条件
 アーティファクト『梅平の十手』の回収または破壊、エリューションの完全殲滅(アーティファクト破壊=エリューション消滅ではない)

●エネミーデータ
○革醒者『尾仁平 蔵丸(おにひら くらまる)』-ジーニアス×クロスイージス。革醒間もなく、使えるスキルもかなり少ないが、後述の『チョウチンヨリキ』やアーティファクトの影響で、やや手強い程度の性能を有す。
 スキルはヘビースマッシュ、ジャスティスキャノン。非戦なし。

○フェーズ2E・フォース『ドウシン』×1-同心。
 デュランダル初級相当のスキル、及び『宣戦』(神近範・弱・呪縛)を使用。接近戦特化であるが、蔵丸に対してのカバーリングが最も上手いと思われる。

○フェーズ2E・フォース『チョウチンヨリキ』×2-提灯与力。
 神遠全回復・BS回復30%の『与汲合陣』、神近貫『提灯鮟鱇』(ショック付与)、神遠単『落雷』(電撃付与)、神遠全付『気合一喝』(攻撃上昇・高、防御減少、高)を使用。
 最後列。

○フェーズ1E・フォース『ヨリキ』×16-与力。
 性能としては駆け出しのデュランダル程度。攻撃は通常攻撃のみだが、『庇う』、『ブロック』などを使用する。

●アーティファクト『梅平の十手』
 何処かで聞き覚えのありそうなチート十手。
 使用者の自身に対する想いの強さに対応し、E・フォースを生み出す。

●戦場
 都市郊外部の直線道路。人目はあまりなく、思い切り戦え、一定距離ごとに街灯がある程度の戦場。

 概ねギャグシナリオの筈ですが、性能だけは割と狂気の沙汰。
 最大を以って最善を。参加お待ちしております。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
覇界闘士
御厨・夏栖斗(BNE000004)
インヤンマスター
宵咲 瑠琵(BNE000129)
デュランダル
結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)
クロスイージス
新田・快(BNE000439)
インヤンマスター
ユーヌ・結城・プロメース(BNE001086)
デュランダル
兎登 都斗(BNE001673)
クリミナルスタア
セシウム・ロベルト・デュルクハイム(BNE002854)
デュランダル
ノエル・ファイニング(BNE003301)
■サポート参加者 4人■
ナイトクリーク
ウーニャ・タランテラ(BNE000010)
ソードミラージュ
仁科 孝平(BNE000933)
クロスイージス
カイ・ル・リース(BNE002059)
ホーリーメイガス
ティアリア・フォン・シュッツヒェン(BNE003064)

●三高平市民捕物図
 時代劇というものは、人物像の誇張・拡大解釈などを主にして殊更に素晴らしいものとして語り継がれる傾向にある。事実、当該人物が本当に素晴らしいこともあるだろうが、それを模倣し、演ずる人間がその魅力を十全に表現することが出来るかといえば別の話だ。神秘の帳越しに歪められた「伝説」などなおのこと。経験が伴わない名声など本人にとって毒以外の何者であろうか。

「僕の邪魔をするということは、君達も悪人の類なんだろう……? 彼らを見逃すことの害がどれほどかなんて、分かっている筈なのに」
「同心に与力。勧善懲悪の捕物系時代劇は嫌いじゃないよ。暴走族については自業自得だし同情しないね」
 暴走族を追ってエリューションを率いる尾仁平に立ちはだかったリベリスタの中で、真っ先に口を開いたのは『偽りの天使』兎登 都斗(BNE001673)だった。その言葉は、尾仁平にとってみれば我が意を得たりとばかり。免罪符と聞こえたかも知れない。
「まぁでも、その十手は君には過ぎた玩具だよ。エリューションは狩るべきなんだ」
「今のアンタは、十手を持つ意味をはき違えている! 言うなれば、権力をカサにいろいろ悪い事をやって退治される悪党だ!」
 都斗の言葉に呼応するように啖呵を切ったのは、『合縁奇縁』結城 竜一(BNE000210)。演技じみた言葉と大きな身振りは、しかし彼の普段を知ったればこそ実に映えるというもので。

「力が正義を生むのなら、それはそれで構わないとは思わないかい? 『彼ら』を制御出来る以上、僕に非なんて、ないね」
「竜一の中二病ぐらいなら可愛い物なんだが……上っ面だけ真似て満足とは、程度が知れるな?」
 そんな状況下で、冷静に告げられる『普通の少女』ユーヌ・プロメース(BNE001086)の言葉は尾仁平の精神を真正面から抉るには十分すぎた。裏をかえせば、相応に顰蹙を買うということにもなるだろうが。

「かの火盗改の長官は歴史上実在の人物でね。史実でも傑物だったそうだよ」
 傑物に馳せる想いは、それに憧れる人物であれば当然のように重みを持っているだろう。知っているのだろう、という言葉を敢えて引っ込めて、『デイアフタートゥモロー』新田・快(BNE000439)は更に一歩踏み出し、十手を掲げるように自らの激戦の軌跡を彩った守り刀を傾けた。
「だから、ただ権力を傘に暴力で叩き潰すような真似、憧れ方が間違ってる」
 静かに、一喝。
 立ち上る戦気は、冗談のようなこの戦場においてすら相応の重みを持って対峙させる。

「新春早々大騒ぎと言うか、なんというか」
 快とは別方向から、軽い調子の声が響く。声の主、『高校生イケメン覇界闘士』御厨・夏栖斗(BNE000004)の様子には焦りや緊迫感は一見して感じられないようにも見える。だが、彼とて尾仁平の背後に控える都合十九のエリューションの威圧感が分からぬ道理ではない。だが、恐れで敵を倒せるのなら、そんな敵は恐れるに値しない敵だったというだけの話。ならば、気を張るしかあるまい。
「騒ぐ彼らが悪いのさ。止める君達も、ね。だからここで、お縄についてくれると助かる」
 夏栖斗の呆れたような物言いにも、しかし彼は動じない。数に頼った勢いは、思いの外その精神を増長させているようですらある。

「時代劇は勧善懲悪のお話が多いと聞きます」
「そうだね、素晴らしいことだ――だけどこの世、この国はそうは行かない道理のようでね。こうやって悪の芽を潰さないと立ちいかない道理のようだよ」
 歩み出た『銀騎士』ノエル・ファイニング(BNE003301)ノ言葉を自分への肯定と取ったか、尾仁平は更に上機嫌に言葉を続ける。ここまで全員で糾弾しているというのに、この心情。最早狂信の域に達しているといっていい。
「貴方は、それに心酔しながら、自身の行いを理解していない。今の貴方がどのような役回りであるか身をもって教えて差し上げましょう」
「この手の物は外界に表さず自身の内のみで完結させるのが原則……誇り高き脳内戦士の風上にもおけぬ奴です」
 果たして、脳内戦士というのは誇り高いのだろうか。アレか、脳内彼女を守りぬきましたレベルの誇り高さなのか。あんまり関わり合いになりたくない類の戦士である。だが、不幸にも『虎人』セシウム・ロベルト・デュルクハイム(BNE002854)は現実に一個の戦士としてこの戦場にいる。

「……新人教育と躾は早い方が良い。では、躾から始めるのじゃ」
 ここまでネジがはじけ飛んでる系革醒者に、真っ当な言葉をぶつけたところではいそうですかと答えるわけがあるまい。『陰陽狂』宵咲 瑠琵(BNE000129)は、既に言葉をかわすことに意味など見出してすらいないのだ。だが、それが誤りだなだとと誰も言うまい。

「邪魔をする以上、僕にとっては誰も彼も敵だ。いざ――」
「ゴヨウなのダ」
 尾仁平の言葉を真正面から遮ったのは、『夢に見る鳥』カイ・ル・リース(BNE002059)だった。独特の言葉遣い、独特の頭部、そして絶妙すぎるタイミング。
 多少の珍事に耐性が出来ていた尾仁平ですら、カイの前には驚きを隠せない、隠さない。言葉に詰まる彼を庇うように前に出た『ドウシン』がすらりと刃を抜き――乱戦の幕が上がる。

「ふふ、三巨頭そろい踏みとは心強いわね。捕り物に召し取られないように気をつけなさい?」
 くすり、と。嗜虐の笑みを浮かべて『嗜虐の殺戮天使』ティアリア・フォン・シュッツヒェン(BNE003064)が言葉を紡ぐ。……何の三巨頭かは、まあ後ほど。

●お前の悪意がエクスパンデッド
 冗談のような掛け合いは、しかし圧倒的多対一という状況下においてはその意思を揮うためには当然すぎるものだった、とも言えた。
 ガードレールを背に馬蹄陣形を組んだリベリスタ達にとって、『囲まれる』という最悪の状況を避けることができたのは小さくとも大きな一歩だ。だが、数の暴力とは策の良否のみで覆せる程に軽くはない。軽重の違いは生むだろうが。

「祓え!」
「覆せ!」
 荘厳な、聞くものが聞けば感涙を催すであろう声が戦場に響く。声は遠かった。響く距離ではなかった。その破壊力がどれほどのものか、どのような意味を持つか、理解できぬリベリスタではなかった。そして――あまりに、その速度は想定外だったのだ。
「――なっ」
 リベリスタ陣営最速を誇る『宵闇に紛れる狩人』仁科 孝平(BNE000933)の驚きは尤もだったろう。上位速度に匹敵するとも思える速度だ、と錯覚もする。然し、彼はまだ準備すら終えていなかった。単純に考えて、相応に疾い夏栖斗を上回る程度ということだが、それでも脅威であることに変わりない。
 セシウムの得物を持つ手を、雷撃が打ち据える。周囲いっぱいに、鬨の声が大きく上がる。何時だって、最悪の歩みは最速なのだ。

「年末年始、空き巣もし易いよね! ちょうど強盗日和?」
 だが、恐れて始まるものではない。夏栖斗はそんな軽口を叩きながら、一足のもとに尾仁平へ向けて前進する。さしものドウシンもその言葉には反応こそすれ、刃を向けるタイミングが間に合う筈もない。駆け出しの尾仁平にはなおのこと。
 夏栖斗の一撃が唸りを上げて尾仁平を打ち据える。回避する余裕などなかった。受け止める覚悟などなかった。そんな剛撃を受け止めて、意識を保てと言う方が無理だった。
「かひゅっ……」「え?」
 あっさりと。そう、とてもあっさりと倒れたのだ。
 膝を衝いた彼をして、しかしエリューションは消滅もしなければ彼をかばって逃げるわけでもない。だが、波打つようにその声が高らかに上がるのみ。
「派手に散らせてやるつもりだったのに、小物らしく軽々しい終わり方だったな? ……そうもいってられないか」
「ユーヌたん、そんなこと言ってる場合じゃないと思う……!」
 自覚しつつも口に出るのが毒舌というもので、それは呼吸のようなもの。殺到するヨリキ達を彼らが上手く捌ききれたのは、『ピンクの害獣』ウーニャ・タランテラ(BNE000010)の不吉の月の破壊力があってこそだろう。まっさきに突っ込んできた夏栖斗を狙ったドウシンの斬撃が、彼にかすりもせず抜けたというのも、またひとつ。
「みーんな害獣にな~れ☆」
 ……うん、そうだね。某後宮派に害獣呼ばわりされちゃそうなるよね。

「ふふふふ。ボクに恐れ戦いて一喝された気合も引っこめればいいよ」
 やる気はない。だが戦う意気と覚悟なら、今まで築いてきた自分という個が確かに存在する。わらわらと固まっていたヨリキの多くが、ドウシンと共に大鎌に巻き込まれ吹き飛ばされる。辛くも凌いだドウシンはまだしも、ヨリキの三分の一はその一撃で行動を完全に止められてしまった。これでは、集団の脅威も大分薄れたといえよう。
「中空になってて冷えにくい頭ならまだしも、倒れてしまった頭はそれ以上冷えようがないな。群がるだけが能の雑魚は尚更だがな?」
「本人が倒れてしまっては躾も何もあったもんじゃないがのぅ……」
 圧力を伴ったユーヌと、呆れで言葉も少ない瑠琵の氷雨が連続して降り注げば、それは既に立派な面制圧の暴力だ。初手のやりとりだけで、ヨリキの実に半数が戦場で行動不能になるほどだった――だが、彼らとて何も残さず散ったわけでは、決して無い。
 馬蹄陣形は、背後を取られないという特性に於いては不意打ちも前衛後衛の別も関係しない、という意味では優秀な陣形ではある。後衛を守るに容易い形であれば尚更だ。だが、真っ向から受け止める前衛に相応の意志力が無ければ、多くの敵を捌くに厳しい陣容であることに違いはない。その戦場で、ヨリキの重圧に最初に屈したのはセシウム。深い踏み込みから放たれたドウシンの打ち込みは、彼の回避を追い詰め、防御を裂いて深々と傷を作り、続くヨリキの連続攻撃への前兆を作り出した。
 都合十二のリベリスタにあって、一人の欠けは大勢に値しない、確かにそうだ。だが、リベリスタ達は戦力を数字で数えるわけではない。個を個で考察する者達だ。当然、動揺だって存在するし動きだって鈍りはしただろう。

「ここで一方的に迎え撃つだけというのも、芸がありませんからね……」
 孝平の姿が、霞と消えて敵陣へ流れる。彼を狙って雷撃が飛んだが、そんなものは見えもしない。回復の波長が流れたが、そんなものはその斬撃の前には癒しにすらなりえない。風を巻いて、ヨリキが吹き飛ばされる。
「我輩も手伝うのダ。そうそう倒れても居られないのダ」
 ティアリアのみならず、カイの癒しもが戦場を覆う。数の暴力に晒された前衛の戦力を持ち堪えさせるには十分といえば、十分。
 総力を以て、じわりと戦力を覆す。破壊力に傾いた敵陣は、反すにそれだけ守りに足らぬということだ。真っ向から打ちかかるドウシンを、快が全力で受け止め、押し返す。夏栖斗、竜一、都斗ら前衛の勢いがいや増して戦端を切り開き、ヨリキを次々と打ち倒す。回避も相応に高いとは言え、傷を受けない道理はない。あるものは傷つき、ある者は二度の機を持って戦場での勝利を待たず崩れ落ちた。だが、それでも彼らは勝利する意思に満ち、敗北を是とはしない。

「さて……全力で参ります」
 ノエルの気が、より重みをもって地を爆ぜる。構えた刃に乗せた気合に、幾許かの戦場での狂気が交じる。その勢いのままに敵陣へ斬り込む彼女に、喜色が混じっていたのは誤解ではなかろう。

「ここで負けるわけにはいかない……! だから、止める!」
 ナイフから迸る閃光が、チョウチンヨリキを撃ち貫く。何度も愚直に続けられた妨害が少なからず身を結び、その体力をも徐々に削りとっていく。愚直であるというのは率直な戦力の発露だ。膨大な体力と回復を武器にリベリスタを追い詰めるエリューションが、しかし戦術の幅を狭められ、追い詰められればどうなるかなど明らかだ。

 だが、それでも戦闘には鬼門が存在して然るべし。
 相手の動きを制限できる戦闘は、ドウシンとて同じこと。ヨリキの殆どを倒された戦場下で、その精神体が遠慮をする道理は何処にもなくなった。空間に向けて刃を振り下ろし、空間を以て叩き斬る。一瞬でその動きを止められた快を、ドウシンは奇跡的速度で切り抜けて二撃目を振り下ろす。炸裂。振り抜いた刀を掲げ、ドウシンの影が濃く揺らいだ、気がした。

 ――それが、彼らの戦闘が『マトモに』続いた最後の一合だった。

●さんじげんなんちゃら
「我が一撃は、二の太刀いらず! くらえっ、これが壱の太刀もど……き?」
 全力の意気をそのままに、竜一がチョウチンヨリキを切り伏せる。だが、打ちかかる直前に、彼は確かにぞっとするような意思を感じたのだ。声でもなく思念話でもなく、ただ直観。黒一色の怒りのような、どの方向を向いているのかが分からない怒り。同じ物を感じたのは夏栖斗も同じだった。その発生源も、二人共通。

「夏栖斗! 竜一! 3DTを仕掛けるぞ!」
 裂帛の気合が戦場を叩く。呪縛を一息で吹き飛ばし、全身からよく分からない(その意思の強さ故に放散されたであろう)意思を拡散させて、快が二人へ向けて叫んだ。よく分からないが、直立不動で対応したく成る気合いだ。
「し……しゃあ!」
「おうよ! いくぜ! 我らが必殺技を!」
 竜一はノリノリになれたけど、夏栖斗が微妙にビビリ入ったね。仕方ないね。イザって時はヘタレらしいからね。

 快が、ドウシンへと向き直る。全力で突っ込む快の肩を、竜一と夏栖斗が踏み抜かんばかりに踏み台にする。更に、夏栖斗が竜一を踏み台に……いやいやいやいやどんな絵面だこれ。超跳んでる。滞空時間。
「「「スリーディメンジョンタクティクス!」」」
 三次元殺法……とでも訳すのだろうか。
 しかしその略称、どう考えてもどう読んでも三巨頭と呼ばれている所以じゃあありませんかね?
「だから! 誰が! 三大変態だよ!!」
 サーセン、そんなつもりじゃねっす。

 結局のところ、尾仁平はほぼ空気のように叩き潰されたのが余程堪えたのか、連行されていくまでまるで喋ろうとしなかった。十手だが、流石に革醒者が操ったら今回以上の惨事が起きるだろうとか、っていうかこんなアレなもんリベリスタに預ける位なら魔力吸い上げるよとか、そういう話に落ち着いたらしい。

 時代劇風味だっただけに、三人のDT、と。
 お後がよろしいようで。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 数の暴力は半端ねえです。
 一体一体が弱いとか紙装甲とかそんなんどうでもいいくらい怖いです。
 でも蔵丸は正統派雑魚でした。吹けば飛びます。

 とまあ、そういう訳で。
 良し悪しはプレイングと各々のフェイトに。
 ネタに走れなかったのはすまなかった。