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迷子の迷子の人魚姫


 海鳥が歌っていた。
 夜明けが訪れたよ、と。
 昨日と違う、朝日が昇る。
 海の流れも錆び付いている。

 大きな海原を泳いでいた。
 しかし、気づいたらそこは見慣れた海では無かった。
 さて、此処は何処なのだろうか。

「――は、――――だ―――?」

 けして普通の人には聞こえない声で呟いた。
 所々、音は耳に届くものの断片的すぎて意味が分からない。

 通りかかった船。
 船員は目を丸くして驚いた。

「あれ……人魚じゃないか!?」


「こんにちは、皆さん! クリスマスも近くて冬真っただ中ですが、お仕事は海が舞台です」
 集まったリベリスタ達を目の前に、『未来日記』牧野 杏里(nBNE000211)はモニターを捜査する。
 煌びやかな長い金髪を風に晒し、瑠璃色の瞳を持った綺麗な女性が映し出された。
 だが、その映像も違和感の塊でしか無い。女性が何もない海の一点に、浮かんでいるのだから。
「所謂、人魚のアザーバイドさんです。ボトムチャンネルに居る目的もよく分かっていません。不規則に泳いでいるのです。迷い込んでしまったのかなぁ……」
 神秘は暴露されてはいけない。ほおっておけばそのうち一般人に見つかってしまうらしい。
 その前にリベリスタが元の世界へ帰す、というのが今回の依頼だ。
「出現場所は既に特定してあり、船も手配してあります。夜に出発して明け方までには人魚さんをどうにかできれば……。あ、どうにかって漁師さんの目から遠ざければということです」
 そんな話を聞いていた途中で、ふとモニターの中の人魚が口を開けて何か言葉を紡ぐ。

 ―――――、―――せ―か?

「あっ! 今の、聞こえました?」
 咄嗟に杏里がリベリスタに聞いた。
 だがその場に居たリベリスタは顔を横に振る。
「ですよねぇ……。彼女とボトムチャンネルの言葉は通じ合わないみたいですね。ああ、でも、勿論あのスキルがあれば通じ合えると思います。話せればそれが一番手っ取り早いかもしれませんね!」
 資料を配りながらも杏里は話を続ける。
「やはり人を警戒している様です。見かけたら凶暴にも牙をむくやもしれません」
 兎に角、一般人に被害もしくは神秘の暴露さえ無くなればそれでいいのだ。
「それでは皆さん、お気を付けてー」
 杏里は深々と頭を下げた。




■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:夕影  
■難易度:EASY ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2011年12月28日(水)23:56
 夕影のイージーでは非戦が火を噴くといいなーと思っています
 今回はマーメイドというか、セイレーンっぽいという
 大成功するとお話が続きます
 相談期間は短いのでお気を付けてください

●成功条件:人魚の帰還か討伐

●アザーバイド:人魚
・フェーズ的には1
 フェイトは得ておりません
 ただし、耐久力はあるので攻撃し続けなければ簡単には死亡しません
 攻撃は噛み付いたり(BS出血)、尾びれでひっぱたいたり(ノックB)
 歌ったり(BS魅了ダメ0)
・警戒しているため、すぐに攻撃してきます
・陸上に上がる場合、身体が乾燥すると弱ります(毎ターン速度-10)
 死亡する訳ではありません、ぐったりします
・陸上でも水上でも呼吸を可能とします

●場所
・神奈川近海
 水上戦闘様のスキルが無いまま海に入ると危険です(BS凍結鈍化隙)
・船は必要に応じて数を増やすことが出来ます
 ただし、常識の範囲内
 操縦士はアーク関係者

●D・ホール
・海上にぽっこり
・アークの操縦士さんが連れていってくれます

●その他
・人魚の言葉、「―」の数=文字の数では無いです

 それでは皆さんのご参加お待ちしております!
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
★MVP
インヤンマスター
朱鷺島・雷音(BNE000003)
ナイトクリーク
花咲 冬芽(BNE000265)
ソードミラージュ
神薙・綾兎(BNE000964)
マグメイガス
小鳥遊・茉莉(BNE002647)
覇界闘士
白鈴 藍(BNE003075)
インヤンマスター
冷泉・咲夜(BNE003164)
スターサジタリー
黒須 櫂(BNE003252)
ソードミラージュ
佐倉 吹雪(BNE003319)

●大海の一点
 陸を離れて、海上を渡る。
 潮風が身体を滑り、海鳥が軌跡を辿る。
 時期的には冬なのだから、肌寒さはどうにもできはしないが、それでも前へと進む。
 その最中、船内では少し遅れたクリスマスパーティーの準備が始まっていた。
 大きくてもふもふな尻尾を振りながら、着々と準備を続ける。
「人魚姫のお話は、知ってるよね、皆。いつも不幸な終わり方ばかり」
 『白面の金狐』白鈴 藍(BNE003075)がツリーに飾りつけをしながら呟いた。
「もちろん。だからこそ、今回の人魚さんにはハッピーエンドで帰って欲しいのよね」
 『十字架の弾丸』黒須 櫂(BNE003252)は藍の呟きに言葉を返す。
 御伽話の中での人魚はいつも不幸を身に纏う。
 こちらの世界に受け入れられない存在は、きっと涙を飲んで空を見上げるばかり。
「俺もそう思うな。ほら、なんつーの? あの愛の形もアリなんだろうけど、好きになれねーんだよなぁ」
 『(自称)愛と自由の探求者』佐倉 吹雪(BNE003319)が紙で輪っかを作り、それを鎖にして繋げていく作業をずっとしていた。たまに手を休めては首を捻って背を伸ばし、再び作業をし始める。
「迷子になってしまったのは仕方ありませんね」
 小鳥遊・茉莉(BNE002647)がビニールプールの中に海水を入れ始める。
 自ら望んで此方の世界に落ちてきたのなら自己責任。けれど迷い込んでしまったのであれば話は別である。
 アークのリベリスタに見つかったのが幸運か。他の神秘的存在や、一般人に見つかったらどうなることやら。
「帰る場所があるのなら、絶対そこへ帰るべき……だね」
 『淋しがり屋の三月兎』神薙・綾兎(BNE000964)は少し寂しげな顔だった。『絶対帰るべき』を強調したのは彼にも思うところがあっての事なのだろう。
「うんうん! ずっと此処に居たら、それこそ人魚伝説に沿っちゃうもんね」
 『枯れ木に花を咲かせましょう』花咲 冬芽(BNE000265)がぬいぐるみにワイヤーを通しながら言った。
 冬芽曰く、人は己の半分を探して生きているという。
 もし人魚が探しているうちに此方へ来てしまったのであれば、帰すべきなのだろう。彼女の探し物はボトムチャンネルにあるのかもしれない。けれど、それは同時にあらゆる危険が伴う。それは此方の世界にも、彼方にもメリットは無い。
「ふむ……どうやら見えてきたようじゃぞ」
 海上へ目を向ければ寂しげな点がひとつ。『嘘つきピーターパン』冷泉・咲夜がそれへと指を差して仲間へと伝えた。
 流れ、漂う大海。
 その一点で、寂しげに浮いているのは綺麗な女性だった。
 ただし、その耳は本来の耳では無く、魚のヒレのようなものがくっついており、腰から下までは言うまでもない。
 ――人魚。
 泡になる前に。
 消えてしまう前に。
 小さな楽しみを彼女にあげたい。

「――――、―――――ん」
『こんにちは、異界の人魚のお嬢さん』

 その声に仲間達は理解できなかったものの『百の獣』朱鷺島・雷音(BNE000003)の声は確かに彼女を振り向かせた。

●見えない奥底
 知らない世界で同胞の言葉を聞いたのは心底驚いたが、警戒心の強い人魚は有無を言わせず牙を剥く。
 一度水中に潜ったと思えば、勢いをつけて飛び上がり、藍の肩を噛みちぎっては再び海の中へと消えていった。
「……っ! 大丈夫、こわくないよ」
 肩から流れる血を抑えながら、再び顔を出した人魚に藍が呟いた。
 けしてリベリスタからは手を出そうとはしなかった。一方的な人魚の攻撃。けれど、きっと分かり合えるって信じているからこそ、武器も装備も無い。
 藍の傷は素早く咲夜が塞いでみせた。
 攻撃に対する、最低限の抵抗。その中で雷音は言葉を発し続ける。
『君は違う世界からこの底辺世界に迷い込んだみたいだね』
 人魚から反応は帰ってこない。
『すこしお話をしないかい? 君のおうちに帰らせてあげよう』
 雷音は白い翼を広げ、水面から顔だけを出した人魚へと近づいた。手を差し伸べ、その手さえ取ってくれれば絶対に友達になれる。
 再び水面に消えた人魚が跳躍し、空中で回転する。その手を取る訳では無く、エメラルドの尾で雷音を叩きつけた。その勢いで船上へと雷音は戻される。運良く櫂が吹っ飛んできた彼女の身体を支えた。
「大丈夫か? まだ始まったばかりだ。しっかり」
「……うむ」
 櫂が雷音の背中をぽんと叩いて声をかけた。
 努力家な雷音はこれしきでは折れない。けれど、伝わらないというのはなんと歯痒いものか。

 そうしている間に人魚が口を開く。
「――――て、―――――!!」
 その音は聞き取れない。けれど人魚の顔はいかにも不信感に満ち溢れている。
「うーん……やっぱり聞き取れないね。雷音さん、なんて言ってるの?」
 綾兎が自慢の兎耳をたてて音を拾ってみたものの、複雑怪奇に頭を斜めに傾ける。
「ああ、えっと……『そうやって油断させて、皆食べられてしまったんだ』だそうだ」
 人魚の肉を食べると不老不死になるだとか、そういう伝説は健在の様だ。それが本当かは分からないし、試してみるのは論外だが……成る程、その警戒心は最高の自衛心からなのだろう。
「でも私達にはそういうつもりはありませんからね。純粋に分かってくれるまで声をかけ続けましょうか」
 茉莉も身を乗り出して羽を広げる。
 吹雪が水上に足を下ろした。普通ならばそのまま海水の中に潜るはずだが、床に立つ様に、いとも簡単に海の上に立った。
 その姿に驚いた人魚が、それを物珍しく見ていた。どうやら彼女の世界にそのような能力は無いようだ。
 その横に雷音が飛び、空中の一点で止まる。
「悪いな、雷音。通訳してくれや」
「うむ、どんとこいなのだ!」
 吹雪が少しだけ何を言うか迷いながら、頭を掻く。吹雪が考えているその間に櫂が船から身を乗り出した。
「敵意は無い。話がしたい」
 リベリスタ達の言葉を雷音は素直に伝えていく。
 それから吹雪が少しずつ話を始める。
「あー……まあ、上手い事は言えないからな。純粋に俺達は危害を与えるつもりは無いんだ」
 その横で冬芽が人形と影を行使して、人形劇を始める。それはリベリスタ達の話に沿って、人形が動く。
「此方の世界に落ちてきてしまった貴女を、元の世界に戻してあげたいのです」
 茉莉が口を開くと、同時に冬芽の人形と影が動き出す。穴から落ちた人魚へ、ぬいぐるみが手を伸ばした。
「ほら、俺達武器とかもってないでしょ……?」
 綾兎が両手を見せて何も持っていないのを見せた。
「人魚嬢……どうか、そのような淋しそうな顔をなさるでない。やはり、女子は笑顔でなくては、なのじゃ」
 咲夜はにっこり笑って警戒心を解くのを試みた。一緒に笑ってくれれば、友達にだってなれるはず。

 リベリスタの説得は続いていく。反応は無いが、人魚が再び跳躍し、雷音を吹き飛ばした。
 彼女が吹き飛んだ方向は、運悪く海の中。
 上空から転落し、真冬の海へと落ちていく。
 それでもリベリスタは攻撃をして来なかった。仲間が攻撃されようとも、分かり合えるって信じたから。
『……奇妙な、世界ですね』
 そうして海の中へと人魚は消えていく。

 ――海の中。
 冷たいその中で、雷音は沈んでいく。
 あとどれくらいしたら分かってくれるだろうか……そんな事を思いつつ。
 冬の海は冷たく、寂しい。無意識にも伸ばした手は空へと向く。
「――――――」
 水中で聞こえた音。それはきっと人魚の声だろう。
 伸ばした手を掴まれ、目を開けた彼女が見たのは、エメラルドに光る人魚。
 進むのは暗い深海では無く、光り輝く上へ。

 聞こえた声は、何故だかこう聞こえた気がするのだ。
 ――私は貴方達を信じますって。

「無事じゃったか?! 今すぐなんとかするからの!」
「あ、ああ、大丈夫だぞ」
 水面から顔を出した雷音に咲夜と櫂が手を伸ばした。貼り付ける癒やしの符。続いてブレイクフィアーも響いていく。
 クリスマスカラーに彩られたグリモアを広げて、神々しい光りが辺りを包んだ。
 藍と櫂が船上でタオルを探しに行った。
「えっと……これは分かってくれたって見ても大丈夫だよね!?」
 冬芽が雷音を引き上げながら、人魚を見た。
 その人魚は人魚で、さっきの態度からは一変。にっこり笑って手を振る。
「わーい! 人魚さんとお友達、だね!」
 はしゃぐ冬芽が人魚の身体を持ち上げて抱きつく。その身体は海水に晒していたにも関わらずに温かかった。
 そのまま再び飛んだ雷音と、茉莉と一緒に人魚の身体を持ち上げた。
『わ、陸は……苦手ですので、案内してくれたら着いていきますよ』
 持ち上げられた人魚が驚いて、話の通じる雷音に話しかけた。
『大丈夫だぞ、船上にプールを用意してあるのだ。それと、ちょっとしたおもてなしもだ』
 運ばれ、プールの中に入れば乾燥も無い。
 跳躍して船上に飛び乗った吹雪も加わり、全員が船上に集まる。
「人魚さんのために、パーティーを用意したよ! めいっぱい楽しんでいってね!」
 藍の手からクラッカーが弾ければ、それはパーティーの開始の合図。
 クリスマスと聞くと、胸が踊るような感覚がする。
 クリスマスの一日だけは、世界の全てが笑顔でありますように。

●遅れたクリスマスパーティー
 賑わう船内。
 綾兎が腕によりをかけて作った料理が並べられていく。
 雷音のシュトーレンやケーキも並べられた。
 普段から料理を作っていたのが、こんなところで使えるとは思わなかった。それに、異界の世界の人に食べてもらえるだなんて嬉しい。
 飲み物も沢山用意はしたが、やはり人魚には水か。その水も手は抜かず、美味しいと噂の水を用意してきた。
 その横で雷音は通訳を担いながら話をしていた。
『この世界では丁度クリスマスだったのだ。少々遅いけれども』
『クリスマス?』
 どうやら彼女の世界にクリスマスは無いようだ。けれども、特別な日であることは分かってくれるはず。
「人魚嬢、喉は渇いておらぬか?」
 咲夜が手渡した水を人魚が受け取り、ありがとうとにっこり笑った。
 因みに咲夜が飲んでいるのはお酒。外見が未成年なのは三高平ではよくあること。
 櫂も言葉では伝わらないなりに絵を描いて見せた。
 けして上手いとは言えないが、人が笑っていたり、人魚の絵を描いてみたり。それを見て人魚は拍手をしながら笑っていた。
「楽しいですか? 人魚さん」
『はい、とても!』
 櫂が通訳を介して聞けば、満面の笑みで答えてくれる。
「料理は用意できてるし、みんなも食べたら? 味も大丈夫だと思う……多分」
 綾兎が自分の作った料理を味見しながら言った。自分で食べて美味しくても、他人が食べて美味しいとは限らない。
 料理を取り分けたお皿を人魚にも渡した。珍しそうに受け取った人魚はしばらく見つめたまま固まっていた。
「味はどう? 食べられそう?」
 心配そうに見つめる綾兎に、人魚は首を縦に振った。
『美味しいです。私の世界にはありませんよ』
 その言葉を聞いて綾兎は安心する。もちろん、リベリスタの仲間達も美味しそうに食べていた。
「あの、よろしければ、これを持ち帰ってくださいっ」
 茉莉は銀の指輪を差し出した。
 此方の世界の物であり、少しでもこの思い出を覚えていて欲しくて。
 指輪ならかさばらないし、着け外しも簡単だ。『永遠の友愛と共に』と刻まれた指輪を人魚は快く受け取った。指にはめ、光りにすかせば、煌びやかに光る。
 冬芽が人形を取り出し、人形劇を始めた。
 巧みに指を動かし、人形は生きているかの如く踊りだす。
 お話は人魚姫。
 人間に恋をした人魚は、対価と犠牲と共に人間に会いに行く。
 けれど、人間の世界は真実と共に彼女を受け入れなかった。
 愛しい人の命か、禁忌を犯した自分の命か。天秤にかけるまでもない。
 泡になって消えていく――愛しい人の幸せを願って。
「だから、貴女もこっちの世界にいたら、幸せにはなれないんだ」
 冬芽は人形を渡す。
「でも、帰るまでに素敵な思い出いっぱい作ろうね!」
 無邪気に笑う冬芽の手を握り、人魚はにっこり笑った。
 続いて人形劇は明るいお話へと。咲夜もシンクロを駆使し、同じ様にして動き始める。
「人魚嬢、楽しんでおられるか?」
『はいっ! とても、楽しい時間です』

「んで、人魚さんはどうしてこっちの世界に来ちまったんだ?」
 吹雪が料理を堪能しながら、淡々と聞いた。
 迷い込んだのならいいのだが、何か目的があるのならばどうにかしておきたい。
『迷い込んだのは、事実です。けれど、探し物をしておりました』
『よければ君の世界の話も聞かせてもらえないかな?』
 雷音がそう聞くと、少し間が空く。
 説明されたのは、七色の海。広がる大海。けれど、その海が黒く染まってきているという。
『浄化の術は、この世界には無いようですね。ですが、此方の世界は不安定。またいつ、此方と彼方が繋がるか』
 静かになる船上。
 どこの世界にも限りなく幸福な平和は無いのだろう。人魚の世界も闘っている。勿論、ボトムも同じ。
「なるほどな、こっちも色々大変だからよ、あんたも頑張れ」
 吹雪が人魚の肩を抱く。
「うん、人魚さんも苦労している訳だな」
 櫂がケーキを切り分けながら言った。そのお皿を人魚を手に渡す。
 今だけは、飲めや歌えや、騒げや踊れ。

『クリスマスにはプレゼントを交換するものなのだ』
 雷音がそう言って、綺麗に編んだ髪を纏めていたリボンを解く。
『大したものではないが、思い出になのだ』
 それを金髪に結んであげれば、プレゼントとなった。
「ボクからも人魚さんにクリスマスプレゼントだよ!」
 和服から一変、サンタの格好になった藍が真っ白の袋からプレゼントを取り出す。
 人魚の首に彩られたのは人魚を模り、アベンチュリンを装飾した首飾り。
「アベンチュリンにはね、幸運の鍵っていう石言葉があるんだよ」
『幸運の……鍵』
 人魚は首飾りを触りながら嬉しそうに微笑んだ。 
 パーティーもそろそろ終わりに向かう。
『私、歌が得意なんです』
 人魚がお返しに、と口を開ける。
 響いた音色は澄んでいて、心地よい高音。
「やれやれ……」
 だが、咲夜がブレイクフィアーを用意したのは言うまでもない。

●小さな逢瀬
 D・ホールのすぐ傍までやってきた。
 楽しい時間はすぐに過ぎていってしまうものだ。それに、フェイトの無いアザーバイドはこの世界では脅威となってしまう。
『感じる。故郷の香り……』
 通じる穴から漏れ出すのは最愛の世界。身を乗り出して、D・ホールへと手を伸ばす。
 ふと、櫂が精一杯の笑顔を作って人魚に問う。
「……また、会える?」
 雷音の通訳を仲立ちとせずに、言葉を発した。
 表情から読み取る人魚は、一瞬だけ難しい顔をしたが、すぐに笑って櫂の手を握った。人魚の腕で光るのは櫂のブレスレット。
「人魚さん、ちょっとごめんね」
 綾兎がそう言って、彼女の華やかな金髪に飾られたのはスターチスの花。
「春なら、もっと色々な花があるから……もっと色々な花、見せてあげたかったけれど、ね」
 スターチスの花に込められた言葉は『変わらない誓い』。
「何か困ったことがあれば、俺達を……アークを呼んで? 出来る限り、力になるから」
 花言葉はけして嘘にはさせない。それは綾兎の最高のプレゼント。
 別れの時間はやってきた。
 人魚は櫂の手を離れ、振り返らずに元の世界へと消えていく。振り返ったらきっと、雷音の涙で留まってしまいそうになるから。
「さよならなのだ」
 消えていくエメラルドの光り。
 静かになった船上で、リベリスタ達はブレイクゲートを放つ。
 最後に雷音が携帯のボタンをゆっくりゆっくり押し始め、帰りを待つ養父へメールを送った。

 ――今日は人魚さんとお話ししました。素敵な時間でした。

 人間の世界に迷い込んだ人魚さんは、心優しい人間に出会う。
 楽しい時間と悲しいお別れと一緒に、元の世界へと戻っていきました、とさ。

■シナリオ結果■
大成功
■あとがき■
依頼、お疲れ様でした!
結果は上記の様になりましたが如何でしたでしょうか?
まさかそんなパーティーやるだなんて予想を遥か上にいきました
皆さんスキルと武器が無いなぁーと思っていたら、成る程
文句無しの大成功!お約束通り、お話は続きます
MVPは通訳を担い、全ての軸となった貴女へ
それがなかったら魅了全開攻撃乱舞になってたでしょうナイス非戦です!