● 海鳥が歌っていた。 夜明けが訪れたよ、と。 昨日と違う、朝日が昇る。 海の流れも錆び付いている。 大きな海原を泳いでいた。 しかし、気づいたらそこは見慣れた海では無かった。 さて、此処は何処なのだろうか。 「――は、――――だ―――?」 けして普通の人には聞こえない声で呟いた。 所々、音は耳に届くものの断片的すぎて意味が分からない。 通りかかった船。 船員は目を丸くして驚いた。 「あれ……人魚じゃないか!?」 ● 「こんにちは、皆さん! クリスマスも近くて冬真っただ中ですが、お仕事は海が舞台です」 集まったリベリスタ達を目の前に、『未来日記』牧野 杏里(nBNE000211)はモニターを捜査する。 煌びやかな長い金髪を風に晒し、瑠璃色の瞳を持った綺麗な女性が映し出された。 だが、その映像も違和感の塊でしか無い。女性が何もない海の一点に、浮かんでいるのだから。 「所謂、人魚のアザーバイドさんです。ボトムチャンネルに居る目的もよく分かっていません。不規則に泳いでいるのです。迷い込んでしまったのかなぁ……」 神秘は暴露されてはいけない。ほおっておけばそのうち一般人に見つかってしまうらしい。 その前にリベリスタが元の世界へ帰す、というのが今回の依頼だ。 「出現場所は既に特定してあり、船も手配してあります。夜に出発して明け方までには人魚さんをどうにかできれば……。あ、どうにかって漁師さんの目から遠ざければということです」 そんな話を聞いていた途中で、ふとモニターの中の人魚が口を開けて何か言葉を紡ぐ。 ―――――、―――せ―か? 「あっ! 今の、聞こえました?」 咄嗟に杏里がリベリスタに聞いた。 だがその場に居たリベリスタは顔を横に振る。 「ですよねぇ……。彼女とボトムチャンネルの言葉は通じ合わないみたいですね。ああ、でも、勿論あのスキルがあれば通じ合えると思います。話せればそれが一番手っ取り早いかもしれませんね!」 資料を配りながらも杏里は話を続ける。 「やはり人を警戒している様です。見かけたら凶暴にも牙をむくやもしれません」 兎に角、一般人に被害もしくは神秘の暴露さえ無くなればそれでいいのだ。 「それでは皆さん、お気を付けてー」 杏里は深々と頭を下げた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:夕影 | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年12月28日(水)23:56 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●大海の一点 陸を離れて、海上を渡る。 潮風が身体を滑り、海鳥が軌跡を辿る。 時期的には冬なのだから、肌寒さはどうにもできはしないが、それでも前へと進む。 その最中、船内では少し遅れたクリスマスパーティーの準備が始まっていた。 大きくてもふもふな尻尾を振りながら、着々と準備を続ける。 「人魚姫のお話は、知ってるよね、皆。いつも不幸な終わり方ばかり」 『白面の金狐』白鈴 藍(BNE003075)がツリーに飾りつけをしながら呟いた。 「もちろん。だからこそ、今回の人魚さんにはハッピーエンドで帰って欲しいのよね」 『十字架の弾丸』黒須 櫂(BNE003252)は藍の呟きに言葉を返す。 御伽話の中での人魚はいつも不幸を身に纏う。 こちらの世界に受け入れられない存在は、きっと涙を飲んで空を見上げるばかり。 「俺もそう思うな。ほら、なんつーの? あの愛の形もアリなんだろうけど、好きになれねーんだよなぁ」 『(自称)愛と自由の探求者』佐倉 吹雪(BNE003319)が紙で輪っかを作り、それを鎖にして繋げていく作業をずっとしていた。たまに手を休めては首を捻って背を伸ばし、再び作業をし始める。 「迷子になってしまったのは仕方ありませんね」 小鳥遊・茉莉(BNE002647)がビニールプールの中に海水を入れ始める。 自ら望んで此方の世界に落ちてきたのなら自己責任。けれど迷い込んでしまったのであれば話は別である。 アークのリベリスタに見つかったのが幸運か。他の神秘的存在や、一般人に見つかったらどうなることやら。 「帰る場所があるのなら、絶対そこへ帰るべき……だね」 『淋しがり屋の三月兎』神薙・綾兎(BNE000964)は少し寂しげな顔だった。『絶対帰るべき』を強調したのは彼にも思うところがあっての事なのだろう。 「うんうん! ずっと此処に居たら、それこそ人魚伝説に沿っちゃうもんね」 『枯れ木に花を咲かせましょう』花咲 冬芽(BNE000265)がぬいぐるみにワイヤーを通しながら言った。 冬芽曰く、人は己の半分を探して生きているという。 もし人魚が探しているうちに此方へ来てしまったのであれば、帰すべきなのだろう。彼女の探し物はボトムチャンネルにあるのかもしれない。けれど、それは同時にあらゆる危険が伴う。それは此方の世界にも、彼方にもメリットは無い。 「ふむ……どうやら見えてきたようじゃぞ」 海上へ目を向ければ寂しげな点がひとつ。『嘘つきピーターパン』冷泉・咲夜がそれへと指を差して仲間へと伝えた。 流れ、漂う大海。 その一点で、寂しげに浮いているのは綺麗な女性だった。 ただし、その耳は本来の耳では無く、魚のヒレのようなものがくっついており、腰から下までは言うまでもない。 ――人魚。 泡になる前に。 消えてしまう前に。 小さな楽しみを彼女にあげたい。 「――――、―――――ん」 『こんにちは、異界の人魚のお嬢さん』 その声に仲間達は理解できなかったものの『百の獣』朱鷺島・雷音(BNE000003)の声は確かに彼女を振り向かせた。 ●見えない奥底 知らない世界で同胞の言葉を聞いたのは心底驚いたが、警戒心の強い人魚は有無を言わせず牙を剥く。 一度水中に潜ったと思えば、勢いをつけて飛び上がり、藍の肩を噛みちぎっては再び海の中へと消えていった。 「……っ! 大丈夫、こわくないよ」 肩から流れる血を抑えながら、再び顔を出した人魚に藍が呟いた。 けしてリベリスタからは手を出そうとはしなかった。一方的な人魚の攻撃。けれど、きっと分かり合えるって信じているからこそ、武器も装備も無い。 藍の傷は素早く咲夜が塞いでみせた。 攻撃に対する、最低限の抵抗。その中で雷音は言葉を発し続ける。 『君は違う世界からこの底辺世界に迷い込んだみたいだね』 人魚から反応は帰ってこない。 『すこしお話をしないかい? 君のおうちに帰らせてあげよう』 雷音は白い翼を広げ、水面から顔だけを出した人魚へと近づいた。手を差し伸べ、その手さえ取ってくれれば絶対に友達になれる。 再び水面に消えた人魚が跳躍し、空中で回転する。その手を取る訳では無く、エメラルドの尾で雷音を叩きつけた。その勢いで船上へと雷音は戻される。運良く櫂が吹っ飛んできた彼女の身体を支えた。 「大丈夫か? まだ始まったばかりだ。しっかり」 「……うむ」 櫂が雷音の背中をぽんと叩いて声をかけた。 努力家な雷音はこれしきでは折れない。けれど、伝わらないというのはなんと歯痒いものか。 そうしている間に人魚が口を開く。 「――――て、―――――!!」 その音は聞き取れない。けれど人魚の顔はいかにも不信感に満ち溢れている。 「うーん……やっぱり聞き取れないね。雷音さん、なんて言ってるの?」 綾兎が自慢の兎耳をたてて音を拾ってみたものの、複雑怪奇に頭を斜めに傾ける。 「ああ、えっと……『そうやって油断させて、皆食べられてしまったんだ』だそうだ」 人魚の肉を食べると不老不死になるだとか、そういう伝説は健在の様だ。それが本当かは分からないし、試してみるのは論外だが……成る程、その警戒心は最高の自衛心からなのだろう。 「でも私達にはそういうつもりはありませんからね。純粋に分かってくれるまで声をかけ続けましょうか」 茉莉も身を乗り出して羽を広げる。 吹雪が水上に足を下ろした。普通ならばそのまま海水の中に潜るはずだが、床に立つ様に、いとも簡単に海の上に立った。 その姿に驚いた人魚が、それを物珍しく見ていた。どうやら彼女の世界にそのような能力は無いようだ。 その横に雷音が飛び、空中の一点で止まる。 「悪いな、雷音。通訳してくれや」 「うむ、どんとこいなのだ!」 吹雪が少しだけ何を言うか迷いながら、頭を掻く。吹雪が考えているその間に櫂が船から身を乗り出した。 「敵意は無い。話がしたい」 リベリスタ達の言葉を雷音は素直に伝えていく。 それから吹雪が少しずつ話を始める。 「あー……まあ、上手い事は言えないからな。純粋に俺達は危害を与えるつもりは無いんだ」 その横で冬芽が人形と影を行使して、人形劇を始める。それはリベリスタ達の話に沿って、人形が動く。 「此方の世界に落ちてきてしまった貴女を、元の世界に戻してあげたいのです」 茉莉が口を開くと、同時に冬芽の人形と影が動き出す。穴から落ちた人魚へ、ぬいぐるみが手を伸ばした。 「ほら、俺達武器とかもってないでしょ……?」 綾兎が両手を見せて何も持っていないのを見せた。 「人魚嬢……どうか、そのような淋しそうな顔をなさるでない。やはり、女子は笑顔でなくては、なのじゃ」 咲夜はにっこり笑って警戒心を解くのを試みた。一緒に笑ってくれれば、友達にだってなれるはず。 リベリスタの説得は続いていく。反応は無いが、人魚が再び跳躍し、雷音を吹き飛ばした。 彼女が吹き飛んだ方向は、運悪く海の中。 上空から転落し、真冬の海へと落ちていく。 それでもリベリスタは攻撃をして来なかった。仲間が攻撃されようとも、分かり合えるって信じたから。 『……奇妙な、世界ですね』 そうして海の中へと人魚は消えていく。 ――海の中。 冷たいその中で、雷音は沈んでいく。 あとどれくらいしたら分かってくれるだろうか……そんな事を思いつつ。 冬の海は冷たく、寂しい。無意識にも伸ばした手は空へと向く。 「――――――」 水中で聞こえた音。それはきっと人魚の声だろう。 伸ばした手を掴まれ、目を開けた彼女が見たのは、エメラルドに光る人魚。 進むのは暗い深海では無く、光り輝く上へ。 聞こえた声は、何故だかこう聞こえた気がするのだ。 ――私は貴方達を信じますって。 「無事じゃったか?! 今すぐなんとかするからの!」 「あ、ああ、大丈夫だぞ」 水面から顔を出した雷音に咲夜と櫂が手を伸ばした。貼り付ける癒やしの符。続いてブレイクフィアーも響いていく。 クリスマスカラーに彩られたグリモアを広げて、神々しい光りが辺りを包んだ。 藍と櫂が船上でタオルを探しに行った。 「えっと……これは分かってくれたって見ても大丈夫だよね!?」 冬芽が雷音を引き上げながら、人魚を見た。 その人魚は人魚で、さっきの態度からは一変。にっこり笑って手を振る。 「わーい! 人魚さんとお友達、だね!」 はしゃぐ冬芽が人魚の身体を持ち上げて抱きつく。その身体は海水に晒していたにも関わらずに温かかった。 そのまま再び飛んだ雷音と、茉莉と一緒に人魚の身体を持ち上げた。 『わ、陸は……苦手ですので、案内してくれたら着いていきますよ』 持ち上げられた人魚が驚いて、話の通じる雷音に話しかけた。 『大丈夫だぞ、船上にプールを用意してあるのだ。それと、ちょっとしたおもてなしもだ』 運ばれ、プールの中に入れば乾燥も無い。 跳躍して船上に飛び乗った吹雪も加わり、全員が船上に集まる。 「人魚さんのために、パーティーを用意したよ! めいっぱい楽しんでいってね!」 藍の手からクラッカーが弾ければ、それはパーティーの開始の合図。 クリスマスと聞くと、胸が踊るような感覚がする。 クリスマスの一日だけは、世界の全てが笑顔でありますように。 ●遅れたクリスマスパーティー 賑わう船内。 綾兎が腕によりをかけて作った料理が並べられていく。 雷音のシュトーレンやケーキも並べられた。 普段から料理を作っていたのが、こんなところで使えるとは思わなかった。それに、異界の世界の人に食べてもらえるだなんて嬉しい。 飲み物も沢山用意はしたが、やはり人魚には水か。その水も手は抜かず、美味しいと噂の水を用意してきた。 その横で雷音は通訳を担いながら話をしていた。 『この世界では丁度クリスマスだったのだ。少々遅いけれども』 『クリスマス?』 どうやら彼女の世界にクリスマスは無いようだ。けれども、特別な日であることは分かってくれるはず。 「人魚嬢、喉は渇いておらぬか?」 咲夜が手渡した水を人魚が受け取り、ありがとうとにっこり笑った。 因みに咲夜が飲んでいるのはお酒。外見が未成年なのは三高平ではよくあること。 櫂も言葉では伝わらないなりに絵を描いて見せた。 けして上手いとは言えないが、人が笑っていたり、人魚の絵を描いてみたり。それを見て人魚は拍手をしながら笑っていた。 「楽しいですか? 人魚さん」 『はい、とても!』 櫂が通訳を介して聞けば、満面の笑みで答えてくれる。 「料理は用意できてるし、みんなも食べたら? 味も大丈夫だと思う……多分」 綾兎が自分の作った料理を味見しながら言った。自分で食べて美味しくても、他人が食べて美味しいとは限らない。 料理を取り分けたお皿を人魚にも渡した。珍しそうに受け取った人魚はしばらく見つめたまま固まっていた。 「味はどう? 食べられそう?」 心配そうに見つめる綾兎に、人魚は首を縦に振った。 『美味しいです。私の世界にはありませんよ』 その言葉を聞いて綾兎は安心する。もちろん、リベリスタの仲間達も美味しそうに食べていた。 「あの、よろしければ、これを持ち帰ってくださいっ」 茉莉は銀の指輪を差し出した。 此方の世界の物であり、少しでもこの思い出を覚えていて欲しくて。 指輪ならかさばらないし、着け外しも簡単だ。『永遠の友愛と共に』と刻まれた指輪を人魚は快く受け取った。指にはめ、光りにすかせば、煌びやかに光る。 冬芽が人形を取り出し、人形劇を始めた。 巧みに指を動かし、人形は生きているかの如く踊りだす。 お話は人魚姫。 人間に恋をした人魚は、対価と犠牲と共に人間に会いに行く。 けれど、人間の世界は真実と共に彼女を受け入れなかった。 愛しい人の命か、禁忌を犯した自分の命か。天秤にかけるまでもない。 泡になって消えていく――愛しい人の幸せを願って。 「だから、貴女もこっちの世界にいたら、幸せにはなれないんだ」 冬芽は人形を渡す。 「でも、帰るまでに素敵な思い出いっぱい作ろうね!」 無邪気に笑う冬芽の手を握り、人魚はにっこり笑った。 続いて人形劇は明るいお話へと。咲夜もシンクロを駆使し、同じ様にして動き始める。 「人魚嬢、楽しんでおられるか?」 『はいっ! とても、楽しい時間です』 「んで、人魚さんはどうしてこっちの世界に来ちまったんだ?」 吹雪が料理を堪能しながら、淡々と聞いた。 迷い込んだのならいいのだが、何か目的があるのならばどうにかしておきたい。 『迷い込んだのは、事実です。けれど、探し物をしておりました』 『よければ君の世界の話も聞かせてもらえないかな?』 雷音がそう聞くと、少し間が空く。 説明されたのは、七色の海。広がる大海。けれど、その海が黒く染まってきているという。 『浄化の術は、この世界には無いようですね。ですが、此方の世界は不安定。またいつ、此方と彼方が繋がるか』 静かになる船上。 どこの世界にも限りなく幸福な平和は無いのだろう。人魚の世界も闘っている。勿論、ボトムも同じ。 「なるほどな、こっちも色々大変だからよ、あんたも頑張れ」 吹雪が人魚の肩を抱く。 「うん、人魚さんも苦労している訳だな」 櫂がケーキを切り分けながら言った。そのお皿を人魚を手に渡す。 今だけは、飲めや歌えや、騒げや踊れ。 『クリスマスにはプレゼントを交換するものなのだ』 雷音がそう言って、綺麗に編んだ髪を纏めていたリボンを解く。 『大したものではないが、思い出になのだ』 それを金髪に結んであげれば、プレゼントとなった。 「ボクからも人魚さんにクリスマスプレゼントだよ!」 和服から一変、サンタの格好になった藍が真っ白の袋からプレゼントを取り出す。 人魚の首に彩られたのは人魚を模り、アベンチュリンを装飾した首飾り。 「アベンチュリンにはね、幸運の鍵っていう石言葉があるんだよ」 『幸運の……鍵』 人魚は首飾りを触りながら嬉しそうに微笑んだ。 パーティーもそろそろ終わりに向かう。 『私、歌が得意なんです』 人魚がお返しに、と口を開ける。 響いた音色は澄んでいて、心地よい高音。 「やれやれ……」 だが、咲夜がブレイクフィアーを用意したのは言うまでもない。 ●小さな逢瀬 D・ホールのすぐ傍までやってきた。 楽しい時間はすぐに過ぎていってしまうものだ。それに、フェイトの無いアザーバイドはこの世界では脅威となってしまう。 『感じる。故郷の香り……』 通じる穴から漏れ出すのは最愛の世界。身を乗り出して、D・ホールへと手を伸ばす。 ふと、櫂が精一杯の笑顔を作って人魚に問う。 「……また、会える?」 雷音の通訳を仲立ちとせずに、言葉を発した。 表情から読み取る人魚は、一瞬だけ難しい顔をしたが、すぐに笑って櫂の手を握った。人魚の腕で光るのは櫂のブレスレット。 「人魚さん、ちょっとごめんね」 綾兎がそう言って、彼女の華やかな金髪に飾られたのはスターチスの花。 「春なら、もっと色々な花があるから……もっと色々な花、見せてあげたかったけれど、ね」 スターチスの花に込められた言葉は『変わらない誓い』。 「何か困ったことがあれば、俺達を……アークを呼んで? 出来る限り、力になるから」 花言葉はけして嘘にはさせない。それは綾兎の最高のプレゼント。 別れの時間はやってきた。 人魚は櫂の手を離れ、振り返らずに元の世界へと消えていく。振り返ったらきっと、雷音の涙で留まってしまいそうになるから。 「さよならなのだ」 消えていくエメラルドの光り。 静かになった船上で、リベリスタ達はブレイクゲートを放つ。 最後に雷音が携帯のボタンをゆっくりゆっくり押し始め、帰りを待つ養父へメールを送った。 ――今日は人魚さんとお話ししました。素敵な時間でした。 人間の世界に迷い込んだ人魚さんは、心優しい人間に出会う。 楽しい時間と悲しいお別れと一緒に、元の世界へと戻っていきました、とさ。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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