●ミタミライ ふー……ふー…… 鮮やか華やか夜の町、しかし明るいからこそ影ができる。 片隅、路地裏、冷たく乾いた空気に白い息を立ち上らせ、瞳をギラつかせ、ポタリ、ポタリ―― 血。 滴り落ちる血。 しかしそれは彼のものではなかった。 その手にキツく固く血管が浮かび上がる程に握り締めた鈍色のトンカチから、ポタリ、ポタリ、ポタリ…… ……ふー、……ふー…… 一言で表すならば、 『破壊衝動』 ●カエルウンメイ 「こんにちはリベリスタの皆々様! メタルフレームでフォーチュナの名古屋・T・メルクリィですぞ。 初めましての方はドーゾ宜しく、そうでない方はこれからも宜しく」 そう言って事務椅子をくるんと回してリベリスタへ向いたのは『歪曲芸師』名古屋・T・メルクリィ(nBNE000209)。その機械ハンドにはどこにでもあるようなトンカチが一つあった。 「サテ、今回の任務は戦闘経験の浅い方や肩慣らしをしたい方などなどにお誂え向きなイージー系ですぞ。 内容はそれとなく一捻り……『アーティファクトの破壊or回収及びアーティファクトを所持してしまった一般人の救出』でございます。 ……ん? 『ところで3rdはまだか』ですって? あぁー……、取り敢えず2ndは今回で最後ですぞ。 おっと、話が逸れましたな」 それでは説明をば。トンカチを卓上に置いたメルクリィがモニターを操作すれば、画面上に映し出される画像――さっきフォーチュナが持っていたような、ごく一般的なトンカチ、を、握り締めたガタイの良い男。 それだけなら『なんだただのトンカチ持ってるおっさんか』で済むのだが……異様だ。 血走った男の目に正気は無く、獰猛で剣呑なオーラを漂わせている。トンカチは手に筋が浮かぶほど強く握り締められていた。 「アーティファクト『ドツキッス』、ご覧の通りトンカチのアーティファクトでございます。 所持者の身体力や耐久力などを飛躍的に高める力を持ちますが、反面『とにかく何か殴りたい』という破壊衝動をも同時に所持者へ働きかけてしまう厄介な代物でして。 モニターの通り、一般人の『竜田・哲治』様はドツキッスに完全に支配されております。どういう経緯で手に入れたかは不明ですが……ご愁傷様、ですな」 このまま放っておいたらこの一般人は尋常じゃない被害を齎すだろう。何としても止めねばなるまい。 表情を引き締めたリベリスタ達へ機械男はニッコリと微笑み説明を続けた。 「哲治様はドツキッスの支配から解放されれば――ドツキッスが手から離れるなり破壊されるなりすれば――気を失う事でしょう。彼のアフターケタも勿論頼みますぞ、ほったらかしは駄目絶対。 それにアーティファクトに支配されている間の記憶もありません。理性が完全にプッツンしてますしね、そこんとこもご安心を。 それから……いくら『アーティファクトによって身体能力や耐久力が飛躍的に向上しているから』といって、哲治様に直接攻撃しまくるのはオススメできませんな。 『ドツキッスの支配が解ける=身体能力などが元に戻る』ですから。お気を付けを」 詳しいデータなどについてはそこに纏めておきましたんで、と卓上の資料に遣った目でメルクリィは一旦説明を区切った。 その背後モニターには何時の間にやら薄暗い路地が。遠くの街明かりで完全な闇ではないが……明かりが無ければ些か苦労しそうだ。道幅も決して『広い』とは言い切れない。 「今回の戦場はこちらの路地裏ですぞ。 ご覧の通り暗い&そんな広くない、作戦を立てる際はその辺も考慮に入れといて下さいね。 因みに足場はしっかりしてますし、哲治様以外の一般人さんが来る事ァないでしょう。 ――以上で説明はお終いです。よろしいですか?」 見渡す機械の双眸に頷きを。 では、とフォーチュナは言い放った。シュバッと掲げる右手と同時に。 「正義の味方リベリスタ――出動ッ! ……あ、一回やってみたかっただけですぞ」 見た目は悪役の癖に。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:ガンマ | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年01月13日(金)23:05 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●こんな静かな夜なのに 面倒だな、と『普通の少女』ユーヌ・プロメース(BNE001086)は息を吐いた。 彼女が吐いた体温と同じ温度の吐息は白く夜空に立ち上り、冬の外気に晒され冷えて見えなくなる。夜の街の片隅。耳を澄ませば遠くの遠くから夜の賑わいが聞こえてくるかもしれない。 「本人ごと倒せれば楽だったんだが、手加減は難しいな……まぁ、『正義の味方』を期待されてるらしいし、それなりにやってやろうか?」 フィルムディスプレイ付き術手袋:自在護符を冷えた手に装着する。寒い夜風に黒髪を靡かせながら少女は仄暗い裏路地へと目を遣った。その口元には薄い笑み。吐いた言葉は『正義の味方』……正義の味方、せいぎのみかた。うーん。『SenselesS』腕押 暖簾(BNE003400)はむず痒い様なしっくりこない様な心地に肩を竦める他に無い。先日の一件を期にリベリスタへ転向した元フィクサード。まだ『正義』という言葉に慣れていないのだ――ユーヌとは別の笑み、即ち苦笑を浮かべて曰く、「変な感じだぜェ」と。 しかし、兎にも角にも暖簾にとってリベリスタとしては初任務。黒い中折れ帽を被り直し、気を引き締めて、前衛陣の仲間達へ施すのは世界から借り受けた生命の力。 「無いよかましだろ、元気が一番さァ」 翳す掌。持続的な癒しの加護に一寸、仄明るく照らされて。 「……人影は無さそうだね」 機械鹿のオートキュアを受けながら千里を見渡す視神経で『正義の味方を目指す者』祭雅・疾風(BNE001656)は現場を確認する。予知の通り一帯に人気は無い。何かとんでもなく派手な……それこそ凄まじい大爆発とかでも起こらない限り誰も来ないだろう。 気の毒だから何とかしてあげたいな。前に立ち、思った。 「ひたすらの破壊衝動ですか」 疾風の傍ら、瓶底眼鏡に隠した瞳を路地裏に向けて『絶対鉄壁』ヘクス・ピヨン(BNE002689)はふむと小さく息を吐く。面白いですね、と。鉄鍍の盾扉を構え、光り輝く守護のオーラを纏いながら。 破壊衝動――トンカチのアーティファクト。身体能力強化と引き換えに破壊衝動の増幅。 「放っておけない類のアーティファクトだな」 速やかに破壊ないし回収を行おう。脳の集中状態を飛躍的に高め、ヒルデガルド・クレセント・アークセント(BNE003356)は刺突剣エストックをその手に握る。方向音痴の彼女だが、この度は仲間と同時行動なので迷子という名の悲劇は起こらなかった。彼女を知る者がいたのならヤレヤレと深く息を吐いた事だろう。 「やれやれ」 しかしこっちは別の『やれやれ』。念の為と結界によって人払いを行いながら『子煩悩パパ』高木・京一(BNE003179)は肩を竦める。 「何ともお騒がせなアーティファクトが有ったものです」 それでも『ご本人』にとっては僥倖と言うべきものなのだろう――使用者はエリューション化も無く、使用時の記憶も無いとの事。 「取り敢えず、先ず彼から傍迷惑なアーティファクトを剥がす為に……頑張りましょうか、皆さん」 傍迷惑なアーティファクト。傍迷惑……ねぇ。くすくすと含み笑いを浮かべたのは『嗜虐の殺戮天使』ティアリア・フォン・シュッツヒェン(BNE003064)、レベルを上げて物理で殴る癒し手の視線の先には己が無骨な愛鉄球。 「ふふっ、とにかく殴りたくなるハンマーだなんて……面白いわ、なんて素敵なのかしら」 これを手に入れたらわたくしも……なんて。自分とあの子を繋ぐ鎖がジャラリと嗜虐的に歌う。大丈夫、浮気なんてしないわ。 「鉄球ならまだしも、鉄槌にはそこまで惹かれませんわね」 まぁ、貰える物ならば有難く貰うのだが。体内魔力を活性化させ、重い鉄球を引き摺り、暗い路地へと第一歩。 続々と路地へ歩を進めるリベリスタ。その最後尾、暗視ゴーグルを着けた『剣を捨てし者』護堂 陽斗(BNE003398)は翼の加護を皆に与えて表情を引き締める。 「どんな状況下であれ、意思を奪われてしまうのは辛いことですね」 少しでも早く、できるだけ安全に。救えるだろうか。救ってみせる。自分は一人じゃない。緊張に痛む心臓を深呼吸で落ち着ける。吸い込む空気は肺を裂く様にシンと冷えていた。 かくして目を遣る視線の先に――露骨なまでの敵意を剥き出しにした人影が、一つ。 ●ボコスカ 印を切った。或いは、術手袋のフィルムディスプレイに守護のパターンを投影した。 「――しかし、破壊衝動と言うよりは、酔った勢いの鬱憤晴らしが似合う風体だな?」 溜まっているなら、平和的に発散したらいいのにな。ニヒルに微笑むユーヌが言った直後、彼女と京一の守護結界が仲間達を包んだ。無駄に頑丈な前衛がいるが、用心程度に。備え在れば憂い無し。焼け石に水となるかもしれないけれど。 「変身!」 疾風が拳を掲げれば、正義の特撮ヒーローが現れる。輝くゴーグルARK・ENVG[HERO]、空を裂く可変式モーニングスター[響]、反対の手に持つはベビーオイルをたっぷり入れたゴム風船。それを、こちらへ襲い掛かって来る哲治の手――彼を操るドツキッスを握るその手を目掛け、 「ヌルっとドツキッスが手から外れるといいのだけど」 期待、投擲。 しかし容易く躱されてしまった。やはり通常の攻撃よりもグッと精密度が落ちてしまう。雄叫びと共に振り下ろされるドツキッスを響で受け止めた。 「くっ、」 凄まじい力。辛うじて踏み止まる。しかしその間に仲間達が哲治の背後へ無事に回り込む事に成功した。A班、B班。挟撃――アーティファクトを奪取し易くする為、逃亡を阻止する為。手筈通り、作戦通りだ。 それにしても、と暖簾はフィンガーバレットを構えながら苦笑に口角を持ち上げる。正義の特撮ヒーローか、格好良いじゃないの。その更に後ろにて布陣しているB班。そして、自分の狙いはドツキッス。 必ず助けてやんねェとな、と思う。 仲間の邪魔ンなんねェように、と気を付ける。 サテ。 「助けに来たぜェ、竜田の旦那。もうチョイの辛抱だ」 ちょっと正義のヒーローっぽい?なんて。火を吹く銃口。凄まじい早撃ち。トンカチを掠め、軌道を逸らし、疾風と凄まじい攻防を繰り広げていた哲治を僅かに怯ませた。たった寸の間だったけれど――十分、十二分。 ふわりと揺らいだのは優美な令嬢服だった。ティアリアが哲治を後ろから羽交締めにする。普段なら浄化の鎧を仲間達に付与しているのだが…… 「流石に一般人相手に反撃するわけにもいかないじゃない?」 清らかな鎧の効果は反撃。奇麗な薔薇には棘がある。しかし刺してはいけないのが今回の任務。動きを封じるのが先決。 だがいくら可憐な乙女と零距離でも、脳を破壊衝動に染められた彼は黙っている筈もない。暴れる。暴れる。あらあらまぁまぁ、お行儀が悪くってよ。 さて、彼からドツキッスを手放させる為には。 1:強引に指を開かせる。……多分効果が薄いだろう。 2:手の力を抜けさせる。……くすぐる? 「ふふっ」 ティアリアがそっと唇を開いた。鋭い犬歯。吸血――とんでもない、怪我だけはさせたくない。 答えは、耳への甘噛み。 「!」 哲治の動きが一瞬だけ弛緩した。その隙にたっぷり集中を重ねる事が出来たヒルデガルドが掌をトンカチに向ける。 「隙あり!」 放つ気糸は一直線、正確に命中する。直後の怒声は攻撃を受けたアーティファクトの怒りが発したものか、豪力に任せてティアリアを振り払うなり思い切り地面を鉄槌で殴り付けた。 凄まじい衝撃波――しかし、その真正面に立ちはだかる扉が一つ。 「時間と余裕さえあれば、持ってる腕が壊れるまでお相手する所ですが……生憎それはできないようです」 絶対鉄壁。ヘクスの盾扉は不落の要塞を護る城塞が如く、如何なる侵入者も許さない。 「そう言えば……ヘクスは勝手にこの男の職業は配管工に決めました。異論は認めません。どうしましょう」 ならばと飛び掛かって来る猛撃を防ぎながら。他の人の邪魔にならぬ様にと小さく構えてなるべく振り上げさせるように。元々小さいけれど念の為に。嗚呼、任tenDO。キノコの力か。 「樽とか無性に投げつけたいですね……あぁ、今は大乱闘するあれの方が有名ですよね」 スマッシュなブラザーズ。ところでハンマーは雑魚亀のアレだった気がするが……まぁ、いいか。攻撃を圧し遣る。圧し返す。バランスが崩れた哲治を堅牢に拘束したのはユーヌの呪印。封縛の鎖。 「何、痛みは無いし、後遺症も残ることは無いだろう。……多分な?」 そこまで責任は負えない。しかし、こういう場合に撃ちやすくて助かるな。 「無様に止まってる間に奪い取れれば良いんだが」 印を切りながら思う。視線の先では疾風の響が、ティアリアの鉄球が、ヒルデガルドの気糸がドツキッス一つを狙っている。 皆が攻撃するのなら。一方でそれらから目を逸らさず、陽斗は癒しの祝詞を唱え始めた。 非力なこの身であれ、癒しの奇跡を手に入れられた。 少しでも皆の傷を、痛みを、癒せるように祈りを込めて。 「どうか僕に力と、運命のご加護を」 詠唱の光にグリモアールが輝いた。かくして天より溢れ出すのは奇跡の音色、清らかな福音。呪印を振り解いた哲治に殴り飛ばされ血を流す仲間の傷を、痛みを、柔らかく拭い去って行く。 「頑張って下さい……!」 「おゥ任せなァ、外して堪るかってんだ……うらアッ!!」 集中を重ねた暖簾の銃指が超速の弾丸を発射した。火花。弾丸が命中した証。振り下ろされた軌道が逸れ、衝撃波はあらぬ方向へ。落ちていた空き缶が木端微塵になった。 「とっととそこを退きやがれ、ドツキッス!」 破壊衝動。一瞬でも早く、解き放ってあげたい。機械鹿は再度集中しながら狙いを定めた。 続く激戦、しかし勝機は見えてきたか。 前衛にて響を振るう疾風、鉄鍍の盾扉を構えるヘクス、隙あらば羽交締めで動きを妨害するティアリアには見えた。ドツキッスに入った罅。 「あと少しだ!」 疾風の声、その刹那。 怒号、咆哮と、地面に叩き付けられたドツキッス。噴き上がる様な衝撃波。 「ッ――!」 吹き飛ばされる。壁に叩き付けられる。 「皆さんっ!」 陽斗は急いで回復の祝詞を。慌てて呪文を噛んだりしないよう、しかし出来る限り高速に。 そんな陽斗を血濡れた鉄槌が睨む。――走り出す。全に英人が吹き飛ばされたのを良い事に。 「おわ!? 待ちやがれェ!」 すぐさま対応したのは暖簾、射撃態勢をキャンセルして地を蹴った。突っ込む。真っ直ぐ。体当たり。仲間の態勢が持ち直すまで何とか出来りゃいいのだが――薙ぎ払われる鉄槌。咄嗟に防御するも、メギリと軋む体。イッテェ、冗談抜きに。それでも倒れない。倒れるなら何度だって立ち上がってみせよう! 「ンな簡単に職務放棄する訳ねェだろ!」 零距離射撃。同時に響く陽斗の歌。 「僕は非力だけれど、足掻く事くらいはできますから」 その瞳に恐怖や迷いは無い。暖簾の射撃に続き、冷静に集中を重ねていたヒルデガルドも気糸を放つ。 「筋骨隆々の中年男子はわたくしの好みではないが、致し方あるまい」 哲治が後退する。ドツキッスの罅が大きくなる。それでも最後の足掻きか、放った特大の衝撃波。 しかしそれは哲治の目の前で霧散した。圧し留められた。 「残念ですが……力を出し切り絶望してください」 重厚な鉄鍍の盾扉には傷一つない。絶対なる鉄壁は崩れない。決して。 ヘクスの眼差しが射抜く先では京一の呪印が哲治の動きを封じ込めていた。藻掻けども、足掻けども、強力な拘束から逃れる術は無く。 「――赤子の地団駄のようだな? 蟻の子一つすら潰せそうがない辺り、可愛げがある」 シニカル。アイロニカル。ユーヌの周囲に浮かぶ黒い爻。不吉と破滅を告げるそれは真っ黒な影となり、真っ直ぐな糸となり、寸分違わず――ドツキッスを粉砕した。 ●シンと アーティファクトが破壊されれば、哲治は糸が切れた操り人形の様にその場に頽れた。 「ふむ……大事は無いようだ」 彼を膝枕したヒルデガルドが頷く。これが美青年だったらなァ……なんて思う彼女の傍ら、陽斗の天使の息が気を失った一般人を包んだ。リベリスタの尽力のお陰か幸い大きな傷は無かったが、良く良く見れば小さな掠り傷が出来ている。しかしそれももう、清らかな息吹が拭い去ってしまった。そこまで確認して――陽斗はやっと、安堵の息を。 「それにしても彼がベビーオイルまみれにならなくって、ヘクス一安心です」 ベビーオイルまみれのおっさんはあんまり見たくないです。疾風のベビーオイル風船作戦が失敗したのもある意味一つの僥倖か、なんて。ヘクスはゴミの持ち帰りや後片付けを。 介抱が済めば、立ち上がってドツキッスの欠片を回収したヒルデガルドの膝枕の代わりとしてユーヌがダンボールを哲治に被せる。流石にこの寒空の下で何も無しは不憫だろう。折角救ったのに凍死されても困る。 そして京一は倒れた彼に一口ビールを。そして飲みかけ缶ビールを周囲に。酔ったための行動と処理された方が怪しまれないだろう。 さて……それらを見守っていた疾風とティアリアが視線を変えれば携帯電話を片手に持った暖簾がニッと笑んで応える。 「119番完了だェ」 ならば後は立ち去るのみ。迅速にその場を後にするリベリスタだったが……ふと暖簾は脚を止める。振り返る。哲治の傍にてじっと様子を見守っている陽斗。 帰らないのかィ。その言葉にお人好し無青年ははにかみ笑いを浮かべ、 「ちょっと……やはり、心配なので」 「そーかィ。ま、暖簾さんは、全員無事ならそんでいーさァ」 じゃーな、また三高平で。ひらりと振る手、遠退いて行く足音。 やがて気が付いた哲治へ陽斗は笑顔で穏やかに話しかけた。安心させる様に。 大丈夫ですか。この場に倒れていたんです、と。そのまま更に答えて曰く、 「僕は一日一善が好きな、暇をもてあましている学生ですから」 『了』 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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