●エリューションニンジャ襲来! すっかり冷え込んだ12月。夜のうらぶれた路地裏で、1人のアメリカ人が木枯らしに身を凍えさせ、コートに身体を包んで少しでも熱を逃がすまいとしている。身長が元々小さいのだが、より一層縮んで見える。 「Oh、ニホンの冬。とても寒いデース」 彼の名前はマイケル=ニコルソン。ニューヨークの商社で働く、日本文化を愛する青年だ。厚縁の眼鏡がズレているのを直し、首から提げた大事なカメラを撫でて寂しい表情を浮かべている。クリスマスの休暇を前倒しにして、日本にやって来たのだが、望んだ成果が得られなかったのだ。 マイケルとて、この情報化社会にあって生きる人間。今なお侍が刀を下げて歩いているような日本を創造している訳では無い。古い日本の文化を尊敬し、研究しているのだ。そんなある日、ネットにアップされた写真で忍者らしい姿を見かけたのだ。当然、冗談である可能性を考えたが、あまりに真に迫っていたため、好奇心を抑え切れなかったのだ。元々、休暇で日本に行く予定はあったし。 そしてやって来た日本。マイケルは予定通りに日本の史跡を巡って、最後の日にやって来た情報の場所。結局、忍者に出会うことは出来ず、自慢のカメラに収めることは叶わなかった。こんなことなら、素直に別の場所を目指せば良かったと思う。 「仕方ないデース。ホテルに戻って、ディナーにしましょう……おや?」 パシッ 視界の隅で何かが飛び跳ねたような気がした。 パシッパシッ 気のせいでは無い。目に見えないような速さで、何者かが宙を翔けているのだ! マイケルは急いでカメラを構えると、それを写真に収めようとする。 そして、ちょうど満月の浮かぶ空にカメラが向いたとき、「それ」を捕捉することに成功した。黒頭巾に黒装束、そして、背中には忍者装束。間違い無く、彼が捜し求めた忍者の姿だ! そして一転、月光の蒼明は死の伴奏へと変わる。 「Oh! ニンジャ!」 それがマイケルの最後に残した言葉だった。 ●リベリスタ八人衆、集う! 暖房の効いた暖かい部屋の中、『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)はメンバーが揃っていることを確認する。 「みんな、集まってくれたわね? それでは、説明を始めるわ」 ブリーフィングルームの機械を操作して説明を始めるイヴ。スクリーンに映し出されたのは、如何にも漫画に出てきそうな、黒ずくめの忍者だった。 「現れたのはこの忍者のような姿のエリューション・フォース。あえて言うなら、忍者に対するイメージが実体を持ったものと言えるかしら」 その言葉を聞いて、リベリスタ達は得心が行った。もっとも、リベリスタやフィクサードの可能性も十分にあったわけだが。 「相手は複数よ。種類に応じて異なる戦法を取るみたい。総じて、隙を突くのが上手いみたいだから、戦う際には気をつけてね」 渡された資料を読むと、上忍・中忍・下忍の3種類がいるようだ。上忍がフェイズ2な他は、いずれもフェイズ1。もっともと言うかやはりと言うか、中忍の方が下忍よりも戦闘力は高いようだが。 「被害者は旅行中のアメリカ人男性、マイケル=ニコルソン。ネット上でこの忍者エリューションの姿を載せたサイトを見てやって来たそうよ。これから事件を解決すれば、まだ彼は死ななくて済む」 『万華鏡』システムが可能とするのは運命の演算であり、これから起こる事件の予知だ。今ならまだ、マイケルの命を救うことは出来る。 「サイトの方はアークで処理しておくから安心して。ただ、マイケルにも多少のフォローは必要かもね」 無事に事件が解決すれば、マイケルにとって「何も無かった場所」にはなる。だが、それよりもはっきり「この場所に忍者はいない」と思わせた方が、後々この場所に起こった事件に対する好奇心を湧かせることもないはずだ。映画の撮影、悪戯に見せかけるのが無難だろう。あるいは、いっそのこと本物の忍者の振りをして喋らないことを約束させる、なんてのもありかも知れない。 方法は任せるわ、と機材のスイッチを切るイヴ。そして、いつもの言葉でリベリスタを送り出す。 「……あなた達なら大丈夫だとは思うけど……一応。気を、付けてね」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:KSK | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年12月31日(土)21:15 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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年の瀬も近づく、師走のとある夜のことだ。都会の闇の中を8人の影が駆けていた。 人も知らず、世も知らず、人の討ち得ぬ闇を斬る。 彼らは、リベリスタと呼ばれていた……。 ● 都会の裏路地に集う、8人の影。それはいずれも黒ずくめの装束に身を包み、如何にも「忍者」といった扮装をしていた。これから行う作戦のために必要な格好だ。もっとも、この中にキッチリ本物の忍者が紛れ込んでいる辺り、リベリスタ業界の奥は深いと言わざるを得ない。 「ん、わるいことする忍じゃーたいじ。でも、いい忍じゃーもいるって教えないとだめーっていう…ちょっと、めんどい。ん? 冥華、忍じゃー? すないぱーはいぎょ?」 舌っ足らずな片言で呟き、コクンと小首を傾げる『うさぎ型ちっちゃな狙撃主』舞・冥華(BNE000456)。頭に生えたウサギ耳も、コクンと揺れる。 「ニンジャってあれだよね。ゴザルとかニンニンとか言う人だよね? 楽しそうだよね~。マイケルさんの気持ちとても良く分かるよ!」 テンション高くはしゃいでいるのは『おこたから出ると死んじゃう』ティセ・パルミエ(BNE000151)だ。如何にもな黒装束に身を包み、明かりを得るための懐中電灯を振り回している。気分はすっかり忍者ものの主人公だ。 「ござる、とか、にんにんって言った方が良いでしょうか……?」 一方、七布施・三千(BNE000346)は黒装束に身を包みながらも落ち着かない風情だ。ゲームの中でならノリノリで遊べるが、実際にやってみると、ちょっと気後れするところがあるらしい。 そんな仲間の様子を見て、満足そうに『常世長鳴鶏』鳩山・恵(BNE001451)は頷く。 「ケッコウ、ケッコウ。何だか『悪の忍者軍団VS正義の忍者軍団』の様であるな。コケー! 何だかカッコイイのである! にんにん!」 感極まったのか思わず鳴き声を上げてしまう恵。それにしても、忍者装束を着込んだ鶏というのは、存外においしそ……もとい、シュールな光景である。 「えへへ、写メ撮ってパパに見せなきゃ。みんなの忍者姿もばっちり撮っとくね!」 『ビタースイート ビースト』五十嵐・真独楽(BNE000967)は、漫画に出てくるようなクノイチの衣装に身を包んでいる。寒さ対策としてニーソックスも穿いているが、十分にそれらしい姿になっている。こうしたファッションで楽しむのも、アークで上手くやっていくコツといった所だろうか。 「まさかNINJYAを、ジャパンの世にて僕も見る機会があろうとは……いやはや」 『虎人』セシウム・ロベルト・デュルクハイム(BNE002854)は、呆れているのか感心しているのか、言葉も無い様子だ。たしかに、裏社会で用心棒をしていた彼にしてみると、こんな状況になることなど、想像したこともなかったのだろう。 「で、セシウム殿。その手つきは……?」 「ええと……いえ、相手が忍者ですし……雰囲気を、ね」 セシウムが九字を切るようにして結界を張っている姿を、『無形の影刃』黒部・幸成(BNE002032)は見逃さない。そこを突かれてセシウムは気まずそうに目をそらす。幸成は深く突っ込むのを止めると、精神を集中して敵性エリューションの気配を探り始める。 (忍者に対するイメージが実体化したE・フォースで御座るか。今回はまだまともな忍者像と相成ったようで御座るが……何時そのイメージが崩れて忍者がイロモノ扱いされかわからぬ。ここはイメージアップ戦略を兼ねて奮起せねば!) 忍者の血を引き、以前にヒドい忍者エリューションと戦った経験がある幸成にしてみれば、こうした機会に熱くなるのは当然のことだ。実際、今回の相手だって「イメージが現実化した忍者」である以上、偏見に満ちた忍者エリューションが現れる可能性があったわけで。 「忍者ですか……影で動くという点で我々リベリスタは忍者とそう変わらないのかもしれませんね。まぁ、何時も通りにアークの敵を始末するとしましょう」 タクティカルライトで索敵を行っていた『銃火の猟犬』リーゼロット・グランシール(BNE001266)は、ふぅっとため息を吐く。彼女の場合、愛用のバトルスーツを迷彩使用にしているのみだ。もっとも、周りに合わせて忍者らしく黒いボロ布も巻いてはいるが。彼女の場合それで十分、と言うか、いつも通りの任務にオマケがついただけの話だ。 そして、路地の中で撮影会も終わり、本格的な警戒態勢に入ってすぐ、リベリスタ達は気配を察知する。 ぱしっぱしっ ただの人間であれば、何か音がするという程度であっただろう。だが、リベリスタ達にしてみれば、それは敵の接近を知らせる合図でしかなかった。 「来ました!」 三千が叫ぶ。すると、その先には月を背にした、忍者の姿があった。 ● 闇の中から光が一閃した。壁を蹴ってエリューション達が急接近を図る。それに紛れて矢のように手裏剣が放たれる。常人であれば到底反応しきれるものではなかった。だが、ここにいるのはリベリスタ達だ。不意を突くべく放たれたその一撃は予期しており、決してかわすことが出来ないわけではない。ましてや、反応出来ないものではない。 「忍者が汚いってこーゆーコトぉ?」 真独楽は下忍の刃を手の爪で受け止める。そして、そのまま刃をひるがえす。 「そんなことより、忍び同士、真っ向から忍術のぶつけ合いといくでござるっ! な~んてね」 エリューションに負けぬ速度で真独楽が爪を振るうと、逆に下忍の方がその速度に翻弄されてしまう。そして、その戦場を切り裂くようにかまいたちが放たれる。 「あたしにも見えるでござるにゃ~ん」 ティセの放った鋭い蹴りが生み出したものだ。だが、それは目の前にいる下忍を避けて上忍を襲う。それを受けて、エリューションに同様が走ったように感じる。一番厄介な相手を叩くのは基本。そして、基本に従って行おうとした動きを、逆にリベリスタ達が取って来たからだ。 「攻撃を防ぎきることが出来ぬとあらば、厄介。故に封じさせていただくで御座る」 幸成の足元の影が怪しく蠢く。これは彼の磨いた技の1つ。そして、影が下忍の足を掴むと、さらに幸成は自分の身体から気糸を放つ。見る見るうちに下忍の身体は縛り上げられてしまった。 それを見計らって、三千が動く。 「空蜘蛛の術でござる!」 エリューション達は標準的なものよりも素早い。なれば、重力に足を取られる必要は無い。そこで、翼の加護を使い、それっぽく言ってみたわけだが……。 「な、なんちゃって……」 やはり、後で気恥ずかしさが出てしまったようだ。三千の頬が赤く染まる。戦闘による興奮によるもので無いことは明らかだ。 「コケー、助かるのである。ならば、敵が本気を出す前に片をつけるのである!」 恵の方はそんなに気にしたものでもない。むしろ楽しそうな様子だ。壁に対して三角飛びを行い、上忍を追いすがる。追われることを厭う上忍は空中で刃を繰り出すが、恵は同じく黄金の刀身を持つレイピアで応じる。 「ええと……その、すいません……」 「そげーき、そげーき。てーこくさいきょの九九式の実力みせる。ねらいうちー」 そこにセシウムと冥華が早撃ちを行う。上忍は完全に虚を突かれる形になる。2つの弾丸が狙い違わず刀を持つ腕を狙う。これにはたまらず、上忍も壁を蹴って後方に下がろうとする。 「随分とまた時代遅れの忍者ですね。近代火器の恐ろしさを教えてあげます」 そこを見逃すほど、リーゼロットも甘くない。リボルバーを構えると、エリューションに向かって嵐のように弾丸を放った。ダダダと轟音が響き渡る。その時、彼女は違和感を感じた。上忍の動きがおかしい。そして、何か影が1つ増えたような気がする。 「まずい、来るぞ!」 「忍!」 リーゼロットと上忍が叫んだのは同時だった。先ほど距離を取りながら上忍は蝦蟇を召喚していた。そして、蝦蟇は上忍の命令に従い、口から火の玉を吐き出す。 ゴゥン 今度は路地裏を炎が包む番だった。 ● カキィンカキィン ザクザクズバッシュ 煙の中からも剣戟の音が消えることは無かった。この狭い路地の中では、複数の敵を巻き込む上忍の術は真価を発揮することが出来る。だからこそ、リベリスタ達は十分な準備と共に戦いに望んだ。だから、この程度の攻撃では怯まない! 「日本の文化を好いてくれている異国の方が、絶対に死なせはしないであるよ! 良い思い出だけを祖国に持って帰って頂くのである!」 恵が叫びと共にレイピアを突き出し、空中で上忍と交差する。 すれ違ったのはほんの一瞬であった。いつの間にやら、2人は地面の上にいる。 「忍法・葬怒獲亜離阿流、である」 恵は呟き、血糊を払うようにレイピアを振る。そのタイミングで、上忍エリューションの身体は爆ぜた。 ここで一気に流れはリベリスタに傾く。エリューションが取る戦術は、火の玉で全体を攻撃し、中忍以下が確実にトドメを刺すという戦術。最初にそれを取らなかったのは、リベリスタ達の戦力を見誤ったからか。それを取れなくなっては、最早決定打は得られない。 「忍!」 中忍が印を結んで手裏剣を冥華に放つ。倒せる相手から倒そうという考えにシフトしているのだろう。先ほどの炎での怪我が癒えていない今、いたいけな少女の命は風前の灯かのように思われた。 たぁん だが、その時、冥華の九九式狙撃銃が火を吹く。放たれた弾丸は精密な狙いを以って、手裏剣を撃ち落した。そして、それに留まらず、中忍の肩を穿つ。思念体に過ぎないはずの彼も思わず、苦悶の悲鳴を上げてしまう。 「当たらなければどーということはないって、えらい人いってたし」 一方の冥華は平然としたものだ。幼い少女にしか見えない彼女も、リベリスタとしてそれなりの戦いをくぐってきているのだ。 それに続けて、銃声が響く。正確に2回。 「こっちも……それ投げられたら痛そうかなって……」 放ったのはセシウムだ。こちらは相手の急所を狙うことに特化した射撃。相変わらず相手に目を合わそうとはしていない。彼の言が真実かは定かでは無いが、少なくとも中忍の様子から攻撃に転じる覇気は消え失せた。そして、時間を稼がせるべく下忍の様子を見るが、既に手遅れと言うものだ。 「マイケルさんにイイ思い出も持って帰ってもらえるよーに、悪いニンジャはきっちりやっつけないと♪」 「狭さは我々にとって敵であったが、貴殿にとっても仇となったようで御座るな」 下忍の姿は最早消えていた。逃げたのではない。真独楽と幸成によって既に切り伏せられていたのだ。中忍が気が付けないのも無理が無い、神速の業だった。 そして、呆然とするエリューションの身体を、さらに真空の刃が切り裂く。 「忍法かまいたちでござるにゃん!」 蹴りを放った姿勢で術の名を叫ぶティセ。その後で、ふっと寂しげな笑顔に変わる。 「あなた達ニンジャは強かったです。でも、間違った忍者でした……」 その表情は、外見にふさわしくなく、もっと年上の女性の顔に見えなくも無い。もっとも、割と忍者っぽくしている中忍エリューションにしてみれば、間違った扱いは心外であろうが。 傷口を押さえながら、逃げ場を探る中忍。しかし、残っている選択肢は血路を開くか、道連れを作るしかない。それを悟り、手裏剣を抜き放つ。そして、彼がもっとも怪我の大きなものを見定めようとした時だった。戦場に福音が鳴り響く。それに合わせて、みるみる内にリベリスタ達の傷が消えていく。 「リーゼロットさん! 今です!」 福音を呼んだ三千がリーゼロットに呼びかける。その呼び声に合わせて、リーゼロットが動く。 「すべき事を、歯車のように……!」 リーゼロットの表情に動きは無い。ただ、いつものように、銃を構え、そして撃つ。それは鍛錬と集中のなせる業。ある意味で、下手な忍者以上に忍者らしい姿と言える。そして、彼女の放った弾丸は中忍に逃げる隙も与えずに、その五体を粉砕したのだった。 ● 「なんデスカ? 今の音は……? OH!?」 クリスマス休暇で日本観光を楽しんでいたアメリカ人青年、マイケル=ニコルソンは思わず息を呑む。ネットで仕入れた「忍者がいる」と言われる場所。その周辺をふらついていると、怪しげな音が聞こえたのだ。情報を手に入れたページは既に消えてしまったが、もしやと思ってきてみれば、そこにいたのは憧れの忍者の姿だ。これは声を上げるなというのも無理な話だ。 「OH! グレイト!」 喜びに震える手でカメラを持とうとする、だがその時、背中に現れた気配がそれを止める。 「そこまでにされよ。これ以上深入りすればその命、ないともの思うべし」 低く、落ち着いた声で痩身の男が語りかける。幸成だ。その声と様子から、マイケルはこれが「本物」であることを確信すると、言われるがままに手を上げてしまう。 すると、明るい声でクノイチ風の衣装に身を包んだ真独楽が割り込む。 「もし余計なこと喋ったら、忍者らしく忍び込んで、寝てる間に襲っちゃうでござるぞ? にんにん!」 声は明るいが内容は物騒だ。マイケルは身を震わせて、首をガクガク縦に振る。幸成の気配は最早無い。 「まぁまぁ、その辺にしておくである。怖がらせ過ぎる必要も無いである」 「ヒッ、クリーチャー!?」 宥める声に希望を感じたマイケルだが、声の主、恵の姿を見て悲鳴を漏らす。まぁ、夜中に鶏頭の忍者と出会って悲鳴を上げないというのは、相手が如何に紳士的であろうと難しい。 「コケ!? 私も忍者であるよ!? 決してクリーチャー等では……失敬な」 それを聞いて必死に謝るマイケル。救いの主を怒らせてしまっては元も子もない。 ようやく恵が機嫌を直すと、コホンと咳払いをして居住まいを正す。 「忍者とは忍ぶ者故、存在を秘匿せねばならぬのである。だから、今日の事は貴殿の胸の中だけにしまっておいて頂きたいのである」 「ソーリィ、言われてみればごもっともデス。妄りニ人の前に姿を見せない、その理由を忘れていましタ」 「忍者はカッコイイ! くらいのコトなら、覚えて帰ってもイイからね」 「もちろんデース。会えただけで、ワタシ感動デース」 真独楽の言葉に笑顔で答えると、マイケルはホテルへと帰っていく。その足取りは軽い。彼にとって、今年の休暇は大変に感慨深いものになったことであろう。 それを見届けてから、路地裏で静かにたたずんでいた影が思い切り息を吐く。 「ぷはー、もう喋っても大丈夫だよね?」 喋っては威厳が無くなってしまうと、黙っていたのはティセだ。確かに、その判断は正しそうだ。本来の年齢相応の態度であれば、違っていたのかも知れない。 「……幸い、マジ物の忍者が1人いましたしね。これで大丈夫でしょう、多分」 微妙に不安を煽る言い方のセシウム。もっとも、彼の場合には、安心できるからこそこのような物言いになるのだろう。そうだと思いたい所だ。その横で三千はリーゼロットの怪我の様子を見ている。 「この様子なら大丈夫そうですね。大事に至らなくて、良かったです」 「いつものことです。エリューション・フォースも消滅したようですし、帰投しましょう」 リーゼロットは凛とした様子で、スタスタ歩き始める。怪我が無い訳では無いが、彼女にとっては取るに足らないものなのだろう。 そんな仲間の後ろで、冥華は小首を傾げて何かを考えていた。 「えりゅーしょんの忍じゃーとあーくの忍じゃー……冥華たちのほーが悪者っぽいひびき―」 いわゆる忍者もアークの戦いも、一概に善悪で図れるものでは無い。ただまぁ……ここにフィクサードの忍者なんてもんがいたのなら、状況は間違いなくややこしくなっていたのだろう。 戦いを終えて帰る、現代のシノビとも言えるリベリスタ。 月はその姿を見送るように、空に浮かんでいた。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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