●正の六時間、とか 某動画サイトに告知された、ライブ放送の通知。 『六時間耐久正拳突きライブ』……誰がどう解釈しても、寒空の下正拳突きを放つある意味『漢』である人種の存在しか予想出来なかった。 しかし、偶然にもそれを探し当てた『無貌の予見士』月ヶ瀬 夜倉(nBNE000201)からすれば、頭を抱えんばかりの暴挙であることは理解できた。――何せ、そのライブを目している人間がフィクサード集団の人間で、実際に起きるべき事態が万華鏡に引っかかっていたとすれば……まあ、言うまでもないだろう。 リア充憎し、その意思を世界への害意の変換した瞬間、既に彼らは世界の敵なのだ。……残念ながら。 ●帰れ。 「皆さん、クリスマス・イヴの予定はありますか?」 資料にジト目を落とす夜倉に対し、或いは恋人、或いは友人同士であろうリベリスタたちはこぞって挙手。 「……チッ、使えませんねこのタイミングで……」 おい、今なんつった。この包帯なんつった。舌打ちしたぞ。すっげぇ鋭い舌打ち聞こえたぞ。いいのか。おい、いいのかアークの人材選定基準。 「予定が在る方は……まあ、取り敢えず話だけ聞いてって下さい。結構、神秘の暴露的にも被害的にも無視できませんから」 はぁぁぁぁぁぁ、とド深い溜息を吐いて、背後のモニターをオン。破砕されるオブジェ、割れた地面、んでもってそれらに指一本触れず、一歩も動かずに成し遂げたであろう、数十名に及ぶ、フィクサード。 「え、何これ、え、斬風脚? 無頼? え、いやでも……拳?」 「はい。説明が恐ろしく面倒くさいのですが、このフィクサード集団は、まあ……オフ会みたいな?」 みたいな? じゃねえよまじめに説明しろよ答えになってねえんだって。 「取り敢えず、まあ、彼らは全員覇界闘士です。人数は三十、殆どは駆け出し程度の実力しかありませんし、使ってくるのは業炎撃だけです。リーダー『峯岸 間(みねぎし はざま)』はやや実力が高く、相応の装備と特殊な技を使うらしいですが、それはおいときましょう。問題は、彼らの持つアーティファクト『まっすぐ』の存在です」 何、そのどうでもよさげな単純明快ネーム。 「『まっすぐ』は、腕輪型アーティファクトであり、単体では大した能力を持ちません。しかし、装備者が同じ動きをトレースすることでその動きに意味を与え、指向性を与え、甚大な効果を与える……何とも傍迷惑なアーティファクトです。つまり、コンビネーションを崩せばあっさりと効果は霧散するわけですが……逆に言えば、二人以上が息を合わせればただの業炎撃もかなりの破壊力になるってことですね」 いっせーの、せ、ってやつか。うぜえ。 「ですから、まあ三十人にもなれば攻撃範囲に『遠』がついたりそんなん朝飯前っぽいです。手を出さなきゃ被害甚大。ついでにライブ映像流す気満々なんで、神秘なんてモロバレ。これはちょっと、シャレになってません」 かんべんしてくれよ。これからデートなんだよ。 「……僕はこれから予約してた抹茶ケーキ四号ホールを受け取る予定だったんですけどね狂ったんですよね嗚呼畜生、恋人憎しでもない僕が今日この日に限ってはリア充がとても憎い――」 誰か止めろよ。 仕方ないから、リベリスタ達は残された資料に目を通す仕事に入ったとか。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:風見鶏 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 4人 |
■シナリオ終了日時 2011年12月25日(日)22:58 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 4人■ | |||||
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●畜生コノヤロウ リベリスタ達を送り出し、ブリーフィングルームに残った夜倉は盛大に溜息をついた。 何だあのリア充率。何だあれ。 こちとら元恋人がアレで頼んでた抹茶ケーキがそれで何ていうか色々とダウナーだというのに、作戦参加メンバーのリア充率ときたらどうしてくれよう。 かれこれ数十分ほど遡る。 「彼女とデートの予定があるけど放置する訳にもいかないしね」 アクション俳優にも恋人は居る。『正義の味方を目指す者』祭雅・疾風(BNE001656)は改造幻想纏い『アークフォン』を手早く操作しつつ、彼女へとメールを送信。手早い。 「まるで、かつてリア充撲滅委員会二代目と呼ばれた俺の姿を見ているようだ……」 人に歴史あり。ヘンタイにも歴史あり。黙っていれば美系ガチリア充属『原初の混沌』結城 竜一(BNE000210)が状況を見守る表情はこころなしか生温かかった。 「非リアの中に隠れリア充なら、大罪だろう?」 左には、そんな毒々しいことを口にして笑う『普通の少女』ユーヌ・プロメース(BNE001086)。竜一の彼女である。その愛情はプライスレスだね。 (お兄ちゃんと久しぶりに一緒の依頼……!) 右には、些か過剰に興奮気味の『猟奇的な妹』結城・ハマリエル・虎美(BNE002216)。あの、そのスタンガン仕舞おう? 対になる銃使おう? アンデッドガン並のとんでもスタンガンとかちょっと威力過剰じゃないかなぁ!? っていうか今日はフィクサード退治だからね? お兄ちゃん仕留めてどうするの!? 「夜倉さんでは有りませんが、予定を組んでいた人にとっては色々と迷惑ですね……」 そんなことを口にして封筒を握り締めるのは、浅倉 貴志(BNE002656)。もしかしてアレか、あったのか予定。痛いほど悲しいほど想いを沿う予定があったのか畜生。ただの紳士的で冷静なあんちゃんだと思っておけば。 「リア充って……カップル限定なの?」 エリス・トワイニング(BNE002382)の素朴な疑問はもっともである。だが、こればかりはイエスともノーとも言えない。回答次第で包帯が剥ぎ取られてしまう。 「正拳突きを行うという主旨は悪くはない」 そう言って大仰に頷くのは、クリ……もとい、『紅蓮の意思』焔 優希(BNE002561)だった。すいません、記憶が正しければ彼も立派なリア充な気がするんですが。でもそんなことが気にならないくらい、闘志に満ちてる。 「しかしリア充とか非リアとかいう価値付けは下らんな。オフ会に乗り込み性根を叩き潰してくれるわ!」 言ってることは格好良いし優希君本人は格好良いと思うけど、その、お前が言うな。 「放置も出来ねえし、こうなったら全力でオフ会を阻止してやる」 優希同様、フィクサード討伐に息を巻くのはフラ、じゃなかった『蒼き炎』葛木 猛(BNE002455)。優希とは良きライバル関係であるだけに、彼、そして居並ぶ覇界闘士の面々の多さに猛る何かがあってもおかしくはない。 「人の幸せを祝福出来ない人間が自分だけが幸せになりたいなんて。まして、他の幸せを潰そうなんて真似は許せない!」 ありとあらゆる意味でこの青年は本当にブレない。境界線所属だけに、ボケとガチとの境界線。『ライトニングイエロー』設楽 悠里(BNE001610)……え? うそ? あるぇ? 称号、え、称号え? もう既に覚悟完了? 「痛いほど気持ちが分かるんだ。……だから、俺は彼らに違う道を示したいんだ」 握りしめた原稿に目を落とし、『デイアフタートゥモロー』新田・快(BNE000439)は血を吐くような声でそう告げた。アークの残念系男子の代表格――いや、中身は普通だが――に挙げられる彼だけに、その決意が何処を差し何をしようとしているのか、など。作戦を協議した仲間に限らず認識できたことだろう。 斯くして。 今年のクリスマスは、最低です。 ●非リアデモンストレーション 同日、午後八時五十五分。非リア共の宴兼生放送の現場となるべき其処には、既にリーダーである峯岸 間率いる都合三十名の非リアが……あれ? 三十五? 「魂を共鳴させし同志達よ。今日は拳で語らい合おう」 「お、おう……気合入ってんな、ニイちゃん」 「クリムゾンレッド、だ。クリムでもレッドでも好きに呼んでくれ」 オールバックにサングラス。羽織ったコートは炎のプリント。その身から溢れる場違いかつ埒外の闘志だけはごまかしようがなかったが、優希は見事なまでに変装を完了し、その場に溶け込んでいた。 同じく、H.N.サイレントブラックこと貴志。ジーンズにフライトジャケット、ついでに伊達眼鏡……見るものが見ればバレバレのベタな変装だが、知識的に乏しい彼らにはバレようがない。っていうか、H.N.よろしく物静かに雰囲気に溶け込んでいる。元のイメージを崩さない辺り流石すぎて困る。 「……確認するみてえであれだが……お前らも年齢=彼女いない歴な訳?」 場の空気に天候以上の吹雪をもたらしたのは誰あろうフラムブルーこと猛。オフ初心者にやさしい気さくそうな雰囲気を振りまいたかと思ったら、触れると爆発するニトロを投げ込むとか誰得プレイ甚だしい。でも髪の色も眼の色も変装で変えている彼に、項垂れることしかできない彼らです。 「良いじゃねえか! そういう奴らの集まりなんだからよ! 気にせず行こうぜ。……俺らには拳がありゃそれで良い、違うか?」 さすがに、自分の失言は理解して口にしているらしい。ちゃんとリカバーも用意している辺り、狙い通りなのだろう。怖い。 「そうそう、深く考えないで楽しめばいいと思いますよ」 巧妙に話を合わせに行ったのは、ゲイルこと疾風。サングラスを着け、普段着ないようなファッションを装った彼がよもや三高平のアクションスターだとは誰も気づくまい。……誰も。 一方、仲間たちとは若干離れ、陣容の中心に位置する悠里。え、ライトニングイエローだって? ……今更じゃないかなあ。 (ここなら皆とは位置が被らないし、思いっきりやれるはず……何としても止めるんだ……!) しっかしこの子もぶれないね。格好いいね。王子様になっちゃうわけだよ。 (お兄ちゃん、中央に立ってる峯岸の頭部にマウントされてるカメラが一つ、集団後方に一つ、後は待ち合わせに使われる某オブジェに一つ……見た限り三つあるみたい) 「流石我が妹、頼りになるな!」 (こっちでも同じ物を確認した。それ以上は無い、と考えて間違いないかもしれないな。竜一、君の動きが成否を分ける。よろしく頼むぞ) 「守護神もサンキューな! 何とかやってみるわ」 一方、快、虎美、そして竜一の三名は神秘暴露に大いに関わるであろうカメラの位置の探索に入っていた。周囲に置かれたものはともかくとして、峯岸本人の頭部という位置はなかなかに度し難く御し難い。ある種脅威と狂気の沙汰とも取れるその選択肢は、竜一の緊張感を否応無しに高めていった。 ――だが。 集まったリベリスタ、総勢十二名。紛れ込むとかカメラ壊すとか、そんなみみっちい作戦ばかりのはずがないのである。 「手作りクッキー……食べて、頑張って」 ロリ(エリス)と、 「ぁ、あの……応援してます、頑張って下さい」 「あざーっす……ってリーダー、何でリーダー宛の手紙付きあるんスか!?」 恥ずかしそうに走り去るロリ(ユーヌ)と、 「旦那様ヒドイです。オフで会ったら夜明けまで(検閲削除)って約束だったじゃないですか」 「て、テメェェェ隠れリア充だったのかコノヤロウ!?」 「ち、違……(あ、でもちょっとそれはとても、素敵かなって……)」 合法ロリこと『デストロイド・メイド』モニカ・アウステルハム・大御堂(BNE001150)と、 「もー! 間クン、何やってるのよー! 今夜はアタシとデートでしょ?」 「……お前、確か……!」 「ああん、ここ寒いから、あっためてー♪」 ロリ、こと『戦姫』戦場ヶ原・ブリュンヒルデ・舞姫(BNE000932)。っていうか、指摘しようとした峯岸に間髪入れず体を密着させる辺り、本当にあざとい。でも慎ましい。じゅうよんさいだからね! 「……なんだかここ、DTくさーい」 混乱に、更に上乗せするように一撃を突き込んだのは誰あろう舞姫だ。 周囲の覇界闘士達が揃って膝を屈した。魂が一瞬にして砕け散った。 ついでに、快も人知れず膝を衝いた。それどころか、地面に拳を叩きつけている。……やーめーろーよー、守護神Disんなよう! 「くっ……落ち着け! こいつらは陽動だ! リベリスタ……アークの連中だ! 怯むな、屈するな、恐れるな――戦えッ!」 「じゃあ、そうさせてもらいますね?」 自らもショックを受けかけた峯岸だったが、流石はリーダー、立ち直りが早かった。舞姫の体を振り払い、倒れかけたメンバーに再度喝を入れる。しかしながら、よろよろと立ち上がるその足取りは重い。気合のある数名も、かなりダメージが色濃いように思えた。 そして、舞姫はそのチャンスを逃さない。 峯岸の頭部のカメラを一刀のもとに切り捨てた彼女をして、その戦端は開かれた。 開かれたんで、そろそろ立ち上がって下さい。 ●とんだ地獄だぜ 「人の幸せを願えない人間が! 人を好きになったってその人を幸せに出来るわけないだろう!」 どっかーん、ばりばり、とばかりに中央から悠里の壱式迅雷が吹き荒ぶ。それだけで数名の覇界闘士は呆気無く吹き飛ばされ、錐揉みしながら落下する。 「竜一、カメラを――」 「もう壊したぜ! 好きにやってくれ!」 何とか立ち直った快が指示するが速いか、竜一は既に残りのカメラを残らず破壊し終えていた。あっという間である。 「変・身――!」 疾風の叫びが反響したかと思えば、既に斬撃の如き蹴撃が峯岸目掛け接近していた。頬の皮一枚でそれを回避した彼だったが、続く貴志、そして優希の大雪崩落を回避するには余りにもタイミングが悪すぎた。 「……! このッ!」 然し、峯岸とて一端の覇界闘士。既に接近していた三名を弾くように、壱式迅雷を放って応戦する。技の効きはどうあれ、その精度は確実。 優希、貴志は回避が高いとは言えまだ理解できる。頭ひとつ抜け出た舞姫にすら掠らせるその精度は只者ではないと考えていいだろう。 「多少の妨害は分かっていたが、随分と派手にやるじゃないかリベリスタ……!」 どぉん――と。その叫びに同期するように爆音が炸裂する。猛の放ったフレアバーストだろうが、何時にもまして破壊力がとんでもない。 「さぁて、そんじゃ──幕開けと行こうか……!」 やりたい放題である。 「あちらは大丈夫そうですし、峯岸本人を狙いましょうか。本体を壊すと怒られますので、付属品狙いで」 本来なら圧倒的火力による範囲殲滅を主とするモニカではあるが、狙って当たらぬということはない。寧ろ、相応の精度を持っているといえよう。 ところで、付属品って『リフレイン・ブルー』じゃないんですか? 「壊すと怒られますので」 失礼、付属品は峯岸らしい。 そんなどんちゃん騒ぎはどこ吹く風……というか、そんな騒ぎの中だからか。 虎美は、ゆっくりと竜一の側へ歩いて行くと、トンデモないことを口にした。 「そこのカメラを破壊した残念美形は私のお兄ちゃん。アークでも有名な変態だよ」 気配遮断もステルスもあったものではない。もとより支援に入っていたからまだいいものの、竜一の存在と行動がモロバレである。色めき立つ覇界闘士達に対し、虎美は尚も続ける。 「でもそんなお兄ちゃんでも彼女らしきものは出来たんだ……残念ながら。 リア充憎しを止めろとは言わない。でも、なろうとする努力はしたのかな? お兄ちゃんみたいに拒否られてもめげずにペロペロするぐらいのガッツは見せた? 残念なお兄ちゃんにも相手が見つかるぐらいだから、努力すれば君達の事をいいって言ってくれる人は出てくるよ。 迷わず行けよ、行けばわかるさ。ありのままの自分でぶつかるんだ……」 虎美の盛大な演説に、一部泣き出す者すら現れた。その効果はそれなりにあったらしい。 「まあ、少なくともこんなダメ企画に付き合ってる内はダメだと思うけどねー」 そのまま容赦無くハニーコムガトリングとか、本当にこの妹さんってば猟奇的ね! かつかつかつ、と足音が響く。 アークの守護神、鉄壁などと謳われても、それが全て肯定的な意味であるとは限らない。 快にとっての人生はいろんな意味で鉄壁であり切り札であったといえる。リア充と自分との間の壁的なアレさ。 だが、彼はくじけない。故に、その声は大気を震わせた。 「諸君、聞いて欲しい。 元来『リア充』は『リアル充実』を示す略語。 すなわち、恋人の有無に関わらず、仕事や趣味や友人、何でもいい、自身の生が充実していると感じられるその瞬間があるならば、 人は等しくリア充たる権利を持つ筈なのだ。 しかし、昨今「カップルにあらずんばリア充にあらず」という風潮が広がっている。なぜか? 視野狭窄した恋人たちによる傲慢が、誤った認識をもたらしたのである! 今ここに宣言する。歪められた『リア充』の定義を正すことを。我々はカップルを憎まない! その傲慢を憎む! 君よ、来たれ! アークに灯る火は、新しきリア撲の形だ! 峯岸さんも!貴方の望む世界はこんなものじゃないだろう!」 ……ぶわ、と聞こえた気がした。涙腺が開く音。膝を屈する音。都合二十九の覇界闘士は、アーティファクトの能力を全く使用すること無く崩れ落ちたのだ。 「戯言を――! 俺にそんな言葉は通用しないッ!」 だが、それでも峯岸は意気軒昂。更なる闘気を孕ませ、貴志へと一撃を放つ。幸いにして、背後には誰もいない。愚直な突きだ。かわせないことは、無い…… 「……な?」 「戯言だといった。皆が裏切った。俺はどうすればいいと……言うんだ!」 炸裂。胴の中心を穿ったそれが、貴志の全身を這いまわる。心身を凍えさせる。同時に、彼には峯岸の痛々しいまでの孤独感が、探査の網を超えて炸裂する。威力は慮外のものではない。耐え切れる程度のものだ。だが、これはいろいろな面で――きつい。 「僕にも彼女はいない! でも僕には好きな人がいる! だから君たちには負けない! 負けられない!」 悠里の咆哮が炸裂する。猛然と接近する彼に隠れるように、更に二つの影が、左右から峯岸を挟撃する。 「ハッ、良いぜ……! クリムゾンレッド!(笑)」 「ええい、こんな時にふざけるんじゃない!……ああ、行くぞ!」 右からは猛、左からは優希。どのタイミングで奪ったのか、彼らの腕には『まっすぐ』が装備されている。好敵手たる互いのことだ。タイミングなど幾らでも合わせてみせる――そんな自負があったのか。 悠里の拳が閃き、峯岸を叩きつける。反動で浮き上がる間も惜しいとばかりに、炎を纏った拳が左右から接近し―― 『蒼破紅煉獄掌!』 峯岸を、高々と吹き飛ばしたのだった。 「…………っと。『リフレイン・ブルー』、回収完了ですね」 吹き飛ばした先に居たモニカが、鮮やかな手際で峯岸のナックルダスターを奪い取る。『ぶんどる』スキルでも持ってんじゃねえのこの合法ロリメイド。 「あ、私は要りませんので……じゃんけんで決めてくださいね?」 これはひどい。彼女の手元に穴が開くような勢いで眺めている覇界闘士五名を前に、モニカはブリーフィングルーム同様の言葉を口にする。 そして、じゃんけんである。一発で決まればいいものだが、なかなかそうもいくわけがない。 結局、精緻たるじゃんけんと言う名の判定の下に、『リフレイン・ブルー』は悠里のものになりましたとさ。 「お前らが、このままじゃ駄目だって思ってんなら色々手伝ってやるよ。なろうぜ、全員で……リア充、って奴によ。来いよ、アークに」 「欲しいものがあるならば、その拳で掴め。貴様達を見放したりはしない、アークに来るがいい」 同士に対して優しいのはアークの常。猛と優希の言葉がどれだけの救いになったかは言うまでもない。 「正拳突き500本、朝昼晩3セット。共に行おう」 その一言さえなきゃな。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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