●兎は好きですか? 「ちょっと、兎を捕まえてきて欲しいの」 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)の言葉に、リベリスタ達は軽く首を傾げる。 言葉道理ならば、何処に危険性があるのか? こんなところに呼び出されたのか? とんと見当がつかないというところだろう。 「……そうね、こっちを見たほうが早いわね」 軽く肩をすくめると、イヴは端末を操作し、スクリーンに映像を映し出す。 これは、他のリベリスタ達が作戦終了後、山から戻る途中で撮影されたものだ。 進む先に見える枯れた茂みから、ひょこっと顔を覗かせるのは茶色い兎の顔。 『好奇心旺盛な兎だな』 野生の可愛らしい姿に和みの笑い声が聞こえるが、のそりとその頭が動く。 茶色いネザーランドラビットの体は何かの手で吊り上げられており、背中の皮をたるませ大人しく鼻を動かしていた。 代わりに動いていたのは……その兎を掴んでいた、成人男性程有ろう背丈の兎。 同じ色合いをした兎は、外見こそ兎なのだが、何故か二足歩行だ。 『ぇ……?』 映像の向こうで、声が裏返る。 同胞を下ろした巨大兎は、一足飛びでリベリスタに近づくと強烈なミドルキックを脇腹に向け、放つ。 『げはぁっ……!?』 メキメキッ!と響き渡る、嫌な響き。だが兎はその頭を掴むと、何度も同じ場所へミドルキックを浴びせていた。 仲間のリベリスタが理解しがたい光景に襲われる様を呆気に取られ、カメラを回すばかり。 ハッと気付けば、止めようとカメラを置き、仲間を助けんと全力疾走で駆け寄る姿が撮影される。 『なっ……!?』 遮るように別の茂みから飛び出したのも、兎、違うのは色が灰色なだけだ。 こちらの兎は飛び出すやいなや、グッと腕を巻き込む様に、綺麗な起動を描くフックを鳩尾へと叩き込む。 意識が吹き飛びそうな不快感に、思わず膝から崩れるリベリスタを兎のデンプシーロールが襲う。 そう、カメラには驚愕の映像が収められていたのである。 「これを掴まえて欲しいの」 冷や汗を垂らし、息を呑むリベリスタ達へ坦々と語りかけるイヴ。 彼らの様子を見てもお構い無しに説明が続く。 「茶色いのは蹴り技が得意、灰色のはパンチとか殴る攻撃が得意みたいね。 どうにか逃げ帰った人の話だと、白い兎もいて、こっちは関節技が得意だといってたわ」 兎に間接技を決められる……想像するだけでも、いや、想像できない。 「どうやらアザーバイドと共にやってきた、あちらの世界の兎みたい。 ここで殺すと害が出るって予測もあるから、送り返す事にしたの」 言わば兎のアザーバイドという事だろう。 可愛いとはいい切れれぬ相手との戦い、熾烈を極めそうだ。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:常陸岐路 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年12月31日(土)00:18 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●兎、参上 寒風吹きぬける草原に、力に満ちた勢いでアメイジンググレイスが流れた。 冬山の景色に響き渡るそれは、まるで何かのPVの様。だが、広がるメロディは現実だ。 草原の中央でトランペットを演奏していたのは、『愛を求める少女』アンジェリカ・ミスティオラ(BNE000759)である。 兎達を呼び寄せる為に、けたたましくすればいいだけなのだが、演奏にも本気だ。 演奏に上空で耳を傾ける片桐 水奈(BNE003244)と『何者でもない』フィネ・ファインベル(BNE003302)は、目を配らせ兎の姿を探す。 作戦は前衛と後衛をしっかりと分け、堅実に一体ずつの撃破。 その為にも陣形は崩したくない。 不意打ちを食らわぬない為にも、しっかりと空の索敵網を張り巡らせた。 (「迷仔の迷仔の、兎さん。 見知らぬ土地で心細くて、だからあんなに凶暴化してるんです、ね。 早く、元の世界に戻してあげません、と……」) 暗殺者として育てられた彼女でも、そんないたいけな存在を愛でる心は消えていなかった。 「もふもこの兎…ってなんかイロイロ違うじゃないっすか! なんすかこの危険極まりない生物! これを兎と認めてよいのか!? 断じて否! 私は認めないっす!!」 『普通の女の子』華蜜恋・T・未璃亜(BNE003274)は、熱く……だが小声で語る。、 「兎とはもっと愛くるしい生き物っす! これはもふもこの猛獣であって兎ではない! 本物の兎をだせ! 愛らしい兎をだせ! もふもふさせろっす!!」 これもまた小声。 しかし、彼女の言葉は尤もだ。柔らかくふわふわの毛皮を求め抱きしめようものならば、もれなくあの無表情でストレートパンチを顔面にクリティカルヒットさせてくるような奴らである。 そんな未璃亜とは打って変わり、『十字架の弾丸』黒須 櫂(BNE003252)は胸躍るような気分を抑えて茂みに潜む。 そして、このために購入した兎耳のカチューシャを頭へ静かに装着した。 「うさぎ、だいすき」 小さく呟いた言葉が全てを示す。 「何か動きましたね……?」 烏丸 兎子(BNE002165)は茂みの動きに気付き、じぃっと注視。 彼女の声に釣られ、全員の視線が茂みに集中していく。 そして……期待通り、兎達は姿を現した。茶色と灰色の兎、白い兎はいない。 だが、そんなことよりも別の事に『日常の中の非日常』杉原・友哉(BNE002761)や、他の面々も度肝を抜かれる。 灰色兎がノソノソと姿を現すと、ダルそうに背を丸め、ペッ! と唾を吐き捨て、茶色兎は頭を斜めに傾けながら両手の毛皮指を絡ませ、コキコキと音を鳴らし、地面を踏み鳴らして姿を現したのだ。 その癖、顔は兎で鼻をヒクヒクさせながら無表情なのだから性質が悪い。 お前らは何処のヤンキーだ。一同に思ったに違いない。 (「これは酷い」) 表情を変える事無く、『まだ本気を出す時じゃない』春津見・小梢(BNE000805)は静かに心の中で極めて冷静に突っ込むのであった。 ●兎無双 現れた2体、茶色兎が狙いをつけたのはトランペット演奏をしたアンジェリカだ。 喧しい音を響かせた罪は深いというところか? 素早い動きで接近を始める。 距離を詰められるのも不利な為、彼女が放った黒いオーラが頭部へ迫る、が。 バシッ! 乾いた音共に払い手で攻撃を弾き落としてしまえば、無表情のまま接近を続ける。 「いきますっ……!」 その様子に慌てつつも、兎子と友哉が一斉に魔法と弓矢の追撃を放つ。 降り注ぐ魔力と矢の飛礫は雨霰と降り注ぐも、兎は軽やかなステップで回避を重ね、直撃しそうなものだけ庇い手でしっかりとガードしていた。 アンジェリカのアイコンタクトに応じ、身を潜めていた櫂が飛び出すと、点在した岩や木を蹴って一斉攻撃を放つ。 飛び道具によって巻き起こった砂埃のカーテンもあり、奇襲は成功したように見えた。 だが、それでも兎は止まらず、吹き飛ばされても直ぐに受身を取ってアンジェリカへと距離を詰める。 驚愕する彼女のバックステップより早く手を伸ばし、ふわふわ満載の掌が小さな頭をメシメシと頭蓋骨が軋む程鷲掴みに締め上げていく。 その間、灰色兎と小梢は1対1で向き合っていた。 「こっちだー、お前はこっちだ兎さんー」 灰色兎もアンジェリカを狙おうとしていたのだが、彼女の拡声器が喧しい声を吐き出し、灰色兎の怒りを買ったのだ。 のしのしと近づいてくる姿を見れば、小梢は拡声器を投げ捨て、培った術を重ねて鉄壁の守りを整えていく。 一足飛びで一気に距離を詰めた兎が放つストレートパンチは、プロボクサー顔負けのフォームで放たれ、真っ直ぐに彼女の顔面へ迫る。 直ぐに盾を構えストレートパンチは防がれたものの、金属同士の正面衝突といわんばかりのノイズを炸裂させ、彼女も兎も煩さによろめく。 しかしそれは兎のパンチがそれだけ破壊力があった証拠である。 再び場面は戻り、アンジェリカと茶色兎だ。 「は、離して……っ!」 アンジェリカは再び黒いオーラを練り上げれば、顔面に叩きつけようと至近距離で放つ。 だが、くいっと身を反らし回避してしまう。 絶体絶命な状況下、更に彼女を狙って白兎が姿を現したのだ。 ●兎、反撃される 「白兎さん現れました。 注意、です!」 あえて攻撃に参加せず、白兎にのみ集中していたフィネが直ぐに反応。 耳を澄ませ、風で起きる草や葉の擦れる音とは違う独特の音、それをしっかりと辿った成果だ。 滞空していた場所から一気に急降下し、圧し掛かる勢いで接近すれば、全身からオーラの糸を放って捕縛しようとする。 不意を突かれた白兎は糸に絡めとられ、全身で地面を滑り転がり、身動きを封じることに成功した。 (「今なら!」) 丁度3体の動きが止まった今がチャンスと、櫂が拳銃を構える。 マガジン全ての弾を撃ちつくす一斉発射をしながら走りまわり、3体を同時に攻撃していく。 ガチンとスライドキャッチが上がり、ガンスモークが流れる、その向こうで兎達に結構なダメージを与えていた。 (「……この場合。 大怪我になる前に、大怪我を防がないと!」) 回復と情報伝達を担う水奈だが、兎達の猛攻がそれどころではないほど激しい。 アンジェリカがあのまま捕まっていれば、大ダメージを受けるのは火を見るより明らか。 幸い、茶色兎は空中の彼女に気付いている様子はない為、今仕掛ければあの手を解ける可能性があるのだ。 落ち着いてしっかりと狙いを合わせ、渾身の魔力を込めた魔力弾を放つ。 (「そこっ!!」) 螺旋回転を続けて空を切り裂くそれは茶色兎の片腕を穿ち、アンジェリカを解放に成功。 「離れるのですっ!」 再び捕まれない為にもと、兎子が魔法弾を連射し、追い打ちを仕掛ける。 だが一度攻撃を受けた兎も気を引き締めなおし、払い手と足裁きで弾丸を回避してしまう。 友哉の放った矢にいたっては矢をつかまれ、握ってへし折られる始末だ。 「待たせたっすね、いくっすよぉっ!!」 ニーリング体勢でバズーカを構える未璃亜が、ここで攻撃に参加。 焦れる思いを必死に耐え、集中力を高め、狙いに狙い続けた今、この攻撃は外れない。 爆音の嵐が始まり、吐き出された弾頭は兎達を爆撃に包む。 直撃は勿論、爆風への巻き込み、吹き飛ばされた土砂や木片の激突と、暴力という名の竜巻が通り抜け……茶色兎は行き絶え絶えに片膝をつき、残り2体もどうにか耐え切ったといった息の荒れ具合だ。 焼け野原となった地面を蹴り、灰色兎が憤りの拳を叩きつけようと彼女へ迫るが、遮るように小梢が立ちふさがる。 「通せんぼ、通せんぼ」 溢れんばかりの怒りを込めたコンビネーションパンチが彼女を何度も襲うが、守りに長けた彼女にとってその程度の攻撃ならば防御に容易い。 ガンガンと盾を響かせ、しっかりと守り、鳩尾を狙った深い捻りを込めたアッパーも両手の盾でしっかりと防ぐ。 その瞬間、反対の手が走り、小梢の頭部を鷲掴みにしたのだ。 連続攻撃は、その堅い守りを下げさせる為の囮。兎の癖にあざとい。 否、草食動物故の狡賢さと言うべきか。 それはともかく、マイペースな小梢でも、もふもこアイアンクローは凶悪な破壊力らしく無言でジタバタともがきながら……抱きつこうとしていた。 そんな状況下でも混乱した茶色兎の同士討ちを半身反らすだけで避けれる兎というのも、気持ち悪い。 糸を引き千切り、起き上がった白兎は肩に掌を当てつつ首を左右にコキコキと揺らす。 そして視線は糸を放ったフィネへ、相変わらず無表情で鼻をヒクヒクさせている。 ぐっと身体を屈めて沈めると、陸上選手の如く両腕を振りながら全力疾走での接近を始めた。 (「……走り方違い、ます」) 普通は四足走行だが、この兎は二足走行である。 一旦上空に逃げ、背後に回り込む様に回避しようと飛翔するフィネ。 その細い足を兎は逃がさなかった。 伸ばした両手で足を捕らえると、強靭な力で無理矢理引きずり落とし地面に激突させたのだ。 肺に詰まった空気を一気に吐き出し、地面で弾むフィネの両足を、白兎は得意の関節技で捻じ曲げていく。 アンクルホールド。足首を梃子の原理で極め、激痛をもたらす関節技だ。 足首が砕けそうな激痛に悶えながらも、足の辺りに感じる毛皮の感触が痛みを和らげる事はなかった。 ●兎、駆逐される 一方、灰色兎の方は今にも小梢に連続パンチでも浴びせそうな様子だ。 (「羨ましい……。 違う、助けないと」) もこもこの手で持ち上げられる彼女を眺め、櫂は心の中で呟くも違うだろうと自ら突っ込む。 行動を開始すれば前後左右から揺さぶるような連続攻撃を仕掛け、ホールドする手を剥がそうと試みる。 だが、フェイントを混じりの攻撃すらこの兎は片手で弾いてしまう。 まるで何かの反射ゲームの様に、四方から襲い来る刀を払い除け、あまつさえカウンターパンチすら放って牽制する始末だ。 再び訪れた危機に、回復の余裕すら奪われながら水奈は救援の攻撃に入る。 「離れなさいっ」 圧縮した魔力が再び流星の如く落下、それに気付いた櫂は薙ぎ払いの牽制と共にバックステップで草地を滑った。 気づいた時には遅い。失敗した攻撃を囮に直撃弾をお見舞いすれば、ぐらっとよろめく身体と解ける掌。 「おかえしだー!」 距離が離れたところを逃さず、小梢が追撃を放つ。 グンと利き足で踏み込み、膂力が乗った盾での一撃は腹部を掬い上げる様にして軌道を描く。 鈍い音を響かせ、車両に撥ねられたかの様に巨躯が宙に舞い、地面を転がると起き上がる事はなかった。 「さっきのお返しだよ……!」 三度のブラックジャックを放つアンジェリカ。 今度は手負いになった兎に回避も防御も選ばせない、頭部を容赦なく直撃した黒いオーラは巨大な金槌がぶつかった様なもの。 ゴッ! 響く音はとても不吉で、直撃した茶色兎も右に左にと千鳥足で覚束ない。 あと一撃、そこを友哉の弓矢が追撃を掛けるも危機を察した身体が兎を限界まで動かす。 直撃しない様に、どうにかこうにか避け続け、精根尽きかけたところを兎子が狙う。 「これで終わりです……!」 一発に凝縮しきった魔法弾が弧を描き、茶色兎に迫っていた。 まさにマジックミサイルの名に相応しい、魔法誘導弾頭とでもいうところか。 回避する術を失い、最早ガードすることしか出来ないが満身創痍の防御など有って無いに等しい。 炸裂し、飛び散る魔力の光は冬空の花火の如く煌き、兎は錐揉み空を舞う。 地面に頭から落下した茶色兎はワンバウンドの後、大の字に地面に激突するとそのまま意識を失ったようだ。 ●兎、しぶとい 「さぁ、後は白兎さん。 貴方だけ」 間接を極められている最中、フィネは反撃の糸を再び全身から放つと兎の身体を捕縛していく。 締め合いの攻撃の様は、まるで同種の格闘技対戦の如く相手の動きを潰す戦いだ。 ギチギチと糸が絡みつき、間接技を維持できなくなったらしく、痛みが緩んだ瞬間に兎の手からするりと離脱に成功。 このまま一気にと思いきや、渾身の力で白兎は糸を両腕を広げて引き千切ったのだ。 「っ……!?」 今度は覆いかぶさる勢いで組みかかり、彼女の身体を思いっきり横へ傾けると、葡萄の蔦を思わせる動きで両手両足を絡め、首筋に掌を回す。 関節技でも有名なコブラツイストだ。背中に脇腹、腰や肩に首筋までも激痛が走り、骨が悲鳴を上げていた。 「も、もふもふだっこ!……っ……は……ぁっ!?」 更に気道も圧迫する為、呼吸を阻害する。 柔らかな毛皮に包まれながら意識が遠のく、こういう事を世間で何と言ったか? 思い出そうとしながら思い出が巡るのは果たして回想か走馬灯か? 「離して……っ!」 アンジェリカが白兎を引き剥がそうと、同じく気を練った糸を放つ。 それに素早く反応すると、フィネを投げ捨て、糸の隙間を掻い潜りながら懐にもぐりこみ、片腕を掴んで捻り上げてしまう。 更にその手を後ろにくぐらせ、間接を曲げられぬ方向に捻り上げながら首絞めも重ねてくるのだ。 開放され、意識が飛びかけていたフィネを水奈が天使の息で治癒し、フォローは欠かさない。 「羨ましいけど、はなせー!」 今度は小梢が盾を突き出し、叩きつけようとする。 しかし白兎はアンジェリカの足に自身の足を引っ掛け、後ろへすっ転ばせつつ盾を回避。 それどころか伸びた手を掴んで跳躍、無理矢理倒しながらの腕拉ぎをプレゼントとCQCばりの鮮やかなカウンターサブミッションである。 「大人しくしてよ」 捕まれない為にもと、ここは拳銃で攻撃を仕掛け、堅実に小梢から兎を引き剥がす櫂。 彼女に弾丸を当てぬ様、しっかりと狙った弾丸は肩と太腿を撃ち抜き、技が解ける。 「おかえし、です」 体力を回復したフィネが、追い打ちに左右から囲い込む様に気で練り合わせた糸で縛り上げる。 じわじわとダメージを与えていくが、毛皮の下で血管が浮き出るほどに力む兎が糸を引き千切るのは時間の問題だ。 それを見た友哉は、集中して準備をしていた未璃亜と兎子に合図を送る。 ブチブチッ! 豪快に糸が引き千切れ、反撃に移ろうとする兎へ友哉の弓矢が牽制を仕掛けるが全て弾かれてしまう。 「これで終わりです……っ!」 「これで終わりっす!」 右からは兎子の魔法弾、左からは未璃亜のバズーカ弾が同時に不意打ちを掛ける。 頭に知の回った兎に回避の余裕も与えず、二つの弾丸が兎の足元に着弾し爆ぜ、巨大な火柱を上げた。 砂と二酸化炭素の煙の中で、立ち尽くす兎。 だが、グルンと瞳が閉ざされると真っ直ぐに地面に倒れ、戦いは終わりを告げた。 ●兎、遊ばれる 「世間には、痛気持ちいいって感覚が有ると聞いた事が。 ……あれが、そうなのでしょうか?」 フィネの言葉にメンバーが一斉に違うと即答を返す。あんな痛気持ちいいあってたまるかと。 その間にアンジェリカのワイヤーで縛り上げられた兎達。 兎好きの櫂、もこもこ好きの兎子と未璃亜はぬいぐるみと化した兎3羽へと飛びついた。 「可愛い………もふ」 やっと存分に抱きしめられるとあってか、櫂の表情は緩みっぱなしである。 前線にはいたが、遊撃的な動きをしていたのもあり戦闘中は絡めなかった為疼きは大きい。 これでもかと抱きしめ、顔を埋めてはすりついてと堪能していく。 「強暴だったけど……もふもふです」 もふもこの兎と戯れられる依頼と聞いて飛びついてみれば、凶暴極まりない兎との戦いが現実。 その上、妙に強かったとあり、梃子摺ったものの戦利品といえようこの至福のひと時に、兎子の顔から笑みがこぼれる。 すりすりと頬をすり寄せ、大人しい兎のふわふわな毛皮を楽しんでいた。 「兎とは認めないけどもふもこは堪能してやるっす」 未璃亜としては、これを兎とは認められないらしい。 だが、毛皮は兎と認めなくとも変わらない。ふわふわのもこもこ、何故か外毛に当る硬い毛がない為、ファーの様な空気の如く軽い肌触りは、ある意味兎以上である。 少々ムスッとした表情だったが、予想外の柔らかさに一瞬にして微笑を浮かべると全力でふわもこを味わうのだった。 「D・ホールもなさそうだし、帰りましょうか?」 兎達が再び沸きそうなところが無いのを確かめ終えた水奈が戻る頃には、各々もこもこの毛皮を楽しみきっていたようだ。 「その前に……」 そろそろ意識が戻るはずと、アンジェリカがワイヤーを木の枝に引っ掛け、兎達をつるし上げる。 ここまで梃子摺らせた礼をしなければならない。 吊るされる衝撃もあってか、意識を取り戻した兎達は強力なワイヤーを破壊する事は叶わず、解けとジタジタ暴れていた。 「ところで、兎料理というのもあるんだよね……。 異世界の兎ってどんな味がするのかな……?」 美味しそうな物を見る目で見上げ、呟く言葉は脅し文句。 こんなのに再び来られては面倒なので、しっかりとこの世界を嫌ってもらう必要があると怖がらせようとしている。 だが。 ペッ! あろう事か、3羽揃って彼女に唾を吐き捨て、しっかりと当ててきた。 「……いい加減にしてくれかな……?」 再びオーラの塊を叩きつけ、お仕置きされる兎達。 おやすみなさい、二度と来るな。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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