● それは雪山に佇んでいた。 何故そこにあるのか。それを疑問に思うものがいないほど風景に溶け込んだその異物に近付くことを躊躇う者は少ない。 いや、そもそもそれが危険だと思う者はまずいないだろう。 「アレ……誰が作ったんだろう……」 そんな疑問を持ってそれに近付いた者はその身に降り注ぐ白い塊が何なのか理解する間もなく、その人生を終えることになった。 ●雪やこんこん 「……雪合戦とかしたことある?」 真白イヴ(nBNE000001)の問いに対するリベリスタの反応は様々だったが、元よりその答えを求めて問いかけたわけでもない。 「その雪合戦をしたがってるエリューションが見つかったの」 淡々と説明を続けるイヴによるとそのエリューションは雪山で通りすがりの人に向かって白い塊を投げつけているらしい。その塊の強度は普通の人間が頭部に食らえばほぼ間違いなく即死できるほど。 「貴方達ならこの塊の直撃も耐えられるかもしれないけど、この塊には厄介な特性があって、食らった相手の動きが鈍くなるみたい」 何故そうなるのかはよく分からないが、一発でもまともに食らえば動きが鈍くなるのは間違いない。その状態で雪まみれの地面で次の攻撃をかわすのはリベリスタであっても難しい。 「それから、この雪だるまんの周りには小さな雪だるまの姿もあるの」 おそらくは増殖性革醒現象によって覚醒した存在だろう。その力は比較すると弱くはあるが、やっぱり白い塊を投げてくる。こっちは何故か凍結させられるらしい。 「頑張って雪合戦に勝ってね」 勝ち負けの問題かどうかはともかく、頼まれたリベリスタ達は目的の山へと向かうのであった。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:草根胡丹 | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 4人 |
■シナリオ終了日時 2012年01月15日(日)21:24 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 4人■ | |||||
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●遊びか仕事か 「本当なら冬のバカンスで使うために買っておいたんですが……」 「エリューションと雪合戦ですか」 スキーウェアで防寒対策を固め、大御堂 彩花(BNE000609)と高木・京一(BNE003179)は雪山を登っていた。 「雪合戦ッスか。楽しみッスねぇ」 「雪合戦ですか……そういえば、今までに一度も経験がありませんわね」 リル・リトル・リトル(BNE001146)は胸と腰を最低限覆っただけの衣装。忙しくて使う機会に恵まれなかったスキーウェアが役に立つことに複雑な心境を抱く彩花はその話題に乗ることで態々防寒対策を調えた自分の感情の矛先を変えた。 「雪合戦したい雪だるまなんてずいぶんフレンドリーな奴らだな」 「えっ? 雪合戦がしたいんですか……望むところです! 雪合戦ならボクだって負けませんよっ!」 「雪合戦だー! わーい! あそぶ……ちゃ、ちゃんとお仕事するもん!」 呆れ顔で呟く虎 牙緑(BNE002333)に対し、そのフレンドリーな部類に入る離宮院 三郎太(BNE003381) や羽柴 壱也(BNE002639)はとても楽しみにしているらしい。始める前、現地に向かう段階ですでに笑みを浮かべている。 「寒いけど、放置する訳にもいかない……雪合戦がお望みなら、付き合ってあげるわ」 それによってエリューションが消え去る保証はないが、試す価値はある。ミュゼーヌ・三条寺(BNE000589)はそう考えていた。友である彩花と共に初めて雪合戦で遊ぶと言うそれだけでも価値はあるのだから。 「子供と一緒に楽しむこともありますが、こうして童心に帰って楽しめそうなのは良いですね」 「雪合戦ですか……ただの遊びと侮るなかれ、らしいです……」 「先日雪合戦して重傷喰らってきた所なのですが、何故私はまたこうして雪合戦に挑んでいるんでしょうね。……まあ、細かい事は気にせず楽しみましょう」 気楽な様子の京一にリンシード・フラックス(BNE002684)はいつの間に用意したのか雪合戦のルルブを片手にそう告げ、レイチェル・ガーネット(BNE002439)はちょっぴり脅しの混じったことを口にする。 「まずは戦場の準備です……壁も何も用意しなければハチの巣にしてくれ、と言ってるようなものですからね……人が死ぬレベルで飛んでくるらしいので役に立つかは謎ですがね……」 目的地についてすぐにリンシードはテキパキと陣地の作成を始めた。目的地にいたエリューションは何故か攻撃もせずにそれを見守っている。やはり雪合戦がしたかったということだろうか。 「壁を作り終わる前に当面の玉を確保しなきゃな」 「弾の用意も事前の大量に……弾切れは死に直結します」 陣地や壁の作成をする間、付喪 モノマ(BNE001658)は雪玉の作成を行う。雪だるま達のほうを見ればあちらも頑張って雪玉を作っていた。雪だるまが雪玉を作る姿はどことなくシュールに見える。何故か大きいのだけは自分の身体を膨らませて雪玉を作っていた。 「三人一組で行動するッス」 「オレは『Aチーム』になるのかね。大御堂やミュゼーヌと一緒じゃねえかな」 「チームに分かれて行うものなのですね。丁度良い機会で体験できそうです」 「リルは高木、離宮院さんと一緒ッスね」 リルや焦燥院 フツ(BNE001054)、彩花はそれぞれにチームに別れ配置につく。 「さて、準備万端整いました。頑張って勝ちましょう」 雪の混じる冷たい風の中、京一がそう告げると同時に戦いは始まった。 ●Aチームの突撃 「雪合戦とはいえども要は戦争の模倣のようなもの、敵軍の頭を狙うのは基本ですものね。親玉の雪だるまを優先して狙いましょう」 「首の中に雪が入らねえように気をつけるんだぜ」 「もう、彩花さんは仕方ないんだから……フツさん、行きましょう!」 そう告げて中央突破を狙う彩花をフォローするため、ミュゼーヌも飛び出す。しかし、それに続くはずのフツの姿はない。 「何をしているのかしら?」 「これを『式神』にする! つまり、雪だるま型式神の『雪神くん一号』だ!」 振り返って小首を傾げるミュゼーヌにフツはそう告げると生まれたての式神を使役する。 「雪神くん、パンチだ!」 命令に従い、その拳が飛んでいく。 「雪神くん、雪玉だ!」 やっぱり拳が飛んでいく。 「雪神くん、念仏だ!」 一瞬躊躇ったように見えたが、今度はその首が飛んでいく。 「オレはその後ろに隠れておく!」 残された胴体を壁代わりにフツは呆れ顔のミュゼーヌを追い抜き、そのまま敵陣を突き進んでいった。 「わたくし、敵に手心を与えるほど優しくはありませんわよ?」 彩花の斬風脚に載せた雪玉が行く手を阻む小さな雪だるまを蹴散らす。雪玉ではなくその直前に衝撃波を受けて蹴散らされているように見えるが、きっと気のせいだろう。 小さな雪だるまの雪玉は少し拳が痛いが業炎撃の炎で相殺。ちゃっかり溶けているところを見るに、強化されていようと所詮ただの雪玉らしい。 しかし、快進撃は大きな雪だるまと接するまでだった。先ほどまでと同様に拳で叩き落そうとした雪玉が大きな雪だるまのものに対しては効果を発揮しない。フツの式神もその一撃を受けて何故か溶かされ、壁としての機能を失った。その上、拳が雪玉に包まれた彩花の動きが鈍くなり、背後から小さな雪だるまの猛攻を受けて撤退を余儀なくされたのだった。 ●特攻野郎Bチーム 「早速スタートッス。ビーストハーフの反射神経見せてやるッス」 「とりあえずは数が多い小さい方から倒していきましょう」 「先輩方、今日は勉強させてもらいます!」 叫ぶが速いか、リルは真っ先に突貫し、京一と三郎太がそれに続く。左側面を狙っての速攻。結果的には中央突破をしているAチームをうまくフォローした形になる。 「人を傷つけちゃう威力はちょっと危ないッスから、ここできっちり消えてもらわないと行けないッスけど。雪合戦したいなら、存分に付き合うッスよ」 リルが前面に突出し、駆け抜けた後に続く二人が的確に雪玉をぶつけていく。 「これでも私は昔野球部に居たんですよ」 「頼もしいです、ボクも頑張ります! いきますよっ!」 その言葉が伊達ではない証拠に京一の攻撃は的確に小さな雪だるまにヒットしていた。三郎太もピンポイントで雪だるまの首を狙い落とす。首の接続を狙われた小さな雪だるまは頭が転げ落ちたが……普通に拾いに行ってまた接続している様子を見る限りでは活動自体に大きな影響はないらしい。頭と胴体が別個なだけかもしれないが。 「ちょっとずるい……でしょうか……」 色々複雑な気持ちを抱きながらも三郎太は先行する二人に続いた。 「踊り子の機動力をなめるんじゃないッスよ。避けまくってやるッス」 リルが突出して回避しながら看板を設置しては、そこに後続の二人が追いつく。 確実な手段だったがしかし、大きな雪だるまの傍に接近したときには先行したAチームは壊滅していた。 「隙を見て回収するッス」 そして、リル達は一時撤退するのであった。 ●最凶C血射武 「では、行きます……やるからには本気で……全弾避けてみます……」 リンシードは回避に専念しながら敵陣を駆け抜けていく。壁から壁へ。予想していたよりも小さな雪だるまの攻撃は激しくはない。壁は立派にその役目を果たしていた。 「当てるのは得意なんです、覚悟してくださいね?」 レイチェルは先行するリンシードに気を取られている小さな雪だるまを確実に攻撃。 「ちょっとズルですけど……そっちも同じような技を持ってるんだからおあいこって事で」 神気閃光で動きを鈍らせているのはきっとルール違反ではない。何故ならリベリスタのスキルを制限するルールはないのだから。 「オマエラのその真ん丸な腹に風穴を開けてやるぜ!」 牙緑はそれに気を取られた小さな雪だるまに向かって、少し湿らせて重くした雪玉を全力投球。 「ナイスショット、良い狙いです」 レイチェルが認めるその狙いは正確で、宣言通りに小さな雪だるまの胴体に穴が開いたが……やはり活動自体にそれほど影響はないらしい。尤も、一部のものはバランスを崩して動きが明らかに鈍くなっていたが。猛攻を前に小さな雪だるま達は色んな意味でガタガタ。猛威を振るう三人を止める術などありはしない。 しかし、最前線ではAチームがすでに撃退された後。Bチームはその撤退支援のために攻撃をやめている。 「後方支援、任せましたよ……」 この状況で勝利をもぎ取るには一人で敵のボスを仕留める他はない。リンシードはそう言って大きな雪だるまに向かって突貫する。 「てやー……」 雪の中、消えていく儚い声。手持ちの玉をいくつも相手にぶつけ、敵の雪玉を回避しながら最終的に巨大な雪玉をぶち当て……フィニッシュ。 ●夢から冷めて 「と、できたらいいですね……」 正面から挑んで敗走したリンシードは黒いゴスロリ服を真っ白に染め、遠い目で呟いた。 「みんな雪塗れになっちゃいましたねー……」 レイチェルが言うように全身雪塗れ。先ほどは最終的に脳内妄想と同じことを相手側にやられたのだが。 「基本的には雪合戦で勝負をつけたい! 新しい雪を補給だ! まあ、雪の補給すんのオレだけどな」 フツは先ほどやられた式神に雪を補給して再生させている。 「ちゃんと、木炭で目鼻口を用意してやろう。マフラーも巻いて……」 余計な部分に凝ったので再生にかける時間のほうが作成時よりも無駄に長かったが。 「雪がゴンゴン! 形容詞的にダウトなのゲソ!」 ばんばんと雪で作られたテーブルを叩き、外外村 にぬね(BNE001925)は抗議する。 「本気の雪合戦を思いっきり味わっていきたいですね」 レイチェルも燃えていた。冷え切った身体に沸き立つ重いは雪山の寒さなど吹き飛ばしている。 「まず小さい雪だるまから片付けていきます」 リンシードは先ほど撤退時に攻撃を受けた経験からそう提案した。目標は大きな雪だるま……その頭に突き刺さっている旗を奪うことなのだが、小さな雪だるまの支援が思っていたよりも邪魔になる。 「食った感じはカキ氷っぽい気がするけどな。腹壊すからやめとけよ」 先ほど姿が見えないと思ったら小さな雪だるまを食べていたらしい。味自体はまずくはなかったようだが、高さ50センチもある雪の塊を食べれば、腹も冷えると言うものである。 「石詰めて雪球作ったり、思いっきり握って硬度を上げた雪球も作ったりするぜ!」 前線に出られる状態ではないが、玉作りは可能らしい。お腹も冷えただけなので時間がたてば治るだろう。 「先輩っ! おにぎりみたいですね……おいしそうです」 確かに石を入れた雪玉は作ってる作業を見るだけであればおにぎりっぽい。威力はそんなほのぼのしたものではないが。 そんなこんなで準備を整えた一同は第二回戦を開始するのであった。 ●集団持久戦闘 「まさに生きるか死ぬかの射撃戦。にぬねさんの必殺投法を喰らうでゲソーッ」 「ボクだって負けませんっ! えいっ!」 にぬねに負けじと三郎太も雪玉を投げる。 「補給班でーす!」 壱也は通常の雪玉を、モノマは凶悪な雪玉をそれぞれに配って回る。 先ほどの戦闘は速攻だったので補給する暇がなかったが、今度は逆に大忙しである。 リベリスタの勝利。それを見届けた小さな雪だるま達は雪景色の中に解けて消えていく。満足したのか、それとも石入りやら氷の塊に等しい雪玉を何発も受けて力尽きたのかは分からないが。 そして、残された大きな雪だるまの旗を掲げていたバケツ帽子の下には……何故かみかんが鎮座していた。 ●最期は力尽くで 「つーか、デカイ方のエリューションって、雪じゃなくて餅だろ!」 フツのずばりな眼力にエリューションが後ずさった。言葉が通じたのか、それとも単純に帽子を取られて体勢を立て直したのかは分からないが、正体がばれて狼狽しているようにも見える。 「そうそう、忘れていけませんでした。皆様新年あけましておめでとうございます」 そんな中、彩花は鏡餅を見て思い出したのか新年の挨拶。三郎太も深々と頭を下げてそれに応じていた。 実際、大きな雪だるまは寸胴。帽子の下から出たみかんを見るまでもなく鏡餅のような姿であった。周りに普通の雪だるまがいなければ、最初から正確に把握していたかもしれない。 「そりゃあ動きも遅くなるってもんだ」 そして、動き回ったフツ達のお腹も余計に減ると言うものである。 雪合戦から通常のエリューション退治へと転じた戦いの行方は……リベリスタ12人によるフルボッコで終わった。 ●全てが終わって始まる戦い 「えっ!? リルさんって男の子だったんですかっ!?」 三郎太のそんな驚きの声が響く山の中。 リベリスタ達は餅を食べていた。 「みなさん、お疲れ様でした……暖かい、お茶とか……持ってきてますよ……」 「……結局、雪合戦ってどういう物だったんでしょう?」 リンシードに差し出されたお茶を受け取り、温かく柔らかい元エリューションのお餅を食べながら、彩花は首を傾げる。公式ルールブックを差し出されたが、それを見るまでもなく分かることが一つだけあった。 「まあ……少なくとも今回のがまともな雪合戦ではなかった事は解りますわ」 何しろ雪玉ではなく餅が飛んできていたのだから。 「壱也と一緒に全力で雪だるま作るぜ」 「えへへ、かわいいくできるかな」 モノマは壱也と一緒に雪だるまを作り始める。先ほどまで見続けていた影響か、その大きさがエリューションと同じくらいになってしまったが、今度は動き出すようなことはない。一面の雪景色の中、そんなものを見れば、先ほどまでの戦いも懐かしく思えてくるもので……。 「せっかくなので今度は普通に雪合戦、どうですか?」 「せっかくこんなに人が集まってんだからよ。やらねえのは損だろ!」 三郎太の提案をフツは二つ返事で了承する。 そして、リベリスタ達は雪合戦を飽きるまで堪能するのであった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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