●さいごのふうけい
観覧車が、夕暮れに回る。
夕焼けに巡る。
非現実と現実の境目でいつまでもいつまでも。
人の心を捕らえて離さず。
いつまでも。
●幻想の果てで
「遊園地を回る際、大抵最後に辿り着くのは観覧車かメリーゴーランドだと思います。といっても、僕は余り行ったことがないのですが」
観覧車の模型を手元に置き、『無貌の予見士』月ヶ瀬 夜倉(nBNE000201)はそんな話を切り出した。模型はごく一般的な、いささか小規模な観覧車。丁度八室構造で、集められたリベリスタが一人一室乗る程度にはなるだろうか。
「フェーズ1E・ゴーレム『ホイール・オブ・パスト』。八室構造の観覧車で、現在は能動的な破壊行動の類には出ません。しかしながら、これに乗り込んだ人間に、その人間の『最悪の記憶』を見せ、精神に不調をきたすことができる……そんな、成長後を考えたくない能力を持つ手合いです。更に厄介なことに、こいつは外部からの攻撃が効果がない。壊すとすれば、各室を内側から壊すしか方法がない、と思われます」
「……トラウマを見てこいってことか?」
夜倉の説明に、うんざりしたようにリベリスタが問う。返す夜倉の返答は、大仰な頷き。
「こと革醒者に対しては、『革醒した日の記憶』になると思います。どちらにせよ良い記憶ではないでしょうが……君達が、そんなもので足踏みするとは想ってません。僕は、君達を信じていますから」
相変わらずといえば相変わらずの表情で、リベリスタ達は過去との邂逅を強制される。
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