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Attraction at last

●さいごのふうけい
 観覧車が、夕暮れに回る。
 夕焼けに巡る。
 非現実と現実の境目でいつまでもいつまでも。
 人の心を捕らえて離さず。
 いつまでも。

●幻想の果てで
「遊園地を回る際、大抵最後に辿り着くのは観覧車かメリーゴーランドだと思います。といっても、僕は余り行ったことがないのですが」
 観覧車の模型を手元に置き、『無貌の予見士』月ヶ瀬 夜倉(nBNE000201)はそんな話を切り出した。模型はごく一般的な、いささか小規模な観覧車。丁度八室構造で、集められたリベリスタが一人一室乗る程度にはなるだろうか。

「フェーズ1E・ゴーレム『ホイール・オブ・パスト』。八室構造の観覧車で、現在は能動的な破壊行動の類には出ません。しかしながら、これに乗り込んだ人間に、その人間の『最悪の記憶』を見せ、精神に不調をきたすことができる……そんな、成長後を考えたくない能力を持つ手合いです。更に厄介なことに、こいつは外部からの攻撃が効果がない。壊すとすれば、各室を内側から壊すしか方法がない、と思われます」
「……トラウマを見てこいってことか?」
 夜倉の説明に、うんざりしたようにリベリスタが問う。返す夜倉の返答は、大仰な頷き。
「こと革醒者に対しては、『革醒した日の記憶』になると思います。どちらにせよ良い記憶ではないでしょうが……君達が、そんなもので足踏みするとは想ってません。僕は、君達を信じていますから」
 相変わらずといえば相変わらずの表情で、リベリスタ達は過去との邂逅を強制される。



■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:風見鶏  
■難易度:EASY ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2011年12月20日(火)22:47
 敵は常に自分自身、そんなシナリオ。
 味方もなく敵もなく策もなく、自分自身を信じて下さい。

●E・ゴーレム『ホイール・オブ・パスト』
 八室構造の観覧車型E・ゴーレム。自律行動、攻撃は一切行わないが、破壊するためには八室の半数以上を内部から破界する必要がある。
 一室、定員一名。乗り込んだ人間の最悪の記憶(革醒者に対しては革醒のきっかけなど)を再生する。
 戦闘間、常に「混乱」または「魅了」を被るが、エネミーからの能動的攻撃はない。ダメージソースはほぼ自傷行為。
 各室の間でスキル干渉は不可能。内部の人間の行動のみで破壊の成否が決定する。

●注意点
「感情無効」「呪い無効」があれば殆ど無傷勝利は可能ですが、描写がほぼなくなります。
 作戦も連携もほぼ意味を成さないシナリオです。行動様式、自身の過去の描写が成否の全てを分けます。
 勝ち負けを楽しむのではなく、「如何に過去を吹っ切るか」を重視したシナリオとなります。
 自分語り、大歓迎です。描写が増えるよ、やったね! ぐらいに考えて下さい。

 それでは、割りきっていきましょう。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
ナイトクリーク
アリシア・ガーランド(BNE000595)
クロスイージス
中村 夢乃(BNE001189)
ナイトクリーク
シルキィ・スチーマー(BNE001706)
デュランダル
降魔 刃紅郎(BNE002093)
クリミナルスタア
関 狄龍(BNE002760)
スターサジタリー
★MVP
ブレス・ダブルクロス(BNE003169)
ナイトクリーク
荒苦那・まお(BNE003202)
スターサジタリー
黒須 櫂(BNE003252)

●一葉の写真の如く
 次々と乗り込んでいくリベリスタ達を目で追いながら、『ドラム缶偽お嬢』中村 夢乃(BNE001189)の表情は明るいものではなかった。先ほどまで笑いあった仲間。終わってからもきっと笑い合える仲間。彼らと自分とでは根本的に――この依頼の本質が違うのではないかと、思っている。
 自己回復の術を都合七人分起動させ、次は自分か、と見上げる観覧車はとても小さくて。
 自分を待ち受ける運命も余りにも矮小で。
 果たして、それが正しいのかと自問自答するほどに。

 *
『Steam dynamo Ⅸ』シルキィ・スチーマー(BNE001706)の記憶の再生は、どこまでも広がる金色の平原だった。麦畑。海の向こうの国では日常的な場所だったはずだ。殆どの記憶を喪った彼女であっても、その風景に触れることで湧き上がる憧憬があったはずだ。
 平原の向こう側、農耕機から手を振るその人物を視界に収め、不意に始まる動悸だってあったはずだ。こみ上げる温かい感情もあったはずだ。
「素敵な敵じゃないかい……こんな過去があったなんて、教えてくれるんだから」
 無造作に、喇叭銃を四方へ向けて撃ち放つ。弾丸は金属、破壊は圧倒。常の彼女らしい、無造作で無作法な一撃だ。
 
 秋の夜が更けていく。寒くなった空気に身を縮こまらせながら、焚き火の温かさに二人で寄り添う、風景。視界が潤むのも、ただ唇が触れ合ったからだけ、ではなくこれはきっと――

 暗転。


 *
(まおは、革醒した時のことをはっきりと覚えていません)
 見世物小屋の風景。真の過去の前風景とでも言わんばかりに、『もそもそ』荒苦那・まお(BNE003202)はその風景を省みて、無言のまま鋼糸を叩きつけた。過去、そう、過去だ。
 彼女にも、革醒の記憶はない。正確には、それが物心付く前の出来事だったから、というのが実際だ。だから、見世物小屋の風景の後に、本当の過去が来るのだろうと気付いている。何かあった、『何か』『会った』――。
(わからないことが、怖い)
 だから望む。その原初を覗くことを誰より望む。
 天井が、逃げ水のように遠くへと去っていく。日本家屋の天井が、観覧車に具現する。
 現れるシルエット。
 自らの時計が逆転し、知らず赤子になったような錯覚をまおは覚え――

 暗転。

 *
 世界は優しくなんて無い。
 ごくありきたりな崩界に巻き込まれ、ありきたりな人生の終わりに直面し、しかし床に満ち満ちた自分の誰かの何かの血を口にしたことで、『ロンサムブラッド』アリシア・ガーランド(BNE000595)は革醒した。
(ぼく一人が生き延びるために、両親を見殺しにしてしまったんじゃないか)
 だから彼女は苦悩する。人としての運命を歪曲し、吸血鬼となった自分に対しての苛立ちと、自分一人が勝ち取った運命の代償が、家族だったのではないのかと。
(ぼくが力の使い方を知っていれば、両親を、友人を、街のみんなをひとりでも救えたんじゃないか)
 運命を削り、神へ捧げる正真正銘の奇跡の具現。その存在を知ったればこそ、それに縋るだけの猶予はあったのではないかと夢想する。救いなんてどこにもないけれど、あの日なんて帰ってこないけれど、そんな夢想を、当たり前のように彼女は口にする。
 だからこそ脆く。
 だからこそ付け入られる。

 暗転。

 *
「『あの時』は参ったぜ!」
 まるでちょっと其処に行って戻ってきたような口調で、『錆天大聖』関 狄龍(BNE002760)は観覧車の中心で語りだす。それがまるで笑い話であるかのように。
「俺ぁ香港生まれなンだがよ。お国にゃ『人豚』って拷問があるンだ。こわぁいこわぁい『おはなし』に出て来る様な類のヤツ」
 古い文献に残っている、拷問。とある数奇な運命を辿った女性が成れの果て、日本の『達磨』より尚恐るべき廃人とする拷問。
 問われれば耳を塞ぎ、口にすれば吐瀉を催す、そんな極減の悪意の刑。彼が、その片鱗に触れたと言った。
「祖父様が死んで、どんどん落ちぶれて、それでも護りたい『アイツ』が居たから無茶してよ」
 子供だったから? 違う。
 好き勝手やっていたから? 違う。
 きっと、『面子』というやつを盛大に踏みにじったからだろう。どの国でも、任侠でのそれは生死を分けるファクターだ。

「あっれ、マジで見えなくなってきた。ひゃは。なんだこれ――」

 暗転。

 *
 記憶と言うよりは、記録。
『百獣百魔の王』降魔 刃紅郎(BNE002093)の運命に狂いを生じさせたのは、とあるアーティファクトのせいだった。
 否、もとより狂っていた運命に致命的な――或いは革命的な出来事を起こしたのは、ナイトメア・ダウンの狂乱と、彼の記憶に眠る少女にまつわる出来事だったのだろう。決して褒められぬ解決方法。力だけを以て守るべき者の為にただ無慈悲に命を刈り取るという傲慢。リベリスタ達による捕縛……その時の彼を褒めるものなど居ないだろう。糾弾するものも居ないだろう。彼の行動をして過ちと呼べる人間など、居よう筈もない。

 響く、オルゴールの音色。遠く遠くの街の風景をその世界に映し出し。
 刃紅郎の姿は、現在の悠然たるそれではなく。
 そしてその傍らには――失ったはずの少女、が、

 暗転。


『さすらいの遊び人』ブレス・ダブルクロス(BNE003169)には、革醒の記憶が無い。革醒した記憶が眠っている、というわけではあるまい。当たり前のように革醒し、当たり前のようにフェイトを得た。そんな人間が居ることに不思議はない。矛盾はない。

 故に彼は今、嘗ての戦場の中にいる。

 戦争という極限状態で、人の感覚は磨耗する。たとえ長く知己にあった友人であっても、その軍服が先に目に付くのは仕方ない事かもしれない。磨耗した精神が引き金に力を込めた、なんて当たり前によくある話。
 フレンドリー・ファイア――本当に『フレンド』を撃ち殺すだなんて、笑えない。
 だが、本当に笑えないのはその後だ。図ったかのように始まった全面闘争。
 覚悟を決め、ただ敵を殺すためにと駆け抜けたブレスが晒された火線は、味方からの――

 暗転。


「夕焼けって嫌い」
 斜陽を受け入れ始めた観覧車の中で、『十字架の弾丸』黒須 櫂(BNE003252)は誰に言うでもなく呟いた。否、誰に言うとなれば、自分自身に言い聞かせようとしていたのだろう。

 彼女の革醒の記憶は、タイミングは、曖昧なものだ。大切な母を喪った、それが革醒のキーだったのか。
 革醒したことで、喪ったのか。
 果たして、母に返した自身の笑みを、彼女は受け取って消えたのか――と。
 だから、淡い期待があった。
 だから、目を覆うような痛切な覚悟があった。
 だからこそ、その過去の連続投影は彼女にとって痛々しいまでに現実だった。喪失という現実だった。
 笑い返した。
 瞬間、施設の風景が投影される。
 嗚呼、その幻影はやはり無残に。

 暗転。

 *
(ああ、中学校でしたっけ……もう思い出すことはないと思ってた……)
 夢乃の眼前に、記憶の欠片が流れ始める。革醒、それ自体はごくさりげなく、彼女の足が機械へと変わったことがきっかけだった、のだろう。
 両親は直後、事故で死んだ。
 事故とは? 乗っていた車が暴れたからだ。
 何故? 夢乃が、ノーフェイスだったからだ。
 そして、どうなった?

(あたしひとりだけが無事で、何が起きたのかわからないまま、泣きながら学校に行って……)
 あはは、と壊れたゼンマイ駆動のようにゆっくりと、その両手にダブルシールドを具現する。動じてはいない。抗う術があるのだから。
「……だから、消えなさい!」
 力のままに、先ず、一撃――。

●一節の詩の如く
 燃えていく。
 麦が、農耕機が、日常が、想いが、炎に満ち満ちて燃えていく。消えて行く。揺らぐように立つ巨体と、蒸気と、その中で叫ぶ『   』。
 炎をかき分け悪意が迫る。それが何かなど分からぬうちに、それが神秘の仕手だったのか、それとも只の兵士だったのかなど分からぬままに、組み伏せられる。意識が落ちる。
 蹂躙され、魂が、肉体が、世界が記憶が想いが全てが陵辱される。人に? 否、機械に。
 蒸気を上げる。熱が満ちる。スパークが迸る。過去にか、今にか。
「……ぁ。ぁぁ、ぁ、ぁああああああああアアアッ!」
 衝動的に掲げられる喇叭銃。狙いは自身、狙うは頭。
 思い出した、だから何だ。
 喪ったものはそれで全てだ。取り戻せない不退転。その向こうに立つ『   』に向け、自らも往くと告げ、引き金に指をかける。炸裂音が、高く響く。


『何か』がまおをじっと見ている。
 何であるかはわからない。ただ、じっと見ている。見られている。不出来な影絵のように、つぎつぎと形を変えてはじっと見ている。見られている。
「まおは化物だと、団長は言いました。だから普通のことをするなと何時も叩かれました。
 だけど最近は、まおは人間だと言われます。だから人間みたいにしなさい、と」
 倒れ伏した姿勢のまま、まおは『何か』にそう告げる。鋼糸が付けた己の傷が、生々しくも再生を繰り返す。自動回復の加護は消えず、しかし彼女の牙が持つジレンマもまた、消えず。
 分からない。その姿見をして人間と言ってくれる人の善意も。自らという境界を何と呼ぶかも、まだ、理解しきれない。
『何か』がまおをそうしたのか。そうさせたのか。
 くるくると姿を変える。姿に酔う。
「どうして何でなぜなぜ思い出せませんだから姿をかえないでうわああああああああああ」
 叫びが、満ちる。
 空腹が、満ちる。

 何度も何度も何度も何度も炎が影が夜が闇が悪意が世界が、アリシアの過去を世界を家族を故郷を蹂躙する。
 嘆きが、謝罪が、叫びが彼女の喉を鳴らし、枯らし、自傷が事象を支配する。
 救わせてくれと。運命を歪めさせてくれと。戻らせてくれと血を流す。血溜まりに伏す。
 幸せな日々を取り戻せるなら、運命全てベットしたって構わない。だからどうか、ぼくに。
 煌くナイフの向こう側。声が、聞こえた。

「馬鹿やってた時にゃ見向きもしなかった警察なんぞに助けられっちまって。あ、だから今はリベリスタなンだけどな! ウケる!」
 まるで『あの時』を再現したような惨状、血まみれの幻想の底で狄龍は一人ごちる。
 狭まった視界の中に、腕もなく足もなくその片目すら見当たらぬ。
 焦点が定まらず、距離感に狂い、それでも『アイツ』は見間違えなんてしない。
 でも、その隣はもう『誰か』の居場所になってしまった。もう戻れない、その位置を。
 夢見ることすら許されぬ過去を。
「うへへへ……愛って減っちまうンだなあァ……」
 諦めが満ちる。いらだちが募る。苦鳴に混じり、自らの咆哮が迸り

 オルゴール――『狂騒組曲』を手にした道化師が、少年と少女を追いかける。少女を指さし、狂乱を差し向ける彼から少女を隠した少年は、紫水晶の大剣を抜いて挑みかかる。
 老若男女、ともすれば少女の家族だって切伏せた。切り捨てた。大切なのはただ一人、救うためには道ひとつ。怒りと義務が精錬した一撃は、道化師の心臓を貫いていく。
 傷だらけの少年は、しかし眼前の少女の変貌に狼狽することしか出来なかった。
 救う術も運命の導きも自分の甘ささえも知らなかった。彼は帝王学を識る『資格者』である以前に、世界から当たり前のように嫌われる程度の『未熟児』だったのだ。

『この後彼女は…現場に到着したリベリスタに殺される。彼女は……革醒した僕を受け入れて……信じてくれた』
 幻影の奥から、リベリスタの影が現れる。少しずつ、少しずつ近づいてくるそれらが何をしようかなんて言うまでもなく、少女の異形化はとどまらず。
『それなのに……今の僕には出来ない……彼女の願いを叶えられない……助けて……助けてよ【王様】!!』
 未熟児が吠え、世界が朽ちていく。壊れていく。

「――任された」
 咆哮が世界を揺らす。

 こんな戦場、狂ってやがる!
 ブレスの視界に広がる戦火は、明らかに常軌を逸していた。
 敵も味方も敵も。エネミーだろうがフレンドだろうが好き勝手に打ち抜いてる。殺してる。
 それが戦場の狂乱ならいい。パニックなら分かる。狂っているなら大歓迎だ。だが、違う。正常なまま殺してる。当然の様に同士討ちを始めてる。
 そんな戦場で、ブレスは撃った。敵も味方も。そうしなければ死んでしまう。振り払わなければという焦燥感が彼を襲い、彼を討つ。
 何でこんなことに? 
 振り払えず、解けない紐のごとくに彼に絡む運命。
 諦めず、銃を構える。何度も何度も何度も何度も。

 櫂の視界を、夕焼けが覆う。何時もと同じ場所、母親、消える瞬間、最後の笑顔。
 銃創と刀傷が絶えず、真っ赤に染まる夕焼けとその姿は見分けが殆どついてない。
 夕焼けの中に溶けて消えれば、夢と共に歩めれば、もう夢なんてみないのかしらと。

「……私、もうすぐ十五歳になるの。誕生日よ」
 静かに、告げる。


「クラスの皆が、あたしの周りから徐々におかしくなったことも! みんな、みんなおかしくなって、理性もなくして! 全部自分が元凶だったことくらい、もう知ってるの!」
 絶叫。みっともなく叫ぶ顔を隠すように、大仰な盾で顔を姿を心を隠し、次の一撃へ魂を注ぎ込む。異形となって首を絞める恋、運命を従えない自分が生んだ多くの犠牲。そんなものは言われるまでもない。幻影が死を招く。しかし、夢乃の前では児戯が如く。

「あたしは、心の守り方を覚えてしまったから……」
 全力で振り下ろされた一撃が、夕景に映えて観覧車を突き破る。

「重工の仲間やあたい基地の奴ら、みんなの姿が、今のあたいの記憶なんでね」
 喇叭銃が吹き飛ばしたのは、頭を逸れた外壁だった。運命に従って立ち上がるシルキィは、たった一つの爆弾を創りだす。
 炸裂する、決別の一撃。

「ご飯を食べるために貴方を壊します。動いてご飯を食べて動き続けたら、わからないことも
きっとわかるかもしれませんから」
 何かを成す為に。胃を満たせば、きっと動けるから、切り拓けるから――だから、その一撃が過去を吹き飛ばす。

“泣いたって謝ったっていい。前に進むんだ”
 その声が、アリシアを突き動かす。前に進みたいから、進むしか無いから、進めばきっと道があるから。
 情けなくても、その刃と言葉と後悔に誓う。逃げないと、立ち向かうと、きっと倒すと。

「革醒したから腕が生えたンだ! はっはは、コイツはいいぜ!」
 感覚が、怒りが、その体に満ちて戻る。『今』の姿へ巻き戻る。
「そうさ、だから今が最高なンだよ! 誰でも無ェこの俺が、断言してやる! 『今が最高』なンだよ!
 イピカイェだくそったれが、くたばりやがれェ!」
 殴り、殴り、撃ち、穿つ。狄龍の暴走したかの如き連続攻撃が、破壊していく。過去を。

「――そして……さらばだ」
 過去を塗り替える。あの日の少年が殺してやれなかった少女を、運命を切り拓いた『王』が殺す。
 偽りなんて其処にはない。『王』の通る道に偽りだなんてあるわけない。だから、紫水晶が煌めいて、空間すらも切伏せた。斜陽が、飛び込む。

「何度も何度も振り払ってんのに、何でまだ見えるんだよ!」
 そう、何度も。
 ブレスの刃が食い破って食いちぎって、それでも過去は亡くならない。それが過去であるかぎり、未来に改変されはしない。だからいつまでも、彼を苛む――

「……産んでくれて有難う、ママ」
 一人で生きていけるって思ってた。でも違う。仲間が居る。恋もある。きっと彼女は、その一言を母親に伝えたくて。
 遠く、銃声が響く――

●昨日にさよなら
「悪い夢、だったんですよ」
 両断された観覧車の中で、夢乃はブレスにそう告げた。
 打ち破れなかった。それは、彼の言葉だろう。だが現実はどうだ。そのほとんどを損壊させ、最後の一足へ踏み込みかけた彼の健闘を、全くの無駄と笑う者がこの場にひとりでも居るだろうか。
 最悪に勝てなかったのではなく、最悪を望んだだけだ。

「まあ、いいんじゃねえ? 俺達ャ勝ったんだ! 祝勝会しようぜ祝勝会! 王様ゲームの続きとか!」
「王様わーれだ。全員で五番を無礼討ち」
「また俺なのかよぉぉぉぉォ!?」

 笑い声が、夕景に響く。
 刃紅郞の耳元に戦ぐ風が、唯一言を響かせた。

「えっ? 王様……?
ううん、笑わない……笑ったりなんかしない
だから……もしも夢が叶ったら」

――私をお后様にしてくれる?

■シナリオ結果■
大成功
■あとがき■
 精神無効・呪い無効があったら描写しないといったな? あれは(結果的に)嘘だ。
 
 という訳で、皆さんの過去をいただきました。如何だったでしょうか。
 っていうか相談。すげぇ見てて楽しかったです。何度prscったか。
 皆さんの決意も決別も聞き届けました。抗うってステキだね。
 
 ここまで熱いプレイング、熱烈な決別が大成功でなくて何としましょう。
 MVPは、敢えて自らの弱さを晒すという、普通なら絶対できないであろうプレイングに吶喊した貴方に。
 決して、弱い人などいないのです。少なくともこの依頼の参加者には。