後宮シンヤの率いる一派による『賢者の石』獲得作戦はアークの活躍によりその予定を大きく損なわれる事となった。しかし、当然と言うべきか彼等の勢力の全てを食い止める事は難しく、『賢者の石』の一部は彼等の手に落ちた。特異点と『賢者の石』の絶大な魔力はバロックナイツをしても容易くは無い究極のオープンゲートを可能にするのだ。 バロックナイツ及び後宮シンヤの目的はこの世界に閉じない大穴を開ける事。塔の魔女・アシュレイの予見していた運命の訪れはすぐ傍まで来ていた。 敵が陣地を構えているのは神奈川県横浜市にある三ツ池公園という大きな公園だ。既にジャック側の戦力が配置されている。これに先手を打つのは不可能だ。 当然、今までの戦いを経た後宮派の精鋭達に加え、バロックナイトに賛同するフィクサード達、アシュレイの力で作り出されたエリューション等が防衛線を張っている。後宮派の戦意は高い。彼等の忠誠はジャックとシンヤに向いているのだ。 付近の住民を避難させ、封鎖の態勢は整えたが状況上、迎え撃つバロックナイツ勢力を撃破し、儀式を行なうジャックの待つ中心部に進まなければならない。 ジャックの暗殺を持ちかけてきたアシュレイの情報を信じるならば、『賢者の石』を予定通り確保出来なかったジャックは儀式に集中を余儀なくされる為、一時的に弱体化するらしい。一度大規模儀式が始まってしまえばジャックはそれを中断する事は不可能だ。彼を撃破し、儀式を中断させるのがアークとしての最善だが、アシュレイは『儀式が制御者を失っても成立する』まではアークの味方をする心算は無い。園内中央部に『無限回廊』なる特殊な陣地を設置する彼女の守りは完璧だ。 アークはこれを突破する為に総力戦を強いられる。正門周辺は事実上封鎖されており、そこからの突破は敵戦力の厚さを考えれば得策ではない。 そこに、部外から蝮原率いる部隊が協力を申し出た。裏の世界に名前の売れている彼等はセバスチャン等、アークの戦力と合わせて南門からの陽動に使う事にした。 年の瀬も近いこの季節。神奈川県・三ツ池公園ではアークと後宮派の一大決戦が行われようとしている。 赤い月の下、勝利の女神はどちらに微笑むのか!? ●強襲バロック・北口 『運命オペレーター』天原和泉(nBNE000024)はブリーフィングルームで、緊張した顔をしてリベリスタ達を待っていた。その姿に、リベリスタもまたこれから起こる事件への覚悟を決める。 「皆さん、お集まりいただきありがとうございます。本日は極めて重要な任務……以前から話題に上がっている、崩界加速、そしてバロックナイツや後宮シンヤに関する件です」 ざわっ 集まった一堂はどよめく。中にはやはりという顔をしているものもいるが。 和泉の説明によると、『賢者の石』の一部を利用して機能強化された万華鏡の感知でバロックナイツの目的看破に至ったらしい。彼らの目的はこの世界に閉じない大穴を作ること。最近発生していた崩界の加速は、これから生まれる『特異点』の前兆だったのだ。 「そのための儀式が、神奈川県横浜市の三ツ池公園で行われています。もちろん、後宮派にとって重要な作戦である以上、私達も総力戦で挑む必要があります。蝮原の部隊も協力を約束してくれています」 『塔の魔女』アシュレイも妙な動きを見せている。彼女の目的は後宮シンヤやジャックと共有されているわけでは無いのだ。不安要素は少なくないが、それでも無視するわけには行かない。 和泉がプロジェクターを切り替えると、そこには三ツ池公園の姿が映し出される。神奈川県にある都市公園だ。こんな状況でなければ、のんびり遊びに行けるのだろう。軟式野球場の姿が見えた時、彼女の表情が一瞬陰る。 「皆さんは北門から侵入していただきます。そして、中央部を目指すわけですが、その途中で軟式野球場にいる防衛部隊と戦っていただきます」 北門から入ってきた侵入者がいれば迎撃に来るだろうし、中央の戦いが熾烈になれば増援に向かおうというもの。であれば、可能なら先に叩いてしまう方が良い。戦う相手は何者なのか聞くと、和泉は躊躇いがちにプロジェクターを操作する。 「そして……彼らがここにいるフィクサードです」 プロジェクターが切り替わると、そこにいるのは野球のユニフォームに身を包んだ11人の男女。厳密には女は1人だけだが。どこからどう見ても、町内に1つはある草野球のチームにしか見えない。 リベリスタの1人が思わずずっこけそうになりながら、これは間違いでは無いのか質問する。すると、和泉はどこか諦めたような雰囲気で間違いでは無いことを伝える。 「彼らは紛れも無く、フィクサードです。実際、過去にアーティファクトを強奪した他、アークとの交戦経験もあります。それなりに実力のあるフィクサードです」 さっきまでの緊迫した空気はどこへやら。緩んだ空気の中で和泉は説明を続ける。 「ちなみに、趣味で草野球のチームをやっているそうです。チーム名は後宮フィクサード」 えらく不遜な名前を付けたものである。それを許された辺り、案外と信頼されているのかも知れない。 「個々の能力に関しては、配布した資料を参照していただきますが、それぞれに違ったジョブを使用しています。現在、アークで把握している11のジョブですね」 資料を見ると彼らのポジションも書かれている。一応、作戦時にはこれをコードネームとして使っているとか何とか。 「個々の実力に関しては、皆さんと同等か、少し劣る程度だと思われます。ですが、趣味も共有して、様々な戦いを潜り抜けたメンバーです。チームワークに優れ、総合力で同等の相手でしょう」 『様々な戦い』がアークとの戦いのみを意味しない所に問題を感じないでは無いが、強敵であることには違いない。また、野球場という広い戦場は、お互い制限が少ないために有効に活用したい所だ。 「説明は以上になります。油断していい相手ではありません。どうか気をつけて行って来てください」 和泉は表情を引き締めると、リベリスタ達を送り出した。 ●後宮フィクサード・試合前の光景 「おー、寒い寒い。何のかんので夜は冷えるねぇ」 三ツ池公園の軟式野球場でユニフォームに身を包んだ男は、手に息を当てて仲間のほうに駆け寄る。余りにも違和感の無い姿だが、彼らがこれから行うのは野球の試合では無い。 「キャプテン、これを飲んで暖まって下さい。豚汁作ってきたんです」 「サンキュー、マネージャー」 ポニーテールの女の子から、豚汁の入った紙コップを受け取ると、冷ましながら口にする。冷えた体に心地良い暖かさだ。 「これから大仕事じゃぞ。気合で寒さなどカバーするのじゃ! っと、ワシにも豚汁もらえるかの?」 「おいおい、監督。人のこと言えないよ」 別の男が、笑い声を上げる。つられてみんなも笑い出す。彼らにとってはいつもの他愛無いやり取りだ。 その時、監督と呼ばれた老人の眉がぴくっと動く。彼の様子を見て、メンバーは一斉に緊張する。 「どうやら、アークが来たようじゃな」 「あぁ。ただ、今回は負けるわけにはいかない一大作戦だ。よし、みんな集まれ」 キャプテンの言葉に、みんなが集まり円陣を組む。 「みんな、相手は強敵だが、俺達だってこの日のために練習してきたのだ。全力で行くぞ!」 「「「おう!!!」」」 全員の声が唱和する。 「俺達、後宮フィクサードは、どこにも負けないぞ!」 「「「おう!!!」」」 その声は、赤い月が照らす野球場に響き渡る。間も無く決戦が始まる。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:KSK | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年12月21日(水)23:55 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●試合開始 赤い月が照らす野球場。リベリスタ達は円陣を組んでいた。野球をするためではない。これから行われるのは、世界結界に穴を穿とうとするもの達と、それを防ごうとするもの達の戦いだ。 リベリスタ達が円陣を組みたいと申し出たところ、相手はあっさりと受け入れた。それだけに、毒気を抜かれたような気分になっている。 「何で奴等、シンヤに力貸してるんだろうな。アザーバイド相手に野球の普及か?」 当然の疑問を口にしたのは、『侠気の盾』祭・義弘(BNE000763)だ。場所が野球場で、相手も草野球のユニフォームを着ているために、本当にこれから行うのが戦闘なのか疑わしくなってくる。 「前に戦った連中といい、こいつらといい……シンヤは本当に悪なのか?」 「うん、本当。シンヤのシュミってなんなんだろ?」 以前、後宮派に属するフィクサードと戦った経験がある、『虚実の車輪』シルフィア・イアリティッケ・カレード(BNE001082)と『ビタースイート ビースト』五十嵐・真独楽(BNE000967)の2人も戸惑いを隠せない。2人が戦ったのはそれぞれ、シンヤに命を救われた子供達と善悪に興味を持たずに力を振るう男達。それに続いて、日常の趣味を大事にする者達だ。たしかに、疑問が沸くのも致し方ない。 「うっし。それじゃぁ始めるぜェ。最高の試合といこうかァ」 「気合入れるためにもいっちょやるかぁ!」 『爆砕豪拳烈脚』天龍院・神威(BNE003223)と『人生博徒』坂東・仁太(BNE002354)の胸の中にも、疑念が無いではない。だが、相手なりの流儀に合わせた方が、逆に勢いに乗れるだろう。何よりも、こういうのは嫌いではない! 一方、『蒼い翼』雉子川・夜見(BNE002957)はいつも通りに冷静沈着な様を崩さない。 「……何も言う事は無い。戦う相手が居るというなら戦うしか無いだろうな」 異なる戦場で会いたかった、という想いはある。だが、この三ツ池公園での戦いに勝利できなければ、世界が大変なことになる……というか、何が起こるのか分からないのだ。であれば、ここで負けるわけには行かない。 「じゃあ、小さな監督さん? 円陣組んで気合入れるんでしょ?」 以前にエリューション化した野球ユニフォームと戦った経験のある、『重金属姫』雲野・杏(BNE000582)は後宮フィクサードの姿を見ても冷静なものだ。強さとは格好で決まるものでは無いし、脅威を脅威として認識している。 様々な思いが渦巻く中、野球帽を被って元気良く胸をそらしているのが、『なのなのお嬢様なの』ルーメリア・ブラン・リュミエール(BNE001611)だ。普段は隠しているものの、野球ファンである彼女にしてみれば、素直にそれを話せるのが嬉しくあるのだろう。 「よぉし、監督はルメなの! みんな、行くよー。時村リベリスターズ、ふぁいとー!」 ルーメリアが後宮フィクサードに対抗して付けたチーム名を叫ぶと、他のメンバーも唱和する。その時、隣の多目的広場から銃声が聞こえてくる。いや、既に爆発音と言っても過言では無い。 他の場所でも戦闘が始まっている。リベリスタ達は、互いに顔を見合わせて頷く。 こうして、その轟音を合図に、時村リベリスターズと後宮フィクサードの戦いは始まった。 ●時村リベリスターズVS後宮フィクサード 攻め込んでくる後宮フィクサードの面々は、回復・支援役を後ろにおいて、前衛役が壁を務めるという分かりやすいものだ。だが、それに素直に乗ってやる理由も無い。 「さっさと勝たせてもらって、相手さんにはこのグランドの土を持って帰って貰いましょう? ね? まこにゃん?」 年上の余裕か、軽いジョークを飛ばす杏に対して、生意気な雰囲気で答える真独楽。その様子は反発しているように見えるが、甘えているようにも見える。 「ダイジョブ。こっちもチームワークは負けてないもん! 杏もマジメにやるんだぞ?」 だが、答える先で既に杏は理性が崩壊していた。鼻血を吹いて、どこかトリップしたような表情をしている。そこに切り込んできたのは、1番のソードミラージュだ。踊りこんできた彼は、真っ先にルーメリアを狙ってくる。 「監督はやらせないぜ」 そこに割って入ったのは、義弘だった。大事な「監督」を攻撃に晒させるわけには行かない。ここで守備を固めるのが、彼の重要な役割だ。 「ちぃッ。さすがに簡単にやらせてくれないか」 「そっちはチームワークが自慢なんだろ? だったら、こっちも負けないようにしないとな」 攻撃を弾かれた1番が宙を舞って距離を取ろうとする隙を、真独楽は見逃さなかった。 「完封試合、狙うよ!」 地を駆け抜けて、5番に向かって切りかかる。真独楽の澱みない連続攻撃に、反撃の隙も見つけられない。 「ハッ。あ、アタシは一体何を? OK分かってるわ。大事なお仕事よ、気を引き締めていきましょう」 軟式野球場に魂を戻した杏は、魔力を活性させて、一条の雷を放つ。放たれた雷は猛け狂い、戦場を焼き尽くさんばかりだ。兎にも角にも相手を蹂躙し続ける。それが彼女の戦い方だ。 それに対し、監督が守備の陣形を敷く。数に勝るならば、勝ちを固めるの方が有利だろう。だが、ルーメリアも負けてはいない。 「各個撃破基本! こっちは攻撃の作戦、攻めて行くのー!」 「了解。雉子川夜見、参戦させてもらう」 名乗りと共に、前線を支えるべく前に出る夜見。相手はキャプテンだ。 「前線を支えるなら目の前の敵を相手にせねばなるまい。野球で言うと………なんだ? キーパーか?」 「いや、それサッカーだから」 律儀に言い返してくるキャプテン。夜見はツッコミをスルーして、エネルギーを込めた強烈な一撃を放つ。 「ホームランだ……、当たれば痛いぞ」 剣で受け止めるものの、キャプテンは思わず後ずさってしまう。しかし、負けじとノックバックを狙って、攻撃を返してくる。狙いを「監督」ルーメリアに定めているのは同じようだ。その様子を見て、シルフィアは鼻で笑う。 「フン。雑種にしては上出来な狙いだ。ただ遊びに来ているだけでもないらしい」 「よく言われるよ。シンヤ以外の奴からな」 ポロッと漏れるキャプテンの本音。何かを察し、シルフィアは口を歪める。 「余興だ、足掻いてみせろ」 短く呟くとシルフィアの手から電撃が放たれ、再び戦場は光の渦に包み込まれる。普段なら草野球のチームが平和な戦いを繰り広げているのだろう。しかし、崩界を告げる赤い月の下では、凄惨な戦いでしかあり得ない。 戦いは予想以上に熾烈を極めた。後宮フィクサードの面子は、守りに強いメンバーであった。後宮フィクサードを名乗るフィクサードが取る戦術は、「守って勝つ」だ。戦闘時にも同様の戦い方を行い、その守りを打ち破るのに、突破力が不足していた。 だが、後宮フィクサードにも、1つ誤算があった。持久戦に持ち込んだ場合、最後にものを言うのは地金の差だ。加えて時村リベリスターズは熾烈な範囲攻撃を主としており、それは後宮フィクサードの耐久力を着実に削っていたのだった。 「千本ノック行くぜよ、野球やっとるんやったら全部受け止めてみぃ!」 仁太の持つ禍々しい巨銃から放たれるのは無数の弾丸。発される弾丸は嵐のように戦場を貫いていく。由来を辿れば当然だが、隣の戦場に遜色無い威力だ。 弾丸の雨の中を神威が駆け抜ける。全身に闘気を滾らせ、弾丸の雨も意にも介さない。作戦通りに相手の後衛への道を切り開こうとしても、何度も阻まれてしまう。それでも、ぶち当たるしか出来ないから、阻まれてもぶち当たる。しかし、ぶち当たることを諦めないのなら、その時点で既に勝者だ。 「テメーの相手はこのアタシだァ!」 「そんな!? ここまで来て!?」 滾る闘気を手甲に集中させる。止めに来た9番の拳士をなぎ払い、腰を落す。そして、その闘気を一気に爆発させた。 「場外ホームランとまではいかねェが、結構効くだろ?」 ●試合終わって、そして…… 回復役が倒れてしまうと、後宮フィクサードは思いの外に脆かった。リベリスタ達の用意した攻撃が、一気に凌げなくなってしまったからだ。1人また1人と倒れていくフィクサード。それがキャプテンと数名を残すところになったのを見て、「時村リベリスターズ」の監督であるルーメリアが声を掛ける。 「お願い、そろそろ引いて欲しいの。このまま放っておいたら、野球もまともにできないむちゃくちゃな世の中になってしまうの! 貴方達はそれでいいの?」 降伏勧告というにはあまりに悲痛な叫びだ。同じ野球を愛するからこそ、分かり合えずに戦いなどしたくない。ルーメリアの言葉にはそんな祈りが篭っている。 「趣味の草野球、出来んようになると思うんじゃけんどええんやろか? なんでもない日常が一番ぜよ」 ルーメリアの言葉に仁太が頷く。彼の口から出る言葉は重い。日常があるから、それを守るために戦えるのだ。 「それも分かるが……そうも行かない事情があってな」 まだ諦めていない瞳でキャプテンは剣を握り直す。少なくとも戦意を喪失はしていない様子だ。それを見て、シルフィアが言葉を投げかける。 「大方、シンヤに拾われたお陰で、好きだった野球も出来るような生活を手に入れた、といった所か?」 「……良く分かったな。大体、そんなもんだよ」 「前に似たような連中と戦ったことがある」 驚いた顔で剣を下ろすキャプテンと、表情を動かさずに返すシルフィア。彼らの付けたチームの名前は、シンヤに対する感謝の表れだったようだ。 「そろそろ、本隊の方が騒がしくなってきたな。俺達はそっちに向かわせてもらうか」 少なくとも、キャプテンはこれ以上ここで戦う気が無くなったようだ。残った仲間達に声を掛けると、丘の上の広場に向かおうとする。そこを義弘が引き止めた。 「ちょっと待て」 「何だ? これ以上ここでやるってなら……」 「試合が終わったなら礼だろ」 力強く笑顔で義弘は言い放った。そのまま、目を丸くしているフィクサードに続ける。 「しょうがないだろ、お約束なんだ。やらないと礼を欠くぞ」 「そうそう。スポーツマンヒップにもっこりの精神で行きましょ?」 「いや、それ明らかに違うから」 キャプテンがまた杏にツッコミを入れると、彼女はわざとよと悪びれもせずに笑う。 「礼に始まり、礼に終われ……。戦いが終われば分かり合うことも出来るだろう」 その時、お互いにどうなっているかは分からないけどと付け加える夜見。こっちは杏とは真逆で生真面目な表情を崩さない。そんなリベリスタ達に苦笑を返すと、まだ戦えるフィクサード達は整列する。それはリベリスタ達も同じことだ。 「礼!」 「ありがとうございました!」 みんなの声が野球場に響き渡る。この一瞬だけ、赤い月に訪れる戦いの夜は、試合の終わった青い空に変わった、そんな気がする。 「あんたらみたいなのは嫌いじゃねぇからな。こう言うのも変だけど、元気でな」 「負けたチームは土を持って帰るんでしょ? リベリスタとしてはこっちが上だけど野球チームとしてはそっちもなかなかだぞ!」 「お互いにな。儀式を守れなかったら、泣きながら土を集めて帰るよ」 礼が終わり、神威はハイタッチでキャプテンを送る。また、立ち去ろうとするキャプテンに、真独楽は無邪気な笑みを浮かべてシャベルとビニール袋を渡した。キャプテンは苦笑を浮かべてそれを受け取ると、改めて丘の上の広場へと去って行く。 その背中を見ている内に、ルーメリアは感情が抑えられなくなり、思い切り叫ぶ。 「ルメは……こんな、くだらない争いなんか関係なく……貴方達と野球がしたいの!」 普段は「女の子らしくないから」と押し込めている思い。それだけに、強く、大きな声だった。だが、そんな少女の声も、戦いの喧騒にかき消されてしまう。 バロックナイトに訪れた一大決戦の夜。それは悲劇も喜劇も飲み込んで、1つの場所に集まっていく。その先に何が待っているのか? 答えを知るものはいない。 バロックナイトは、まだ宵の口。本番はこれからなのだから。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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