●梗概 アシュレイからの情報、そして機能強化された万華鏡によって、バロックナイツの真の目的と彼らが儀式を行なう場所が判明した。神奈川県横浜市の三ツ池公園という大きな公園である。 近頃よく耳にする崩界の加速はこの公園内に生まれる『特異点』の前兆であったという。さらに万華鏡は、例の儀式の日に大きな穴が開いてゆく様子と、バロックナイトが起こる光景をも観測していた。 ●状況 ジャック側の戦力はすでに配置が完了しているため、これに先んじて手を打つ事は不可能である。公園の各所では以前から見覚えのある精鋭達に加え、バロックナイトに賛同するフィクサード達や、アシュレイによって造成されたエリューション等が防備に充てられているようである。 我々は迎え撃つバロックナイツ勢力を撃破し、儀式を行なうジャックの待つ中心部まで進む必要がある。しかし敵の防衛力は高く、アークがこれを突破するためには総力戦とならざるを得ない。 アシュレイの情報を信じるならば、『賢者の石』を予定通り確保出来なかったジャックは一度大規模儀式を始めたが最後、儀式に集中せねばならない上に、それを中断する事は不可能なため、彼は一時的に弱体化するという。彼を撃破し、儀式を中断させるのがアークとしての本懐だが、アシュレイは『儀式が制御者を失っても成立する』までアークの味方をするつもりは無いらしい。 園内中央部に『無限回廊』なる特殊な陣地を設置する彼女の守りは完璧だ。或いは時間を掛ければ攻略法を見つける事も可能かも知れないが、空間をおかしな形に歪めるこれを即座に突破するのは至難である。『無限回廊』を越えるにはアシュレイが任意で能力を解除するか、彼女を倒すかのどちらかが要求される。それはそれとして難題ではあるが、いずれにせよ、我々は戦線を押し上げながら必要に応じて動けるよう、態勢を整えておきたい。 正門周辺は敵戦力が最も集中しており、敢えてここを突破する利点は少ない。南門は、外部から協力を申し出た蝮原率いる部隊が、セバスチャン等アークの戦力と併せて陽動を行う事になっている。 よって、残る西門及び北門からの攻略が今回の要となる。 後宮派の戦意は高い。彼らの忠誠も概ねジャックとシンヤに向いている。 また、シンヤはアシュレイを信用していないようでそちらへの対策も十分に備えている模様。 ●戦略司令室からの通達 さて、君達が向かうは、西門から進攻した先の【里の広場】だ。付近に配置された小隊を叩いて貰う。 敵の編成は、地上にビーストハーフとヴァンパイアの二人、上空にフライエンジェ十二人が待ち受けている。この小隊の主な役割は、高高度からの索敵、及び、上空からの一斉射撃。隊列を飛び越えて多方向から仕掛けられるオールレンジ攻撃は、こちらの進攻の足を止めさせるのに効果的という事だろう。そして伝令としても大いに役立つこの小隊は、何か思わしくない事態あれば拠点まで素早く情報を持ち帰る事も可能であるに違いない。 これを阻止するためにも是非、早期殲滅を心掛けて貰いたい。 * ●依頼目的 里の広場付近に配置された小隊を殲滅すること。 対空戦闘能力の高い人員の参加が望まれる。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:小鉛筆子 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年12月20日(火)23:48 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●8:14 里の広場へと到着した八人は、空戦小隊と対峙しながら竜潜 拓馬と佐伯 天正の姿を横目にする。 八人が厄介な戦狂い二人組みから横槍を受けずに済んだのは、同じ頃、丁度駆け付けた別部隊が彼らを取り巻いてくれたからだろう。 『殲滅砲台』クリスティーナ・カルヴァリン(BNE002878)からオートキュアーを受けた『地球・ビューティフル』キャプテン・ガガーリン(BNE002315)は走る。ビーストハーフのナイトクリークを真っ直ぐに見据え、自身へハイディフェンサーを施して突き進んだ。 「赤い月は、地球を侵す災いだ。ならばワタシは微力ながらも力を尽くそう! 母なる地球の悲しみを止める為に!」 八人全員の姿はすでにフライエンジェの空戦隊には捕捉されている。走り来るキャプテンに注意を向けたビーストハーフの男に合わせて空の敵も攻撃の態勢を取った。 「さあ、地に立つワタシを見よ! ワタシがキャプテン・ガガーリン! 地上において地球(テラ)を体現する者だ!」 キャプテンは上空から自分を狙い撃とうとする者達へも高らかに名乗りを上げる。 ひたむきな地球愛に目覚めた紳士の壮大な理念は遥か空を越え、宇宙からすべてを見下ろすかの様。 「ハッ。命知らずなオヤジが」 クマ男の毛深い体で隆起する筋肉。大型のクローを突き立ててキャプテンを襲った。キャプテンは愛用の大盾【STA-099・チャレンジャー】を閉じてダメージをカット。 「ここは、力で押しぬくしかないな」 回復手がいないこのチームが勝負をかけるには速攻しかない。上空で銃器や矢を番え始めるフライエンジェ隊を見上げ、『微睡みの眠り姫』氷雨・那雪(BNE000463)はつぶやく。 「攻撃は最大の防御……ここは、外すわけにはいかない」 上空の標的を確認しながらコンセントレーションで狙いを定める。 ヘビーボウを構えた『大人な子供』リィン・インベルグ(BNE003115)は、ヴァンパイア女を射程距離に収められる場所へ移動しつつ自己強化。 リィンと同じ方向へ『鋼脚のマスケティア』ミュゼーヌ・三条寺(BNE000589)は一足飛びに駆け寄った。 「守ってくれる人がいないんじゃ……がら空きね!」 可憐な少女の長い脚が機械のうなりをあげて振り上げられる。魔落の鉄槌と化した彼女の踵は華奢なホーリーメイガスの女を的確に捉えた。 低く呻いた女は浄化の鎧を自らに施し、傷を癒しつつミュゼーヌとの距離を取る。 ちょうど時を同じくして空からあらゆる角度で複数の矢や銃弾が発射され、まずはキャプテンが集中砲火を受けた。凄まじい攻撃で彼の宇宙服には痛々しく矢が何本も刺さっていたが、盾の後ろから親指を立てて健在なのをアピールしている。 彼の無事にほっと胸を撫で下ろして『ミックス』ユウ・バスタード(BNE003137)も直近のフライエンジェへ向けて【Missionary&Doggy】を構えなおす。 「ふん、味な真似をしてくれる」 『虚実の車輪』シルフィア・イアリティッケ・カレード(BNE001082)はメガネを押し上げて、そう吐き捨てる。 まずは相手の足元を固めているホーリーメイガスの撃破が最優先と踏んだ彼女は後退するヴァンパイアの女へピンポイントを撃った。 「余興だ。足掻いてみせろ」 狙いは的中し、怒りを付与された女はシルフィアを見付けて向かって来る。 「――ほほう。アイツらの集中攻撃を防ぐたぁ、なかなかやるじゃねぇかオッサンよ。けど、いつまで保つかな?」 キャプテンの背後を取ろうと周りをぐるぐる回りながらクマ男は笑う。覗き穴から見える相手の動きを追いかけて、キャプテンも後ろを取られまいと食らい付く。 「クッソ……コイツ亀みてぇに隠れやがって!」 だが敵も意地を見せ、跳ぶようなステップでキャプテンを切り付ける。 「ここは通すわけにはいかないのだよ。ユーを通せば地球が一つ、破滅に向かうことになるだろう。全地球、全生命、全人類に代わり、許すわけにはいかない!」 キャプテンの信念は固い。愛するこの地球に住まうすべての生命を守るため、たとえ倒れる事になろうとも彼は決して引かない。 クリスティーナもヴァンパイア女へ向かった。 「殲滅砲台は砕けない。嘘だと思うなら試して御覧なさい」 怒りでシルフィアをターゲットに絞った標的の脇から十字の光で撃ち抜いて、こちらも挑発をねらう。 上空のフライエンジェ隊が第二波の構えに入る。 「……さぁ、私と遊んでもらおうか?」 気糸が那雪の体から放たれ、空へ向かって飛び出す。研ぎ澄まされた狙い、ピンポイント・スペシャリティが敵の翼に絡み付いた。 「アッ――」 と驚きの声を上げて墜落する一人の青年サジタリー。空中で体をねじってスキルが飛んで来た方角へ矢を放った。けれども当て勘のみで射られた矢は那雪の遥か手前で地面に刺さり、青年は受身を取る暇も無く地に叩きつけられた。 ●8:13 「ふふ……」 怒りに翻弄されているヴァンパイア女をアーリースナイプで撃ち殺し、リィンはほくそ笑む。 矢が思ったとおりの所へ撃ち込まれる快感、敵が倒れる瞬間の心地よさといったら……。 頭上にもまだまだ標的が沢山いる。 「こんなに大勢で空をわらわらと飛んで……そんなに撃ち落とされたいのかな?」 リィンは幼い少年の姿にらしからぬ老獪な笑みで空の獲物を見上げた。 回復手を潰し終えたのを確認してミュゼーヌは上空へ【リボルバーマスケット】を構える。しきりに飛び交うフライエンジェ達へ向け、ミュゼーヌは引き金を引いた。 「全員まとめて、夜空の塵に変えてあげる!」 長い銃身が激しく火を噴く。ハニーコムガトリングに次々と被弾した敵が空中で血飛沫をあげている。 空戦隊を指揮するフライエンジェの女の声が号令をかけ、隊員は一斉に散開し始めた。スターサジタリー勢はそれぞれに狙いを定めたあと、バラバラのタイミングで長射程の攻撃をキャプテンへ浴びせる。プロアデプト、マグメイガスの三人は別行動を取ってリベリスタ側の狙撃手を封じにかかった。 狙い撃ちにされたキャプテンは苦しげによろめきながら、しかしまだ立ち続けていた。 プロアデプトの少女がミュゼーヌへトラップネストで動きを阻害する。 「そこ!」 すかさず飛び去ろうとする少女をユウのアーリースナイプが捕らえた。 小さく声を漏らしながらユウへ向き直る少女。 さらに二人のマグメイガスがユウの背後から迫った。 【九七式自動砲・改式「虎殺し」】……プロストライカーでさらに命中精度を高め、且つ絶大な火力をもった『デストロイド・メイド』モニカ・アウステルハム・大御堂(BNE001150)のアームキャノン。 味方の死角へ向けて超絶火力のハニーコムガトリングが斉射された。 すわユウ達へ不意打ちを仕掛けたマグメイガスだったが、モニカによって強烈な弾幕を張られ逃げ惑う羽目になる。片一方が発動させた上位魔法弾がモニカを捉えて炸裂。 彼女もダメージは食ったが怯む様子は無かった。 ●8:10 「この野郎……埒があかねえ」 クマ男は全力防御で耐え忍ぶばかりのキャプテンに見切りをつけて他のリベリスタへ標的を変えようと脇目を振った。 「他へ向かわせはしない。ユーの相手はこのワタシだ!」 自分を離れようとするクマ男へキャプテンはジャスティスキャノンを放って挑発を行う。 「――テンメェ、このォ!!」 怒りに任せたクマ男の頭部を狙う黒いオーラがキャプテンを直撃した。フェイトを賭して力を失いそうになる足をぐっと踏ん張り、キャプテンは相手を見据える。 「その正義ヅラした目が気に食わねぇっつってんだよッ!!」 未だ空を飛び回る複数の敵。那雪はさらに動きを追いかけ、複数を巻き込むよう気糸を空へ放つ。 那雪に翼を巻き取られたフライエンジェ達はまるで線香の煙に巻かれた蚊のように、二人三人と墜落してゆく。 「チッ、やってくれる……! 全体、まずはあの銀髪の黒羽根をつぶせ!」 フライエンジェの女指揮官が叫んだ。 那雪を取り囲むように陣形を組み直すフライエンジェは上空に六人。 那雪も予めそのような事態は想定していた。来る集中砲火に備えて周囲へ目を配る。 「――撃てぇえい!!」 同時に、リィンのアーリースナイプが指揮官を射抜いた。ミュゼーヌも銃口を向けるがトラップネストが邪魔をして発砲のタイミングを逃した。 敵のカースブリット及びマジックブラストは那雪をすでに捉えていた。 複数に撃ち込まれた敵の攻撃はあっという間に彼女の体力を削り取り、運命の瀬戸際まで落とし込める。 「悪いが……まだ、いける」 那雪は運命の炎を自ら燃やして立ち続けた。 持ち堪えた彼女に続いてこちらの反撃も始まる。 墜落したプロアデプトの少女へ二度と飛び上がって妨害されないよう、ユウは空の相手よりも先に黙らせておく。 「その眼、赤く染めてやろう」 シルフィアのピンポイント射撃がサジタリー男の片目へ命中し、男は悲鳴をあげる。 モニカがハンドキャノンを構えると、マグメイガスは射線から逃れようと飛び去る。しかしそれを押さえ込んだのは那雪のピンポイント・スペシャリティ。動きを縛られたマグメイガスはモニカの射撃で蜂の巣にされ、遂に命を落とした。 ●7:2 彼ら対空射撃班の活躍で徐々にキャプテンの負担は軽減されていった。しかし対するクマ男は自身の狩りが上手くゆかない事に苛立ちを募らせていた。 「なんでこんなふざけた野郎がまだしぶとく生きてやがるんだ、クソ!!」 キャプテンの体力は限界に近づいていたが堅牢な盾は未だ健在であった。 「……なぜならワタシは宇宙飛行士だからだ。空には上限がある。だが、宇宙には上限がないのだよ」 呼吸はずいぶん荒れている。しかし彼の瞳の奥に広がる宇宙はなおも輝きを失わずにいた。 (-仲間達が他の相手を撃墜するまでの間、ワタシはクマ男を止め続けよう-) キャプテンの仲間に寄せた全幅の信頼は、地球を内包する大いなる宇宙の如く、この戦地をあまねく掻き抱いているかのようであった。 糸に絡められる事を恐れる空の上の七人は那雪の射程外へ逃れている。地上に引き摺り下ろされて身動きの取れない者を狙って那雪は【刹華氷月】を投げ付けてやった。 残るは地上のクマ男とサジタリー九人。ここまで来て逃走を図られても面白くないのでクリスティーナは自身も翼を広げて空へ飛び上がり、ジャスティスキャノンで敵を引き付けにかかる。 「殲滅砲台からは、逃げられない。逃がさない」 高く飛翔し始めた敵のフライエンジェを追ってリベリスタのフライエンジェ達もとうとう空中戦へと乗り出す。 追い縋る有翼の相手ばかりに気を取られている敵のサジタリーに照準をあわせてリィンは魔弾を放った。 まるで茂みから飛び立った鳥が凄腕の猟師に撃ち落されるが如く、哀れな少年は真っ逆さまに地に落ちて、そのまま息を引き取った。 「いやあ、爽快だね。少し気の毒に感じるけれど……まあ、相手が悪かったという奴だよ」 快感に打ち震えながらリィンは独り言ちる。 そしてミュゼーヌの全体攻撃に煽られさらに上空へと逃れるフィクサード。 ユウとシルフィアも翼を広げ、それぞれに空戦隊を追う。強い風が逆巻いて彼女達の美しい髪を波打たせた。 「バカめ。たったそれだけの人数で追ってくるなど」 フライエンジェの指揮官が笑う。 空に上がったのは敵六人に対してリベリスタ側は一足遅く飛び立った那雪も含めて四人。 数の上ではやや劣っているが……。 「まだ、幕引きには早いんじゃないか?」 「ぬ……しぶとい小娘が。わざわざ蜂の巣になりに来たか」 那雪が上がって来るのを見下ろしながら女はしわを寄せる。 一斉に構える敵の狙いに気付き、リベリスタ達も応戦の構え。 (射程圏内まであと少し……なんとか間に合ってくれ) 那雪に対して長射程攻撃が発射されようとしていた。少なくともそれと同時に那雪も射程圏内に到達してピンポイント・スペシャリティを撃ち出す事が出来れば……。 「今度こそ確実にあの黒羽根を墜とせっ!」 「そうはさせない!」 ユウとシルフィアがピンポイントで敵の目先を変えさせる。しかしそれでも四発の弾が那雪を撃った。 ――ドンッ! ドンッ! ――ドンッ! ――ドンッ! そして別方向へもう二発。 けれど那雪の全身からも気糸は放たれていた。道連れを誘うように伸びた糸が空戦隊を絡め取り、まるで傘が絡まったパラシュートのように地球の重力に引かれ落ちてゆく。 「役目はこれでなんとか……果たせた、かな」 追い討ちをかけるクリスティーナのチェインライトニングが、地上で待ち受けていたモニカの全体射撃が、空中で獲物を捕らえ着地するより先に殲滅した。 「くっ……」 だが、一人残された指揮官の女は丘の上の広場のある方角へ向けて逃走する。 ●空戦小隊壊滅 「空の火力はワタシの仲間達がほぼ撃墜してくれたようだな。さすがだ」 彼女達の働きに感心し、そして誇らしげな口調でキャプテンは言う。 「しかしテメェはここで死ぬんだよ!」 クマ男は激しい敵意を向けてキャプテンへ切り掛かる。息も絶え絶えのはずのこの中年男がなぜ倒れないのか、彼には不可解極まりない。 「そうはいかない。皆で突破するのだ、この場所を」 クマ男は自らの持てる技すべてを叩き込んだ。常に立ちはだかる目の前の男を確実に殺すために。 「――死ねやコラアッ!!」 自在に姿を変える影を作り上げ、敵は前後に挟み撃ちをかける。しかしそこへ割り込むように攻撃を放った者がいた。 「お待たせしたね。それでは、じっくりと楽しませて貰おうか」 リィン、ミュゼーヌ、そしてモニカら地上の射撃班だった。 リィンの弾がクマ男を撃つ間にミュゼーヌは走って行き、その頑丈でしなやかな脚で再び魔落の鉄槌を食らわす。辛くも影に邪魔され初手をしくじったが次また外す気は無い。 「へえ、その図体の割にはすばしっこいじゃないか。そうでなければ面白くない」 楽しそうにリィンは声をあげながらもう一発。 「さあ、避けてみせなよ」 絶対に避けられないという自信が彼の口調からも満ち溢れている。事実リィンが一発たりとも外すことは無かった。 さらに追い討ちをかけてモニカの超火力が敵を蜂の巣にしてゆく。 「な……クソォ!!」 ここに来て攻防の立場が一瞬で逆転する。キャプテンを追い詰めていたクマ男は生き延びるために逃走を企てる。 「跪きなさい、フィクサード」 ミュゼーヌが放った1$シュートが敵の腿を貫通する。無様に転げ、それでも往生際悪く片足で飛び跳ねながら逃げてゆくクマ男。 「さあ、避けてみせなよ……」 駆け寄りながらリィンはもう片方の腿も撃ち抜いてやった。 「ぐわあッ……!! たっ助けて!!」 「虎殺し」 を携えたモニカが距離を詰めて来る。 最早逃げ場は無い。 「……踏んで、撃ち抜いてあげるわ」 「!?……」 男の背を冷たい踵が踏み付ける。至近距離へ伸びた銃口が獲物の後頭部にあてがわれていた。 ―――――!!! ……乾いた音が夜空に響き渡った。 地上の仲間は敵の撃破に成功したのだろう。 残るはあのフライエンジェの女ただ一人……ここで取り逃すわけにはゆかない。 作戦を成功裏に収めるため、そして自分の身を挺して敵を押さえた那雪の功労に報いるためにも。 女は全力で逃げる。ユウ、シルフィア、そしてクリスティーナもその後を追っている。 追いかけながら、三人は確実に的を射るために出来得る限りの集中を重ねる。視界の下では今も至る所でアーク対バロックナイツの激しい攻防が行われている。順当に勝ち進んでゆく場所もあれば、苦戦し撤退を余儀なくされている箇所もある。さらに前方、本陣へと至る池の真上には別のフライエンジェ小隊が守りを固めている様子だった。あそこまで到達されたら、最早三人だけでは手が出せなくなってしまうだろう。 だから、その前に決着を――。 三人は意を決して攻撃に移る。 「墜ちろ!」 まず、ユウのライフルが敵の右翼を穿った。悲鳴をあげ、標的は右へ傾きながら徐々に落下の軌道を描く。 慌てずにタイミングをはかって撃ち出したシルフィアの一発は左肩に食い込んだ。敵も軌道修正を試みるが片翼の機能が落ちた状態で再び飛翔するのは難しく、右へ大きく逸れたまま弧を描くように森のほうへと落ちてゆく。 クリスティーナの巨大な【二連装殲滅砲】が光弾を吐き出し、標的を捕らえた。空中で弾かれた敵はその勢いで木に激突し、パチンコ玉のように枝に体を打ちつけながら芝生の上に墜落した。 ―――。 立ち上がってくる気配は無かった。 「フフフッ……ハハハハッ……ハァーッハッハッハッハッハッハ!」 シルフィアは勝利宣言のように高らかな笑い声を響かせ、魔法で止めを打った。 ユウは付近に落ちたはずの那雪の姿を探す。 こちらへ向かって来る仲間達の中に那雪の姿はあった。血だらけの制服で、キャプテンの腕の中で意識を失っているが、幸い急所は外していた様子。 ユウは少し羨望に駆られるも、ひとまず那雪の無事を確かめてほっと胸を撫で下ろしたのだった。 「向かうは決戦の地よ」 一行は、目指す丘の上の広場へと顎を向ける。 肩に羽織ったコートで風を受け、愛器を担ぎ、ミュゼーヌは決戦の地へと足を踏み出す。 モニカ。クリスティーナ。キャプテン。ユウ。リィン。 大局においては今の所アークの側がやや押しているように見える。 決戦の地で彼らが目にするものは一体………? |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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