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移ろう猛獣

●幻獣、咆哮す
 遠く、それこそ万里を渡る勢いで咆哮が響き渡る。
 その咆哮だけで幾多の異形が爆ぜ、崩れ落ちた。
 しかし終わらぬ。尽きぬ。例えその場に居らずとも、この世界の異形のなんと多きことか。
 白光に満たされていた体も次第に汚れを取り込んで黒く染まり、しかしそれでは歩みは止まらず。
 小気味よく爪の音を響かせて、或いは蹄の音を響かせて、姿を変幻させて獣は夜を往く。
 全ては善意であれ、既にそこに理性はなく。
 善性と悪性を混濁させた獣が、ただそこに居るだけである。
 

●話せば分か らない
「アザーバイドには、三種類存在します。運命の寵愛を得てこの世界の住人となるもの、寵愛を受けずともこの世界に貢献して去るもの、この世界に害意を持つもの。……まあ、取るに足らぬ世界と認識して攻撃に転ずる類は最後ということで。今回の対象は、本来なら二番目に該当する手合いです」
「『本来なら』? エリューションの殲滅を買って出るアザーバイドなんて、善性じゃないのか?」
 モニターに映された状況に首をかしげたリベリスタに、しかし『無貌の予見士』月ヶ瀬 夜倉(nBNE000201)は困ったように頬元の包帯に指を掛けた。無論、剥ぐわけではない。掻く頬も無い彼なりの表現である。
「アザーバイド『移ろう猛獣』……相当過去になりますが。『移ろう聖女』と呼ばれたアザーバイドと同一のチャンネルの存在であり、その戦闘力は彼女同様、ボトム・チャンネルにおいて非常に強い影響力を持つと考えられます。
 無論、その能力が及ぼす影響も同等。『猛獣』自体に悪意はなく、飽くまでこの世界に対しての善意でエリューション討伐を幾度か行ったようですが、この世界の神秘の侵食と彼自身が討伐で用いた能力が、『移ろう聖女』同様に少なからず神秘として一般社会の建造物破壊、ひいてはそこから発生したエリューションが革醒を促す節がありまして……彼自身、既に多少なり意識が混濁しているようです」

 善意とは得てして正しく報われないものである。ルールの異なる世界なら尚の事。その調整を行うこともまた、リベリスタの使命であるとするならば、今回の件ほど特異かつ『リベリスタらしい』仕事というのも多くはない、かもしれない。私見だが。

「今回の任務は、『移ろう猛獣』を一度撃退することでその意識の混濁を解消し、元の世界への帰還を成すこと。
 それと、当然ながらエリューションの介入も予想されています。フェーズ2E・ビースト『サーキュラーキャット』。決して容易な相手ではないこと、『移ろう猛獣』の意識が混濁した状態の場合、彼にとっての『敵』は君達も含まれます。……油断無きよう。
 大丈夫です、恐らく。君達が『不可能』と言うような依頼、私は知りませんから」
 そう言って肩を竦めた彼に、少なからず害意を感じたリベリスタ達であったとか、なかったとか。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:風見鶏  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 2人 ■シナリオ終了日時
 2011年12月13日(火)22:52
●成功条件
・アザーバイド『移ろう猛獣』の意識正常化の上での帰還(死亡は失敗)
・E・ビースト『サーキュラーキャット』2体の討伐

●アザーバイド『移ろう猛獣』
『移ろう聖女』(同名の拙作参照)と同じチャンネルに属する獣型アザーバイド。
 外観は周囲の『猛獣』の主観の総意と創意により決定づけられるため、姿が一定しない。
 強力な個体であるが、現状はエリューションと世界の住人の区別がついていない。
 リベリスタの攻撃によって倒れた場合、正常な状態へ復帰して共闘可能だが、
『サーキュラーキャット』の攻撃によって戦闘不能になった場合、命を落とす可能性が非常に高い。
 
・咆哮(神遠全・ショック)
・幻爪(神近単・流血)
・睥睨(神遠単・呪縛・重圧)

●E・ビースト『サーキュラーキャット』×2
 サーベルタイガーに近い外見を持つエリューション。2体1組としての行動を主とし、連携に長ける。
 攻撃対象はリベリスタ及び『移ろう猛獣』。
・重合連携(P:同時行動を除く全ての行動判定に[連]を適用する)
・ツインハウリング(2体同時行動により発動。神遠範・感電・ショック)
・ピアーシングバイト(物近単・ブレイク)
・ビーストクラッチ(物近範・必殺)

●戦場
 ビジネス街中枢・週末深夜。
 人目を避けることは容易ですが、そこそこに障害物が存在します。

 強力な相手ですが、やりようはあります。
 ご参加お待ちしております。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
クロスイージス
アラストール・ロード・ナイトオブライエン(BNE000024)
インヤンマスター
四条・理央(BNE000319)
覇界闘士
鈴宮・慧架(BNE000666)
インヤンマスター
ユーヌ・結城・プロメース(BNE001086)
ホーリーメイガス
エリス・トワイニング(BNE002382)
スターサジタリー
ヴィンセント・T・ウィンチェスター(BNE002546)
クリミナルスタア
イスタルテ・セイジ(BNE002937)
ホーリーメイガス
天船 ルカ(BNE002998)
■サポート参加者 2人■
ソードミラージュ
戦場ヶ原・ブリュンヒルデ・舞姫(BNE000932)
マグメイガス
小鳥遊・茉莉(BNE002647)

●森閑なる獣の調べ
 濃い霧の様に揺らめく爪が、地面を抉って撒き散らす。勢いに乗ったそれが掲げられ、『祈りに応じるもの』アラストール・ロード・ナイトオブライエン(BNE000024)の盾と激しく激突する。その威力に鼻白んだ素振りを見せたものの、それでもアラストールは獣の前から退こうとは決してしない。戦場は既にその発端を切り開かれて幾許かが過ぎ、アラストールは、自らを的にかけることを成功させている。
 だからこそ、耐えねばならない。だからこそ、止めねばならない。
 騎士たれと自分に示すからこそ、相手へは最大限の敬意を持って相対さねばならない。
 その決意は、戦場を取り巻く誰よりも凛々しかったといえるだろう。

 アザーバイド『移ろう猛獣』。その存在について聞き及んだリベリスタ達の反応は、感銘半分呆れ半分、という形容しがたい心象だった。結局のところ、戦場に及んでその意識は変わっていない。
 
 アラストールの戦闘から遡って数分。現場に到着したリベリスタ達の感情も、また人それぞれであった。
「善意溢れる姿勢には好意が持てるが、片手落ちだな?」
「まさに小さな親切大きなお世話だね……」
 常の言葉より幾許か毒の薄い調子で呆れる『普通の少女』ユーヌ・プロメース(BNE001086)の傍ら、四条・理央(BNE000319)もまた、同じような感想を持つに至っていた。エリューションの討伐を行うこと、それ自体は非常に友好的な行為であると言えようが、結果としてマッチポンプになってしまっている以上、ここで手を打たねば致命的な崩界に繋がってしまうであろうことは明白だ。

「些かそそっかしいというか天然な方が多い世界なのですね……」
 愛しい人(仮)が過去に関わった『移ろう聖女』と同階層のアザーバイドと聞けば、『Star Raven』ヴィンセント・T・ウィンチェスター(BNE002546)にも思うところは少なくはない筈だ。だが、それにしたってその言い草は間違ってないけどちょっとアレだと思う。事実なのだが。ちょっと伏せて。

 ふ、と街灯に照らされた世界が暗転する。小気味よく響く爪の音が上空から響き、幾許かの破砕音に合わせてガラス片が路上を叩く。次いで、猛々しい咆哮が響き、街路を割り砕いて陥没させる。その間、三秒にも満たず。破砕した街路を踏み締めるように、移ろう猛獣が地上へと降り立った。
 美しくもなければ優雅でもない。荒々しいばかりのその登場であれ、それはリベリスタ達を驚愕に縛り付けるには十分すぎる出現だったといえる。

 ほら、とっても猛々し……猛々……あれ?

 すいません、ここはゆるキャラ会場じゃないんですが。微妙に可愛い雰囲気醸し出したって駄目なんですが。理央、目、目。

(密かにかわいいもふもふ希望)
 貴様のせいかヴィンセント。

 それはさて置き。リベリスタを前にした猛獣の態度は、やはり友好的とは程遠いものだった。全身を覆う霧のような気配の中に、しかし混沌とした黒を織り込んでいる。それが意識の混濁を招いていることは、確認するまでもない。
 まさか、猛獣側のアプローチがこちらに向くとは、『のんびりや』イスタルテ・セイジ(BNE002937)には予想外の出来事だったことだろう。本来なら、乱入からの戦闘を予期していただけに、このタイミングは彼女たちにとってはかなりの不利に働くことは容易に理解できた。

「無事に……帰してあげたいから……正気に戻してあげないと」
「人知れぬところで私たちの世界で戦ってくれた存在に、感謝を」
 静かに、確かな敬意と救済の意図を以って、エリス・トワイニング(BNE002382)と小鳥遊・茉莉(BNE002647)、二人の術師が猛獣へと視線を向ける。もう一方の目標であるエリューションが出現していない状況で事を構えるのは、陣容としても予測としても最悪のケースに違いない。
 猛獣が、凄まじい勢いで空気を体内に取り入れる。死神の鎌を持ち上げるように、その首を上天へ傾けた時――アラストールの放った十字光が、その喉に喰らいついた。

「グルッ!?」
「……移ろう者よ、一手、教授願う」
 一撃を放つや否や、猛獣の前にその身を晒すアラストール。本人なりの敬意と挑戦を込めた礼節の現れは、しかし今の獣には理解できる理性が無い。それはただの目前の敵であるという認識、ただそれだけだ。

 アラストールと獣が交戦態勢に入った、その瞬間だった。
 その背後を固めたヴィンセントと、待機する数名の緊張の糸を撫で付けるように、歪みを呼ぶ音が響き渡った。それは電流であり、咆哮であり、共鳴であり破壊である。
 咄嗟に回避を試みた『リップ・ヴァン・ウィンクル』天船 ルカ(BNE002998)の身を弾き、エリスの指先に僅かに紫電を散らして、その共鳴は地面を割り砕く。数瞬遅れて、柔らかく地面へと降り立つ爪音が響きわたれば、それは最早、何がや何故など問うまでもない。
 声にならなかったか、或いはその声すら駆け抜ける残像の前で霞んだか。
『戦姫』戦場ヶ原・ブリュンヒルデ・舞姫(BNE000932)の速度に任せた一撃が、サーキュラーキャットの一体を切り裂いてその動きに僅かな束縛を与えて過ぎた。
 鋭く絞られた呼気が夜気に流れ、『初代大雪崩落』鈴宮・慧架(BNE000666)の拳が同じ個体を貫いて街路へ叩きつける。リベリスタ達にとってしてみれば明らかな急襲なれど、しかし電光石火の連撃の前にその後れは微塵も感じさせることが無い。

「子猫と戯れるのも一興だな? 童心に返る気分だ」
 他方、ユーヌは別の個体へと練り上げた呪符を放ち、その意識を自らに向けることに注力する。牙を強かに啄かれたという事実ひとつが、サーキュラーキャットの自尊心を痛く傷つけ、彼女への怒りを募らせる。
 先のダメージを御しきれぬものの、ルカが練り上げた魔力の翼は遍く戦場へ広がり、その戦力の底上げへと貢献する。呼応するように飛ぶ回復の調べや復調の光は、完全にとは言わずとも仲間を癒し、異常を克服させんと尽力される。

 闇から、闇へ。
 茉莉の放った魔曲が夜を抜け、サーキュラーキャットに更なる痛撃を重ねていく。初撃をして圧倒的な威力を見せつけながら、しかしその実、総攻撃の様相を呈した彼らの猛攻は順当に抑えるべき敵を抑え、戦闘のイニシアティヴを取っているように思われた。

 ――少なくとも、最序盤としては優秀な立ち上がりだったと評価すべきであり。
 戦場という無形の生物の前にあって、確実かどうかはまた、別の話である。

●覇気溢れる牙の響き
 アラストールと獣が、互いにその鎬を削って剣戟を繰り返す。個体の性能差からすれば圧倒的な上下にあって、しかしその意思は挫けるどころか確実に高まりつつあった。だが、それでも速度が、精度が、策が、その差がアラストールを確実に追い詰める。ブロックをしても、それを乗り越えて咆哮が響けばそれだけで既に脅威だ。
 爪は、凌ぐ、いや、凌げる。だが、遠くへ放たれる眼力を防ぐ術は無い。

 咆哮は、確かにサーキュラーキャット達をも打ち据えはした。確実な消耗をもたらしはした。ハウリングを潰し、集中攻撃による早期決着を目指しはした。それは、既に初撃で概ねを達成した。だが、それでも。指折り数えれば三十秒、その程度を待たずしてルカが先ず、崩れ落ちた。彼に抗う運命の寵愛は無い。戦いを乗り越える気概が圧倒的に足りない。彼に限った話ではなく、しかし卓越した回復力を上回る悪意が、彼に立たせぬ選択を強請したに過ぎぬこと。

 集中攻撃を受けていたサーキュラーキャットが、剛と音をたてて周囲を一気に薙ぎ払う。全身を使った獣の柔撃は、半ば密集した形になっていたリベリスタ達にとってそのダメージを大いに蓄積させるに至る。

「じゃれる姿は可愛いものだな?」
「本当ならモフモフしたいところだけど、ちょっと余裕が足りないかな。本気にしては余り怖くもないけど」
 ユーヌの術が不吉の影を落とし、呼応するようにして放たれた理央の呪縛の精度を爆発的に跳ね上げる。びし、と動きに急制動をかけられたサーキュラーキャットの視線に残る苛立ちは、正しく殺気を込めている。
「獣さんを助ける、と決めたのです。邪魔しないで下さい」
 淡々としたイスタルテの言葉と、そのメガ、じゃなかった神気閃光が戦場を駆け抜ける。獣を、そしてサーキュラーキャットを貫いて抜けていったその光が秘めた性能は、しかしその一撃では十全な威力を出せぬままに終わるが、確実に消耗を強いていたのだけは確か。

「どうか正気に戻ってください。あなたとは戦いたくありません……!」
 ヴィンセントが、アラストールを押しのけて散弾銃を獣へと向ける。短くされた銃身ながら、その性能は元の銃をして圧倒的に上回る火力。まともに当たっていたならば、獣であっても痛撃は免れなかったことだろう。
 だが、それでも獣の速度は傷を負うごとにいや増しているようにすら感じられた。ヴィンセントの必中の一撃をして、僅かな被弾のみでしのいでみせたのだ。――学習しているのか、或いは傷が強くしているのか。
 
 獣は、その最大ポテンシャルと距離を自在に操る攻撃性能。サーキュラーキャットは、その圧倒的連続攻撃。
 異なる二種の獣なれど、両者に共通することはただの一点。
 お互いにとって、自分達以外は全て敵であるというただ一点。
 それを見誤れば、戦場は単純明快に瓦解する。

●死線を踏む戦士たちの惨禍
 拳を振り上げ、振り下ろす――その繰り返しのはずだった。
 全力で戦っていたし、そこに一切の手抜かりは無い、筈だった。
 だが、だが、しかし。そこに覚悟がなかったら?
 勝利を目して邁進する余り、自らのドラマティックな運命を過信する余り、次善の策に至らなかったら?

 サーキュラーキャットが、蹂躙する。二度、そして三度。近づいた者の骨を砕いて関節をひっくり返す悪夢のような暴風は、彼ら革醒者に許された、演出すらもぶち壊す。慧架の善戦は善戦に留まった。膝をついて倒れた彼女を、運命のゆりかごは抱き起こさない。世界は、非情なまでに異常なのだ。
 なにも、この攻撃を受けた慧架に落ち度があったわけではない。その攻撃をして必中に至らせなかった舞姫が異常だったのだ。
 舞姫の刃が刻み、茉莉の鎌が振り下ろされイスタルテの閃光が薙ぎ払い、猛然と攻撃は続く。あまりの継戦能力が故に無尽蔵に思われたその体力は、確実に削り落とされ、崩されていく。サーキュラーキャットが一体は、数十秒を待ってその場へ崩れ落ち、二度と立ち上がりはしなかった。

「少女趣味は無いからな、子猫にじゃれ付かれたくらいで、眠る訳には――」
 ふらつく体に鞭を撃ち、ユーヌは立ち上がる。
 理央の助力を以てしても、ヘイトコントロールを二人で行うのにはどうしたって限度がある。理央の守りが鉄壁であるが故に、その穴に気づく程度の理性を、サーキュラーキャットは有していたということだ。

 そして、誤算があるとすれば――癒し手達にこそあった。
 移ろう獣への接近を果たしたリベリスタ達を迎え撃つように放たれた睥睨が、しかし癒し手である少女たちを穿った回数は一度ではない。残るサーキュラーキャットと対峙した二人にも、癒し手にも、接近する相手にも――叫び、睨み、爪を突き立てて全力の抵抗を何十回と続けていた。
 残されたサーキュラーキャットでさえ、その束縛を受け、咆哮に喘いだ。回復の手は止まらず、攻撃に転ずる余裕も次第に削られ、落とされる。

 勝利を目指し勝利に喘ぎ、しかし底しれぬ性能はリベリスタ達を確実に追い詰めていく。削っていく。
 エリスが、操り糸を切り落とされたように崩れ落ちる。指先が動かない。癒しが届かない。運命の寵愛も使い果たした。万全であればまだ戦えた、覚悟があったはずだった。

 獣の速度はいや増して、近付くリベリスタ達の戦線を容赦無く瓦解しにかかっていく。倒せると思えた一線を僅かな齟齬が削り落とし、限界を超えて争いが続く。

「まだ、私は戦える――!」
 アラストールが叫び、轟剣を叩きつける。鋭い動きからそれを半ばまでかわした獣は、そんな相手へ一切の油断をせずに爪を振るい、その肩を切り裂いていく。回復手が、火力が、僅かずつ倒れていく。戦線が崩れていく。それでも、リベリスタ達にとって目の前に現れた勝利の芽は何より尊く眩しく、手が届かんばかりの距離にある。

 理央が、自らの全力を賭けてサーキュラーキャットへと最後の一撃を叩きつける。猛獣を狙う者は、その場から消え果てた。しかし――、残された戦力と、再びもたげられた猛獣の首が絶望的なまでに遠くを見据えていることに、気付いた者は居ただろうか。
 言葉はなく、ただ、叫びだけがある。

 誰が、退くと言っただろうか。
 何人が、再び立つ権利を失っただろうか。
 ほうほうの体で去ることしか出来なかった彼らには、残された記憶はない。

 ――ただ、苦い経験と遠く響く咆哮が、そこに残り続けただけだ。

■シナリオ結果■
失敗
■あとがき■

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