●承前 ある朝起きたら、ボクの姿は誰にも見えなくなっていたらしい。 「おはよう」 母親に話しかけたけど、慌てて出かけて行っちゃった。なんだろ。 仕方なく学校に行ったけど、教室の中では誰も目を合わせようとしない。 授業中、名前を一度も呼ばれることはなかったし、ボクの席にはプリントは回ってこなかった。 友達とすれ違っても気づかないし、毎日ボクにいじめにくるクラスメイトも今日は休んでる。 廊下を走っても、誰一人気にも留めてくれなかった。 学校から帰る途中、商店街に寄ろうとバスに乗り込んだ。 バスのガラス越しに、ボクの姿は映らない。 誰も見てないみたい。お金も払わないでそのまま降りた。 気になって、ズボンのポケットに隠し持っていたナイフに触る。 ナイフに何かがベットリと着いていた。何だろう。 この前拾った時は、濡れてなかったんだけどな。 商店街を歩いていて、電気屋さんの前を通った。 テレビにはニュース番組が流れている。 ――先日3名が死亡、1人が意識不明の重体となっていた事件の続報です。 重体となっていた少年。水仙翔太(すいせん・しょうた)君、10歳が先程病院で死亡しました。 これで事件の被害者は計4人となり、警察では――。 あれ? ボクと同じ名前だ……?? ボク、ここにいるのに。 ●依頼 「アーティファクト『インビジブルナイフ』を回収して、所有者を処理するのが今回の依頼」 『リング・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は、集まったリベリスタに結論から切り出した。 所有者は水仙翔太、享年10歳。 「つい先日。小学校の体育館裏で3人が死亡し、1人が意識不明の重体となった事件があるの。 通り魔の犯行って話になっているけど、実際は違う」 翔太は毎日クラスメイトからのいじめに逢い、身体と心を痛められ続けている。 だがその日、彼は『インビジブルナイフ』を偶然河原で拾っていた。 呼び出された体育館裏でいじめから逃れようとした翔太は、偶然拾ったナイフを威嚇する為に抜く。 「それによって、彼はアーティファクトの力に身体を乗っ取られた」 カレイドシステムの映像では、翔太が無感動に同級生を刺殺し、そして自分自身をも刺してその場に倒れる光景が映し出されていた。 その直後、奇妙な映像の揺らぎが倒れている翔太の身体の真上で発生し、手にしていたナイフも消える。 「この時、恐らく翔太君の身体から彼自身は出てしまったの。姿は完全な透明だから、確認するのには骨が折れたけど……」 翔太は自宅へ帰り、疲れていたのでそのまま部屋で眠った。 ナイフをポケットにしまってからは、殺害の時の記憶はすっぽりと抜け落ちているらしい。 「今は誰にも気づかれることなく学校に行ったり、街を歩いたりしてるけど。 やがてナイフの力で無作為に殺人を繰り返すようになる。そうなる前に、彼を捕まえてナイフを回収して。 回収しても、絶対に抜き身に触っちゃダメ。取り込まれるから」 イブはリベリスタ達に紙を手渡す。 「これは翔太君の明日一日の予定。これを見ながら何処で『インビジブルナイフ』と翔太君を対処するか決めて」 07:00 住宅街の自宅、自分の部屋で起床 08:00 学校に到着 16:00 下校時間、商店街へ 17:00 自宅へ帰るが、自分の遺体と対面して家を飛び出す 18:00 当てもなく、商店街へ行く 20:00 当てもなく、学校に行く 21:00 当てもなく、自宅近くの公園に行く。土管で眠る 24:00 覚醒して住宅街へ 24:30 住宅街で無差別殺人開始 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:ADM | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 2人 |
■シナリオ終了日時 2011年12月12日(月)22:39 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 2人■ | |||||
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●発見 神奈川県横須賀市――某小学校。 人気のなくなった教室に、現れたリベリスタ達。 『積木崩し』館霧罪姫(BNE003007)は片方の出入口の鍵を壊し、教室へと入った。 「死しかない子に生の喜びを、終わるだけの子にその所以を……。 罪姫さんはね、そんなの責任転嫁にしか見えないの」 隣にいた『LUCKY TRIGGER』ジルベルト・ディ・ヴィスコンティ(BNE003227)へと語りながら、窓に鍵が掛かっているかを確認して回る。 ジルベルトは窓から見える校門の仲間達に視線を向け、小さく肩をすくめた。 「この場合の説得なんて、単なる自分への言い訳にしかなンねェしな」 何を言った所で殺すことに変わりはない。そう理解して淡々と下準備を進めている。 それには賛同も否定もせず、傍らで教室内の状況を確認していた『鋼鉄の戦巫女』村上真琴(BNE002654)はその選択を仲間に一任した。 「運命ってやはり残酷ですよね……」 年端も行かない少年に事実を突きつけ、選択を迫るのがエゴだとすれば。こちらの論理を一方的に押し付けて殺すのも、やはりエゴなのだろうと彼女は思う。 一方、屋上では『さすらいの遊び人』ブレス・ダブルクロス(BNE003169)がロープを結わえ、有事に備えて準備をしていた。 「……さて。変わらない現実を前に、今回の仲間はどう説得するか……見させて貰うか」 有事の際にはすぐに飛び込める様に、手配を整えつつ回想する。 今回の依頼に当って、透明人間となった少年と対話するか、即戦闘するかで意見は二分した。 『錆びない心《ステンレス》』鈴懸躑躅子(BNE000133)と『雪風と共に舞う花』ルア・ホワイト(BNE001372)説得を主張し、そして『ソリッドガール』アンナ・クロストン(BNE001816)はそれに賛同。 説得に反対して戦闘を行いたいと提示したジルベルト、罪姫、『ガンスリンガー』望月嵐子(BNE002377)と同数だった為、彼等が折れた形で今回の決着を見ている。 校門の前では『翔太くんは肩を叩いて』と書かれた看板掲げ、嵐子が待ち人の到来を待っていた。 (アタシは事情話したくないんだよね……単にアタシ達の都合で殺すようなもんだし) そう思いつつも、仲間達の意見を尊重するつもりではあったのだ。 浅倉貴志(BNE002656)も、やはり今回の取捨選択を仲間達に託していた一人である。 「せめて甘き夢の中で安らかな最後を迎えさせてあげるか、あくまでも残酷で非情な事実を告げて死を与えるか……」 僕自身、そう上手く対応できる自信が無いですからね。と言った彼は視線を正門前に向け、視界には見えない感情の来訪を待つ。 しばらくすると、貴志には何かが近づいてくるのが理解できた。 悲しみ、混乱、どうすればいいのかわからない絶望感に近い感情の渦巻いた存在。 彼に来訪者がいる事を告げられて間もなく、嵐子は二の腕をふにふにと掴まれる感触がした。 「あ、あの……」 小さな子供の声。姿は完全に見えず、見えるものは単なる校門の向こう側の景色。 躑躅子は貴志の指示した方へと向き、癒される様な笑顔で手を挙げる。 「こんにちは、翔太さん」 彼女の中にも迷いはある。だが本人のいないところで、自分達が勝手に決める事ではないと彼女自身は考えていた。 合わせる様に「Ciao(チャオ)」とイタリア語で優しく声を掛けたルアは、相手がいる事を確かめる様にして近づき、その透明の身体に触れる。 「おねーちゃん達……ボクが判るの?」 「えぇ、翔太君は透明な存在だけれど、ちゃんと、此処に居るの。判るわ」 ルアは飛び切りの笑顔を浮かべ、少年を抱きしめる。 その瞬間、堰を切った様に子供の泣き声が聞こえ出し、彼はルアに埋まる様にして泣きついていた。 「誰にも見えなかったんだ……誰にも……」 まるで海の中に放り出され小船でも見出したかの様に、ルアへとしがみ付く少年。 一度落ち着くまでの間、アンナはずっと少年の背中を撫でながら優しくあやしていた。 その様子を後ろから静かに眺め、口を閉ざしたままの『大人な子供』リィン・インベルグ(BNE003115)。 ●選択 落ち着いた翔太を連れて教室へと移動し、3人は少年の身に何が起きてるかを説明した。 貴志と嵐子、リィンは後ろから同行し、周囲では他のリベリスタ達が隠れつつ集中をしている。 「ボクこのままなんだ……もう元には戻れないんだ……」 真実を知らされショックを受けている声だが、その表情は見えないので判断が付かない。 ミラはゆっくりと言葉を選びながら、事情を子供にも理解できるよう噛み砕いて話す。 「透明になって他の人に認識されなくなったのは、翔太君が持っているそのナイフの力のせいなの」 「ナイフ……あ、透明になる朝に拾った……」 明らかに声は落ち込みを見せていく声。 「ボクが身体に戻ったら、ボクは生き返らないの?」 素朴な疑問。子供であるが故、戻れない事が死に直結することに気がついていない。 静かに首を横に振るミラ。笑顔で話すことが段々と耐えられなくなりつつある。 「ごめんなさい、元の身体はもう動くことができないの……」 「じゃあ、このままでいる事は?」 眼鏡を軽く抑えながら、アンナがその問いに答えた。 「24時を過ぎれば、事件の時と同じ様にあなたはナイフに意識を乗っ取られる。 そうすれば学校の三人と同じ様に誰かが殺されるの」 「……ボクが、殺したの?」 少しの沈黙の後、躑躅子は小さくそれを頷いて肯定した。 息を飲む音だけが、その場に響く。 直接的な表現を避けつつも、躑躅子はできるだけ正直に思いを伝えようと努力する。 「翔太さんがもし生き長らえたとして、罪のない人達の犠牲は止まらないんです」 その『インビジブルナイフ』がある限り、翔太は意識を乗っ取られて誰かを殺し続ける。 「私はそうなる前に、翔太さんが自らナイフを手放してほしいと思っています」 しかしナイフを手放せば、翔太は透明の身体ではいられなくなるのだ。 それはつまり、翔太の死を意味していた。 「おかしいよ……ナイフを捨てたらボクは死ぬ、ナイフを持ってたら人を殺すって。そんなの……」 声が落ち込みを見せる一方、姿は見えなくても事態に混乱している様子なのは窺える。 無理もないと誰もが思っていた。10歳の一般人の子供にそんな判断等、簡単にできるものではない。 「だって、ボクの身体が死んでるのに、じゃあ、どうしてボクがここにいるの? どうして? おねーさん達はボクを助けに来てくれたんじゃないの??」 答えは、ない。 彼女等が助けに来たと言ったとしても、それは翔太の意図する形ではないだろう。 ルアの表情が曇り、反射的に躑躅子が翔太を抱きしめる。 助けられなかった、救えなかった、それでも事実を彼に知ってもらいたかった。 あらゆる神秘事象に対し立ち向かい、人の理から外れたものを倒す人外の力を持ってしていても、自分達は必ず全てを救える正義の味方ではなく、万能で便利なスーパーヒーローでもない。 ただ一人の人間として、何の事情も知らせず一方的に命を断つ行為に及ぶ事はできなかったのだ。 リィンはその光景の一部始終を後ろからジッと眺めている。 「さて――この理不尽を前に、君はどうするのかな……?」 直面したその顔を見る事は叶わなくても、衝撃を受けている様は声越しに理解できた。 こうしていても、どうあっても、結論が変わることはない。 真琴も同様だった。ジッと見守りつつ、小さく溜息を吐く。 「それでも私達は、彼を殺すしかないのです」 すぐさま結論が出ない少年の事を考え、彼女達は落ち着かせる意味もあって一緒に何かして遊ぼうと提案する。 だが透明な翔太を相手に、嵐子はどうやって遊べばいいものか考え込んだ。 「鬼ごっこどころか、じゃんけんすら難しいよね……」 言いつつ翔太に香水を振り掛け、少しでも位置の判断が付けば何かできるのでは? と試みた。 「おねーちゃん、これ何かすごく臭い……」 匂いが付くだけでは、やはり鬼ごっこは難しそうだ。 悩む彼女達に、貴志が割って入る。 「それではトランプなんかどうです? これなら透明相手でも」 室内ゲームならば、相手が透明でも関係ない。と、貴志はカードを取りだし、椅子に座ってシャッフルを始めた。 彼等は翔太と一緒に机を囲み、七並べをしたりしてしばし過ごす。 ミラは速攻戦術でカードを並べ、すばやく手持ちの札をなくしていく。 「次、躑躅子さんの番ね」 彼女とは打って変わって、慎重に他のメンバーの手札数を確認しながらカードを切る躑躅子。 「えーっと……次はこれ、かな?」 パンクを翔太に聞かせようとしたが、拒絶されてすこしガッカリした嵐子の目が輝く。 「へへーん。あたしあがりー」 そのカードを待っていたとばかりに最後の一枚を切られ、隣の手札が一番多い貴志は嘆く様な声を挙げる。 「またパスです……だ、誰ですか? ダイヤの8ずっと止めてる人?!」 「あ、ごめん。ボク……」 犯人は、翔太だった。 トランプを楽しむ内、少しずつ翔太の声が明るくなり、対話もできるようになっている。 そうこうしてる内にも時間は確実に進み、彼の革醒の時は近づきつつあった。 ●抱擁 「そろそろ時間だよ?」 時計を目にしたリィンが、一同へとアクセスファンタズムで連絡を入れる。 その報告を受けたトランプ組の動きが止まった。 ついに選択させる時が来たのだ。 その瞬間、ルアの瞳から涙が零れ出す。 「ごめんね」 「ううん、楽しかったよ。ボク……」 彼女は香水の香る翔太を手探りで触れ、優しく抱きしめる。 翔太は震えていた。その肩へ透明な雫がポタポタと落ちて来た。 「死ぬのって、苦しいのかな。怖いよ……」 どうやら、彼自身の覚悟は固まりつつあるようだ。 そのまま身体を探るように、彼女の手はズボンのポケットへ伸びる――。 だがそれよりも早く、ルアに見えない無数の衝撃が伝わった。 反射的に自分の身を守ろうとした『インビジブルナイフ』は、その力で強制的に覚醒したのだ。 ルアはその衝撃を真正面から受けても尚、笑顔のまま翔太を抱きしめている。 「離さない。離さないわ……」 以前、同じようにエリューションになってしまった少年は、自分がどうなったのか分からないまま、逝った。 悲しみながら、ただ死んでいく。以前の繰り返しだけはさせたくなかった。 運命を手繰り寄せ、彼女は力強く翔太を抱きしめ続ける。 彼女の異変を見て取り椅子から立ち上がった貴志が、ルアの目前にいる翔太へとカラーボールを投げ、その姿を露わにさせた。 「今です!」 貴志の声に反応したリベリスタ達が、一斉に翔太へと向かう。 教壇の陰に隠れて集中に集中を重ねていた罪姫が、全力で両手のチェンソーを乱舞し、動かない翔太の背中を襲った。 「はじめまして、さようなら。私は罪姫さん。今宵貴方を殺しに来たの」 オーラを纏ったその攻撃は深々と、連続して少年を斬り付けていく。 間もなくアンナが輝きを放ち、教室内が明るく照らされる。 後方に待機していたリィンは、同じ様に集中を重ねた魔弾を放った。 「残念ながら、運命を受け入れる他無いね……」 正確に翔太の身体を弾は貫き、ルアの身体が少し衝撃に揺れる。 真琴は全員に十字を切り、その光は一行の護りの加護を齎した。 距離を置いた嵐子は、静かにTempestを向ける。 「大体の居場所さえ判れば充分よ」 角度をつけてルアを傷つけない位置へ回り、そこから立て続けに銃を発砲した。 次々と撃ち抜かれて、その動きが鈍くなり始める。 窓から飛び込んできたブレスは姿を視認すると翔太目掛けて一直線にハルバードを繰り出す。 「お仕事なんできっちり殺してやる……存分に恨みやがれ」 続けて大上段から放たれる神聖な力を秘めた一撃を放つ躑躅子。 光を纏いし攻撃が重なり、ルアは抱きしめた翔太の命の火が徐々に揺らぎだしたのを感じる。 ロッカーの影からジルベルトが姿を現し、カラーボールの掛かった身体の一部を元に右手の位置を探り当てた。 「ナイフを持てなくなった時点で元の肉体へ返るなら、一番恐怖も痛みも少なくて済む方がいいだろ」 狙い済ませた正確無比な射撃が少年を襲い、その腕を立て続けに貫く。 直後、カシャンという音が床に響き、カラーボールの色の付いた身体はその場に崩れ落ちた。 「お、おねえ、ちゃん。痛い……よ…………」 そのまま前のめりにルアへともたれかかる。 ルアは何か言葉を掛けようとしたが、気づいてしまった。 少年の命の火は完全に消え、抱きしめていた感触も徐々に薄らいでいるのを。 ●救い 戦闘が終わり、既に一足早く外へ出たリィンとブレス。 「いろいろ遊んでやりたい気はあったけど……」 空気を読んだリィンは説得をしたい者に任せ、自身は討伐に専念した。 その選択には後悔せず、さっさと帰路へと着いている。 一方、ブレスはまだ彼女等がいるであろう教室へと視線を向けた。 (残酷な現実に形はどうあれ……目を背けずにぶつかるあいつ等が少し眩しく見えたわ) 苦笑気味に笑う彼に、疑問に思ったリィンが首を傾げる。 手をひらひらと振って「何でもない」と答えた彼は、そのまま振り返らずにまっすぐ歩き出していた。 やがて翔太の透明な肉体は消失し、後に残って姿を現したのは、所有者を失って姿を現した古ぼけた折りたたみナイフのみ。 血がこびり付き、汚れた『インビジブルナイフ』は不気味に輝きを放っている。 罪姫はそれを見やり、靴で折り畳んでから無造作に掴む。 「殺人鬼なんて、無理矢理にされる物ではないのよ。生まれながらに殺人鬼で、死ぬまで殺人鬼なの」 例えばそう、自分自身の様に――そう言いたげに彼女は小さく笑む。 考え深げな表情の貴志は、亡くなった翔太がいた先程の場所を見た。 「運命が斯くも残酷なことを引き起こすとは悲しいことですね……」 息を吐いた彼は、片付けを終えた真琴と共にその場を静かに立ち去る。 一方虚空を見つめるジルベルトはぽつりと呟いた。 「少年、楽しいことあったか? 辛いことあったか? その思い出も気持ちも全部持っていくといいぜ」 目を細めたまま、説得へと努力した仲間達の様子を見つめる。 全てが終わり、躑躅子の心の中には苦い思いがこみ上げてきていた。 「果たして、私は今回何を守ったといえるのか……」 それに気づいた嵐子が、そっと躑躅子へと言葉を返す。 「でも誰にも気づかれず誰とも交流しないまま、死んじゃうって寂しいよね」 少なくても翔太はそうではなかった。それだけでも違うのだろう、そう願いたい。 アンナはその場に座ったまま、呆然としているルアに「帰りましょう」と声を掛けた。 ルアは両手を胸に当て、翔太の最後の感触を忘れぬよう心にしっかり焼き付けている。 「ごめんね……」 最後の最後、翔太は心の中で覚悟を決めているようだった。 少なくてもルア達にはそう思える。 それだけは、救いだったのかもしれない。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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