下記よりログインしてください。
ログインID(メールアドレス)

パスワード
















リンクについて
二次創作/画像・文章の
二次使用について
BNE利用規約
課金利用規約
お問い合わせ

ツイッターでも情報公開中です。
follow Chocolop_PBW at http://twitter.com






∞爆発

●はじめの敵には強すぎない?
 ぶよぶよと拡張と収縮を繰り返す緑色の粘液体。
 駆け出しのリベリスタ達が討伐するには手頃であろうと思われる外見をしたその姿は、狙うには十分すぎる相手だった。
 全員が全員、全力で攻めた。あちらは身動ぎするだけだ。倒すことなどあっけない――そう、思うはずなのだ。
 全員の攻撃が止んだ頃に、変化が起きた。身動ぎが激しくなった。体液を弾丸の様に飛ばして炸裂した。
 ――後に残されたのは、再び健在な姿に戻るそれと、膝を衝いたメンバーに肩を貸して敗走するリベリスタ達の姿であった。

●耐久度テスター
「スライムは弱い。スライムは柔らかい。スライムは洗濯糊。まあ、概ねの印象はそんなものではないでしょうか。だからこそ、彼らがエリューションとして出現しようが、大して難敵ではないと思われがちですが……今回ばかりは、その認識を改めて頂く必要があります」
 テーブルに緑色の粘体――洗濯糊とホウ酸で作られたスライムを垂らして、『無貌の予見士』月ヶ瀬 夜倉(nBNE000201)はモニターへ視線を向けた。
「E・エレメントフェーズ2『マッド・ボム』。外見は緑に銀を垂らした程度のマーブル色のスライムです。こいつは、攻撃を受けると爆発して周囲に被害を与えた後、僅かにサイズを減らした状態で復活します。完全に倒すには、その時点での最大生命力を超えるダメージを叩きこむ必要があります」
「嵩が減るってことは、どんどん弱体化してるんだよな? なら、適当に攻撃し続けて根負けを狙うのは」
「可能ですが、お勧めできませんね。厄介なことに、サイズが小さくなるのと反比例して爆発の破壊力が増すようなのです。更に、最小サイズまで進んでしまった場合、撃破基準のダメージを与えるとそれまでと比べても尋常ではない爆発を起こすそうです。現に、フリーの駆け出しリベリスタチームが命からがら逃げ出した、とも報告を受けてますから……甘くはないでしょうね」
 映像を中断すると、夜倉はリベリスタ達へ向き直る。何時ものことだが、その目には信頼の色が強く写っていた。
「多少の被害は覚悟が必要ですが、出来ることなら最小まで消耗させる前に、全力を叩きつけて撃破できれば幸いですね」


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:風見鶏  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2011年12月03日(土)23:25
 まるで初心者クレイモア。火力と回復力のバランスチキンレースが始まるよー。

●E・エレメントフェーズ2『マッド・ボム』
 緑に銀を混ぜたマーブル色スライム。以下の特性を持つ。
・ダメージを受けたターンの最後に爆発する(物遠全)。耐久ダメージ以上を一度のターンで受けた場合、爆発せず消滅。
・初期耐久ダメージ5000、ターンごと500~1000減少(ダメージにより変化)
・残存耐久ダメージが低くなるごとに爆発の威力は増加。
・残存耐久ダメージが500を切った状態になった場合、次ターンに『EX 極小連鎖爆発(物遠全・大・[連])』を発動して消滅する。
・『マッド・ボム』消滅時に戦闘続行可能なメンバーが居た場合のみ成功。

 戦闘が攻撃一辺倒になる分、攻め手や爆発に対する防御の描写が濃くなる可能性が大です。
 攻め手や爆発対策も大事ですが、心情・行動にプレイングを割くことを推奨します。

 では、レッツ爆発。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
★MVP
覇界闘士
御厨・夏栖斗(BNE000004)
ホーリーメイガス
来栖・小夜香(BNE000038)
スターサジタリー
モニカ・アウステルハム・大御堂(BNE001150)
ホーリーメイガス
エリス・トワイニング(BNE002382)
デュランダル
ディートリッヒ・ファーレンハイト(BNE002610)
ソードミラージュ
ユーフォリア・エアリテーゼ(BNE002672)
プロアデプト
ジョン・ドー(BNE002836)
プロアデプト
エリエリ・L・裁谷(BNE003177)

●触れるな危険(デンジャラス)
 スライムとは、流動性を持った半固形物の総称として知られると共に、同等の性質を持つ非実在生物の一種としても有名である。そりゃまあ、近年のサブカルチャーの所為でスライムは弱いだのスライムは初心者の相手だのというイメージがあるが、それは大きな間違いである。
 遡って、某SFホラー作家の宇宙生物に始まり、サブカルチャーでも初心者殺し系ユニットとしてその名を轟かせた者も存在する。半固形。つまるところが反動性を持ち物理攻撃の吸収・相殺を容易にしてのける手合いなのであり……まあ、それに爆発性能が被ったらとんでもねえことになるわけだ。

「スライムが最弱のモンスターってのは昔の話ってとこなのかな?」
「実は最初は倒し難い難敵のポジションだったんですよね~」
 スライムは最弱派・『高校生イケメン覇界闘士』御厨・夏栖斗(BNE000004)の疑問に重ねるように、スライムは手強いよ派・ユーフォリア・エアリテーゼ(BNE002672)のさらりと述べた一言が重なる。

「スライムだからとおもってゆだんしてたらだいぴんちです」
「スライムって言えば雑魚代表って感じだけど、意外と最近じゃ強いスライムもゲームなんかにはいるのよね……」
『磔刑バリアント』エリエリ・L・裁谷(BNE003177)にとって二度目の依頼であるが、初心者クレイモアにも程があるこの相手が彼女にとって荷が勝ちすぎるということはない。適切な警戒心を持つ来栖・小夜香(BNE000038)も無論のこと、彼女をサポートするに十分すぎるメンバーがこの場に集まっているのだ。本当にどうしてこんな極端なメンバーが集まったんだ。こえーよ。

「いつ爆発するかは分からない危険と背中合わせのスリルゲームみたいなものですか」
「シンプルであるがため、やることは簡単なんだが極めて危険という……」
 二十メートル先で絶えず泡立ち拡張と収縮を繰り返すスライム、『マッド・ボム』を見て、『無何有』ジョン・ドー(BNE002836)と『酔いどれ獣戦車』ディートリッヒ・ファーレンハイト(BNE002610)が端的に状況を理解する。要は、攻撃してこない対象をひたすら殴り倒して最後に立ってりゃ勝ちという、非常に脳き……否、シンプルなやりとりを強要するものだった。

「やることは……シンプルなのに……色々と……厄介」
 エリス・トワイニング(BNE002382)も考えることは同じだった。シンプルだということは、それだけ単純作業に係る強度が高いということに他ならない。それだけ各個人の意思と行動に様式美とか何とか、まあ色々と求められるわけで、不安がっているだけで何が始まるというわけでもない。

「とっ捕まえて砲弾の弾薬にでもしたい位ですよ」
 ……『デストロイド・メイド』モニカ・アウステルハム・大御堂(BNE001150)程の思い切った考え方でないと、この手合いを倒すのは難しい、かもしれない。兎にも角にも、この戦いは真っ向勝負。各々の気合いとダメージコントロール、加えてバランスを重視して初めて形を成す戦いであり、駆け出しのリベリスタをも瓦解させた相手であることを忘れてはならない。

「けれども、戦場での命の鍵を最後に握っているのは……結局のところ『運』なんですよね」
「さあ、運試しと参りましょう」
 自分達の強度、相手への推測を含め、メンバー中最も思索を巡らせているのはモニカだったが、その思索を敢えて素早く切り離したのもまた彼女だった。運任せ。それを心得ているジョンとて同じだし、他のメンバーは言わずもがな。

「んじゃま、かっこ良くスライム討伐いこうぜ!」
 両手に携えた旋棍の感触を確かめ、夏栖斗が声を張り上げる。
 仲間を引っ張るとはそういうことだ。自分だけが頑張って結果を出せるなら仲間など必要ない。前に出る勢いをして、戦いを制すのが人なのだ。

●近付くな危機(ワーニング)
 ……とはいえ、戦闘の立ち上がりは非常に緩やかなものだった。
 真っ先に飛び込むと思われた夏栖斗、ディートリッヒの二人ですら踏み込まず、各々の気を滾らせて機を伺っている有様だ。
「近づくとふきとんじゃいますし、わたし」
 じりじりと距離を測るエリエリ、正しいこと言ってるけどぶっちゃけた話がもう正に邪悪ロリ。マジひかりあれ。
「不測の事態があるとして、それを上回る火力を叩き出すだけです。いつも通りですね」
「回れ、魔力の円環」
 虎殺しの異名を冠する化物の如き火気を掲げ、モニカは一射に全力を注ぎ込む。小夜香は直ぐにでも襲いかかるであろう異形の弾丸に備え、その身を屈めて魔力の巡りをひたすらに効率化させていく。
 本来であれば一秒たりとも無駄にしない筈のこの編成で、ほぼ全員が戦闘距離から離れて待機する状況は常軌を逸していると言えた。ブロック役の二名を除いて全員、である。
「こちらが手を出さなければスライムさんはどうなるんでしょ~?」
 自らの速度の枷を外しながら、ユーフォリアはマッド・ボムの状況に目を凝らしていた。幾度も爆発するスライムの亜種が、自分達の行動を待たずして次々爆発するだけならば、彼らが存在する必要も討伐隊を組む必要もないだろう。然るに、そこで確かめる必要があったのだ。挑むべきか、待つべきかの選択を。

 うじゅるるん。
 眼前に並ぶリベリスタ達に反応し、マッド・ボムが身動ぎする。爆発するか、と全身に力を込めたメンバーはしかし、続けて放たれた「ぷぃ~」の音に揃って膝を屈した。体力も気力も、消費量よりは減っていない。そうじゃない、ズッコケたのだ。ぷぃ~じゃねえよ。笛かよ。

「じゃんじゃん行きますよ~」
 戦闘範囲に真っ先に踏み込んだのは、ユーフォリアだった。
 両手に構えた戦輪を、自在に操って切り裂きに往く。それ自体の回転力と、技能をして放たれた軌道が自在に舞い、次々と切り裂いていく。だが、やはりスライムはスライムだ。斬撃といえど、物理現象には確実ではないまでも耐性を持つことを伺わせるように、受け止めた戦輪をあらぬ方向へ弾き飛ばす。
 戦輪の軌道を縫うようにして掲げられたのは、ディートリッヒの持つ長大な刃だった。銀の文字を浮かび上がらせたそれが勢い良く叩きつけられれば、その半分ほどの勢いで刃が弾き返される。純粋に半減した、とは言い難いにしろ、その反動の大きさが耐久性を如実に表しているといえた。

「弾くってことは、防御はそれなりってことか! なら、これで……!」
 二人の攻撃を眼前で見る余裕があった夏栖斗には、然るにそれに対抗する策もあった。旋棍を構え直し、踏み込みを強く、正面から貫くように一撃を放つ。物理攻撃に強いなら、物理防御を貫けばいい。シンプルでこそあれ、ピーキーなそのスキルを好む人間は多くはない。だからこそ、ここで有効だったとも言うが。

「やれるだけやってみましょう、考えるのはそれからです」
「すらいむごときの知能ではこの冴えるのーさいぼーにはかなわぬのですね」
 ジョンとエリエリが、次々と自らの気を糸に練り上げ、マッド・ボムへと放っていく。練度の違いこそあれ、それらは神秘に属する攻撃手段。相手に対しての有効度はかなり高いのは間違いではない。
 ……あとエリエリ、踏み込んだら一発受けるのは覚悟な。

(全員が踏み込んだら作戦が台無しになりますね……下策ですが、ここは待つしかありませんか)
 機を狙って踏み込もうとしていたモニカだったが、事前の作戦とは明らかに異なる周囲の動きに気づいてか、踏み込みを止める。ここで攻め入って一撃を加えることは容易だし、序盤の爆発で沈むメンバーではない。が、無計画に突撃するのなら駆け出しの自分でもできたし、やっただろう。
 なら、ここは踏み込まずに次の一手に集中するが上策か。
 爆発を起こさない状況で踏み込まないのは、回復手二人とて同じこと。確実性のない手に出るほど経験が浅いわけではない。

 短いようで、しかし永遠に近い思索が続いた十秒の彼岸で、マッド・ボムが大きく収縮する。豆粒ほどまでに縮まったその身を秒を待たずに爆砕させ、周囲のリベリスタを次々と貫いて吹っ飛ばす……正にクレイモアそのもの。エリエリの危惧は遠からず当たっていたとはいえ、彼女とてそれだけで吹き飛ぶタマではない。危険性は格段に上がったが。

「ってぇ……けど、まだまだ終わってないからな、皆気合い入れろよ!」
「これくらいなら、最後まで殴り続けても問題なさそうだな。行けるぞ」
「後々厳しいかもしれませんが~、何とか行けそうな気はしますね~」
「想定内です。ダメージコントロールは十分できるでしょう」
 攻撃を受けた面々にとって、そのダメージ量は慮外だったかもしれない。が、次に飛んでくる回復の量を考えれば確実に耐え切れると断言できた。だからこそ、強く意識を持つこともできるのだ。

「いたいあついです!これあとなんどくりかえすですか!」
 あと最低三回くらい同じ目にあって頂きます。
「いたすぎるからやめてくださいです!」
 駄目です。

●滅びろ大敵(エネミー)
「勢いは……激しいけど……回復は……追い付いてる」
「響け、癒しの福音」
 エリスと小夜香の福音が、相次いで響き渡る。交互に距離を取ってダメージコントロールを殊更重要とする二人だが、マッド・ボムの圏外にあっても、全員とは言わず回復することは出来る。どちらかの回復が抜け落ちるとすれば、前衛で最もダメージを負う二人ぐらいのもの。
 更に言うなら、夏栖斗もそれを意識した行動を心掛けていることから、両者が一度に倒れるという事態が起きるとは考え難い。

「待たされた分、きっちり働きませんとね。一気に片を付ける勢いでいきます」
 静かに、しかし爛と光る瞳を向けてモニカは敵の間合いへと踏み込む。物理が通じにくいことなど百も承知。であっても、自分に出せる最大火力を叩きこむと決めた以上、彼女の選択はハニーコムガトリング一択。清々しいまでに研ぎ澄まされた勢いの銃弾の雨が襲いかかり、或いは真上へ弾かれ、或いは本体を食いちぎって路面を削る。
 音もなく伸縮し、一撃を待つマッド・ボムへ、次々と攻撃が打ち込まれ、或いはその軌道を逸れて叩きつけられ、確実にその耐久度を削っていく。
 だが、耐久度を削られるということは、同時に自分達の危機も助長しているということにほかならない。二度目の爆発からして既にそれは顕著に現れ、三度を数えて彼らの危機は顕になった。

「スライム強ぇ! けど、そう簡単にこっちも倒れるわけには行かないからな!」
「成功させるにしても、誰かを支えるにしても。立ってなくちゃ意味が無いもの……!」
「流石に、キツくなってきたな……」
 夏栖斗とディートリッヒは無論のこと、小夜香ですらもその膝を屈するに足る程に、その破片一つ一つの密度は増し続けていた。彼女が前に立っていたとはいえ、エリエリにだってそのダメージが厳しいことは言うまでもない。実に半数以上がその運命を削り取られ、何名かは立ち上がる機すら逸した。
 駆け出しとはいえ、リベリスタチームをたった一撃で壊滅に追いやったのだ。強化された勢いがどれほどかなど、考えるまでもない。

 それでも、彼らは挫けはしない。
 今の戦力なら、今の火力なら、あと二度で倒しきる事も出来よう。その『後二度』が、永遠を意味するほどに深淵な溝を生む。
 銃弾が、気糸が、斬撃が旋棍が、その肉体に打ち込まれる。回復の波濤が響き、可能性を伸長させる。
 だが、その向こうに続く爆発音がそれを嘲笑う。倒れた面々、残された面々でのダメージコントロールがどれほど困難か、状況に応じ音頭を取った夏栖斗には厳しいまでによくわかる。
 あと僅か。その僅かを崩さんと振りぬき、駆け、放たれた一撃一撃がマッド・ボムに打ち込まれ――しかし、十秒を超えて炸裂しない。

 倒れているものには伝える術はなく、立っているものでさえそれに気づいてから動き出しては遅すぎた。
 炸裂。爆発。轟炎。衝撃波。連続するそれらは、運命、ないし自らに与えられたドラマティックな一瞬を行使して立ち上がって、尚も襲いかかる。降り注ぐ。
 


 地面に穿たれた大穴に、再び液状の物質が集積することはなかった。
 しかし、それに抗する戦士たちが立ち上がる気力もまた、其処にはなかった。
 完全な相打ち。狙われた最悪の機をして、その戦いは幕引きと相成った。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 前提として、全員の行動のテンポが揃わないと被害は拡大します。
 班分けについては多分言わずもがな、距離のとり方もそうです。
 詳しくは、今回のリプレイに特に顕著に示したのでご参照ください。
 極小連鎖爆発まで追い込んだことを考慮すれば、十分成功要素足りえます。
 MVPは、その中でも行動のコントロールの主導権を握り、最後まで勝敗に粘った御厨・夏栖斗さんへ。

 お怪我にお気をつけて、次の任務にがんばってください。